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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『Kyrie eleison』

アップして、後も見ず逃げます。
もう、恥ずかしくて、恥ずかしくて……。
ああ、もう。これはクリスマスの魔法? それともビールの酔いのせい……?

とにかく、お幸せに。


 ***** ☆ ***** ♪ ***** ☆ ***** ♪ *****

「お嬢さん、お茶飲みませんか」
 アルがひょっこり城に現れても、パールはもう驚かなくなってしまった。
「エルザはエディとお出かけなんだろ? ということは、君、夜まで自由じゃない?」
 エルザの予定や、城の行事に通じていることにも驚かなくなってしまった。そして、地上12mの高窓から逆さに入ってくることにも。
 パールのリアクションは、少しため息をついてこう答えただけだった。
「待ってね。女官長さまに聞いてくるわ」
「あ、じゃあ俺もご挨拶に行くよ。アストリッドさま、ファンなんだ。俺の初恋の人に雰囲気が似てて」
 何気ない言葉なのだろうが、パールの胸がちりっと痛む。努めてさりげなく、聞き返す。
「初恋の人? どんな方?」
「修道院のシスター・シーリア。焼きたてのパンの湯気みたいにふんわりふくふくしてて、でもジンジャー・ブレッドみたいにぴりっとしてる。御年72歳」
 パールはほっとした。
「会いに行く度に、”あなたはいつ、お嫁さんを連れて来てくれるの? ”と責められる」
 やられた。油断していたので、今の攻撃は効いた。パールは久しぶりに、アルの前で真っ赤になってしまった。
「あれ、お嬢さん。どうして君が赤くなるの?」
 アルはわざとにやにやして聞く。
「知らない! 早く女官長さまに会いに行きましょう!」

 アストリッド・グレン侯爵夫人はいつもの温かい笑みを浮かべて、パールの外出を奨めてくれた。
「女官の婚姻も私の責任ですからね。自分で決めてくれる方が肩の荷が少し軽くなるわ。でもあなた、いつも自由に出入りしているようだけど、城の警備はどうなっているのかしら」
 アストさまは整えられた眉毛を寄せて、ため息をつく。
「俺、衛兵全員と顔見知ですもん。顔パスです。今日もハンスにからかわれました。”いつパールにプロポースする気だ?”って」
 パールはまた赤くなった。こういう変則攻撃はずるい。
「でもハンスは左ひざの古傷が堪えているようだから、寒い日の当直は減らしてあげるといいですね」
 アストさまが肩まゆをぴん、と上げた。
「ハンスがあなたにそう、頼んだの?」
「まさか。あの頑固もの、死んだって弱音は吐きませんよ。ハンスの健康のためと言うより、とっさに踏み込む動作ができないから、安全上の問題です。アストさまならさりげなく、シフトに進言していただけるでしょ?」
 侯爵夫人はため息をついた。この謎めいた男は、城の事情に通じすぎている。エルザさまも陛下も信頼しているようだけど。この間は、北の見張り塔のレンガがゆるんでいるところを指摘した。その前は、厨房で野菜に混じっていた毒草を見つけて注意してくれた。確かに助かったのだけど、危険だわ。この男ひとりで、城をひっくり返せるかもしれない。
 もう一度ため息をつくと、アストさまは若い2人を城の外に送り出した。まあ、いいわ。時々こういう男がいるものよ。天使のような、悪魔のような。今は味方でいてくれると信じましょう。その幸運を感謝するしかないわ。何より、私もこの男を気に入ってしまっている。パールと幸せになってくれることを祈りましょう。この国の治安のために。


「どこでお茶を飲むの? もう町はずれよ?」
 アルと腕を組んで歩きながら、パールは訊ねた。冬の短い日が傾いて、夕闇が降りて来ている。雪の影が青い。もう、村の境界の小川まで来てしまった。この先は森と荒地だ。オオカミとオーガの住むところ。
「こっちだよ。小道をたどって来て」
自然の木立と見えたところが、のびのび育った生垣だった。しゃりしゃりと小石を敷き詰めたような音がする。生垣の間に鮮やかな青に塗った木戸が現れて、パールは驚いた。誰か住んでいるの?
「入ってみて」
「え、いいの?」
「うん。どうぞ?」
 アルがやけにうれしそうだ。

