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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『夢一夜 3』                  (ヴァル)

ハッピーエンドというほどではないけれど、何となく何かが芽生えたようです。

るーちゃ……どんだけ前科があるの(笑)?


 ***** ♪ ***** ♪ ***** ♪ ***** ♪ *****



 軸とケーブルを交換すると、風車はすぐに軽やかに回り出した。ジーラッハの話を聞いたジンは、おまけを用意していた。
「要は遠くから見えればいいんだろ?」
 ジンはにぱっと笑って、透明な素材でできている立方体を取り出した。側面が赤と青で2面ずつ、上の面は黄色で塗ってある。
「これが、ランプのカバーになるんだ。見てろよ……」
 風車から蓄電池に送電するラインを枝分かれさせて、ランプにつないだ。
「よし、いいぞ。羽を離して」
 羽を押さえていたジーラッハが手を話すと、風車が回り始めた。
「あっ」
「おっ」
「わあ」
 3色のカバーの下で、ランプがくるくる回り出した。
「どうかな。昼間でも見えるかねえ?」
「ちょっと遠く行って見てくる」
 イズミがひらりと屋根を下りると、ルパに飛び乗ってあっという間に街道の方へ駆け下りて行った。さらに、街道沿いにどかっどかっと北上していく。それから、手を大きく振りながら帰って来た。
「見ーえーるーよーっ! 5本松のところでも見えたー!」
「そうかあっ。ありがとー!」
 ジンも満面の笑顔で手を振り返す。でも、エクルーとジーラッハはあっけに取られていた。小さい頃から、イズミは気難しい女の子で笑ったり、大きな声を出したりしたところを見たことがなかったからだ。
「すごいすごいっ。きれいねえっ!」
 イズミがぶんぶん手を振っている。
「こらーっ、ルパから落ちるなよー!」
 思わずエクルーも手を振り返した。
「落ちないよーっ! うふふふふっ」
 イズミがはしゃいだ声を出す。午後の光を受けて、金色のしっぽとハチミツ色の髪の毛がきらきら光っている。
「あ」
 と声がこぼれたかと思うと、ひょいっと姿が見えなくなった。
「イズミ!?」
 エクルーは屋根を飛び降りたと思うと、ふっと消えた。

 街道まで飛ぶと、イズミが地面にうつぶせていた。エクルーは真っ青になって、駆け寄った。
「イズミ!」
 抱き起こして、顔をのぞき込む。
「大丈夫か? どこか打った? イズミ? 返事してくれ!」
 イズミはきょとんとした顔で、エクルーを見つめ返している。
「頭でも打った? だめだ、メドゥーラに……!」
 エクルーはイズミを抱き上げると、集落地まで飛んだ。

「メドゥーラ、大変だ! イズミが……!」
 テントで薬草をすりつぶしていたメドゥーラが顔を上げる。
「診てくれ! イズミが……!」
「イズミがどうしたって?」
「ルパから落ちたんだ!」
「……そうなのかい?」
 メドゥーラが怪訝な声を出す。
「落ちてないよ? 下りたの」
 イズミが戸惑った声を出す。
「手をぶんぶん振ってたら、婆さまにもらったお守りの宝珠が腕輪から切れて……落ちたの。それで探してたんだけど……」
「落ちてない?」
  
 エクルーはかなり長い間、口を開けたり閉めたりして腕の中のイズミの顔をじーっと見ていた。それから、とんっとイズミを床に下ろすと、そのままぷいっとテントを出て行った。
「エクルー?」
 追いかけようとしたイズミを、メドゥーラが止めた。
「まあ、ひとりにしてやりなさい」
 背を向けたエクルーの耳が真っ赤なのを見逃さなかったからだ。
「エクルー、どうしたのかな」
「早合点したのが、恥ずかしかったんだろ」

