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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『嘆キノ森-PSI-missing-』EPISODE5

ようやく来ました。アジト突入編。
…え? 前回のストーリー忘れてる? マジごめんなさい…。

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 地下室を見回っていた男は、ふと足を止めた。夜通しの見張りで、眠たげになっている目を擦り、耳を澄ます。
 ぴしっ。
 また聞こえた。地面が軋むような音。男はまず、足元を見た。
 ここは地下室だぞ? 最近、地盤沈下が起きるような兆候もなかった。大体、そんな地形でもないし、町の時計台の真下にこの場所が出来てから、そんなことは今までなかった。
 こつん、と男の脳天に小さい、固いものが当たった。
「ん?」
 男が上を向く。ぴし、とまた音がして、男の顔が引き攣った。
 いつのまにか、天井に細かなひびが走っている。さらに耳を澄ますと、小さく、トーンの高い声が聞こえてきた。
「我放つ……穿つは破壊の境界……砕け」
 男の顔が蒼白になった。
「な、なんだっ!?」
 その瞬間、亀裂の合間から、赤い光がぴん、と伸びる。男は慌ててその場から駆け出した。
「メガ・ブラスターッ!!」

 どがあああぁぁぁああぁあぁんッ!!

 けして広くない廊下に、砕けた瓦礫の残骸が落ちた。埃っぽい土煙が充満する。ひどい音が、近くにいた人間の鼓膜を貫いた。
「な、なんだこれはっ!」
「気を付けろ、敵襲だっ!!」
 土煙の中で何人かが呪を唱え始める。誰かが風を起こして、土煙を吹き飛ばした。視界が晴れて、廊下に瓦礫が積み上がって、天井にぽっかりと人一人分の穴が空いている。
「誰だ、くそっ!」
「待て! 下りてきたところを狙い打ちにするんだっ、早まるな!」
 誰かの声に呼応して、その場に駆けつけた全員が得物を構え、魔道師は掌に光を灯す。一瞬、緊張が走った。
 がちゃり。
 鉄の音が響く。穴の上から、ごつい鉄の塊が覗き、一瞬のうちに、空に赤い紋様を描く。顔色を変えた男たちをあざ笑うように、幼い声が響いた。
「我望む、放つは火神に祝福されし紅弾、出でよフレイ・フレイアっ!」
 瞬く間に廊下が爆炎に包まれる。熱風と炎と黒い煙が辺りを支配した。
 しばらくして、ゆっくりと黒い煙が薄れていく。それを待って、軽い身体がかしゃん、と瓦礫の上に飛び降りてきた。
「おーおー、結構、いたもんだわ。骨がないわねー」
「お嬢ちゃん、それは悪役の台詞だぞ」
 瓦礫の上に仁王立ちしたルナは腰に手を当てながら、周りを見渡す。後を追って下りてきたキジローは、周囲のむごい状況に思わず眉間に皺を寄せた。
 焦げ臭い匂いの立ち上る中で、服のあちこちを焦げ付かせた人間が、ひくひくと痙攣しながら気絶している。何人も。死屍累々。
 キジローにとって同情の余地などないが、それでも少し無茶な真似だ。
「何とも……無茶苦茶やるな、お嬢ちゃん」
「何言ってんの。こいつらに比べたらこっちは多勢に無勢なんだから。不意打ちできるときにがっつり数を減らしとかないと」
 何とも頼もしいというか、逞しいというか。
「っ! お嬢ちゃん!」
「へ!?」
 『それ』に気がついたキジローがルナの小さな身体を抱え上げて跳ぶ。たった今、少女が立っていた場所を青い光が通過して、霧散した。キジローの肩に捕まったルナが、それを見て眉を潜めて視線を上げる。
 その視線の先を追って、キジローも息を飲む。
 薄暗い廊下に、ギロリと尖った角が浮かび上がる。キジローより頭2つ分は大きな体躯、歪に丸まった腰、妙に滑った厚い肌の装甲、3本しかない指には鋭い爪が光っている。裂けたような口元には、汚い黄色い牙が見えている。
「何だ、あれは……っ!」
「あれが合成獣よ。ベースは獣魔[デモンビースト]ってとこね。物理攻撃は効かないからね!」
「あ、ああ、わかった!」
 爪を擡げた合成獣の眼前に、また青い光が浮かぶ。間を置かずに放たれた光を、キジローはルナを抱えながら避ける。床板に当たった光は、そのまま霧散する。
「何だ、こけ脅しか?」
「物理的威力がないだけよ! 当たったら死にはしないけど、昏睡状態になるから気をつけてよね!
 我求む、途往くは銀の閃光、従えシルフィードっ!」
 ルナが放った銀色の矢の束が、合成獣の腹を貫く。気味の悪い悲鳴が上がり、獣の身体が弾けるように溶けて消える。
「こんなもんを番犬にしてるなんて、どうやらあたしの予想はど真ん中みたいね……」
「お嬢ちゃん!」
 キジローの声に彼女は顔を上げる。薄暗い廊下の向こうに、無数の角と、図体の大きな頭が並んでいるのが見えた。


