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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『すみれ色の指輪 2』    (ヴァル)

すおみろい、いちゃらぶ第2章。
仲がいいのもけっこうだが……何だか腹立たしくなってきちゃうぞ!
スパイスとしてイズミを投入。ちょっとはピリッとしてもらおう。

 $$$$$ ○ $$$$$ ○ $$$$$ ○ $$$$$ ○ $$$$$




 
 鳥が鳴き始めた。スオミはぼんやり目を開けて、カーテン越しに差し込む朝日を見上げる。
 いつもの朝……でも、何だか違う。そう、いつもだったら……隣で寝息を立てているクロイツくんの寝顔を、そっと見て微笑む。寝ていると思ったのに……いつの間にか腕をのばして私を抱き寄せる。そうしてキスしてくれる。
 
 頭を起こして空っぽのベッドの半分を見る。冷たいシーツに腕を伸ばして身体を横たえた。4ヶ月前まで、ひとりで寝るのが当たり前だったのに。今は寂しくてたまらない。ひとつため息をついて、思い切り伸びをする。だめだ。こんなことじゃ。たった1週間じゃない。クロイツくんは、私との結婚のために旅に出ているのに。しっかりしなきゃ。ぱん、と両手で頬を叩く。さ、朝ごはんを食べて、診療所を開きましょう。



「1週間ばかり、休みをもらってもいいですか?」
 クロイツがそんなことを言い出したのは、珠の海から帰って来て半月ほど経った頃だった。珠の海に行く前は、一日立ち働くのもつらくて、時々横にならなくてはいけないほどだった。それが、五つ瀬の聖地の霊験なのか、すっかり元気になって帰って来て、診療所が平常運転し始めたところだった。
「イドラにはリハビリのために短期滞在する予定で来たので……いろいろ、片付けて来たいんですよ。戸籍のこととか……結婚の前に」
「ああ、そうよね。エノとも相談することがあるでしょう? 陛下にもよろしく伝えてね」
 エノやレアシスへのおみやげとクロイツの兵糧を兼ねて、干しコケモモや干し山ブドウ、炒ったクルミ、ハシバミ、シイノミ、ブナの実を用意した。それから、寒くなるまえにエノへ、とルパの毛糸をアカネで染めたオレンジ色のセーターとマフラー。
「荷物になっちゃうかしら。クリスマスに都合がつきそうだったら、ぜひイドラに来てね、とエノに伝えて」
「ええ、言っときます」
「あなたにはこれ」
 ウコンで黄色く染めた毛糸の帽子とマフラーをクロイツにかぶせた。
「うん。あなたの髪に良く合うわ。山道を越えるんでしょ? ウコンは虫除けにもなるから」
「ありがとう」
 マフラーの端を持ったまま、スオミがじいっとクロイツを見上げている。
「そんなに心細そうな顔しないでくださいよ。俺、出かけられないっすよ」
「あ……ごめんなさい。そんなつもりじゃ……」
「大丈夫。ちゃんと帰ってきます」
 クロイツはスオミの肩をぽんぽんと叩くと、ひょいとしゃがんでスオミの腹に声をかけた。
「おい、太郎と花子。父ちゃんが留守の間、母ちゃんを守ってくれよ? 母ちゃんがムリしようとしたら、俺の代わりに叱ってやってくれ」
「太郎と花子?」
「仮名」
「いやだ、クロイツくんたら……」
 噴出して笑ったスオミはそのまま、ぽろぽろっと涙をこぼしてしまった。
「いやだ。本当にこの頃……大丈夫、心配しないで。ちゃんと留守番してる。あなたの帰りを待ってるわ」
 そうにこやかに言いながらも、ぽろぽろ涙をこぼしている。そんなスオミを、クロイツはぎゅうっと抱きしめた。
「約束する。ちゃんと帰ってくる。そのために行くんだから」
「うん。信じてる」
「今日の午後にはイズミちゃんが来ます。俺が帰るまでここにいてくれますから」
「いやだ、そんな……過保護よ」
「いえ、あの子も医大進学の準備してるでしょ? ここで実習すると受験に考慮されるらしいっすよ? それに生理学と薬理学を習いたいって言ってました」
「さすが元エイロネイアの諜報部員ね。それともさすがベルサウス少佐の部下というべき? 策略がうまいわ。そういう風に言えば、私が断らないと思ったんでしょ?」
「だって、ただ弟の恋人が手伝いに来るってのはイヤなんでしょ? やっかいなお嬢さんですよ、まったく」
「わかったわかった。1週間の間にイズミちゃんを仕込んで、クロイツくんを追い抜かせてやるわ」
「わはは。楽しみにしてますよ」
 そう言い残して、クロイツは笑いながら泉への山道を登って行った。スオミも笑って手を振った。


