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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『覚醒ヒロイズム』 EPISODE2   (香月)

わあい、この子たちお互い思いやりがなーい(笑)。
エイロネイアの面子は基本的に相手を思いやる心と自重と尊厳に欠けています。とりあえずカシスside。
いろいろ遠慮がなさすぎるエイロネイア・ファミリーです。

カシスの正装は主に白だったけど、ヴァルさんがdrawrに描いてるのを見て、案外紫も似合う? と思って盗人。orz(土下座)


===========================
 
 ああ、久しく忘れていたな、この窮屈な格好。
 最近はシャツ一枚とスラックスで十分な環境だったから、久しく忘れていた。
 襟の広がるゆったりしたシャツはいつもの通りだが、上から肩にかかるのは薄紫に染め上げた絹のローブで、精霊銀を編みこんだ紐と金の金具でしっかりと固定される。魔導文字を描いた絹の章服がかけられて、長いローブの裾がばさりと足元まで落ちる。頭にはいつもの魔道具に加えて鴉紋の入った装頭具。
 小さく溜め息を漏らした。別段、それがエイロネイアへの服従を意味するものだ、ということに文句はない。そんなものはどうでもいいのだ。大体、あの主は部下の服従だの何だのに興味はないし、カシス自身こんなもので我を縛られるつもりもない。
 文句があるのは一つだけ、
「……肩が凝る」
「んもう、我慢なさいな。人が手伝ってやってるのに、さっきから文句ばっかり言い腐って。何ならこっちのコートも着るぅ?」
「暑苦しいだけだろーが、死ね、化粧じじぃ」
「着替えを手伝ってやってる相手に死ねたぁ何よ、死ねたぁっ! ああっ!?」
「はっ、ダイエット法なんざ研究する前に分厚い化粧落とせ。2,3kgは痩せるぜ?」
「きぃぃぃぃぃっ、あんたねぇっ!」
「……もー、うるさいのですー。さっさと準備するですよ、主さまがいないからってぐだぐだしすぎなのですー」
 更衣室に響き渡る奇声と暴言に、腕章と胸に翳す王章を持っていたシャライヴが呆れたように突っ込んだ。ぎゃいぎゃい絡んでくる化粧臭い物体を蹴り飛ばして鼻を鳴らし、「いつもなら主さまなのにー」と今さらぶつくさ言っている竜の仔から2つの紋章を受け取る。
「うるせぇ。こっちだって好きで上城なんざしてねーよ。大体、あのけたっくそ悪い腹黒その2に会うのに、何で正装なんざしなけりゃならねぇんだ」
「途中で公式の場を通るからよ。いい加減、それくらい納得なさいな。宮廷魔道師の正装なんて、皇帝の正装に比べたらよっぽどマシよ」
「生憎、俺ぁもともと皇帝でも何でもない一般人なんでね」
 まあ、鮮やかなまでの大嘘なわけだが。
 だが、エリシアはわざわざ突っ込もうとはしない。それが傷口に塩を塗るような行為だと知っているからか、鼻で笑って舌を出すだけだ。遠慮も謙虚もない連中だが、こういうところは変にしっかりしている。
 しばらく黄色い声を上げていた派手な男は、仕方なさげな息を吐いて、極軽く(スキンシップ嫌いな彼が嫌がらない程度に)肩をとんとん、と叩く。
「さっさとなさいな。あんた、あの子から信頼されて任されたんだから」
 信頼ねぇ。どっちかっていうと他にやるヤツがいなかっただけじゃねぇのか?
 普段ならいい。だが、今は王帝内が手一杯で、王立研究院の方まで人手が回らないわけだ。特に責任者なんてものは。じゃなけりゃあ、あの甘い皇帝様は、こんな役職にカシスを引っ張り出そうとは思わないだろうから。
 複雑なものが混じりあった溜め息を吐いて、胸元に鴉紋を落とした。


