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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『夜の瞳 5』      (ヴァル)

雪降って地固まる?

昨夜のチャットで、アルの問題がまた浮き彫りになりまして……こんな風にまとめてみました。

ローズマリー・ベビーズを筆頭に、やっぱり女が強い。


 ☆☆☆ * ☆☆☆ * ☆☆☆ * ☆☆☆ * ☆☆☆





 エイロネイアの下見に行って、せっかくモチベーションが上がったというのに、イドラには本格的な雪が降った。受験生2人は集落地の建て直しで、勉強どころではなくなって、ラボでの講習を休んでいた。テントは天幕の柱が倒れたぐらいですぐ復旧したが、むしろ家畜小屋の屋根に被害が出たらしい。
「俺達も手伝いに行こうか?」
 アルとエクルーが申し出たが、リィンは笑って断った。
「平気、平気。ありがとう。人手は余ってるんだ。みんな、冬は遊牧がなくて暇を持て余してるから、張り切っちゃってるんだ」
「寒さで家畜は大丈夫だったのか?」
「うん? さすがに壁とか屋根が壊れてる間は寒かったみたいだけどね。うまいこと、雪の吹き溜まりに穴を作ってみんなで避難してた。雪ってあったかいんだね」
「逆のようだが、気候そのものは温暖になってるな。雪はイドラの水循環がうまく行き出した証拠だよ。ルナとサクヤの研究が実を結び始めたんだな」
 ジンの言葉に、ルナがえへへと照れ隠しに笑う。
「2、3日で片付くだろうから、そしたらまた御世話になります」
 兄弟はぺこんと頭を下げて、集落地に帰って行った。

 昼休み、エクルーとルナがまかないのスープとホット・チキンサンドを配り始めたところに、アルが書類を持って来た。
「ジン、わかりましたよ。ほら、ここのエネルギーの項が抜けてたんです。計算上はこれでうまく行きました」
「お、そうか。近似が甘かったんだな。じゃあ、午後に実験してみよう」
「それまで、サンルームでちょっと寝ててもいいですか?」
「そりゃ、構わないが……昼メシは?」
「ちょっと食欲なくて……エクルー、すまん。俺の分、食っちゃっていいよ」
 アルの後ろ姿を見送って、ラボの一同はいつものおせっかいな考察を始めた。
「昨日の昼も寝てなかった?」
「そのくせ、ヤケクソに研究が進んでるしなあ」
「論文、量産してるもんな。夜、寝てないんじゃないか?」
 白髪の魔道技師が、スープを飲みながら結論を出した。
「ありゃあ、ヤッてないな」


 サンルームのソファで転がっているアルの寝顔を、エクルーが覗き込んでいた。アルの腹にはオパールが乗っている。2人の2歳児は、イリスにチキン入りのポタージュ・スープをもらって食べていた。
 アルが目を覚まして、エクルーを見上げる。
「あれ? もう実験始めるのか?」
「まだだけど……アル、寝不足なのか?」
 アルは目をこすりながら、もぞもぞ身体を起こす。
「モデルの式展開が気になっちゃって、つい遅くまで考えちゃっただけだ」
 エクルーは珍しく、真面目な顔でアルを観察している。
「不毛な添い寝なら、俺の方が先輩なんだぜ? アル」
「……何、言ってんだ」
「でも、パールは巫女じゃない。過去の夢に囚われてるわけでもない。幸せな結婚を望んでる、大人の女性なんだぜ?」
「エクルー、落ち着けよ。おまえの方が寝ぼけてるんじゃないのか?」
「誤魔化すな」
 エクルーは、アルの襟首をつかんで声を荒げた。
「おまえがこの調子なら、パールだって寝てないだろう? ひとつ屋根の下で、同じベッドに寝てて……どうする気だ?」
「それは……」
 アルが目を逸らした。
「催眠波をかけて……疑問に思わないようにテレパシーで……」

