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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『リィンのエイロネイア探検記 4』   (ヴァル)

幸せの4? 死神の4? これってハッピーエンドなの?
そこそこ、風雲に仕上がったのでは。

とりあえず、リィンの役どころとアヤメのキャラクターが確定したような気がします。リィン……わかってたけど、やっぱりマゾだね?
くすっ。


 ♪ ♪ ♪ === ♪ ♪ ♪ === ♪ ♪ ♪ === ♪ ♪ ♪



 1月4日(曇り)



 ”白鳥城”の内装は、聞きしに勝るきらびやかさだった。金色と鏡とシャンデリア。どちらを見ても光が乱舞していた。まあ、明るいのはいい。天井が高いもいい。でも至るところに等身大の彫像が飾られ、部屋の4隅の柱や天井からも壁から這い出してきたようなニンフや騎士がぶら下がっているのは閉口した。彫像のない部屋には、代わりに壁画の女神や天使が人間を見下ろしている。

「俺、この部屋で夜ひとりになるのやだな」
 アヤメにこっそり耳打ちした。
「リィン、しっぽが逆立っているわよ?」
「俺、この館のうわさ、聞いたことある」
 エクルーもこそっと言う。
「……う、うわさ?」
「月が2つとも上らない晩、午前2時に誰もいないはずの舞踏室から笑いさざめく声が聴こえて……不審に思ったメイドが見回すと、壁も柱も空っぽ。彫像も壁画も無くなっている。そこで舞踏室をのぞくと……」
「うひゃああああおおうっ」
 そのとき、肩をぽんと叩いたものがいて、俺は情けない声を出してしまった。
「レアシス! 脅かさないでくれよ!」
「君たちこそ、何をひそひそ話してるの? もう、シモンは次の部屋に行ったよ?」
「ああ……ふう。レアシスの公邸の方がよっぽどさっぱりしてるよねえ。ここは落ち着かないや。目がたくさんあって」
 年若い皇帝はくすり、と笑った。
「まあ、僕もこの屋敷が趣味がいいとは言わないけど……ジーラッハさんも同じような感想をもらしたらしいよ? ”目がいっぱいいる”って。それで別館の彫像や壁画を全部撤去したそうなんですけど……それがまた、うわさを呼んで」
「こ……今度は何?」
「嵐の晩に、その窓から見える湖、ヴァイシュゼーの中洲の島があるだろう? 雷光に照らされたあの島で、屋敷から自由になってニンフや女神が踊ってたって」
「……」
「おもしろそう。嵐の時、また来ましょうよ」
 アヤメが言い出す。
「ここに住むなら、確実に見られるんじゃない?」
 エクルーも調子を合わせる。
「……リィン、しっぽが倍にふくらんでるよ?」
 レアシスまでにこやかに指摘する。……どうやら俺の役回りが確定してしまったらしい。

 俺達が別館に続く回廊に出ると、アカネが小走りにやってきた。
「どうしたの? 遅いから探しちゃった。来て。この部屋、すごいのよ? あら? リィン、しっぽどうしたの? 耳もしょんぼり垂れて」
「……何でもない」
 アカネが導いた部屋は、天井が高い、ちょっとしたホールになっていた。ここには彫像も壁画もない。代わりに曲線と直線に囲まれたモダンな装飾に彩られている。
「ああ。みんな来たね。どう? これならちょっとした室内楽のコンサートもできるだろう?」
 シモンが自慢気に言った。
「しばらく使っていなくて古びていたので、最初にここから改装したんだ。あの装飾のデザインはジーラッハが描いたんだよ?」
 まるで自分のもののようにジーラッハの才能を自慢する。喜んでいいのやら、不安に思うべきなのやら判断がつかない。伯爵はどんなつもりでジーラッハを連れてきたのだろう。
「今、客室の方も改装している。この音楽室と馴染む内装にするつもりだ」
「遅れて来た文明開化って感じね」
 アヤメが耳打ちする。レアシスがくすり、と笑う。
「なるほど。ジーラッハさんは昨夜の演奏といい、才能に恵まれていらっしゃるんですね。エイロネイアにいる間に、そのような芸術活動を展開するご予定は?」
 レアシスの言葉に、ジーラッハが少し首を傾けて、それからふわりと笑った。
「芸術活動というほどのことはできませんが……ここに来て、シモンのおかげでたくさんの楽師や建築家に知り合う機会がありました。とても刺激を受けています」
「それはよかった。そういうことでしたら、この国には音楽や美術を学ぶ機関もいろいろあります。社会人枠や奨学金制度もありますし」
「陛下! 陛下もそう思われるでしょう!」
 勢いづいたシモンに抱きつかんばかりに肩を掴まれて、レアシスは閉口している。
「私も奨めたんですよ。実は年末の夜会に、音楽院の理事を何人か呼んで、彼の演奏を聴いてもらったんです。一同、感銘を受けましてねぇ。”教授法さえ学んでいただければ、講師としてお招きしたいほどだ”と申し出があったほどなんですよ?」
 俺のシッポが思わずぴん、と立った。
「音楽院の講師? シュヴァルツヴァルトの? すごいじゃん、ジーラッハ!」
「でも……私は……」
 ジーラッハは眉根を寄せて、白い顔を曇らせる。
「もちろん、ムリをさせないように十分配慮する。君の才能を埋もらせるのは、世界にとって損失だよ!」
 今度はジーラッハの両肩を掴んで、シモンが熱心に口説く。
「しかし……」