「……その形だと、一応はまともに見えるな」
「てめぇもな」
 開口一番、相手が言いやがったのがその一言だった。正直言わせてもらえばどっちもどっちだろうに。
 シャンデリアの下がる応接室に入って、鍵がかけられると同時に装頭具を頭から落とす。ついでに暑苦しい章服を緩めると、正面のソファに足を組んだ皇帝代理が呆れたような顔をした。
「お前、着付けの苦労を5分で無駄にするな、馬鹿者」
「やかましい。居心地が悪ぃんだよ」
 自分だっていろいろと礼服を改造しているくせに、よくも言う。遠慮なく対面の席にゆったりとかけると、冷えたグラスと常温のシャンパンが出される。眉を潜めていると、煙管の灰を灰皿へ落としながら赤い髪の東の女帝は高らかに笑った。
「ジュニアの秘蔵品だ。ありがたくもらっとけ」
「そいつぁ、どうも」
 ああ、その気の利かせ方は悪くない。どうせ無断拝借だろうそれを、迷惑料代わりに有り難く頂く。このくらいで烈火の怒りなど見せない。深い溜め息と小言程度だろう。
 他人のものは美味い。やたらとはっきりとした味を好むこの皇帝代理と好みは真逆のはずだが、この趣味は合う。喉の滑りも良くなるしな。
 しばらくつらつらと言い合いをする。研究員と王帝側との情報交換。展望と俺の立ち位置。外交に絡んだ学問交流の相談。
 メモは取らない。面倒なのが半分と、機密の混じる内容を手記なんかで残したら、どこで漏洩するかわからないというのが半分。大体の内容は頭に入る程度の脳はお互いに持っている。
「ま、そんなとこだろうな。幸い、お前の大嫌いな外交関係の仕事はほとんどジュニアが済ませていった。お前は半数以上、デスクにかじりついていればいい」
「へいへい」
 外交か。考えて苦いものが口の中に走る。
 外交正常化。レアシスが戦の延長線上に求めていたものだ。他国も乗り気。まあ、少々の不安要素は残っているが、概ね問題はないだろう。
「……気が乗らんようだな」
「まあな」
 フロアリア帝はふ、と唇の端を吊り上げただけだった。カシスが外交嫌いなのは今に始まったことではない。いや、正確に言うなら公式的に外交の場に立つのが嫌いなのだろう。元々が人見知りの激しい性分だから。
 彼女はかなり灰の増えた灰皿の上に、またとんとんと灰を落とす。カシスの加える煙草の灰も相まって、青ガラスの灰皿は元の美しさを失っていた。応接室の煙たさにも文句を言われそうだな、あの皇帝は付き合い程度にしか嗜んでいない。
「それでも、お前は外に出たいんだろう?」
「……」
「ベルサウス老は孤独な天才だった。祖国に切り離され、森奥の小屋で一生を終えた。
 どれだけの能力を持っていても、周りが認めなくては意味がない。その点で、ベルサウス老は不遇だった。彼が最後に報われた幸福は、お前に己の全てを遺せたことだ」
「……」
「2代目[スタッド]」
 急激にフロアリア帝の声が尖る。他人に叱責を課すときの声だ。
 カシスは彼女が他人に叱責以外を向けたところを見たことがない。エイロネイア最大の属国の党首である彼女は、同時に高位の軍事教官でもある。
『教官は恨まれるのが仕事だ。ジュニアが好かれる分、私が恨まれなくてはバランスが取れん。
 戦場で死なれるより、訓練場で恨まれた方が何倍もマシだからな』
 そう語った彼女の矜持が崩れたところを、カシスは一度も見ていない。だからカシスはこのけして好感を抱かない女王を恨むことが出来ないでいた。
「……老はお前を実の孫のように可愛がっていた。だからお前に重責は請わない。
 お前がベルサウスの名を世に出したい、と思うのは解るがそれは明らかに障害を招く上に、ベルサウス老は我がために孫が重責を負うくらいなら、己のものを一切合切燃やされた方がマシだろうな」
「……」
「2代目。お前の気持ちはわからんでもないが、一人身ではない我が身を考えろ。背に責を負ったままの戦いはしんどいぞ?」
 煙を吐き出す唇が、容赦のない言葉を紡ぐ。容姿は10も歳を誤魔化せるほど幼さが目立つが、恐ろしく金色の目とくせのある表情が、奇妙な尊厳を持って彼女を玉座に座らせていた。
 はんっ、と鼻を鳴らす声がした。
「お前らは阿呆か。ンな台詞はまず御大に言うんだな。背中に馬鹿みたいな重りをつけて、真冬のセルディック海峡に飛び込むようなマネを応援したのはどこの誰だ?
 ……確かにあの酔狂な祖父さんなら言うだろうさ。だがな、俺は俺のために死んでくれと言った覚えもないし、いくら恩師だろうが俺は俺だ。何でもかんでも遺志に従う気なんざねぇよ」
「……」
「……祖父さんは満足だったろうさ。見てねぇが、そりゃあ満足な死に顔だったらしいな。
 冗談じゃない。ふざけるな。こっちがどんな苦痛を味わったと思ってやがる……っ」
 久方ぶりに口調が荒くなる。焦燥と吐き気が込み上げて、堪えるためにがん、とソファの端を叩いた。苛立ちが、むかむかとした毒が体の中心から上がってくる。くそ、日頃ならイドラの温い熱に冷めた脳が緩和してくれるというのに、御大やこの女帝の前に出るとこうだ。無意識に甘えているのかもしれない。ああ、むかつく。
「……それだけムカついているのは、その祖父さんの気持ちが、自分で解ってしまったからなんだろう?」
「……」
「エリシアに聞いた。お前、シュアラで大分、無茶をしたらしいじゃないか。らしくもない。そこまであの子に溺れたのか?」
 御大曰く、自分は至極、感情を言葉にするのがへたくそらしい。当たり前だ。子供の頃は、自分の中のものに名前があることさえ知らなかった。
「眉間に皺を寄せるな。
 お前は、戦闘は頭でっかちのくせに、ときどき本能で行動するクセがあるからな。そして恋愛事というのは大体本能がものを言う。
 お前のことだ。大層な決意を決めてから結婚したわけでもないんだろう? 勘違いしないでもらいたいが、責める気はないぞ? 意志や決意は曲がりやすいが、本能は折れない。お前のその性格は返って正解だよ」
 ……相変わらず、誉めたいのかけなしたいのかよくわからない物言いをする。
「ひとつ、聞かせて欲しいんだが」
「……」
「お前、何であの子を選んだのだ?」
 シャンパンの細かな泡が揺れた。口を離した長細いグラスに視線を止める。自然に眉間に皺が寄る。長い前髪が、はらりと零れて視界を邪魔した。
「……わからん」
「……」
 フロアリア帝の眉がひくり、と吊りあがる。グラスを飲み干して、もう用はないとばかりに立ち上がって、
「よくは知らねぇ。ただ、」
 『ただ、あの女なら』とだけ口にした。
 フロアリア帝はしばらく無言だった。細めた目では、何を考えているかわからない。やがて一言だけ。
「……後悔は」
「してねぇよ」
「なら十分だ。仕事に戻れ」
 最後に吐いたフロアリア帝の溜め息は、どこか諦めに似ていたような気がした。


