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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『夢一夜 2』        (ヴァル)

微笑ましいのだか、生々しいのだか微妙……。
でも、イドリアンの生活って楽しそうだ。

エクルーとイズミの間にも、何かが芽生えたようで……。
どこまで育つかわからないけど。


 ##### ♪ ##### ♪ ##### ♪ ##### ♪ #####





 ……これはいったい、どういう事態だろう?
 エクルーはめずらしくうろたえていた。思い出せ、何が起こった?

 昨夜は、早々にこの”らいぶらり”に引き揚げて、干し草を詰めた甘い香りのするマットと、るぱの毛織物の上等な毛布に寝転んだ。
 ヤチダ家の食卓は、ジーラッハとエクルー以外は女と5歳以下の子供ばかりで、いつも以上に賑やかだった。リィンの妹のミオもミイケもエクルーがお気に入りなので、次々にいろんな食べ物を勧めて強烈に歓迎してくれる。取って置きの夏瓜のピューレーで仕上げた若鶏のシチューはおいしかった。でもあんまりエクルーは食が進まないものだから、女達が余計にかまう。
「坊主は勉強が忙しくて、寝不足らしいよ」
 メドゥーラがパンを切り分けながら、助け舟を出した。
「そりゃあ、いけないね。今夜は早く寝なさい」
 夜中にお腹がすいた時のために、とどっさりお菓子や果物を持たされた。ジーラッハがこっそり(寝酒に)とどぶろく入りフラスクも渡してくれる辺り、よくわかっている。
 マットの上に胡坐をかいて、フラスクをちびちび傾けながら、夜半まで端末をいじっていた。グレンやミオ達でも閲覧しやすいように、インデックスを作ってこのうちの人間が興味をもちそうな検索キーワードの一覧表をつけてやった。
 結局、うとうとしたのは夜明け近かったように思う。あ、乳搾り手伝わなきゃ…と思いながら、空になってフラスクを床に転がして眠ってしまったらしい。

 目が覚めたら、もう日が高かった。
 そして、何故か腕の中にイズミがすうすう寝ていた。
 

 俺、何をした?
 とりあえず、衣服を検める。小屋が温かかったからジーンズと上着を脱いで、毛布を被って作業をしていた……つまり、下着姿も同然だ。イズミは……カヤ山羊の薄いワンピース1枚だ。イドリアンの女たちの下着兼寝巻きである。

 イズミは8歳。リィンの妹だ。小さい頃からちょっとマジメくさったところのある子で、1日中じーっとサルマンの孵化を観察してたりする。姉のミオやミイケとちょっと毛色が違う感じだ。ルパ騎乗の名手でもある。泉守りとしては、時々リィンを抜くくらい成績がいいらしい。
 エクルーがリィンやアカネ、アヤメと探検に行くときは、よくるぱに乗ってひょっこりついて来たりする。近所の同じ年頃の子供と遊ぶより、リィンやエクルーの方が話が合うらしい。ジンのドームにもよく顔を出して、コンピューターの扱い方を勉強したりしていた。だからこの”らいぶらり”も、ヤチダ家で一番活用しているのは、実はイズミだったりする。


 エクルーがマットの上に正座してとっくりと寝顔を見下ろしていると、イズミが目を覚ました。そうして、エクルーに気がつくと、ぷいと目をそらして向こうに寝返りを打った。そのまま、黙っていたかと思うと……しくしく泣き出した。

 決定的だ。男らしく責任を取ろう。これまでにも、俺の寝ぼけ癖についてはいろいろ注意されていた。でも、まさか8歳の子供に……。


 戸口がバン、と開いてメルが入って来た。両手いっぱい湯気の立つ食べ物を持っている。
「お寝坊さん、起きなさい。昨日あんまり食べてないからお腹すいただろう。おや、イズミもここにいたの。あんたも一緒に食べなさい」
 イズミはもさっとした顔で、パンをもぐもぐ食べている。エクルーはオムレツの味がまったくわからなかった。
「昼過ぎにドクターが、部品を持って風車を見に来てくれるってさ。人手がいるかい? 何人か放牧地から呼び寄せようか?」
 メルもまだ24歳のはずなのに、大家族を切り盛りするうちにすっかり”おかみさん”といった風格を身に着けてしまった。
「ううん。柱とかは無事だったから人手は要らない。風車の方は、ねじをゆるめて軸を交換するだけで直ると思う。こっちの機械にちょっと不具合が出てるけど……俺が手伝うから」
「私も手伝う」
 イズミがぼそっと言う。
「そうかい。ジャマしないようにね」
 メルは、エクルーの挙動不審にまったく気がついていないようである。というか、この年頃の男の子はみんなそういうもんだ、と大らかに片付けているようだ。