「私もそう思う。もったいないわ」
 アヤメが言い出した。
「昨夜、ジーラッハは飛び入りで演奏に参加したでしょう? すべて即興だったのよね? なのに、ユニゾンは冒頭と結びの4小節だけ。もちろん、不協和音は一度もなし。どんどん主旋律を展開して、でもあの曲の様式を守って……私、鳥肌が立っちゃったわ。あの後、あなたの弾いたパートを徹夜で楽譜に起こしたのよ? 素晴らしいアレンジだと思う」
「一度聴いただけで、楽譜に起こせる君も素晴らしいよ」
 ジーラッハが微笑んだ。
「ためらう理由は何ですか?」
 レアシスが静かに迫る。
「そうだよ。ミイケはジーラッハがシモンの新しいお妾になっちゃったって心配してるんだぞ? 音楽の勉強のために来たっていうなら安心する」
 あっさり口をすべらてしまった。でも、ジーラッハは別に”妾”という言葉には反応しなかった。
「僕は……」

「メドゥーラの父親のジーラッハは、イドラに来たときにはすでに身体を壊していたんだ。同じ月の形のあざがあって、同じ名前を継いでいるからって、君が25で死ぬとは限らないだろ?」
 エクルーの言葉に、ジーラッハは肩をびく、と震わせた。次の3月で25になる。
「メドゥーラは君に父親の名前をつけたことを、ずっと後悔してた。名前を変えようか、変えたら健康になるんじゃないか、とミヅチにも相談してた。でも、ミヅチもみんな、君の曾お爺さんが好きだったんだよ。今度こそ、幸せに長生きして欲しい、そう思って、君にその名前を背負わせたんだ」
「曾祖父は子供を残せた。でも僕は……」
「代わりに音楽を残せばいいじゃない」
 アヤメが言い添えた。女神のようなまばゆい笑顔で檄を飛ばす。
「どうせ、ヤケでここまで来たんでしょう? だったら、ヤケクソで行けるところまで行っちゃえばいいじゃない。もし、途中で倒れることがあっても、すでにこれだけ親衛隊がいるのよ? フォローしてくれる人材に事欠かないと思うわ」
 ”ヤケ”という言葉にショックを受けたようだが、シモンは気を取り直して一気に押した。
「そうだよ、ジーラッハ。みんなで支えるから。賭けてみようじゃないか」
「僕は……」
 言葉に詰まったジーラッハの身体がぐらり、とゆらいだ。それをシモンが抱きとめる。
「僕はずっとやっかい者で……イドラには要らない人間だと思っていたんだ。でも……」
「ジーラッハ! 何てこと言うんだよ!」
 俺はショックを受けた。そんなことを考えていたなんて……いつも穏やかに微笑んで、みんなの愚痴も八つ当たりもふんわり受け止めて、天使のように少し空に近いところの住人だと思っていたのに。
「居場所を探して、ここまで来た……。シモンの好意を利用して……妾でもいいと思ってた。これ以上……」
「私がそうして欲しいんだ。ジーラッハ。君の音楽を聴きたい。君がどこまで行けるか、見届けたい。私は音楽を愛しているが、何の才能もないんだ。私の代わりに夢をかなえて欲しい。私に助けさせて欲しい」
「シモン……」


「まあ、彼にしては上出来ですね」
 レアシスが小声でコメントした。
「ほとんどプロポーズだわね」
 アヤメは次の曲のモチーフにしようと、感動し合っている2人を観察している。
「これは……安心していいのかなあ? よりやばくなったのかなあ?」
 俺のしっぽは困惑でねじくれてしまった。
「よかったわねえ、ジーラッハ」
 アカネは素直に感動して涙ぐんでいた。
「ま、結局、メドゥーラの思惑通りに落ち着いたってことで」
 エクルーが締めくくった。

 というわけで、いつの間にか俺とアヤメもこの別館に住むことが確定になったようだ。まあ、2人のお目付け役ということで、仕方ない。彫像や壁画がないならいいや。どうせ、アヤメがいろんな怪談を捏造して俺をいじめるんだろうけど。
 こっちでの生活が落ち着いたら、イドラから一式持ち込んで、庭にテントを張ろう。屋敷はともかく森の空気は気に入ったし。黒い森に白い湖、へんな貴族たち。まあ、エイロネイアも面白そうなところでよかった。さ、帰って受験勉強だ。









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*COMMENT-コメント-
▽りーちゃんがんばれ。
超がんばれ。3対1でもがんばれ。(笑)

ジーラッハ、エイロネイアで遺憾なく才能を発揮してね。秋の音楽祭が楽しみです。精一杯、生と音とを楽しもう。シモンもちゃんと更正したみたいだし(笑)。

しかしりーちゃん…『どうせ、アヤメがいろんな怪談を捏造して俺をいじめるんだろうけど』って…達観…愛だなあ、と感動すればいいのか、どうなのか(笑)。
▽ジーラッハもがんばれ
エイロネイアの貴族をどんどこたらし込んで、イドラに立派な病院と図書館と中学校を作ってくれ。
ぐらり、とよろめく辺り、立派な男たらしの資質あり。くすすっ
親衛隊を増やすんだ!
パパ・エクルーは多分、ジジ・ジーラッハと友人だった模様。
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織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

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イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
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あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
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