 ――すまないな、ベルサウス老。
 閉めていたカーテンを開け、換気をしながらフロアリア帝は煙草臭くなった息を吐き出した。光の差した応接室のシャンパンをすべて飲み干してから、一息吐く。
「……私もジュニアも。どうやらあの子には甘くなってしまうらしい」
 先代ベルサウスとも交流があり、尚且つ昔はルーアンシェイルとごたごたがあったフロアリア帝は、悲しくも彼の出生をよく知っている。
 産まれてから何も与えられず、まず真白な純粋を奪われ、逃げた先に与えられた安らかな愛情も奪われ。その愛情を引き継ごうとしたジュニアは、かつて自ら生命を絶とうとした。ジュニアは気がついてなかっただろう。自分が散りにカルミノに発つ、と宣言したときに、存外、あの子が傷ついていたことに。
 考えてみれば、あの子も失うことばかりだったのか。
「だから、欲しかったのだろうな」
 けして己から離れない、ただ唯一の愛情が。けれどそんなものが、良い顔をして向こうからやって来てくれるものでも、待っていていつか誰かがくれるものでもないことを知っていたから。
 彼が溺れたあの子もまた、愛情に飢えた一人だった。可愛い容姿ではあるが特別美人なわけでもなく、天才なわけでもなかったあの子を彼が選んだのは、……まあ、確かに。境遇が似ていた、とか。お節介な保護者に育てられたせいで、見捨てられなかったとか。同情とか。理由をつければ様々だったのだろうが、
「"本能"か。悪くないな」
 結局のところ、人は理屈で人を選びはしない。ある意味、あの子は最も正しいのかもしれんな。
 ある意味、運命的といえば運命的か。と呟いて、フロアリア帝は久方ぶりに込み上げた笑いを吐き出した。ジュニアが帰って来たらどんな脚色をして話してやろうか。おっと、その前に惚気を回避する方が先だった。


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*COMMENT-コメント-
▽七夕記念
いやあ、カシス、愛されてるね。今度、ユーア様とアルを会話させたいわ。本人がいないところでは、アルもカシスのことをつい、”あの子”と言ってしまう。エクルーのことは ”あいつ”と呼ぶので、純粋に弟扱いなのはカシスだけのようです。ジンを交えて本人抜きの3者面談とかやったら楽しいだろうな。
▽なるほど…
アルにとっては育ての親でもあるもんね、るーちゃ。
カシスは庇護された側ですが役職柄、一番最初に厳しい世界に放り出されたのでエリシアさんや陛下もよく目をかけていました。くそ生意気な奴ほど可愛いんでしょう。

ユーア様はカシスの軍事教練をした方だから面白そうだ(笑)。
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目次(香月)
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