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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『夢一夜 1』                  (ヴァル)

るーちゃ10歳、泉8歳のナレソメ。
まったく初々しくないのは、書いている人間が初々しくないから?

”星の王子さま”が3年ちょっとで、ここまで落ちてしまいました…すいません。

作者的には、ジーラッハがツボ♪
ゲール語で、”月”という意味…だったと思う、たぶん。


 ***** ○ ***** ○ ***** ○ ***** ○ ***** 



 もうすぐ11歳になるという晩秋、エクルーはめずらしくむっつりした顔で、背中を丸めてメドゥーラの幕屋に入ってきた。

 もっともエクルーがメドゥーラの前で不機嫌な顔を見せること自体はめずらしくない。いつも陽気なムードメーカーだが、この何でもお見通しのイドリアンの長老の前では、取り繕うだけムダ、とあきらめているのである。

 ちら、と目を合わせた後、囲炉裏端にどかっと座って一言。
「……2、3日、どっかに置いてくんないかな」
 メドゥーラは、たばこ盆の角にカツッとキセルを打ちつけた。
「どうした。キジローとケンカでもしたか?」
 返事が無い。悠々、キセルに新しい草を詰めながら黙っていると、うなだれたままぽつんと。
「キジローを殴っちゃった」
「ほう」
「あっけなくキジローが吹っ飛んで…」
「ふむ。お前もこの頃、急にでかくなったからな」
 
 そう、いつまでも子供ではない。親に甘えてばかりいられるわけじゃない。いつまでも、平気で八つ当たりできるほど、エクルーは小さくないし、キジローは健康ではない。

「何て言われたんだい?」
「……来年には、お前にサクヤを返せるかもって」
「なるほど。まったく、キジローも困った男だね」
 メドゥーラはようやく火がついたキセルを深く吸い込む。
「で、うちに来るって言ってあるのかい?」
 背ばかりひょろひょろ伸びた10歳児は、背中を丸めて口を利かない。

 メドゥーラがため息をついて、ぴーうーと涼やかな音で口笛を吹いた。
 間髪入れず、入り口の垂れ幕からジーラッハがのぞいた。
「ほい、婆さま」
「お前が壊した”らいぶらり”、この坊主が直してくれるらしいぞ」
「え、ホント? エクルーありがと」
「2、3日こっちに坊主を借りるって、温室に伝えに行ってやってくれ。あっちもそろそろ卵が切れるところだろう」
「あ、じゃあ、今日チグサとチガヤが甘い乳を出してるんだ。ミルク草をたらふく喰って」
 ジーラッハが2匹のルパの名前を挙げた。
「ほう。まだここらにミルク草なんか残っていたかね。とっくに、喰いつくされたと思っていたよ」
「あいつら、食いしん坊ですからね。とんでもない崖によじ登ってくれて、お陰でこっちが肝を冷やしました」
「くっくっく。命がけでおやつを喰いに行ったわけだ」
「甘いうちに、しぼって届けて来ますよ」
「多分、メルが豆とか野菜とか取り除けているはずだから、一緒に届けてやってくれ」
「わかりました」
 ジーラッハが垂れ幕から引っ込むと、エクルーもすぐ立ち上がって追いかけた。
「俺も乳搾りやる」
「うん。手伝って」

 ジーラッハはグレンの末の弟で、リィンの叔父だ。とはいえ、グレンと11違いなので、まだ17歳。リィンの兄という方が通りがいい。
「せっかく来たのに、リィンが留守で残念だったな。今、放牧地からこの近くの越冬地にルパを移動させてるとこだから、男はみんな借り出されているんだ。俺は、今回うちの面倒を見るために留守番。男手足りないから、エクルーがいると助かるな」
 エクルーの家出はしょっちゅうだから、どうせ今回もそんなとこだろうとわかっているのだろう。からかわずにこういうやさしい言葉をかけるのは、ヤチダ家大家族の中でも彼くらいだ。ジーラッハ自身、生まれつき肺が弱くてムリが効かないので、年の割りに気配りがうまいのだ。
 母屋の台所に顔をのぞかせると、メルに声をかけた。
「義姉さん、エクルーが風車を治してくれるんだって。2、3日泊まって修理してくれるらしいよ」
「おや、良かった。あの小屋は温かいから、パン種をふくらませるのにいいんだもの。エクルーがいるなら、今夜はグラッコを1羽、締めようかね」
「やった。ごちそうだ。温室に卵を届けにいくけど、他に何かある?」
「そうだねえ、サバ芋と緑豆とどぶろくと…」
「乳搾ってくるから、そろえといて」
「はいはい」
 育ちが複雑なエクルーに、この家の人間はみんな甘い。