 たった1週間とはいえ、妊娠初期のまだ不安定な時期に一人でいるのは不安だった。昼間、診察しているときには気が紛れているが、夜はつらくて堪らなかった。強がりを言ったものの、イズミがいてくれて本当に助かった。精神的に、だけでなく実質的にも。イズミは子供の頃からメドゥーラの手伝いをしているので、病気や怪我に対して根性が座っているし、薬草の知識もスオミが舌を巻くほどだった。
 夜は教科書を挟んで勉強しながら、ついつい女2人でおしゃべりをしてしまう。年が15も離れていても、結婚を考える恋人がいる女性の考えることは同じだ。
「エクルーって難しいでしょう?」
「そうですね……だから、私はあんまりエクルーの言葉にだまされないようにって自分に言い聞かせているんです」
「だまされないように?」
「そう。彼ってうそつきでしょ? 悩んでても言ってくれないし、それに彼のこれまでの人生を全部把握しようとするのもムリだと思うし」
「……それでいいの?」
「話してくれればもちろん聞くけど……強要したくないんです。だから、私の前にいる彼だけを信じようと思って。どんな過去の話を聞こうと、私の気持ちは変わらないし」
「強いのね……うらやましいわ」
「何言ってるんです。先生とクロイツさんのカップルが、私の理想なのに」
 スオミは真っ赤になってしまった。
「え、そうなの? 理想? どうして?」
「だって、これまで私の周りにいるカップルって、うちの兄さんとアヤメとか、ルナさんとカシスさんとか、ドクターとイリスさんとか……参考にならない人たちばっかりでしたもん。アルもちょっと浮かれすぎで痛いし。やっと真っ当な例が現れてうれしいわ」
 ちょっと前までのクロイツの狂奔ぶりは黙っていようと思った。清純な15歳の少女の夢を壊すことはない。
「今だって、クロイツさん、先生の指輪の石を探しに行ったんでしょう? 素敵だわ」
「え?」
 スオミの驚いた顔に、イズミは口を押さえた。
「ごめんなさい。内緒だったのかも。聞かなかったことにしてください」
「ううん、ううん。ありがとう」
 スオミがぱたぱた涙を落とし始めたので、イズミは慌ててしまった。
「わああ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったのに」
「ちがうの。私、クロイツくんが帰ってこなかったらどうしようって不安だったの。エイロネイアに帰ってしまうんじゃないかって」
 涙をぬぐって、スオミは微笑んだ。
「今、やっと安心できた。イズミちゃん、ありがとう」
「本当に、男の人って……。格好つけて、妊婦を不安がらせて。困ったものですね」
「本当ね。でもそういう一見無意味な格好つけに、男の人って命をかけたりするのよ。大丈夫。女はみんな女優ですもの。全然知らなかったフリして、驚いてあげるわ」
「先生、ダメですよ。男の人を甘やかすばっかりじゃ。つけあがっちゃいますよ?」
「ふふふ。結婚するまでは調子にのせてあげなくちゃ」
「そっかー。捕まえてから調教するんですね?」
 エクルーとクロイツはさぞ、くしゃみをしたことだろう。やがて2人の話題は、共通のライバルに移っていった。

