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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

2017.04│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

 『風を悼み』      (ヴァル)

らーじー第一弾。
またキャンディーズ……縁があるなあ。


 ===== ♪ ===== ♪ ===== ♪ ===== ♪ =====

 まだニスの香りがする音楽堂でイドラの3人組とシモンは、作曲科の入学課題を検討中だった。ピアノの前に座ったジーラッハが譜面台の楽譜に次々コードやリズムをメモしている。

「じゃあ、こんな感じでどう?」
 聴衆の意見を取り入れて直した和音展開でピアノを弾いてみる。シモンは首をひねった。
「うーん、そうかー。こうなると落ち着き過ぎになってしまうなあ」
「ここで曲が終わっちゃいそうな感じだねえ」リィンも意見を言った。
「じゃあ変拍子を入れて、短くきざんでコードを変えたらどう? 5拍子とかで」
 アヤメが提案すると、ジーラッハはすぐに弾いてみた。
「こんな感じかな?」
「あ、いいな。緊張感が出てきた」
 シモンがふんふんとメロディーをたどってご機嫌だ。

「ねえ、あれどうなったの? 第一楽章に出てきたおどろおどろしたモチーフ」
 リィンが口をはさむ。
「これかな? 古井戸のテーマ?」ジーラッハが弾いてみる。
「そう、それ。もう出てこないの? 古井戸のナゾを解決しないの?」
「ナゾを解決……?」ジーラッハが首をかしげる。
「満月の夜に、悩める主人公が古井戸をのぞくと、異界への入り口が開いてて……なんてどう?」
 リィンの提案にシモンが乗った。
「うん、いいな。井戸の底から美しい歌声が聞こえて、のぞき込むと乙女が妖艶に微笑みかけている!」
「シモンったら……」
 アヤメは安っぽいイメージにあきれた。ジーラッハはくすくす笑いながら、”井戸の乙女”の主題を弾き始めた。

 そこへ度重なる心労で、まだ50代だというのに総白髪になった執事のエンリケが駆け込んで来た。
「ダンナ様、大変でございます!」
「やかましいぞ、エンリケ。今、大事なところなのに」
「申し訳ありません。ですが今、伝令が参りまして……奥様がお帰りになるそうです」
「トゥーリッキが? 4月まで帰れないんじゃなかったのか?」
「それが団員の方のひとりが内戦に巻き込まれてケガをして……」

 シモンががたっと立ち上がった。
「ケガ? 楽団員は平和使節として、絶対に守られているはずじゃなかったのか? トゥーリッキは? 無事なのか?」
「ええ、奥様は。でもケガをなさったご友人を連れて帰られるので、東棟に支度して医師を呼んでおくようにと」
「大変だ。すぐフォーゲル先生に連絡をとってくれ。私はフラウ・エーベルバッハと相談して東棟を準備してくる」
「はいっ」

 人が変わったようにきびきび音楽室から出て行ったシモンを、アヤメとリィンはあっけに取られて見送った。
「どういうこと?」
「奥さん、出て行っちゃったんじゃなかったの?」

 ジーラッハはくすくす笑い出した。
「ちがうよ。奥方はオーケストラのチェリストで、文化交流事業でクロキアに行ってたんだ」
「クロキア?」
「そう。でもこういう事業はスパイとか亡命のかくれみのにされやすいからって、手紙もろくに書けなかったらしい。半年の予定だったから、かなりの覚悟をしたみたいだね」
「お妾さんに怒って出て行ったんじゃないのか」
「よその人を連れて帰るのは、趣味らしいよ? 夫婦そろって」
「じゃあ、スオミやイリスにアタックしたのも趣味?」
 ジーラッハはまたくすくす笑った。
「あれはまあ、シモンの習性みたいなものだね」
「習性……」
 アヤメとリィンの理解を越えた世界だが、ジーラッハは大して疑問にも思っていないらしい。

「内戦って……激しかったのかなあ」
 3人とも戦場を見たことがない。リィンにはカルミノで体験したセレッサとの戦いでさえ大きなショックだった。人の命を奪えるほどの憎しみや怒りって……。そんなものを胸にかかえて、何千、何万もの人が戦うなんて……想像もつかない。でもレアシスにはそれが現実なのだ。
 リィンの耳としっぽがだらりと元気なく垂れてしまったので、ジーラッハはピアノから立った。
「ここまでにしよう。エンリケに僕たちにも手伝えることがないか聞いてくるよ」
「そうだね。温室でヒヤシンスが咲き出したから、鉢に植え替えて部屋に並べよう。いい匂いだよ」
「手伝うわ。
 アヤメはリィンと一緒に温室に行った。
 ヒヤシンスにフリージア。水仙にストック。居間に春の香りがあふれた。この花が内戦で傷ついた人の心をせめて癒してくれるだろうか。


 翌日の深夜、夜陰に紛れるようにシモンの奥方はひっそり帰ってきた。
 病人はすぐに東棟に隔離されて、絶対安静になってしまった。シモンはリィンとアヤメが植え替えた花を、毎日1鉢ずつ病室に運んだ。

 ようやく容態が安定した頃、イドラの3人組は奥方とゆっくり話す機会ができた。奥方とゆっくり話す機会ができた。
 奥方は……予想していたのと大分ちがっていた。たても横も大きくて……一見、男性に見えた。太っているというより、がっしりしている。身長はリィンと同じくらいで、体重が倍くらいありそうなのだ。ダークグレーの短い髪。落ち着いた低い声。深緑の穏やかな瞳。

