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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『色出でにけり』     (ヴァル)

いよいよプロポーズ編。
泣き落とし?

 ===== ♪ ===== ♪ ===== ♪ ===== ♪ =====






 

 とんとん からり とんとん からり

 春の黄昏の空のようなうす青い絹を織るイズミの手首がしゃらんと鳴る。エクルーのくれた七宝のブレスレットだ。エナメルの青と金のメダルと水色の色石を綴ったものだ。コバルト・ブルーの青い楕円の中に金色の曲線が描かれている。泉の水紋のような、夕空の明星と三日月のような。


 あの日、エクルーは何も言わずにふらりとテントに入って来た。そしてイズミが座っていた織り機の椅子の前にどっかと座ると、イズミの左手を取った。そうしてイズミの顔を下からじっと見ると、ポケットからブレスレットを取り出して手首に当てた。
「もらってくれる?」
「なあに?」
「この間、作ったんだ。リィンと一緒に」
「ああ。アヤメの婚約指輪を作ったとき?」
 リィンはイドラの地下空洞で見つけた青い石を取り巻くように、七宝でアヤメの模様を作って指輪にしたのだ。もちろん、エクルーに短期集中講義を受けながら。
「そう。でもイズミは指輪だと、機織るときジャマだろ?」
 するとこれは婚約の贈り物のつもりなんだろうか? これはプロポーズなの?
 イズミの左手にはもう飾りがあった。はちみつ色の宝珠。5歳の頃、イズミの勘が鋭すぎて、夜もよく眠れずうなされたので、メドゥーラが曾孫に送ったお守りだ。
「この珠もブレスレットにつけようか?」
「え? ……ええ」

 エクルーは宝珠を結んでいた皮ひもを解くと、ズボンのポケットから工具を取り出した。宝珠にピンを通して工具でくるりと丸めると、ブレスレットの金具に取り付けた。
「手を出して」
 床に座ったまま、イズミの左手にブレスレットをかけて、開いたままの金具を反対端の輪に通して工具できゅっと締めた。
「待って。これじゃ外せないわ」
「うん、ずっとつけてて。エナメルは水に強いから、おフロでもつけたままで大丈夫」
「壊れない?」
「うん。金具は全部、銀だから強いよ」
 イズミは左手を持ち上げて、ブレスレットを光に透かしてみた。
「きれい……」
「気に入った?」
「うん。ありがと。大事にする」

 七宝のメダルと金色の宝珠はあつらえたようによく合った。メダルとメダルの間に綴った明るい水色の石もきれいだ。でも、この贈り物の意味はなんだろう。エクルーは何も言わない。
「今は良くても、20年とか30年とかして太っちゃったら?」
「直してあげるから大丈夫」
「毎日つけたままだと、この細い銀の輪が折れちゃうかも」
「ちゃんと新しい輪でつないであげる」
 ここまで助け舟を出しても、何も言ってくれない。イズミはため息をついた。見苦しいことはしたくないけれど、今確かめておかないと一生聞けないかもしれない。

「いいの? 私はサクヤでもレアシスでもないわ」
 イズミは思い切って切り込んだ。
「イズミじゃなきゃダメなんだ。イズミとずっと一緒に暮らしたい」
「……どうして私なの?」
「うまく言えないけど……俺、どうしてもイズミじゃなきゃ困るんだ」
 エクルーはしかられた子供のようにうなだれている。
「……どうして?」
「俺どうしても……サクヤとかレアシスとか、桜とか……気になっちゃう。惹かれちゃうんだ。それは好きとかじゃなくて……懐かしいというか……ほころびみたいな……」
「ほころび?」
 イズミは眉間にシワを寄せた。
「ほら、服をひっかけて穴開けちゃうと、その後何度もそこにひっかるだろ? あんな感じ」
 イズミはますますおでこのシワを深くした。
「よくわからないわ。それでどうしてレアシスに惹かれちゃうの?」
「俺……というか俺の父親ってずっとサクヤといただろ? サクヤを通してサクヤの見ていたものを、一緒に見ていたんだ。故郷の星が消えた、その何もない空っぽの時空。生も死もない。虚しい深淵をずっと見てた。怖いけど、ついのぞいてしまう。つい、惹かれてしまう。今度こそ救えるんじゃないか。今度こそ、星を失わないですむんじゃないかって思ってしまう。でも怖い。深淵に落ちてしまいそうな気がする……」

 エクルーの声が消え入るように小さくなった。
 イズミは辛抱強く待った。今、エクルーは初めて自分の抱えた闇について話そうとしている。これは見たことのないエクルーだった。

「イズミといると、泉の中の青い空間が見える。あそこも果てのない時空だ。生も死もない……。でも、イズミといると、俺、迷わないですむんだ。どっちが上かわかる。どっちに泳げば太陽の光の中に出られるかわかる。イズミといると、俺、深みに沈まずに帰ってこれるんだ」
 エクルーは顔を上げて、イズミをじっと見上げている。
「どうしてイズミなのか、俺にもわからない。でもイズミじゃなきゃだめなんだ。でないと俺、溺れちゃうんだ」

 エクルーが泣きそうな顔をしているので、イズミは負けてしまった。機の前から立つと、エクルーの頭をふわっと両手で抱いた。
「わかったわ。ずっと一緒にいてあげる。だから溺れちゃダメよ?」
「……うん。ありがとう」
 エクルーがのどの詰まったような声を出したので、イズミはそのままふわふわした黒髪を指ですきながら、頭をなでていた。
「……春祭りで歌ったら、歌を返してくれる?」
 エクルーの声じゃないみたい。この人、こんなに口下手だったのね。
「いいわ、返してあげる。溺れてもらったら困るもの」

 エクルーがイズミのひざから顔を離した。目が赤い。
「そうか……今、わかった」
 鼻声で言う。
「わかった? 何が?」
「どうしてイズミといると、太陽の方向がわかるのか」
「……どうして?」
 エクルーは両手をのばして、イズミのはちみつ色の髪の間にそっと指を差し入れた。
「この光だ。金色の光が水の中に射して、天使のはしごみたいに教えてくれるんだ。だから俺は帰ってこれる」
 イズミは胸が詰まってしまった。
「……おかえりなさい」
「……ただいま」


 とんとん からり とんとん からり

 あの時どうしてあんなに涙が出たのかしら。2人で抱き合って、子供みたいにわんわん泣いてしまったのよね。あの時……今までで一番エクルーを近くに感じた。初めてエクルーをつかまえたと思った。これで一緒に生きていけるって。
 イズミは左手を持ち上げて、目の前で手首のブレスレットをしゃららんと揺らした。
 青い泉に射す金色の光。これが私たちの絆。迷っても、また帰ってくればいい。光のはしごをたどって。
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*COMMENT-コメント-
▽イズミちゃん、負けちゃったね
泣き落とし(笑)。
でもるーちゃ、個人的に95点をあげる。よくぞ自分のことを話してくれた。
よかったね、イズミちゃん。2人ともお幸せに…って、もう一壁あるのか(笑)。
▽口下手…
話してはみたがちょっち意味不明。
感応能力者の感じるものなので、うまく言葉にならない。でもイズミちゃんには通じたようです。
人でなしですけど、よろしく。
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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