「サクヤさんって、どんな女性なんでしょうね? 私、ずっと知ってるはずなのによくわからないんですよ」
「そうねえ……私もよくわからない。子供の頃から育ててもらって、メドゥーラはお婆さん、サクヤはお母さん、という感じなのに」
「時々、ちょっとズルい、とか思いませんでした?」
「うふふ。いっつも思ってた。ズルいわよね、いつもきれいでやさしくて、みんなに愛されて」
「どうせ適わないから、嫉妬するのはやめようと思うんですけど……やっぱり悔しいんですよねえ」
「そう思ってたんだけど……私、やっと気持ちが落ち着いたの」
「クロイツさんと会って?」
「そうじゃなくて……サクヤがね、私に謝ってくれたの。私にキジローを返そうと思っていたのに、どうしても手放せなかったって。キジロー父さんのことを本当に好きで……あの人なりに悩んだんだってわかったら……何だかもう、気が済んじゃったの」
「ふうん……エクルーのお父さんのことはどうだったんでしょうね? エクルーは何だか、自分の片思いのようなことを言うんですよ? だから余計に悔しくって……」
「ああ、それは……あくまで私の目から見てってことだけど……愛してたのだと思うわ。銀髪のエクルーが死んでから、あの温室に7年も帰れなかったのは、身体のせいばかりじゃないと思う。実際に、彼が死んでから泣いて苦しんでいるところも、私、見ているし……」
「その銀髪のエクルーの記憶を、今のエクルーも継いでいるんでしょう?」
「ええ。だからこそ、サクヤは今のエクルーを恋人として受け入れるわけにいかなかったんだと思うわ。身代わりにしたくなかったんじゃないかしら」
「……身代わり……」
「よく、”あの子には自由になって、自分の人生を生きて欲しい”って言っていたわ。”もうない星”の運命にも、銀髪のエクルーの記憶にも縛られないで生きて欲しいって。だから、突き放したのよ。そういう意味で、あの子は片思いだったのかもしれないわ」
「……それって……ズルいわ。やっぱりスオミさんも、エクルーの味方なのね?」
「そうよ。あの子の姉ですもの」
「もう。そんな話聞いたら……」
「うふふ。放っとけなくなったでしょう?」
「もうー、ズルいーっ」
「さ、この演習だけ終わらせて、寝ましょう?」
「はーい、先生」
 お菓子とお茶と教科書を囲んで、恋の話。16で医学院に進学したスオミには、同年代の学友がいなかったので、こんな経験は無かった。サクヤの生前、もっと話をしておけばよかった。これから取り戻そう。アルとエクルーが結婚すれば、義姉と義妹ができる。やがて甥や姪もできる。私にも子供が生まれる。5歳でイドラに逃げて来たときは、天涯孤独だったのに、いつの間にか大家族ができてしまった。不安になっている暇なんかないわ。スオミは、未来の義妹の横顔を見ながら微笑んだ。






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*COMMENT-コメント-
▽いちゃらぶ…
イズミちゃんいい刺激だわ。山椒の実。
イズミちゃんとルナちんを会話させてみたいと思いつつ、いまだにストーリー的な機会に恵まれていないのでした。でも今度やってみよう。

クロイツがんばれー。
スオミさんを幸せにするんだよ。
▽ルナとイズミ
会話させてみたいですねえー
狼編で何かやってみようかな。わくわく
▽だいごご?
崩れ敬語じゃない、クロイツの口調が書けないんスよ。どんな感じっすかね? タメ語のクロイツ。
香月母さん、書いてみてくださいー。
▽そうですねえ…
たぶん、例えるならドクターをもっと青二才にしたような口調かと。子供相手ならよくいる世話好きの兄ちゃんです。
今度、やってみましょう。
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