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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『嘆キノ森-PSI-missing-』・EPISODE3 (香月)

るなきじEPISODE3。
なんだか大事になってきた。
ってかルナちん、何者。

今さら思うけど、食事シーンなしで作品1本書くのって実は難しいと思う。

======================================
 
「おっちゃーん、おかわりー!」
「……」
 満面の笑みで端が欠けたお椀を差し出してくる少女に、キジローは軽く溜め息を吐いた。
「あれだけ戦った後でよく食うな」
「当たり前じゃない。腹が減っては何とやら、って言うし?」
 小柄な体によくこれだけのものが入るものだ。感心しながら、キジローは焚き火に翳した携帯用の鍋の中から鮭のアラ汁をお椀によそってやる。
 もちろん、旅の途中だ。鮭と言っても真っ当なアラの代わりに鮭缶を入れた似非物だが、それでもシュアラ出身だという彼女の口にはあったようだ。
「ま、子供がちゃんと食うのは良いことだ。ほら、たんと食ってくれ」
「へへ。しかし、おっちゃん、結構やるじゃない。美味しいわよ、これ」
「そうか?」
「うん」
 はくり、とじゃがいもの欠片を、さじで大きく開けた小さな口に放り込む。
 こういうところだけを見ていると、無邪気なものだ。それこそ昔のスオミのように。いや、彼女はここまで大口を開けなかったけども。
「けどあり合わせでよくこれだけ作れたもんね」
「ちょうど買い物の途中だったからな。俺なんて可愛いもんだ。俺の昔の友人なんて、貯蔵庫の余り物でフルコースを作るぞ?」
「……何、その超人」
「器用な、ただの不器用な超人だよ」
「何だそりゃ」
 にんじんを数度つついて唸ったあと、嫌そうな顔をしながら飲み込む。何となく微笑ましくなって、キジローは少女の――ルナのベール頭を撫でた。
 ずれたベールを直しながら、彼女は湯気の立つ鮭汁を一気に平らげる。
「ふー、食べた食べた。お腹いっぱーい」
「お粗末さんでした。久々に食ってくれる人間がいると嬉しいもんだな」
「おっちゃん、一人身なの?」
「んー……あー…、まあな。家族がいないわけじゃないけどな」
「ふぅん。ま、こんなとこを旅してるんだからそりゃあ、ワケありよね」
 お椀を置いてルナはあぐらを掻く。しばらく寛いでから、身を乗り出した彼女の目に、少しばかり真面目な光が灯った。
「じゃ、まあ、お腹もいっぱいになったところで。本題に入りましょうか」
「……」
 思わずキジローも真顔になった。こっそり固唾を飲み込んでから情けなくなる。何で俺はこの十を出てそこそこだろう、幼い少女相手にこんなに緊張してるんだか。確かに普通の子供が持っていないような力を見せ付けられたばかりだけれど。
「おっちゃん。あんた、さっき連中の言ってた"石の研究"って言葉に反応してたわよね」
「ああ」
 ごくり、と固唾を飲み込む。マンゴーのドライフルーツをかじりながら、ルナは真顔でキジローの目を見上げた。
「悪いけど、あたしが連中に言ったのは本当よ。あんなシュミの悪い研究、書面に残ってたのは全部燃やしたし、大体にしてあたしは研究の盗作なんて主義に反するし」
「いや、俺は研究の中身が知りたいわけじゃないんだ。そりゃ、聞かないとわからないこともあるけど……それより聞きたいのは、あの連中の正体についてなんだ」
「正体?」
「お嬢ちゃん、連中の言ってた"石"って、名前わかるか?」
「そりゃあ、書面を燃やすときに、ちょこっと目は通したりしたから覚えてるけど……」
「"石"って何だ? どういう"石"なんだ?」
「確か……名前は、『フローライト・ストーン』とか呼ばれてたけど」
「フローライト……」
 キジローは眉を潜める。フローライト、様々な色を映すガラス光沢の鉱石の名前だ。でも、何かがひっかかる。
 フローライトの、シュアラでの呼び名は何と言ったか……
「お嬢ちゃん、その石の効力、っていうか……。連中はその石を使って何をしようとしていたんだ?」
「うーん……あたしもそんな名前の魔道石なんて初めて聞いたから、効力とかあまり詳しく知らないんけど。
 おっちゃん、悪い人間じゃなさそうだから言うけど、連中、その石を人間や動物の体に埋め込んで、ある種の能力者を人為的に造りたがってたらしいの」
「!」
 キジローの眉がつり上がる。淡々と語る彼女に詰め寄りそうになるのを、膝に爪を立てて堪えた。目を閉じて深呼吸をする。ビンゴ、らしい。
「言っとくけど、製法とか合成量とか、そんなもん覚える気もなかったから知らないからね」
「安心しろ。俺もそんなシュミの悪いことは知りたくない。
 でも、それではっきりした。あの連中は俺が追っている奴らの仲間らしい」
「……ワケありね」
「お嬢ちゃん、あの連中に何したんだ?」
 問うとルナは小さな肩を竦めた。
「ちょっと離れた町でね。別の連中のアジトを潰したのよ。ま、小さいもんだったけどね。地下にこじんまーりとした犯罪結社なんて造っててさ。
 ちょいとぷちっとして、頂くもん頂いてきたら、あれってわけ」
「ぷち、って……、そんな無茶苦茶な……」
「そう? 意外といつもやってるよ?」
 一瞬だけ、キジローの中に燻ぶっていた怒りががくり、と抜けた。
「いつもって……あのなあ! それで大変なことになったらどうするつもりだっ! 現に今だって追われていたんじゃないか!」
「そんなこと言ったって……別に1人だったらどうにでもなったし……。そう簡単にどうこうなったりしないわよ」
「あのなあ…!」
「見ず知らずの子供に説教したって何も進まないよ、おっちゃん。とにかく、あたしはそれで狙われてるってわけ。
 さて、それで、だ」
「?」
「おっちゃん、ただで人の情報聞けると思ってたわけじゃないでしょー? 情報ってのは、等価交換が原則よ。
 で、おっちゃんの方にはどんなワケがあるっての?」
「いや、あんたを巻き込むわけに……」
「残念。連中に狙われてるだけであたしは立派な関係者なんだな」
 キジローの言葉を遮って、勝ち誇ったように腰に手を当てる少女。
「追われる方が生き残るためには、少しでも多くの情報が必要ってね。それともおっちゃん、か弱い美少女がここで連中に殺されても、まったく腹は痛まないってジャンルの人間?」
「……やれやれ、敵いそうにないな、お嬢ちゃんには」
 にやりと笑って言うルナに、キジローは苦笑が漏れた。一瞬後、少女が真顔に戻る。キジローはその顔を見下ろして、ぐっ、と拳を握った。