 ぶすっとした顔でエクルーは小屋に戻ってきた。
「おう。発電の方は問題ないぞ? システムもうまく整理してくれたみたいだな。ずいぶん、わかりやすくなってる」
「うん。俺でも使えそうだ。ありがとう、エクルー」
 ジーラッハがきれいな笑顔を見せる。
「イズミは? 大丈夫だったのか?」
「うん。メドゥーラのとこに置いてきた」
「じゃあ、大丈夫だな」
「でもちょっと驚いた。さっきメルも言ってたけど……」とジーラッハがエクルーの顔を見る。「イズミが明るい」
 エクルーが首まで真っ赤になった。
「へえ」
「へえ」 
 2人はまじまじとエクルーを見つめた。
「つまり、エクルーが貢献したんだな?」
「でもいいことなんじゃない? あの子、ちょっと勘が強すぎて時々つらそうだったから」
「俺は……」
「何にもしてないのか?」
 エクルーがさらに赤くなった。
「何かしたんだね?」
「覚えてないんだ! でも、目が覚めたら腕の中にイズミが寝てて、俺の顔をみてしくしく泣くんだ! 俺、一体何をやっちゃったんだろう?」

 頭を抱えているエクルーを、ジンとジーラッハはため息をついて見下ろしていた。
「えーと、実は俺、寝ぼけたお前にキスされたことがある」
「ジンに? キス? 俺が?」
「しかも、複数回」
 エクルーはうめき声を上げて、床に座りこんでしまった。
 ジーラッハは可哀想になって、エクルーの横に座った。
「あのね、俺も君がうちに来てる時に、抱きつかれたことあるけど……」
 エクルーが真っ青になった。
「あ、違うよ。俺はキスはされてないよ? ただ……君の夢が見えちゃって……俺ももらい泣きしそうになった」
「……もらい泣き?」
「君のサクヤを思う気持ちがあんまり一途で、切なくて」
「……つまり?」
「つまり、別に君はイズミに何か悪いことをしたわけじゃなく……イズミは君の気持ちを思って泣いたんだよ」

 エクルーは、2人の顔を順番に見上げた。
「つまり、俺は同情されてたの?」
 ジンはため息をついた。
「お前、自分がいかに可哀想か自覚してないんだな」


 エクルーは、街道の側まで下りていった。イズミはまだ這いつくばって宝珠を探していた。
「何色の宝珠?」
「……薄い金色」
「大きさは?」
「コケモモくらい」
 2人はしばらく無言で、地面をがさごそやっていた。
「……あのね、心配させてごめんね。あの宝珠、すごく大事にしてたの」
 イズミは目を地面に向けたまま言った。
「婆さまにもらった時……エクルーの瞳みたいだと思った。それで、いつも日に透かして見てたの」
「そんな、石なんか見なくても、俺の眼を見ればいいじゃないか」
 イズミが顔を上げた。でも、あなたはサクヤしか見てないんじゃない。そう言いそうになった。
「あっ、あった! これ?」
「あっ、それだわ! ありがとう!」
 エクルーは切れた飾り紐を直して宝珠を通すと、もう一度イズミの手首に結んでやった。
「私は、やっぱりこれでいいわ。また大切にする」
 エクルーが見つけてくれたんだもの。その言葉を飲み込んで、イズミはにこっと笑った。
「帰ろ? おやつの時間だよ?」
 




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*COMMENT-コメント-
▽お、行けた行けた!
香月姐さんの作ってくれた目次に、自力でこのページへのリンクを追加してみました。
うん、行けた。これでいいんだよね?
▽ところで…
詳細表示にした時、ぷらぐいんが表示される時とされない時があるのはなぜだろう?
▽るーちゃ…(笑)
良かったね…何もなくて…(笑)
やっぱりイズミちゃんが好きだ。先が楽しみ♪

詳細表示にして見れなくなったとき、ずっと下の方に行って見てください。表示されてます。

次の記事のタイトルが長いと、記事詳細の一番下のHOMEや次の記事へのリンクのところが長くなって、画面スペース的にプラグインを横に表示出来なくなるみたいです。
▽ぷらぐいん
そういうことだったのか……。
それぞれの記事に、作者名をつけるときムダに余白を空けちゃったから……ぽちぽち直します。
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すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
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あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
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かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
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