 アルの身体がサンルームの端まで吹っ飛ばされた。左頬が赤く腫れている。
「おまえっ……! それは愛情じゃないぞ? 過保護でもない。立派な人権侵害だ!」
 まだこぶしを振り上げているエクルーに、キリカが飛びついた。
「るーちゃ、ぷんぷんだめっ。なかなおいしてっ」
「怖がってるのはパールじゃないっ。お前の方だろう!」
 アルはうなだれて、返事をしない。
「るーちゃ、だめ。だめようっ」
 泣き出したキリカを、イリスがひょいと抱き上げてテーブルの方に連れて行った。
「キリ、これはケンカじゃないぞ? しつけだ。おまえもオパールがソファにおしっこしたら怒るだろう? それと同じだ。エクルーはアルのために怒ってるんだ」
「……そうなの?」
 オパールの方はまだ納得せず、ぐるるるとうなりながら乳歯でエクルーのジーンズのすそに噛み付いていた。
「見ろ、こんな赤ん坊だっておまえを守ろうと戦ってるのに! おまえはびびって、またどこぞの修道院に逃げ込むつもりか?」
 エクルーはアルの傍らにしゃがみ込んだ。
「アル。ここは戦場じゃない。教団の実験室でもない。おまえはもう、誰も傷つけなくていいんだ」
 震えているアルの手を、エクルーが両手で包んだ。
「パールは初めてのことに脅えただけだ。おまえを怖がってるわけじゃない。わかってるだろ?」
 アルは両手で頭を抱えて、床にうずくまってしまった。
「……怖かったんだ。俺の腕の中で、パールが気を失ってしまって……。俺はまた、コントロールを失って、壊してしまう。柔らかいものを引き裂いてしまう。俺の手が血にまみれて……! 俺はやっぱり、人を愛する資格なんかない……!」
「じゃあ、パールをあきらめるのか? オパールを捨てるのか? 俺も? ジンもカシスも見捨てて、どっかの山でひとりで仙人でもやるつもりか?」
 アルは、まだエクルーのすそにぶら下がってうなっている狼の子を見た。
「こんなチビだって、ケガして強くなっていくんだぜ? パールだってそうだ。あの子は、強いよ。傷ついたって、すぐ元気になる。怖がらなくていいんだ」
「そうだろうか……」

「そうだぞ?」
 イリスが部屋の向う端から言葉を挟んだ。
「俺がいい例だ。カシスだって見てみろ? 子供の頃虐待を受けたって、その後十分な愛情に恵まれれば傷は癒える。いつまでもおっかなびっくり、腫れ物みたいに触られる方が迷惑だ。俺はジンに抱かれない方が良かったなんて思った日はないぞ?」
「……」
 アルはまだ、泣き出す寸前のような情けない顔をしていた。
「あー……ええと、イリスありがとう」
 いつの間にかサンルームに入って来ていたジンが、照れた顔で頬をぼりぼり掻いていた。
「話の途中だが、アル、今日はもう帰れ。今週はもう来なくていい」
「そんな! ちゃんと働けますよ。もうしゃんとします」
「この半月で、おまえは3ヶ月分の実績を上げたよ。特別休暇だ。所長命令。家族サービスしてこい」
「ジン……」
「あ、訂正。奥さん孝行だ。オパールはここに置いていけ。小さいアルが泣くからな」
 アルテミスが抗議した。
「泣くもんですか、大きいアルじゃあるまいし。でもオパールは置いてっていいわよ」
 大きいアルは、本当に泣きそうになった。
「ありがとう。俺、帰る」
 アルは上着も着ずにドームを出ると、泉に走っていった。

「まったく。図体ばかりでかいくせに」
 イリスがコメントした。
「ここ、本当に大人の職場? 幼稚園のまちがいじゃないの?」
 小さいアルが、ずずーっとミルクを飲む。
「ほいくえんだよっ。赤ちゃんがくるところだもん」
 キリカが訂正した。
「でかい赤ん坊だぜ。まったく」
 カシスがにやにやする。
「さあ、こっちの赤ん坊も! ちょっとは固形食食べてくれる? 片付かないから!」
 ルナがべしっとカシスを叩く。その腕を捕まえて足を払うと、倒れかけたルナの腰をつかまえた。
「おい、所長さんよ。俺には特別休暇はないのか? どうせ喰うなら、こっちの固形食の方がいいんだが」
「とうしゃ、そーゆーことは日が沈んでからやってちょうだい。キリカの教育に悪いでしょっ!」
 2歳児が、所長よりも威厳のある声で厳命した。

 ホンモノのの所長は気を取り直して、ぱん、と手を叩いた。
「はいはい。昼休みも青少年相談室も終わり。午後の業務を始めますよー」
「へーい」
 男達がだらだらと回廊を渡ってラボに戻った後、2人の2歳児がしめくくった。
「しつけ終了」
「なかなおいしたから、いーのっ。おーちゃもえあいえあい。めでたしめでたし」











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*COMMENT-コメント-
▽本当に男ってだめねえ
…という女性陣の会話が聞こえる(笑)。
このあと、イリスさんとルナちんが会話したらそんな話なんだろうか。

何だかやっと安心しました。何か読むたびにずっとアルが心配だったんですよね。雰囲気に酔いきれなくて。
漠然とした心配だったけど、こういうことだったのか。
がんばれ、アル。

……しかし、相変わらずとんでもないな、ベルサウス一家の方は(笑)。
▽こういうことだったらしいです
余裕じゃなくて、臆病だったんですね。戦争後遺症というかPTSDの一種なのかな、こういうのも。
『夜の瞳』を書き始めたときは、というか昨夜まで自覚してなかったんですけど(ダメ作家)。
まだこれからも時々発作を起こしそうだけど、周りの人間が殴ったり噛み付いたり、なでなでしたりしてフォロー+セラピーをしてやろうと思います。
ご心配おかけしました。
▽アル…
アルの深いところ、気づきませんでした。
完全にパールの心境で、ドキドキわくわくして…。
でも、アルが決意?してくれたようでよかったです。
続きが楽しみです^^v
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