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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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重なる月に寄せて(その2)

何と2年ぶりぐらいの小説更新です。
ラーシャさんとジーラッハ。

今回、ジーちゃんの本領発揮。というより本性むき出し?

こいつ、こんなヤツだっけ?


--- ○ --- ○ --- ○ --- ○ --- ○ --- ○ --- ○ --- ○ --- ○ ---


 ラーシャとリーシャは矢継ぎ早にお互いのことを聞きだしては、自分のことを報告していた。クロキアの言葉なので、リィンとアヤメには細かい内容はわからなかったけれど、双子の少女が何を話しているかはわかった。
 どんな経緯でこの国に来たのか。今までどうしていたのか。そしてどんなにお互いに会いたかったか。
 似てない双子だった。同じ背格好、同じ青い瞳。同じ艶やかな栗色の髪。一人は耳の下でばっさり切りそろえて、一人は背中までさらりと垂らしているけれど。でも表情やまとう雰囲気が全然違うのだ。
 思えばアカネとアヤメも似てない双子だった。7歳ぐらいまで、2人を見わけられるのはイリスとエクルーだけだったのに。他ならぬそのエクルーのせいで、その後の2人はどんどん互いに離れてしまった。その屈託を乗り越えて、今また2人はよく似た姉妹に戻っている。

 ラーシャとリーシャも10歳で離れ離れになるまで、きっと瓜二つだったに違いない。でもその後の歩んだ道の違いが、それぞれの風貌と人格に現れていた。姉のリーシャは華やかに女性らしいが、酸いも甘いも噛み分けた世慣れた雰囲気を漂わせている。異国に幼くしてさらわれて来て、どれほどの地獄を見たのだろう。一方のラーシャは軍人として内戦鎮圧に当たって来たと思えないほど、かたくなで純粋。厳しい現実の中で折れないように必死に毅然と振舞っている彼女を、軍の仲間たちが密かに守って来たに違いない。

 話のつきない双子の姉妹をベリッとエリシアが引きはがした。
「さあさ、病み上がりのケガ人を疲れさせちゃダメよ。明日、お休みもらえるようにしてあげるから、朝から来てついててあげればいいじゃない」
「あ、うん。ラーシャちゃん、また明日」
「ええ、姉さま。また明日」
 名残惜しいが大丈夫。明日も会えるのだ。
 自分の半身に。

 王城に戻る道すがら、エリシアはふふっと笑った。
「不思議ね。最初あなたとラーシャが顔を合わせた時は、似てない双子だなって思ったのよ。でも、さっき帰る前に私が声をかけて振り返ったら、瓜二つなんだもの」
「え、そうですか?」
 リーズは照れてしまった。
「いいじゃない、そういうの。よかったわね」
「はい」
 珍しく素直な反応を見せるリーズにエリシアは一瞬目を丸くしたが、すぐまたふふっと笑った。
 さて、この姉妹の再会で、この国の国交はどう転ぶかしらね。おもしろくなりそうじゃない。これだから人間って飽きないのよね。


 一方、ラーシャはシュアラ産の葛を溶いた甘い薬湯を飲んでいた。
「今日はいろいろあったから疲れたでしょう。身体が温まったら、すぐ横になって下さい。ちょっと湿布を変えておきましょうか」
 ジーラッハは慣れた手つきで、皮をはいだベラをくじいた足首に貼って、新しい包帯を巻いた。
「腫れが随分ひいていますよ。この分だと明日にはリーシャさんと屋敷内を歩けるでしょう。とにかく今夜はよく休むことです」
 枕元の灯りを残して部屋を暗くすると、ジーラッハはラーシャに毛布をかけた。
「あ、窓は……」
「そうですね。南のカーテンを開けておきましょうか。十六夜だから、今夜もなかなか月が明るいですよ。さあ、もうお休みなさい」

 ラーシャは立ち去ろうとしたジーラッハの袖をつかまえた。
「昨夜……」
「昨夜……?」
 何と聞けばいいのかわからず、ラーシャはうつむいてしまった。
「眠くなるまでお話してあげましょうか?」
 ジーラッハが微笑んでもう一度、枕元のイスに腰を落ち着けたので、ラーシャはほっとした。
「そうですね。月の話でもしましょうか? クロキアではあの月をどんな名前で呼んでいるんですか?」
「月の名前……?」
「シュアラではあの2つの月を月詠(ツクヨミ)と月天(げってん)と呼びます。天女と皇子なんだそうです。イドラではミヤヅヒメとタケルノミコという名で火の女神と火の神、カルミノではセレーネとデンディミオーン。それぞれの国にそれぞれの伝説があるんですね」