 ヤチダ家の主婦は、月々500ギネスで温室に新鮮な食材を届ける契約をしている。自給自足の生活だから、ほとんど現金は要らない。ほぼ全額、子供がよその大学に行きたいと言い出したときの学費に貯金してあるのだ。多分、長男のリィンが留学に出されるのだろう。泉守り候補だし。アカネと一緒にエイロネイアに行くか、メドゥーラみたいにシュアラに行くか、思案中らしい。
「エクルーも、どこかよその国に勉強に行くの?」
 ルパの乳を並んで搾りながら、ジーラッハが聞く。
「うーん。よくわからない」
 7歳でイドラに来た時には、シュアラで幼年学校の単位を全部取ってしまっていた。それから2年で、もうイドラの中学で習うことがなくなって、今はジンのところで適当に数学、物理、化学の本を拾い読みしている。家を出るのもいいかも…。サクヤと距離をおけば、少しは気持ちが楽になるかも…。でも半病人を2人置いて、家を出るのもなあ。
「まあ、のんびり行けばいいよ。エクルーはちょっと生き急いでいるような気がするもの」
 ジーラッハは、銀髪のエクルーのこともよく知っている。だから、黒髪のエクルーの事情もだいたいわかっているようだ。
「でもよその土地にいけば、いい友達が見つかるかもしれないよ?」
 ……つまり、サクヤ以外の女の子に目を向けろってことだよな。エクルーはため息をついて、話題を変えた。
「”らいぶらり”の風車ってどうして壊れたの?」

 ”らいぶらり”とは、ジンが設置したデータ・バンクの端末のことだ。ジンのドームにあるホスト・コンピューターと無線でつながっている。風力発電で動力をまかなっているのだが、かさばる計算機のおかげで小屋がいつも温かいので、避難小屋としても機能しているらしい。

「砂嵐でも見つけやすいように、小屋の側に旗ざおを立てて、幟をつけたんだ。赤と黄色と青の」
 つまり、暖が取れて、非常食料が置いてあって、近くに集落か水場があるという信号なのだ。
「風で思ったより遠くまではためいたらしくて、風車に巻き込んじゃったんだよね」
「ふうん。じゃあ、ジンとこで部品もらってきたら、すぐ直せるよ。多分」
「そっか。要るものメモしてよ。温室の帰りに、ジンとこにも寄ってくる」
「うん。じゃあ、小屋を見てくる」
 ジーラッハは、ミルクのバケツを下げて母屋に戻った。エクルーはひょいひょい身軽に岩山の斜面を登って、”らいぶらり”を点検した。

「あ、なんだ。まだバッテリーは保ってるじゃん」
 コンピューターを起動させて、エラー部分をプリントアウトさせる。その間に屋根に上って、折れた風車を見てみる。
「ありゃあ、軸がいかれてる。でも羽は全部無事だな。あ、でもねじれたラインがやばい。ケーブルをちょっと交換して…」
 プリントアウトの余白に必要な部品のリストをメモして、ジーラッハに託した。これで、すぐジンがそろえてくれるだろう。

 確かに温かいな。ここに泊めてもらおう。前みたいに泉の祠に泊まると、ミヅチどもが入れ替わり立ち代わり来て、からかったり説教したりするに決まっている。ここで、端末をいじりながら静かにすごそう。今夜くらい……サクヤの夢を見ずに、ぐっすり眠りたい。もうずっと……ちゃんと眠ってない気がする。いつも夢うつつだ。ずっと、醒めない夢を見ているようだ。
 困ったことに、自分が夢から醒めたいのか、ずっと夢を見ていたいのかわからない。いや、本当は……醒めなくては、と思っているだけだ。

 エクルーは黄昏時の青い空を見上げて、また甚だ10歳児らしくない物思いに沈むのだった。
 
 









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*COMMENT-コメント-
▽落ち、落ちって…
るーちゃ、いろいろ複雑…
いい人過ぎても人を傷つけてしまうのね。
イズミちゃん、がんば!

ジーラッハ♪ 月関連名前が増殖中。
▽怖いよ…
カウンタ付けたの昨日の夜だよね?
まだ17時間くらいだよね?
どうしてもう70超えてるの?
見てるの3人だけだよね?
どうして? 怖いわ!
▽かうんた…
怖いよ、怖いよ;;
昨日からそんな回したっけ? あれぇ?
けろ、けろけろけろけろ…

試しにアクセスでもつけてみようか…怖いから。
とりあえず、二重カウントを防止してみる。コメントする度にカウント回ってるかも。
これで減れば無問題なんだけど。
▽怖いよ…
カウンタ付けたの昨日の夜だよね?
まだ17時間くらいだよね?
どうしてもう70超えてるの?
見てるの3人だけだよね?
どうして? 怖いわ!
▽ほらまた…
まったく覚えが無いのに、コメントが重複送信されている。これは何?
このブログ…何だか怖い。
証拠のために消さずに、だぶったコメントを残しておきました。

異常増殖する呪いのアカウント~。

ところで『生殖細胞の異常増殖』って早口で3回言える? 環境ホルモンの研究会で、いつも噛む。くっそう、私は『黄巻紙』も『茶パジャマ』も『むぴょこぴょこ』もすらすら言えるのにー。
▽検証
一応、今のところ怪しげなアクセスはないようだけど…3人のみ。
ただ、コメントとか記事詳細とか、ページを新しくするたびにカウントされちゃってるみたいですね。何故。さて、どうしたもんか…

コメント重複は未だ謎。

『じょーちょく』って言っちゃった…元・演劇部なのにー…おそるべし。
▽おう。
あれ…カウンタ設定変えたつもりが変わってなかった。
たぶん、これで二重カウントがなくなると思うのだけれど…
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