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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『リィンのエイロネイア探検記 2』   (ヴァル)

考えてみると、こいつら全員兄弟(予定)ですね。そして、リィンの一人称もほとんど初めてです。

れーくんは、るーちゃ限定で敬語を使うのだが、このメンツの中だとちゃんぽんになっているようだ。

しかし……リィン、本当に幸せなのか?


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 夕方までの時間、レアシスが大学を案内してくれた。俺が進学を希望する王立研究院と、アヤメの行きたいシュワルツブルド音楽院。

研究院は建物こそ歴史ある重厚な造りだが、最新の設備が整えられていた。カリキュラムもかなり革新されたらしい。レアシスが皇帝になってから努めた変化らしく、熱心に説明してくれた。お陰で、かなりの難関だとわかったが、ここで学びたいという意欲がむらむらと湧いてきた。
「すごい。素晴らしい学舎だよ。俺、本当にここに来たい。レアシス、ありがとう。正直言うと、今まで皇帝の仕事ってよくわかってなかった。でも君の功績って、この研究院だけ見ても素晴らしいと思う」
「ありがとう。未来の義兄にそう言ってもらえるとうれしいよ」
「そんなこと言っても、レアシスの方が年上だろ? とにかく、君が兄弟になるなんて、誇らしいよ」
 レアシスは一瞬、呆けたような途方に暮れたような顔をした。
「レアシス?」
 エクルーが顔をのぞき込む。
「すみません。ちょっと感動しちゃいました。隙あらば僕を引き摺り下ろそうとする政敵が、国の内外にひしめいているので……こんなにまっすぐで裏のない賛辞は初めて聞いた気がする」
「ご、ごめん。俺、バカだからよくわかってないんだよ。単純なこと言っちゃって」
「いいえ。ありがとうございます、リィン。あなたと兄弟になれること、イドラの水神に感謝いたします」
 何だかよくわからないけど、レアシスがちょっとうるんだ瞳で、珍しく照れ臭そうに微笑んだので、良かったんだと思うことにする。俺も照れてしまって付け加えた。
「今日、レアシスの説明を聞いてさ、どうして生態学に代数幾何とか統計学が必要なのか、やっと納得できた。数学にも興味が持てそうな気がするよ。物理や化学にも」
「ええー、俺が今までいくら数学も物理も面白いって言っても、聞き流してたくせに」
 エクルーが文句を言った。
「だって、お前の教え方ってひどいよ。答えだけ、ぽん、と言って”どうして解けないの?”って。解けたら、聞くもんか!」
「答えだけ、浮かぶんだもん。途中なんか、俺の方がわからない」
 レアシスはくすくす笑った。
「エクルーもアルも天才だからね。脳の構造が我々と違うんですよ。リィン、僕は凡人だから、僕の説明ならわかるんですよ」
「そんな! レアシスが凡人なら、俺はどうすればいいんだ?」
「あなたも才人ですよ。僕やエクルーと違う分野でね」
 俺はきょとんとした。
「自分では自分の才能ってわからないものなのよ」
 アカネが付け加えた。
「そうかなあ」
 自信なげにつぶやいた俺の耳元に、アヤメが口を寄せた。
「才能のないつまらない人を私が選ぶと思う? あなたは、私の天才よ」
 それだけで、もうどうでもいい気持ちになってしまった。アヤメは俺を操る天才だ。


 音楽院は森と湖に囲まれた静かな敷地で、アヤメはそれだけでもう気に入ってしまったようだ。まだ年明けの授業は始まっていなかったが、学生たちが校内のあちこちでオーケストラやアンサンブルの練習をしている。イドラの伝統楽器や、エクルーのコントラバス、レアシスのヴァイオリンと自分のうちのピアノくらいしか見たことがなかったアヤメは夢中になってしまった。
「音楽院の学生オケは、なかなかレベルが高いんですよ? 2月に定期公演があるから、チケットをお送りしましょう。それと、僕が理事をやってるいくつかの王立オーケストラの演奏会もね」
「本当に? レアシス、ありがとう!」
 音楽に関わることだと、アヤメって本当に子供みたいに素直なんだよな。俺はつい、ため息をもらしてしまった。
「作曲家の入学試験科目は、自作品の演奏とピアノか声楽の課題、それと楽典。後は簡単な小論文くらいのはずです。あ、語学もあった。オペラなどに必要だから。提出する作品はもう作曲したの、アヤメ?」
「ええ、もう作ってしまったんだけど……この森で音楽を聴いていたら、また作りたくなっちゃった」
「アヤメ、もう20曲くらい作ったんじゃなかった?」
「だって音楽が湧いてきて、止まらないんだもの。楽譜に書きとめないと、眠れなくなっちゃう」
 ぽうっとした表情で、つぶやくようにアヤメが言う。
「やれやれ。未来の義姉も、天才みたいだな」
 レアシスが微笑む。