 昨夜はひとつに重なって見えた月が、今日は別れて二艙の船のように並んで中天に浮かんでいた。

「タケルノミコとミヤヅヒメは月のものの最中に契ったんだそうです」
 ジーラッハの言葉にラーシャは真っ赤になってしまった。契る……? 契るってつまり……?
「それで2人には罰を与えられた。だからイドラでは月が重なる満月の夜、恋人たちは会ってはいけない。夫婦もその夜だけ床を分けなくてはいけない。でないと、天罰が落ちる、という伝説なんです」
「恋人同士が会ってはいけない夜……」
「そう。でもシュアラでは逆なんです。満月は逢瀬の日。恋人たちが守られる夜なんです。禁じられた相手でも、月が重なっている間なら夜這いが許されるんだそうですよ?」
「面白いものだな。シュアラとイドラで満月の風習が逆なのか」

 ジーラッハは椅子から立ってベッドに腰掛けた。マットがたわんで、ラーシャの身体がほんの少しジーラッハに近づいた。息がかかるほどではない。でも体温が感じられる距離。


「そう。では問題です。シュアリアンとイドリアン、どちらが情熱的だと思いますか」
 にっこりと綺麗に微笑んでジーラッハが人差し指を立てた。
「え」
「満月に恋するシュアリアンと禁欲するイドリアン、さてどっち」

 ”情熱””恋””契る”というキーワードに幻惑されて、ラーシャは集中して考えられない。
「え、ええと……シュアリアン?」

 あてずっぽうで答えたのに、ジーラッハはにっこり笑った。

「私もそう思います。ひと月に一日だけ禁欲するイドリアンよりも、満月の夜を待ちこがれるシュアリアンの方が、きっと思いもつのるのだろうな、と」
「……」

 もうラーシャは、ジーラッハの灰色の瞳から目が離せなくなっていた。

 いつ腕を引き寄せられたのかわからない。
 十六夜の月の光がジーラッハの柔らかい銀灰色の髪を透かしてラーシャを包んでいる。ジーラッハの腕の中は水仙の花のような涼しい香りがした。震えているのは自分? それともジーラッハ? 
 すぐ傍にいるのに遠い。くちびるからくちびるまで、叫びたくなるほど遠い。やっと触れあえた時、ほっとして泣きたくなったほどだ。

 長い腕に背中を包まれてため息がもれる。手を伸ばして髪をまさぐる。そしてなめらかな耳にそっと触れる。
 ずっとこうしたかった。こうして触れたかった。触れられたかった。 

「ああ……ジーラッハ……」
「ラーシャ……」
 吐息が首筋にかかった瞬間、ラーシャの身体が震えた。
「ジーラッハ、だめだ」
「だめ……なぜ……?」
 ジーラッハの声も夢うつつだ。ラーシャはまた幻惑されそうになる自分を必死に押しとどめた。
「だめだ、こんなこと……許されない……!」
「なぜ……? ラーシャ、あなたが好きだ。ずっとこうしたかった」
「私もそなたが好きだ。でもこんなこと……だめだ……!」
 両肩をつかんで、むりやりジーラッハを引き離す。その瞳は傷ついたというより当惑の色を浮かべている。
「だからなぜ? 今夜はもう満月じゃない。私はイドリアンであなたはクロアキアン。恋に溺れても許される日です」
 そう言いながら、また顔を近づけてくるジーラッハを押しとどめる。
「だって、我らは女同士ではないか! イドラやエイロネイアでは許されるのかもしれないが……私はクロキアの人間だ。こんなこと……頭がついていかないんだ!」

 ジーラッハがぽかんとした顔でラーシャをみつめている。たっぷり30秒以上間が空いた。

「私は男です」
「え」
「男です」
「え……!」

 ラーシャにはその夜、その後の記憶がない。



 
 翌朝、朝食の席にジーラッハはいなかった。ラーシャはほっとしたものの、ズキッと胸が痛んだ。
 自分はあの優しい人を傷つけてしまった。最悪な形で。
 この国に来た時から、ずっと自分のために心を砕いて支えてくれた人を。この短い間に、自分の中でどれほどジーラッハの存在が大きくなってしまったことか。

 謝らなくては。

 ラーシャは覚悟を決めて、ジーラッハに会いに行った。居場所はすぐにわかった。いつものサロンでピアノを弾いている。軽やかな音が回廊までこぼれて来ていた。アヤメもトゥーリッキもピアノを弾く。でも音を聴いただけで誰が弾いているかすぐわかる。アヤメは洗練されているけれど、同時に原始的な生命力とインスピレーションに満ちた演奏をする。トゥーリッキはチェリストなので、ピアノはそれほど得意じゃない。でも清潔で繊細な傷つきやすい音がする。