 ためらいがちに木戸を開けたパールは、息を飲んだ。
「どう?」
 雪にふわふわと覆われた前庭に、青い光がぽつんぽつんと灯されている。青く塗られた玄関のドアに続くゆるやかにカーブした小道の両側にもずらりと温かい灯りが列を作っている。夕闇の青く沈む庭が、青と金色に照らされていた。
 パールは言葉が見つからなくて、そっと屈んで灯りをよく見てみた。鮮やかな青い磁器の皿にろうそくが立ててある。そのろうそくを雪の玉が囲んでいた。雪玉の小さな小山が、ろうそくの熱で溶けて、透明な窓になっている。その窓から、ろうそくの明かりとお皿の青が照り映えていた。
「僕のうちにようこそ」
「僕のうち? え……あの、アルのおうちなの?」
「そう。昨日、ようやく内装が終わったんだ。どうぞ、家の中も見てみて?」
 ぽかんとしているパールを、アルは笑って抱き上げた。
「え、あの、アル……?」
 まだ、こんな風に抱かれるのに慣れない。パールは真っ赤になってしまった。くらくらしながら、青と金の庭の小道を運ばれる。

「さ、ドアを開けて。俺は両手がふさがってるから」
 手入れされた木のドアはなめらかに開いた。ぱちぱちと暖炉の燃えている室内は、ふんわりと温かかった。飾り付けされたツリーと、無数のろうそく。ドアや木戸と同じ青に塗られた窓枠にも、ろうそくと金色のオブジェ。
「うん。君によく似合う。この家の妖精みたいだよ、パール」
 この日、パールはコンサートの時に贈られたシルクの青いストールをかけて、シャンパン・ゴールドのリボンで髪をまとめていた。
「寒かったろ。さ、お茶どうぞ」
 パールがぽおっと見とれている間に、いつの間にかアルがテーブルを整えていた。ティーセットも鮮やかな青。リネンはクリームイエロー。ろうそくの周りはモミの小枝と赤い実をつけたひいらぎに飾られていた。サンドイッチとキッシュと果物のケーキが銀のトレイに盛られている。
「遅めのハイ・ティーというか、軽めのディナーというか。まあ、どうぞ」
 アルがイスを引いて奨めたので、パールは呆然としたままテーブルに着いた。
「エルザさまが、あなたのことを魔法使いだって言ってたけど……」
「魔法じゃないよ? この家に関しては一切ズルはしませんでした。全部、手作業です」
「手作業……?」
「夏にこの家を見つけたんだ。庭は荒れ果てて、屋根も壁も壊れてた。ひまひまに葺き替えて、壁も塗り替えて……楽しかったな。この家が生き返って、ちゃんと”ホーム”になった」
 パールは上の空で、アルがそそいでくれたお茶を飲んだ。いい香り。温かい。
「壁紙を張り替えて……揺りイスを作って……ソファは古道具屋で見つけたものを、自分で布を張り替えた。この料理だけ、器用な弟に頼んだんだ。クリスマス・パーティーのメニューの試作なんだってさ」

 パールは、まだなかなか言葉が出てこなかった。
「こんなおうちを……どうして……」
 アルは、パールの皿にキッシュとサンドイッチを取り分けて、微笑んだ。
「春に、俺の養父母が死んだんだ……彼らの家はまだちゃんとあって、弟が守っているんだけど……それから、何だか俺は無性に”ホーム”が欲しくなって……働き出してからずっと貯めてた金で、この廃屋を買った。でも、家を整えながら……だんだんわかってきたんだ。俺が欲しかったのは、家じゃなくって……家族だったんだって」
「家族……」
「おとうさんとおかあさんと、幸せなこどものいるホーム」
「……」
 さっきから、アルは”僕”と言ったり”俺”と言ったりしている。あのコンサートの夜から、アルは少しずつ言葉遣いが変わって来た。ありのままの自分を見せてくれているようで、それがパールにはうれしかった。そのアルがずっと……さっきからためらっている。ある言葉を口に出せなくて。