 研究院にも音楽院にも寮があった。研究院の方には家族寮もあったが、音楽院とちょっと離れているので考えてしまった。それに、研究院は街中の立て込んだところにあるので、赤ん坊の泣き声などに気を使ってしまいそうだ。数は限られているが、音楽院の社宅に申請してみることにした。理由を説明して、酌量してもらおう。
「ちなみにクロムハーツ邸はこの森の中にあります。ついでに付け加えると、シモンはこの音楽院の理事のひとりのはずです」
 俺はアヤメと目を見合わせた。
「クロムハーツ家にはいくつか城があるんだけど、街中の邸宅より、主にこの静かな城にいるらしい。別名”白鳥城”」
「うげっ」
 エクルーが声を上げた。
「どうせ、ロココ様式のごてごてした城だろう?」
「もちろん。見学に行きますか?」
 レアシスが実にうれしそうな顔で提案したが、もちろん全員、ノー・サンキューだった。
「では、そろそろ、夜会の準備をしますか?」
 レアシスはさらにうれしそうな顔で提案した。エクルーもにやにやしている。こいつらの共通点がわかった気がした。”イジワル”なんだな。あっ、アヤメもか。気がつくと、俺に同情的な顔をしているのはアカネだけだった。
「きっと大丈夫よ、リィン」
 俺はため息をついた。
「ありがと、アカネ。味方がいてうれしいよ」
 さあ、礼装に着替えて夜会に潜入だ。












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*COMMENT-コメント-
▽アヤメちゃんつえええ(笑)
ありがとう、りーちゃん。みんな「陛下は頑張ってますよ」とは言ってくれるんだけど、彼らは部下だから、「僕が守らなきゃ」という意識が先行して余計なこと考えるんですよね。
れーくんには上下関係の混じらない友達が必要なんです。

ちなみにカシスは天才だけど、一つの問題があると、何通りかある解き方のうち全部の解き方を考えないと満足しないタイプらしい。凡人の頭の中身も立派な研究対象なのか?(笑)

『白鳥城』…風雲とかつきそう、とか思った馬鹿を許してください。
▽リィン、本当に幸せか?
音楽院の名前、シュヴァルツバルトにしちゃってもいいですか? 憧れの黒い森♪
リィンとれーくんって、あんまり今まで会話例がなかった。兄弟、仲良くしよう。これからもよろしく。
▽し、幸せなんじゃないかな…主観では
良いですよー♪ もともとWaldは『ブルド』とも発音するそうなので、まさしく黒い森のイメージなのです。うちのドイツ語のネイティブ教師には、ちょこっと訛があったみたい。
『Ein schwarzer Wald』で行きましょう(一応、第二語学はドイツ語)。
ドイツといえばドイツワインの『Eine schwarze Katze』を飲んでみたいが美味しいんだろうか…直訳で黒猫。

りーちゃんとれーくんてほのぼのしそう。もしくはこの分でいくとまた教師と生徒?(笑)
▽黒猫ワイン、おいしいよう♪
ありがとう。黒い森、あこがれなんです。
ドイツ語選択のみんなで、国鉄乗り放題パスでフライブルグに行ったことがあります。ところが傘ごと吹っ飛ばされるような大嵐で、森を歩くのは断念……。ちなみに、TDLのシンデレラ城のモデルになった”白鳥城”にも行ってはみたんだけど、その前日に見た、同じくルードヴィヒ2世に作られたキムゼー城の印象が胃もたれしていたので、中は見ずに森にシカを探しに行ってしまったのであった……そして樵のお爺さんにさらわれそうになった……リアルグリム童話?
ちなみに、黒猫ワインは甘くてジュースみたいに飲みやすくて、とても危険な飲み物です。
▽飲みたいような危険なような…
キムゼーというとヘレンキームゼーですか? とするとノイシュヴァンシュタインとリンダーホーフも胃もたれするのか…orz
『白鳥城』ってノイシュヴァンシュタイン城のことなんですね(初めて知った)。どうも上杉謙信の越中攻めと前田利家が先に出てきてしまう(爆)。
何もないんだろうな、とは思いつつ、フランケンシュタイン城に行ってみたい(悪趣味)。
ガイドブックを読んでばかりで、行ったことがないので行きたいんですけどね…。
きこりのお爺さん(笑)。
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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