 そしてジーラッハのピアノからは香りがする。風や空気の温度が感じられる。季節や空の色、鳥の声、せせらぎの音が。

 恐る恐るサロンのドアを開けた。
 ジーラッハは顔を上げたものの、ピアノを弾く手を休めない。
「仕事か?」
「うん。明後日、急に面接を受けることになったんだ。それで講師に採用されるかどうか最終的に決まるんだ」
「そうか。大事な時だな。邪魔をした。また後で来る」
 きびすを返して出て行こうとするラーシャを呼び止めた。
「大丈夫。もう曲は出来てるから。今は指に覚えさせてるだけ。何か用?」

 昨日までと別人のようだ。ジーラッハはもう細やかに面倒を見てくれる看護人ではない。私の守護天使の役を下りてしまったのだ。
 自分は何てことをしてしまったのだろう。

 胸がズキズキ痛んだけれど、ラーシャは勇気を出してピアノに近づいた。ちゃんと謝らなくては。そしてどんなに感謝しているか伝えなければ。

「昨夜の」
「昨夜の?」
「私の誤解について謝りたくて」
「誤解?」
 ジーラッハはピアノを弾きながら、オウム返しにラーシャの言葉を繰り返す。
「つまり、私がそなたを」
「俺を?」
「つまり……」

 ラーシャが両手を胸の前で握りしめて言葉を詰まらせているので、ジーラッハは我慢できずに吹き出してしまった。ゲラゲラ笑っているジーラッハは別人みたいだ。昨日までは天使みたいだったのに、今日は何と言うか……同じ年頃の男の子みたいだ。

「ごめん、いじめ過ぎた。こっちにおいでよ」
 あっけに取られて、ラーシャはジーラッハに導かれるまま横長のピアノ椅子の端っこにすとんと座った。
「俺も、君に謝らないと。エイロネイアの言葉ってまだ慣れなくて、何と言うか丁寧語で話しててね。それが女っぽく聴こえるのは承知してたんだ。それにもともと俺の外見はいつも女に間違えられる。それを利用してたんだ」
「利用……?」
「そう。君が行方不明のお姉さんを恋しがってるのは知ってたし、だからお姉さんにイメージを重ねてもらってた方が警戒されなくていいかな、と思って」
「警戒?」
「うん。だって君、いかにも男に免疫なさそうだもん」

 ラーシャは真っ赤になってしまった。確かに男性とは握手しかしたことがない。なのにジーラッハには初対面でキスしてしまったのだ。夢の中のこととはいえ。それからも何度となく抱きあげられたり抱き締められたり。女性と思っていたからこそ、怖がらずに受け入れていたのだ。

 胸がときめいてはいたけれど。

 ぐるぐるしているラーシャの手を取って、ジーラッハがにやりとする。
「それで? 俺が男ってわかってどう思った? 嫌いになった?」
 パニックで口をぱくぱくさせているラーシャにかまわず、ジーラッハは言葉を続ける。
「でもごめん、昨夜はきちんと伝えておくべきだったよね」
「伝えて……?」
「うん。俺が男だってこと。男として君が好きだってこと。キスする前に」

 キスする前に……? そして今、またジーラッハの顔がすぐ傍にある。いつの間に引き寄せられたんだろう。昨日もわからなかった。気付かないうちにいつの間にか抱き寄せられていた。ジーラッハの微笑みに絡め取られて。

「実をいうと自分で一番びっくりしてる。エイロネイアに来るまで、女の子にこういう気持ちになったことなかったんだ」
「こういう気持ち……?」
「うん。抱きしめたい。独り占めしたい。自分のものにしたいって」
「自分のものに……?」

 今もまた、絡め取られている。もう、ジーラッハの腕から逃れられない。

「もう、君はお姉さん代わりは要らないんだろ? 本当のお姉さんが見つかったんだから。だから俺は男に戻っていいんだよね?」


 昨夜と同じ。ジーラッハの銀灰色の髪と水仙の香りに包まれてしまった。
 今夜は十七夜。クロキアの伝説はどうだったっけ。十七夜にはキスしていいの? いけないの?


「俺のものになってくれる?」

 ラーシャは自分が何と答えたか覚えてなかった。何も答えなかったかもしれない。今度もジーラッハのキスは待ってくれなかったからだ。 
 ジーラッハはとっくに弾きやめていたけれど、ラーシャの頭の中ではピアノの音が響いていた。さっきまでジーラッハが弾いていたセレナーデが。






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*COMMENT-コメント-
▽らーちゃん少女v
ラーシャこんなに可愛らしい子だったんだ、お母さん知らなかったよ…(←

ジーちゃんマジ王子様。
うちの哀れっ子に女の幸せを教えてやってくれ。
リーズとエリシアもヴァルさんが書くと何か可愛いv ほほえまーでした^^
▽乙女+りぼん風味でこうなった
深夜テンションで書いちった。
後で読み直して自分で砂吐いた。

でもま、幸せそーだから、いいっか。
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目次(香月)
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『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

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イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
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