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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『嘆キノ森』・左右           (香月)

えーと、何も考えずに40分くらいで執筆したら、無駄においしい展開になりました まる

……いいのか、これ?

==================================================
 
(いたか?)
(駄目だ、こっちにはいない。まだこの辺りに……)
 そんな会話を片耳で聞きながら、キジローはリボルバーに弾を詰め直した。旧式で6発しか込められないのがつらい。
 対して向こうのエージェントは、エイロネイアっを中心にして普及されている魔道とか、魔術とかを使ってくるのだ。あれには分かりやすい弾切れはないらしい。射出するまでのタイムラグはあるが、いかんせん、多勢に無勢だ。
 キジローは逃げることに専念することにした。最初は逆に尻尾を捕まえて、何か聞き出せないかとも思ったが、よくよく考えればここは彼らの土俵なのだ。分が悪すぎる。
 路地裏に転がされた酒樽の群れの中に身を隠していたキジローは、はあ、と息を吐く。冬の近いエイロネイアはイドラに比べれば遥かに温かかった。それでも吐き出した息は白く空を舞う。
 両側の石壁に囲われた、灰色の四角い空が見える。過ぎた冷たい風に気を引き締めて、キジローは改めて気配を探った。
 通りを隔てた向こうから、かすかな会話が聞こえてくる。
「くそ! 一体、どこに隠れやがった!?」
「とにかく探せ。このままだとあの方に……」
 ――あの方?
 キジローは眉を潜める。もっと聞こえないか、さらに耳を澄まそうとしたとき、ひゅん、と空を裂くような音がした。
「がッ!?」
 キジローは身を竦ませたが、声が上がったのは男たちの方からだった。
「奴かっ!?」
「火器だけじゃなく、ナイフも使うのかッ! くそ、追えッ!」
 ――ナイフ?
 誰かがナイフで殺傷されたらしい。当然、キジローが放ったものではないが、男たちはばたばたと別方向に駆け出していく。
 ――何が起きたんだ?
 勘違いして去っていった男たちの背後を追おうと物影から身を乗り出したとき、キジローの顔の脇を何かが素通りしていった。驚いて振り返ると、それはばさりっ、と暗闇の中に同じ色の翼を広げて見せた。
「カラス、か?」
 キジローの前に躍り出たそいつは、くえ、と短く鳴いた。よくよく目を凝らすと、普通の鴉より一回り大きく、足が3本、翼は2対あった。
 キジローはこの国のシンボルを思い出す。ここの国の鴉はみんなこうなのか? いや、そんな馬鹿な。
 鴉はキジローの頭上を旋回すると、キジローが行こうとしていた方向とは逆方向の看板の上に止まった。それに近づくと、また旋回して先に行く。止まる。
 ――ついて来い、ってことか……?
 何かの罠かもしれないとも思った。だが、逆に行っても連中と遭遇するだけだ。キジローはすっかり乾いていた唇を湿らせて、リボルバーを握り締めると、鴉の後を追った。
 そのまま、いくつかの路地を右往左往したときだ。キジローの耳に、かすかな話し声が届いた。さっきの連中と同じらしい。
 やっぱり罠だったか? そう思って踵を返そうとしたとき、急にぽん、と肩を叩かれた。
「!」
「おっと」
 咄嗟に銃口を向けたが、間近にあった顔は軽く驚いた程度で両手を挙げて見せた。むしろ、驚いたのはキジローの方だった。
 彼はキジローの背後に、逆さまにぶら下がっていたのだ。見ると、彼は路地にあった怪しげな店の梁に足をかけてぶら下がっていた。
「……誰だ?」
「えーと、一応、敵ではないつもりなんで。これ、下ろしてくれませんかね?」
 男の毒気のない表情と声色に、キジローは僅かだけ銃口を下げる。ただし、いつでも撃てるような角度で。男はそれにへらっと笑ってから、梁を蹴ってキジローと同じ視点に立った。