 メルが母屋に引き揚げて、小屋に2人が残った。イズミはワンピースの上に、暖かい巻きスカートとフード付マントを身につけている。
 エクルーもまず身支度をきちんとして、それから意を決してたずねた。
「あの……俺、寝床の中で何かへんなことした?」
 イズミはじいっとエクルーを見上げた。それからしばらくうつむいていたかと思うと、ふるふると顔を横に振る。
「でも、今朝、泣いてたろう? 俺のせいじゃないの?」
 また、ふるふると首を振る。

 どうしたもんだろう。

 目覚める前……いつものようにサクヤの夢を見ていた。

 艶やかな髪を一房、右手に受けて香りを吸い込む。そんな俺を、サクヤがじっと見つめている。きゅっと眉根を寄せて、目を見開いている。少し悲しそうな表情。でも、いつものように、引き寄せても抵抗しない。俺の腕の中で、じっとしている。キスに答えてくれない。何も言ってくれない。それでも、俺の腕を振り解かないで、黙って震えている。
 本当はいやなのに我慢しているんだろうか。本当は答えたいのに我慢しているんだろうか。俺にはわからない。
 わかるのは、サクヤが何も言わないまま、ずっと俺の横にいたということだけ。

 一緒にいられるだけで、幸せだ。そう何度も自分に言い聞かせながら、でも、どうしてもサクヤを欲しいという気持ちを抑えられない。
 サクヤを独占したい。抱きしめて、俺だけのものにしたい。あなただけのものよ、と言って欲しい。

 くちびるを寄せた時の感触を覚えている。
 ひんやり冷たい髪の先。なめらかなうなじ。長い毛の絹のような手触り。ふかふかの耳……ふかふかの耳? 

 サクヤの髪の毛だと思ってまさぐっていたのは、イズミの金色のしっぽだったのだ。俺は、しっぽをなでる以上のことを、8歳の少女に……? どこまでが夢だったかわからない。でも、イズミが傷ついているのは確かだ。

「ごめん。夢を見ていたんだ。イズミを悲しませるつもりじゃなかった」
 エクルーは身体を90°に折り曲げて謝った。謝ってすむことじゃない。土下座をしたって許されないところだ。
「何でもイズミの気が済むようにする。何でも言ってくれ」

 イズミは黙って、じいっとエクルーの顔を見つめている。イドリアン独特の大きなガラス珠のような瞳。いつもは黒っぽく見えるけど、今は朝日を受けて澄んだ青い色に見える。深い青い色。泉の底から漏れてくる青い光のようだ。
「何にもいらないよ。でも、ちょっとだけ一緒にいよう」
 イズミがぽつんと言う。
「顔を洗って、チグサとチガヤのみるくを持って、博士を迎えに行こう?」
 そうして、ちょっと笑うとエクルーの手を取った。
「ね? 行こう?」
 何だか、自分の方がなぐさめられているような気がして、エクルーは混乱した。でも、イズミの肉球のひんやりした感触は気持ちよかった。
「うん。一緒に行こう」
 エクルーは、小さな手をきゅっと握り返した。そうすると、自然に笑うことができた。イズミもにこっと笑った。
「遅霜で、フユイチゴとアキグミも甘くなってるよ? アカネとアヤメに持っていってあげようよ」
「うん」
 そうして2人で手をつないで、泉の方に歩いていった。

 その後姿を見送りながら、メルはおやおやと思った。
 おやおや、イズミのしっぽがくるりんと丸まっている。気難しいあの子が、上機嫌だこと。子守り役が来て助かったわ。今度は、ヨーグルトも”らいぶらり”に置いてみようかな。牛小屋の梁につるすより早くできあがるかもしれない。
 今年もいい冬になりそうだね。







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*COMMENT-コメント-
▽いずみるー♪
イズミちゃんが好きだーーー!!
…すいません、叫んでみたかっただけです。

最早、寝ぼけ癖はるーちゃの必殺技なんじゃないかと(笑)
…いや、ネタですよ? うん、たぶん。
▽というか…
るーちゃのサクヤへの盲愛は、もうギャグの域に行ってる気がする…もはや、ネタ?
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目次(香月)
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