忍者ブログ

《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

2017.04│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

『リィンのエイロネイア探検記 3』    (ヴァル)

すみません。リィンの一人称にするの忘れてました。
エリシアさん、楽しそう。それに粋なはからいだわ。

仮面の名前は実在しますが、衣装デザインなんかは間違ってるかも。まあ、そのへんはフリーダム設定でよろしく。この世界にはベネツィアなんかないしね。

 ♪♪♪♪♪ ○ ♪♪♪♪♪ ○ ♪♪♪♪♪ ○ ♪♪♪♪♪





「エリシア、ほどほどにね。目立ったら元も子もないんだから」
「わかってるわよう。ふふっ、飾り甲斐のある子達でうれしいわ。今夜のテーマは”謝肉祭の仮面楽師”ね」
「僕はどうしても目立ってしまうので同行できないけど、夜会会場のルツェルン男爵邸の場所はアカネもよく知ってるから」
 それから、エクルーの襟元をぐい、と引いた。
「今夜だけ、僕の婚約者をお貸ししますけど、くれぐれも、ね」
「はいはい。俺もグンクニルはゴメンだから」
「わかっていればよろしい。アカネ、夜会が終わる頃迎えに行くから」
 婚約者の頬にキスを落として、レアシスは執務室に戻っていった。後に残されたのは、やたらにうれしそうな顔のエリシアと3人の助手の少女。そして不安そうな顔の餌食が4人。
「さあー、着付けるわようー。うっふっふ」
「すみません。どうしてそんなにうれしそうなんですか?」
 さあ、運命の夜がやってくる。


「で、どうして俺がカサノヴァ(色事師)なの?」
 エクルーがアルレッキーノ(策士)の扮装をしたエリシアに抗議する。カサノヴァは金の仮面に豪奢な深紅の衣装。アルレッキーノは道化師のような角のついた冠を頂いた白と金の衣装だった。
「あら、これまで聞いたあなたの習性にぴったりだと思うけど?」
「それで、どうしてあんたは男装してるのさ、エリシアさん」
 エクルーが憎まれ口を叩いた。
「私の艶姿は有名すぎて、すぐ正体がばれてしまうんですもの。それに私がアカネちゃんの相手をしないと、みすみす狼にチャンスを与えることになっちゃうでしょ?」
「お……! 人をケダモノみたいに! 俺だって友情を大事にするぞ?」
「わかんないわようー。近頃のアカネちゃん、輝いているものねー?」
 可憐なインナモラータ(恋する乙女)の扮装をしたアカネがくすくす笑った。優雅な花と蝶をあしらった仮面と大きな帽子。深紅を基調に幅広いワイン・レッドのタフタ・リボンとトパーズをふんだんにあしらった衣装がよく似合っている。
「ぼやくなよ、似合ってるじゃないか」
 鳥のくちばしのような長い鼻が特徴の仮面をつけたメディコ(医師)の扮装のリィンが、肩をぽんと叩く。白い仮面に全身黒い衣装で、一番理知的に見える。黒い帽子の上にはロイヤルブルーの羽がふんわり揺れている。
「そうよ。似合ってるわよ、伊達男さん」
 コロンビーノ(舞姫)の扮装のアヤメも同意する。ロイヤルブルーと金を基調にした高貴な衣装。仮面や帽子のポイントは、シルクで作った青いアイリスの花だった。
「それにしても、こんな派手な扮装。目立っちゃうだろう?」
 エクルーはまだ腹が治まらないらしい。
「だーいじょうぶ。人の目は派手な衣装と仮面に止まるだけ。中身はばれないわ。さ、行きましょう」

 華麗にエナメル塗装した馬車で、ルツェルン男爵邸に乗り付けた。
「私達は、楽団”ラ・マスケーラ”の団員ということで呼ばれているからね。上手に演奏してねん」
 エクルーはリュート、アヤメがクラヴィーア、アカネが鈴琴、リィンはファゴットに似たリード楽器。
「あんたは何するの?」
「私は団長だもの。司会と指揮♪」
「この編成で指揮なんか要らないよ。チャイムでも叩いてくれ」
 エクルーは、まだエリシアにつっかかっている。
「なあにー、何を怒ってるのよ。本当はアカネちゃんを口説きたかったわけ?」
「何でそうなるんだっ!」
 珍しくエクルーが手玉に取られている。
「出番は夜会の後半だから、それまで大人しくしててね」
「どうしよう。私、初見は苦手なのに」
 アカネが楽譜を覗き込んでいる。
「大丈夫。私に気持ちを合わせればいいの。そして音楽に心を乗せればいいだけ」
 アヤメが微笑んだ。
「昔、やったように?」
「そう、昔、まだ私達がひとつだった頃やっていたように。あなたの心は、また自由になったんでしょう? あの頃のように」
「ええ」
「レアシスのお陰ね」
 双子の姉妹は微笑み合った。その姿を見ていると、エクルーは今更ながら胸が痛んだ。
「ね、胸に覚えがあるでしょう? 色事師さん?」
 それでもエリシアに突っ込まれると悔しい。
「ほら、来たわよ?」