「パール……」
「 I do 」
 問われる前に、パールが答えた。
「パール?」
「 Yes, I do.  ええ、誓います。このおうちのおとうさんとおかあさんになりましょう。そして、幸せな……」
 そこまで言って、パールは真っ赤になった。
「幸せな……こどもを育てましょう。私達が寂しい思いをした分も、こどもを甘やかしてあげましょう」
「パール……あ……」
 今度はアルが言葉に詰まってしまった。顔をそむけると、手で目を隠している。
「アル?」
 あのコンサートの夜のように、アルがひしゃげた声で答えた。
「ありがとう……パール」

 目から手を離すと、アルは立ち上がった。
「アル……?」
「パールも立って?」
 まっすぐにアルを見上げながら、パールは立ち上がって差し出された手に自分の手を重ねる。
 導かれて、パールは暖炉のあるリビングから、隣の部屋に入った。ドア敷居で、アルが立ち止まる。
「アル……?」
 何も言わないまま、アルに少し乱暴に敷居に押し付けられる。驚いて息を飲んだ途端、くちびるが覆われる。
「あ……!」
 アルの広い肩に、たくましい胸に、身体中が包まれる。熱い……! ひざがガクガク震えた。

 ようやくくちびるが離れたとき、パールはひざに力が入らなくて、ぐったりとアルに寄りかかった。背中に回された腕がしっかり支えてくれるけれど、その腕の熱さに、また身体が震える。
 アルは少し屈んで、パールの耳元に囁いた。その息に、また鳥肌が立つ。
「上を見て」
「上……?」
「ドア敷居のところ」
「……?」
 木枠に、小さなヤドリギの小枝が飾ってあった。アルがまた囁く。
「ヤドリギの下にいる女の子にはキスしていいんだよね?」
 そのまま、くちびるを柔らかなうなじに埋める。
「アル……!」
 力の抜けてしまったパールを、アルがちょっと強引に部屋の中にひっぱり込んだ。
「ここが、おとうさんとおかあさんのベッドルーム」
 耳元で囁かれた言葉の意味が脳に届いたときには、パールは温かい黄色のベッド・スプレッドの上ではずんでいた。倒れ込むように、アルがパールの身体を包む。さっきよりさらに近い熱に、パールの頭は真っ白になってしまった。
「天井を見て」
「天井?」
 小さな部屋の天井は、無数のヤドリギの小枝で緑に彩られていた。
「だから、キスし放題」
「アル……!」
 ちょっと顔を離して、アルがのぞき込む。
「いや?」
 パールはやっとで顔を横にふるふると振った。
「怖い?」
 ふるふる。

 アルの顔に微笑みが広がって、いとおしそうにパールをぎゅっと抱きしめる。
「ありがとう、おかあさん」
「……大事にしてね?」
 小さな声で、目のすぐ前の耳にささやく。
「もちろん。おかあさんのことも甘やかすよ。幸せなこどもと同じくらい」
 パールは勇気を出して両手を伸ばすと、アルのうなじに巻きつけて、ぎゅっと抱きしめ返した。
「私も甘やかしてあげる。私達のホームのおとうさんを」
 2人は鼻をくっつけ合って、2人のまつげの長さ分だけの距離からお互いの目を覗き込んで微笑み合った。

「 Home, sweet home …… だね」
「 Welcome home …… おかえりなさい、アル」
「 I am home, mom …… finally. 」






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*COMMENT-コメント-
▽ハウル…
を、見たときの恥ずかしさだ。
アル、優しい確信犯ね。『ヤドリギの下にいる女の子』はともかく、『ヤドリギの下に連れていった女の子』はどうなのかしら。にやにや。

何気にプロポーズしてるパール嬢。逞しい。
▽甘やかしてるよねえ
この合作の女の子、みんなたくまし過ぎて、男を甘やかし過ぎ。プロポーズくらい男にさせろよ、パールちん。
英語表現、アルファベットでも良かったかな?
ちょっと照れちゃって・・・ひらがなとかにしちゃったけど。
▽英語にしてみる
アルファベットにしてみました。
語感がちがうよね、やっぱり……。
▽ひゃああっ///
おかあさま素敵ーーーっ(抱きつき)
もうもう素敵すぎますっ!なんて、なんてロマンチック……vv!!
パールよかったね…!アルとだったら一生ドキドキラブラブライフが満喫できそう…!!ほう…v
おめでとうございます。きゃーーっ///
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