 薄炎色の短髪から雫が飛ぶ。健康的に焼けた頬に伝う雨を拭って、まだ青臭い少年の顔をした彼は、意志の強そうな榛色の瞳を上げた。
「あいつらが追ってるのって、貴方っすよね?」
「……あんたもな」
「半分だけ当たりっす。でも、あいつらとは仕えてる人が180度違う」
 何となく、キジローは初めてエクルーと会ったときのことを思い出した。あいつも飄々と何気なく人の懐に入ってきたな。そして思わせぶりな言葉を吐いて、仲間に誘ってきた。
 男が急に真顔になった。
「時間がないので要点だけ言います。俺の主があんたを助けようとしています」
「……何故だ?」
「そういう人だからです。もし、助かりたければ俺にそのパーカーを貸してください。それで逃げてください」
「……囮になる、ってことか?」
「そうっす」
「見ず知らずの奴に、そんな大役は押し付けられない」
「見ず知らずかはこの際、関係ないっす。貴方がどんなことをしてあいつらに追われてるかは知りませんけど、やることがあるんでしょう? だったらそれを優先させてください。
 ここらは奴らのテリトリーであると同時に、俺のテリトリーでもあります。少なくとも貴方より上手く立ち回れるっすよ」
 キジローは眉を潜める。遠くの会話が近くなっていた。
 選択の時間は短い。会ったばかりのこの男を信用するか? もっと言うなら、この男が仕えているとかいう主とやらを信じるか?
 キジローの肩で、鴉が小声でくえ、と鳴いた。
「……一つ、聞かせてくれ」
「何です?」
「ナイフを投げたのはあんたか?」
 彼はにや、と笑って懐から銀の煌きを抜いた。呼び動作無しで手を少し動かす。かっ、と音を立てて、男の放ったナイフが、的のように下げられた店の看板に突き刺さった。ちょうどど真ん中だ。
「わかった」
 キジローは急いでパーカーを脱いだ。男は自分も来ていたジャケットを脱いで手渡してきた。羽織ると少し、肩幅がきつかった。
「ご信用、ありがとうございます」
「どっちにしろ、あんたみたいなのに追われてたら逃げられなさそうだ」
 男は苦笑して、肩に乗ってきた鴉の頭を撫でた。鴉は気持ち良さそうに首を傾げると、またキジローを誘うように先に行く。
「あれに付いていってください。安全なところまで行ってくれますから」
「あれはあんたの使い魔か?」
「いや、主からの借りもんす」
「……何者なんだ? あんたの主って奴は」
 男は応えずにまたへら、と笑うだけだった。もう一度だけ急かして、一気に跳躍し、瞬く間に屋根の上まで行ってしまう。
(いたぞ! 逃がすな!!)
 間髪入れず、男たちの叫び声が聞こえてくる。死んでくれるなよ、とキジローは心の中で願った。鴉が看板で羽を濡らしながら待っている。
 霧雨で濡れた髪を掻き揚げてから、キジローはまた鴉の後を追い始めた。


 






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*COMMENT-コメント-
▽イドラ
上から5行めの『エイロネイアっ』に執筆の勢いを感じて感動しました。地の文でこの熱さ…。
面白いから訂正しなくていいかも。

これ、いつ頃の設定なのかな?
『織姫…』と同じくらいということにしてもいいかな?せっかくキジローさんが切羽詰って逃げているから、みんなでシュアラから迎えに行こうかな?
お、リレー小説みたいだぞ?
▽おぉうっ!
ぶwww 気づいてなかった。
面白いから直さないでおこう(オイ)
ところでキジローさん、このとき既にご病気なのかな? 弱い兆候は出てるみたいな認識で書いてしまったけども;

一応、キジローさんから連絡がなくなる前の1年前をイメージしてましたが…
この後にルナちんが出てくるので、ルナちんがシュアラに持って帰った楽譜がきっかけで迎えにいく?とか?

ネタ出ししてみました。
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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