 シモンは、薬狩りでイドラに現れた時のように髪を巻いて綺羅綺羅しい姿に戻っていた。指にぴったりと合ったシルクの手袋をはめた手に導かれて入ってきたのは……
「ジーラッハ!」
「しっ。リィン、影から見守るんだろう?」
「だって、あれじゃ……あれじゃ……」
「すっかり”姫君”ね」
 豊かな灰色の髪を背中に垂らし、白い額に華奢なサークレットをつけて微笑んでいる。上品な色の絹で織られたイドラの礼装に身を包み、手にはリュートを持っている。

 ジーラッハはあっという間に、着飾った紳士淑女たちに囲まれてしまった。リィンにはわからないが、流暢に会話をしているようだ。数人の客に請われて、リュートを弾きながら歌い出した。細くやさしい歌声が、人々を魅了する。
「相聞歌だ……」
「春祭りの歌ね?」
 祭りに備えて特訓中なので、アカネにもわかる。歌が終わって拍手に包まれたジーラッハは立ち上がると、すっと右手を伸ばした。
「みなさんに、私の甥と友人たちをご紹介します」
 そう言うと、まっすぐに別室から覗いていたリィンたちの方に歩いてきた。
「リィン、エクルー、こんばんは。僕を心配して見に来てくれたの?」
 口をぱくぱくしながら、リィンはなかなか言葉が出てこなかった。忘れてた。身体が弱くて泉守りにならなかったものの、ジーラッハは兄弟の中で一番感応力が強かったのだ。

 ジーラッハを交えた、”ラ・マスケーラ”の演奏は拍手喝采を受けた。
「イドラの人ってみんな、こんなに美しくて才能豊かなの?」
 おっとりした侯爵夫人の言葉に、内心(そんなわけないだろう)と突っ込みを入れつつ、一同にっこりと微笑んで返す。
「そうか。急に彼を連れてきてしまったから、心配させてしまったね」
 シモンは、人差し指を片方の頬に当てて、セリフと全く合っていない優雅なポーズを決めた。
「まあ、大学の下見も兼ねて、なんですけどね」
 リィンが付け加えた。
「ああ、そうか。春に受験と言っていたね。住むところは決まったのかい?」
 何だか変な方に話が進んでいるぞ、と警戒しながら、昼間下見にいった経緯を話した。
「何だ。じゃあ、うちに住めばいいじゃないか。音楽院にも近いし。今、別館はジーラッハが一人で住んでいてガランとしているから」
「そうしたら? 講師用住宅を4年借りるお金もバカにならないだろう? イズミも進学するのだし。君たちが着てくれると、僕も心強いよ」
 ジーラッハも言い出した。リィンは当惑して、アヤメと顔を見合わせた。
 住む? ロココ様式の装飾過多の”白鳥城”に? 確かに音楽院に近いが……。
「まあ、うちを見てから決めればいいよ。今夜はどうするんだね?」
「あ、今夜はねー、私がみんなを連れて帰るの。心配ご無用」
 エリシアが、リィンとアヤメの肩に手をかけた。
「そうか。じゃあ、明日訪ねてくれたまえ。いつでもかまわないから」
 シモンはまた華麗なポーズを決めると、ジーラッハの手を取って舞踏室の方に歩み去っていった。

「踊るのか? あの2人……」
「ジーラッハ、女役……?」
「そんなに心配なら見に行けばいいでしょう?」
 エリシアがリィンを焚きつけた。
「ワルツならカルミノで特訓したろう?」
「大丈夫。私がリードしてあげる。リィン、行きましょう」
 アヤメが手を引いて、リィンと踊りの輪の中に入っていった。
「ここからじゃ、見えないわねえ」
 エリシアがぴょんぴょん跳ねている。
「私達も見に行きましょうか?」
「付き合ってくれる? アカネちゃん」
「ええ。行ってみましょう」
 赤と白と金。真におめでたい色調の2人が踊りながら、輪に入っていった。カサノヴァは壁の花である。

 エリシアのリードは一流だった。アカネは慣れないワルツでも難なく踊りながら、周りを観察する余裕があった。
「わあ、リィンとアヤメ。お似合いだわ。衣装の青も合っているし。エリシアさん、計算してたの?」
「そうよー。本当はメディコは全身黒が基本なんだけどね。結婚前の一番楽しいときでしょ? たまにはこういう余禄もないとねえ」
「そうね、素敵。あの2人、本当にぴったりだわ」
 シモンはちゃんと女性と踊っていた。ジーラッハも楽師仲間らしい女性と楽しそうにおしゃべりしながら、くるくる踊っている。
「ねえ、あの坊やと踊ってあげる気はある?」
「坊やってエクルーのことですか?」
「そ。もうあなたの胸が痛まないなら……独身最後の季節だし、青春の思い出に2人で踊ってきたら?」
「……」
「陛下の余裕をゆすぶっても罰は当たらないわよ? 女の余裕を見せてやったら?」
 そう話しながら、エリシアはアカネを踊りの輪から連れ出して、エクルーのところに戻ってきた。
「あ、アカネ。ジーラッハはどうだった?」
「自分で見て来なさいよ。ほらっ」
 エリシアがホールドしたアカネの手を、エクルーの方に差し出した。
「え……?」
「踊ってらっしゃい。陛下には内緒にしてあげる」