「ふうん……なるほどね。通りで聞いたことのない石だと思った」
 キジローが淹れた琥珀色の茶をすすりながら、ルナは呟くように言う。
「驚かないんだな」
「ま、魔道の世界にはいろいろ面妖なことも多いからね」
 空になったドライマンゴーの袋から砂糖を指ですいながら、何とも軽く返す。彼女は袋を潰すと、ねじって小さくしながらちらりとキジローを見た。
「で、おっちゃんはあいつらに何の恨みがあるの?」
「何の、って」
「確かに、そのミヅチっていう連中やイドリアンならともかく、おっちゃんが好んで関わることないでしょーが。あいつらの元になった教団とやらは解体されたし、その蛍石だってほとんどは回収できたんでしょ?
 まあ、イドラと縁が深かったってのが理由かもしれないけど、それにしたってこんなところで一人でうろつきながらあいつらを追わなくてもいーでしょーが。
 ってことは、おっちゃんは個人的にあいつらに何かの恨みがある。あるいはまだ別の理由がある。そう思ったんだけど?
 個人的恨み……そうね、例えば――その"石の子供"とやらの中に肉親がいる、とか」
 キジローは目を瞬かせてルナを見た。しばし、絶句してから、首を振って我に返る。
「お前、その歳でどういう地獄を見て来たんだ?」
 思わず問うと、ルナは少しだけ驚いたようだった。だが、すぐに元の自信ありげな笑みに戻る。
「そんな地獄だなんて大層なもんは見てないわよ。ちょっと処世術に長けちゃっただけ」
「そっか。大変だな、お前も」
 キジローはもう一度、少女のベールの頭を撫でた。彼女は居心地悪そうに首を竦めて、唇を尖らせる。
「あんたの言う通りだよ。……娘が、まだ帰ってきてないんだ。ずっと昔に攫われて、今も、だ」
「……そっか。いい親父だね、おっちゃん」
「そんなわけないさ」
 口の中の砂糖を茶で洗い流しながら、ルナはやや俯き気味に何かを考えていた。ぱちり、と薄い夜闇に焚き火の枝が小さく跳ねる。
 目を閉じていたルナが顔を上げた。
「おっちゃん、あたしと手を組まない?」
「何?」
「このまま見逃してくれる連中とも思えないし。少なくとも、国境を越える前にもう一仕事して置こうと思ったのよね。今の話聞いてると、連中、かなりやばいことやらかそうとしてるみたいだし。
 この村にさ、もう一個、連中のアジトがあるのよ。というか、前にあたしが潰したヤツが子飼いの研究所、って感じで、こっちが本命」
「……」
「子連れで行けるかと思ってるかもしれないけど、あたしならアジトの場所も知ってるし。
 それにはっきり言って、さっきのおっちゃんの玩具一つでどうこうなると思えない。まあ、がたいはともかく、火力が足んないよ。お互い、損はないと思うけど」
 キジローががりがりと後頭部を掻く。挑戦的な笑みを浮かべ、立ち上がった少女を見上げ、息を吐く。
「俺のカンだと、お嬢ちゃんは俺がどう言おうとそこに特攻をかけるつもりなんだろ?」
「あら、おっちゃん、予知能力でもあるの?」
「言っただろ? 俺は昔からカンがいいんだって」
 キジローも立ち上がって、薄い笑みを浮かべる。
「確かに、その方がお互いのためになりそうだな。
 それに、危なっかしい子供のお守りをするのは大人の仕事だからな」
「言ってくれるじゃない。でも、危なくなったら逃げてよね、おっちゃん。そんときは魔法に巻き込んでも責任取れないから」
「努力するよ」
 キジローが出した無骨な手に、その半分ほどもない少女の白い手が乗る。そのまま握れば折れてしまいそうな華奢な手を、キジローは軽く包んで握手とした。
 少女の唇がつり上がり、キジローが笑みを返すと、急にまた彼女は真顔になった。
「……おっちゃん、最初に一つだけ言っとく」
「……」
「今、おっちゃんの話が全部、本当のことだとしたら……。
 あいつら、かなり危険なもんに手を出そうとしてると思う。あたしも、ちょっと今背筋が凍った」
 魔道師を名乗り、連中の研究の内容を垣間見た彼女にしかわからないこともあるのだろう。キジローは口を挟まずに耳をそばだてる。
 ルナは一つ深呼吸をすると、口を開く。額に薄く、冷や汗が浮かんでいた。
「たぶんだけど……あいつら、合成獣とその"石"の融合実験をやろうとしてる」







