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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『鬼灯(カガチ)』      (ヴァル)

これも、いきなり降って湧いた話。

未来編です。
アビーがアルスの家に嫁に行ったら……そんなお話。

砂領家の人々、大好きです。
特に、彼葉さん。大好きです。

……でも、これって不法投棄? 
ゴミは分別しなくちゃダメですよ!

 ##### ♪ ##### ♪ ##### ♪ ##### ♪ #####



 砂領家の庭は今日も賑やかだった。3つ子に手伝わせて、アビーが大きな蒸篭で粽を蒸していた。慎がふざけて、賢や凛のいる方へ団扇で煙を送るものだから、大騒ぎである。アルスもたすきをかけて、薪を足したり、水を見たり、それなりに活躍していた。

「アビーちゃんの海鮮ちまきは大したもんですよ。楽しみになすってください」
 縁側でお茶をすすりながら、姑の彼葉が嫁の自慢をする。自慢されたリー婆さんは、自分の曾孫の楽しそうな様子に目を細めていた。
 もうずいぶんと長いこと、彼葉とリーはぽつぽつとおしゃべりしていた。それで、もう十分に腹の探り合いをした、と判断したリーはずばりと切り込んだ。

「初めて、あれの姿を見たとき、驚かれませんでしたか?」
 彼葉は一瞬、きょとんとした。何を聞かれたのかわからない、という風だった。それから、ふ、と笑ってこう答えた。
「あのしっぽと耳のことですか? ええまあ、イドリアンという人々を見たのは初めてでしたからねえ、そりゃ、ほう、と思いましたよ。でも、アルスに聞いていたし……それに、きれいだと思ったんですよ。アルスもね、そう言ってました。そりゃあ綺麗なしっぽなんだよ、って。私もそう思いました。ああ、綺麗なお嬢さんだって」
 それから、彼葉はつ、と視線をそらせて、雲雀が囀っている空を見上げた。
「私が驚いたのはね、むしろ、あの子の目です。ちっとも笑わない、泣かない目。何を見てきたのだろうって」
 
 彼葉は茶碗に新しい茶を淹れて、リーに勧めた。
「あの子がねやさしい子だってすぐわかりました。まじめでね、一生懸命でね、寂しがり屋の子だって。あの子を見ていればわかります。でもね、目が……何も写してないんです。何かをね、隠して封じている目だったんです」
「……」
「ここに来て、1ヶ月もした頃かしらねえ。アビーは……ぽろぽろ泣いたんですよ」
「泣いた?」
「ええ。悲しくって泣いたんじゃないんです。何でもないことで、急にぽろぽろぽろぽろ、涙が止まらなくなるみたいなんです。自分が一番驚いているみたいでした。本当にね、主人がバカな冗談を言って笑っていたかと思うと、ぽろぽろ。縁側で月を見てみんなで団子を食べてたかと思うと、ぽろぽろ」
「……あれは、その理由を話しましたか?」
 彼葉はやさしく眉をひそめて、顔を横に振った。
「いいえ、自分でもよくわからなかったみたい。それで……私は言ったんです。泣きなさい。今まで泣けなかった分、ぜーんぶ泣いておしまいなさい。そうしたら、次は笑う番よって。そうしたら、またぽろぽろぽろって」


 リーはしばらく、彼葉の美しい横顔を見ていたが、ふうっと目を伏せると懐から赤いものを取り出した。
「彼葉さん。あなたは今、あの子の母親だ。これをお預けしていいですか?」
 受け取った彼葉は目を丸くした。
「これは……ホオズキ? でも、ずいぶんと色鮮やかな……こんなに真っ赤なホオズキは初めて見ます」
「真朱(まそお)というものをご存知でしょう」
「ええ。水銀朱ですね。顔料に使う」
「そう、そして薬にも毒にもなります。このホオズキは、根元に真朱を埋めて育てた特殊な実なのです」
「……」