「ごめんなさいね。受験前の大事な時期に騒がせてしまって」
 疲れた顔でお茶を飲みながら、トゥーリッキが謝った。
「いいえ。こちらこそ下宿させていただいて助かっています。ケガされた方は……?」
「ええ。もう体温も血圧も正常に戻ったから……あとは十分、療養すれば大丈夫でしょう」
 アヤメは、そう言いながらトゥーリッキの表情が暗いことに気がついた。
「何か心配のことでも?」
「ああ……いえ……」
 トゥーリッキはアヤメとリィンの分もお茶を淹れながら、微笑んでみせた。だが眉をひそめて、涙を我慢しているように見えた。
「身体は癒えても、彼女の心が……ひとりで逃げてきてしまった、と自分を責めているの。気持ちはわかるけど、もう戻れないわ。死にに行くようなものよ」
 両手で顔を覆ってしまったトゥーリッキを見ながら、リィンとアヤメは顔を見合わせた。
「あの……何か俺たちにできることがあれば……」
 リィンの言葉に、トゥーリッキは顔を上げた。しばらくまぶしいような表情でリィンを見つめていたが、ふうっと微笑んだ。
「イドラの人って……シモンが心酔するはずね。昨夜、ジーラッハさんもそう申し出てくださったの。あの方は特別な力を持っていらっしゃるんですって? 
今、彼女についていていただいてるの」
「私たちも……ジーラッハほど力はないけれど、泉守りの修行をしました。手伝わせてください」
 アヤメが申し出た。
「患者を癒すのは、かなり消耗する仕事なんです。叔父はあんまり丈夫じゃないから……」
「3人で交替すれば負担も少ないし……」
 トゥーリッキは若夫婦ににっこり微笑んだ。
「ありがとう。心強いわ。でもあなたも身体を大事にしてね? アヤメさん、いつ生まれるの?」
「初夏です。多分、7月の初めに」
「楽しみね。あなた方の赤ちゃんならかわいいでしょう。私にも子守させてね?」
「ぜひ。お願いします」

 そう答えて気がついた。この館には子供がいない。話題にものぼらない。
 決して仲が悪いわけではない夫婦。お客を連れ帰るのが趣味だという夫婦。

「西翼のお客様は、今、あなた方とジーラッハさんだけなのね?」
 唐突に質問されて、リィンはきょとんとした。
「ええ。そうです」
「そう。シモンは女の子達を帰しちゃったのね? 私が連れて来たお客様なのに」
 これにはさらに驚いた。お妾さんじゃなかったのか?
 この夫婦はよくわからない。

 リィンは疑問符をいっぱい浮かべたまま、トゥーリッキやアヤメと患者のいる東棟に向かった。
 軽くノックしても返事がない。一同は目を見合わせた。そっと病室のドアを開けると、患者が眠っているのが見えた。

 その患者の手を握って、ジーラッハがベッドの端に顔を伏せている。
「一緒の夢を見ているわ」
「イドラの夏だ……青谷の花畑を歩いてる」

 エイロネイアに来て以来、半狂乱で自分を責めて泣いていた亡命者が、口元に微笑みを浮かべてやすらかに寝息を立てているのを見て、トゥーリッキは涙ぐんだ。
「もうしばらくそっとしていましょう」
 3人は音を立てないように、病室を離れた。
「これでラーシャが元気になってくれるといいわ」
「きっと元気になりますよ」
 リィンは励ますように言った。
「ついでにジーラッハも元気になったりして」
 アヤメの言葉に、リィンもトゥーリッキもきょとんとした。こいつら……鈍いわ。まあ、いい。楽しくなりそうだ。

「もうすぐ春ですね」
 突然、鼻歌を歌い出したアヤメに、春の嵐を予感する夫と家主であった。
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*COMMENT-コメント-
▽アヤメちゃん…こいつらて。
ラーシャさまを助けてくれてありがとう、トゥーリッキさん。ジーちゃん彼女をよろしくね。

エイロネイアが安らぎの地になるなんて思ってなかったけれど、二人ともゆっくり羽を休めてね。

明日、ネカフェにいろいろ上げに行きます。開通まであとに2週間ほどかかるそう。
…長い、けどチャットをするとまたネタが増えるから生活に馴れるのと、ネタの消化期間にしよう。定期的にぽこぽこあげにきます。
▽くそう…
提出書類の消化でネカフェに行けなかった…明日こそ、明日こそtoo lateの最終話とかしるなをあげに…!
▽まあまあ
あせらずに……。まだ一日めじゃないですか。
イドラはツンドラ気候の設定なんですが……3月初めに春祭りで一日中外で過ごすのは寒いかもなあ、と衣装をデザインしながら思いました。
あちこちに火を焚こう。
▽ネット依存性
1日からろくに自由が利かなくなると思うと…今のうちに…とつい焦りが;
門前仲町あたりをぶらついて来ました。なかなか面白いw

アルテミスが火付けのお手伝いをします。聖火の属性なのでおやすい御用。月の精霊の血を引くので、彼女の炎にはご利益があります。
信じられないけどカシスとアルテミスは闇より光、邪より聖、破滅より浄化と、正方向の属性なのです。
▽信じられないって、ひどー
一晩中、オリンピックの聖火みたいに火を保たなきゃいけないんで、あーちゃ、よろしくね。
儀式のあと、あーちゃにもブライド・メイドをやってもらうので、かわいい衣装が待ってるよ♪
▽信じられない(笑)
アルテミス「かーいーのじゃないと衣装のほーがあーちゃの可愛さに負けちゃうからねー。こころしてデザインしなさい」

…ルナと違って可愛くない反応です。さすが女王様。
あーちゃ、女王っぷりもほどほどにね。
▽いや、とことん突っ走ってください
強気じゃないあーちゃなんて想像できない。
どこまでの気高く、女王の道を猛進してください。
だって、あーちゃはきりちゃの王子様だもん♪
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織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
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