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*COMMENT-コメント-
▽カレーうどんコンビ発足!
キジローが『おっちゃん』と呼ばれる度に、何か温かいものが胸に去来するよ。
何だか、フーテンのきじごろーって感じ。
昭和で演歌な味わいだねえ。
▽カレーうどん!
カレーうどん作ってもらえばよかったかな?(笑)

うちの爆弾娘がお世話をかけます(ふかぶか)。
次、さくやろーに挑戦だ……大丈夫か、私…
▽やまわろ・・・ちょい悪爺さん説
エイロネイアの湖に時々現れるミヅチのやまわろさん。(後にれーくん公認になってから、ほぼ駐在するようになります)

小さなスオミの世話をするために、やまわろも時々人型を取った。
……そのイメージを考えていて浮かんだのが、ショーン・コネリー! (ザ・ロックとか”小説家を見つけたら”の辺りの爺さんショーン)
ちょっとごま塩風の短めのヒゲ。髪は肩につくくらいの白髪をポニーテールにしている。
腰に響く低い声。聡明でちょっとお茶目なところもある。70過ぎても平気で女をこましそうな爺ィ……どうでしょう?

やまわろは、ちっちゃいれーくんが気になって、時々見守っていたけれど、基本的に人間の世界に干渉したくないので、心配しつつ様子をうかがっていた。”石”を扱う教団がエイロネイアに入り、セレッサが陰謀に利用する段になると、他人事じゃなくなって、今回、手助けします。
▽ちょい悪爺さんー!(笑)
ショーン・コネリー!
なるほど、分かりやすいイメージ…いいかも。70過ぎても女をこましそう(笑)

やまわろさん、うちの息子を気にかけてくれていたのね…うるうる。
うちの息子、娘がご厄介をかけますが、よろしくお願いします(ぺこり)。
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目次(香月)
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