 その曲の間、アカネはエクルーしか見ていなかった。エクルーも何も話さなかった。大事な幼馴染。もうすぐ親友の妻になる女の子。深紅の衣装が誂えたようにお似合いのペアに、他の人々は自然に場所を譲って観客になった。踊り終えた時、周囲から拍手がこぼれたほどだった。
「次の曲はパートナー・チェンジ」
 リィンがアカネに手を差し出した。エクルーはアヤメに。
「アカネ、よかったね」
 リィンが温かい声で囁いた。
「うん、ありがとう」
 子供のような口調でアカネが答えた。まだちょっと胸が詰まっているようだ。

 一方、アヤメの攻撃は鋭かった。
「惜しい、なんて思っているんじゃないでしょうね?」
「まさか。アカネがきれいになったのはレアシスのためだよ。俺のせいじゃない」
「そうね。あなたのためには、アカネは身をやつしていたんですものね」
「お陰で今まで虫がつかなかったんだろ? 俺はレアシスに感謝されてもいいと思うな」
「エクルー、それ、レアシスに言える?」
「やめてくれ。グングニルで焼かれたくない」
「そうね。あなたはもう少し反省すべきね」
 そう言って、次の曲では再びエクルーをアカネに返した。

 今度はアカネも踊りながらおしゃべりすることができた。
「夜会って思ったより楽しいものなのね」
「出たことないの?」
「真面目な学生ですもの。どうせ結婚したら断れないでしょうし」
「そうだよなー。皇妃さまだもんな」
「今度はイズミちゃんも連れていらっしゃいよ」
「うん。まあ、受験が片付いて、少しここが落ち着いたらの話だけど」
 不穏な国際情勢を思い出して、2人はまた黙り込んでしまった。
「……大丈夫よね?」
「大丈夫さ。あのレアシスだし。俺とアルとクロイツも付いてるし。アカネも助けてやるんだろ?」
「私にできるのは……見守ることだけだもの」
「いいんだよ。男なんて単純なんだから、女の子に見守ってもらえば世界の果てまで走っていくさ」
「ふふっ、それってエクルーのことでしょう?」
「すましてたって、あいつも男だろ? 似たようなもんさ」
 2人が顔を見合わせて笑っていると、長い鼻の仮面をつけたメディコが割って入ってきた。リィンかと思ったが、違う。少し小柄だし、帽子の羽が漆黒なのだ。
「お嬢さん、1曲お相手いただけませんか」
 優雅なアルトの声を聞いて、2人とも仰天した。
「レアシス!」
「しっ。さあ、曲が始まるよ」

 エクルーは再び壁の花になった。エリシアが傍らでくつくつ笑っている。
「陛下ったら、かーなり本気よねえー」
「あいつ、ああ見えて焼き餅焼きだもんな」
「あら、坊やが信用ないんでしょ」
「くそ、次は絶対イズミと来る」
「がーんばってねえ。今夜であなたたち、クロムハーツ伯爵の取り巻き決定だから」
「取り巻き? シモンの? どうしてそうなるんだ!」
「だってクロムハーツ卿は、イドリアン・ブームの立役者ですもの。あんた達が目立てばそれは全部、彼のお手柄」
「どうしてそうなっちゃうんだー!」
 仮面舞踏会の夜は、こうして幻惑と狂乱のうちに幕を閉じたのであった。








PR
*COMMENT-コメント-
▽陛下が可愛い(笑)
陛下の行動が可愛すぎて笑いました(爆笑)。
私の手を離れると、こんな可愛いヤツになるのね。
よかったねえ、アカネちゃん。っていうかアヤメお姉さまつえええ;;

ところで本題だけど、ジーラッハ、本当に大丈夫?(笑)
▽多分、大丈夫でしょう
ジーラッハ、楽しそうだし。都の風が性に合っていたんじゃないかな? 決して妾扱いではないらしいし(多分)。
*COMMENT FORM-コメント投稿-
  • この記事へのコメント投稿フォームです。
Name:
Title:
Mail:
Url:
Color:
Decoration: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Message:
Pass: ※編集時に必要です。
Secret:  ※チェックすると管理者へのみの表示となります。 
*TRACKBACK-トラックバック-
  • この記事のURLとトラックバックURLです。
  • 必要に応じてご使用くださいませ。
この記事のURL▼
この記事のトラックバックURL▼
目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
最新コメント
[09/12 梧香月]
[05/16 Backlinks]
[12/16 ヴァル]
[12/15 梧香月]
[11/25 ヴァル]
[11/21 小春]
[09/28 ヴァル]
カレンダー
03 2017/04 05
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
ギャラリー



漫画



季節のアルバム




漫画
カウンター