 庭では相変わらず、賑やかな笑い声であふれているのに、縁側だけ別の空間になったようだ。寒い、暗い空気。
「私達、イドリアンはね、つい1000年前まで大陸中にいたもんです。私達は水神に使える一族だから、水神に住みよい場所を求めて北に移り住んだけれども、全員が移動したわけじゃない。血も混じっていたし、住み慣れた土地を去りがたく、残ったものの方が大半でした」
「……でも、今は大陸にはイドリアンはいない」
「そう、いない。どうしてだと思います?」
 彼葉は眉をひそめた。この美しい種族がどれほどの迫害や差別を受けたか、想像に難くない。犬神、狐つき、狼男……今も残る伝説。
「イドリアンのしっぽと耳はね、かなり強いんです。4代、5代先まで子に現れる。現れれば……子供を抱いて逃げるしかない。だから大陸のイドリアンはこの鬼灯(カガチ)を使ったんです」

 彼葉の指が震えた。
「でも、ホオズキは毒でしょう? 堕胎に使う毒でしょう? 水銀も毒。そんなもの……」
「子供が着いたと思ったら、女はこの実を飲むんです。血を吐いて苦しみます。十中八九、子供は流れます。でも流れずに残ったとき……しっぽのない姿で生まれるんです」
 彼葉はガタガタ震えている。
「私は旅が仕事だった。クロキアで出会った人と子供を設けた。娘が結婚したとき、これを渡しました。孫娘は3人いました。それぞれ、結婚するとき私はこれを渡しました。でも、3人めの孫娘が結婚したとき、私は旅先で捕らえられて……間に合わなかった」
「そ、そんな……」
 リーは両手で着物のすそをぎゅっと握り締めていた。その指が白くなっている。
「私が行ったとき、アビーは3歳でもう笑わない子になっていました。孫娘は夫に不義を疑われ、自分の娘をかばうこともできず、この子を家に閉じ込めて……だから、あの子が笑わないのは私のせいなんです」

「そんな、リーさんのせいじゃないじゃですか。そのダンナがケツの穴が小さかったんですよっ」
 息巻く彼葉を、リーはまぶしそうに見つめた。
「それをあの子に渡すかどうか、あなたが決めてください」

 彼葉は両手を胸の前に握り締めた。目が大きく見開かれて、白い顔が一層白く、頬は赤く、美しく見えた。そして、何も言わずにすっと立ち上がり、すたすたと蒸篭を蒸している竈に近づくと、火の中にぽいっとホオズキを投げ込んだ。

「お母さん、何ですか? 今の」
 アビーがきょとっと尋ねると、彼葉が切れのいい笑顔を見せた。
「ゴミよ、ゴミ。要らないもの」
「ふうん。あ、もうそろそろ蒸しあがりますよ」
「わあい」
 3つ子が歓声を上げる。

 甘い湯気が道場まで流れて、門下生たちを苦しめていた。アルスは銅鑼を叩いて、おらんだ。
「さあさあ、俺の自慢の奥さんの、自慢の海鮮ちまきだぞー。手と顔を洗ってせいれーつ」
 どやどやと男たちが手水鉢に走っていく。
「さ、リーさん。食べましょ」
「曾婆さま、食べましょう」
 キジバトののどかな声が、道場に降っていた。


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*COMMENT-コメント-
▽ほろほろ…
アビーさん、良かったねぇ…本当に。
彼葉さんはアルスだけでなく、レン、カノン、みんなのお母さんでした。道場内でも『おかあさん』『おかみさん』とか呼ばれています。
彼葉さんは私の理想のお母ちゃんなのかも。彼葉さん、新しい娘さんをよろしくね。私も頑張るよ。りー婆さん、辛いことを話してくれてありがとう。

民間道場『飛天』は昭和のじさまばさまの家をイメージしています。
毎日の炊き出しの材料は、裏の山や畑から採ってきたり、船頭さんに野菜の代わりにもらったりします。(畑を耕すのは門下生の仕事です。体力がついて兵糧もがっぽだから一石二鳥)
道場のお母さんには落ち込んでいるような暇はないのです(笑)。
アビーさん、嫁に来てくれてありがとう。一緒に頑張ろうね。
▽幸せになろう
孫娘13人はいくら何でも多いだろう、と冷静になって3人に訂正しました。多分、娘1人で3つ子を産んだのでしょう。そのへんのストーリーもいつか書けるといいな。
▽阿比留ちゃん
阿比ちゃん、阿比留ちゃん、と呼んであげてください。シュアラ風の名前。
▽いいな♪
いいな、阿比ちゃん♪
カノンとありしーには阿比姉さんと呼ばせよう。阿比さん、妹たちもよろしくね♪
▽3300……
もう驚かないもん。
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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