「我滅す、叫ぶは精美なる亡びの咆哮、唸れブレイズシェルッ!!」

 轟っ!!

 銃口から放たれた閃光の渦が、3体の合成獣を飲み込んで霧散する。辺りに緑色の体液が飛び散って悪臭を立てた。
その匂いに鼻を曲げながら、キジローは新しく持ち替えた銃を構える。照準を合わせて引鉄を引くと、銃口からまっすぐに赤い光が伸びて合成獣を貫いた。同じ緑色の体液を撒き散らして、仰向けに倒れる合成獣。
「おっちゃん、それ、確かにこいつらにも効くけど! おっちゃんの精神が弾倉なんだから、使いすぎるとぶっ倒れるよ!」
「心配するな! 根性には自信がある!」
「はっ! 元気なおっちゃんね、白髪が増えても知らないわよ! 貫け、ファンネイル!!」
 轟音を立てて、放たれた光と炎が廊下全体を埋め尽くし、その場にいた合成獣が炎の中に消えた。反動で起こった風に、体ごと飛ばされそうになる。
「おい、お嬢ちゃん、無理するな!」
「無理なしで片付けられればね!」
 爆炎の収まった、煤けた廊下を駆け出す背を追って、キジローも走り出す。が、
「く……」
「っ?」
 足を止めて蹲ったキジローに、ルナは慌てて振り返る。
「おっちゃん……?」
 銃のグリップを握った手が小刻みに震え始める。それをもう片方の手で抑え付けたキジローに、ルナは眉間に皺を寄せ、
「っ!?」
 廊下の向こうへ、構えを取った。

 どむッ!!

 ルナが張った風の障壁に、廊下の向こうから放たれた炎の矢が弾かれて四散する。弾かれたようにルナが顔を上げる。反動に起きた風に、赤いベールが舞った。
 キジローも震えを振り切って立ち上がる。
「随分、不躾な方々ですね」
「生憎、玄関てものが見つからなかったもんでね。そっちこそ、客人にいきなりこの仕打ちは礼儀がなってないんじゃないの?」
 かつん、と黒ずんだ廊下に靴音が響く。キジローは埃で霞んだ目を擦り、その影を凝視した。薄暗い廊下の中に、人の影が浮かんでいる。
 歳は……中年にも見えるし、極若くも見える。長い銀色の髪、嫌味に笑った青い瞳。義理の娘の容姿と同じ色の髪と瞳、サクヤのように、年齢を感じない顔付きだ。そう考えて少し、胸糞が悪くなった。魔道着、というのだろうか、長い裾と袖が特徴の白い法衣を着ている。
 だが、何だろうこの違和感は。ぴしぴしと、肌に触るものがある。威圧感? あんな貧相な奴から?
 ルナが数歩、後退り、銃口を構えた。
「やれやれ。こちらとしては少々穏便にいきたいところなのですが……。問答無用、というところですか?」
「問答しないつもりはないんだけど……。あたしたちがやりたい問答を、あんたが素直にやってくれるとは限らないし?」
 キジローも銃口を構える。
 こいつは、教団の、このアジトのお偉いさんか何かか? 今まで擦れ違った雑魚とは、格好も雰囲気も違う。
「お前……何者だ。教団の犬か」
「これは心外だ。我々を首輪のついた下等生物と一緒にしないで頂きたい」
「首輪がついた分、狂犬[クレイジーハウンド]の方がマシだと思うけどね。おっちゃん!」
「ああ!」
「逃げるわよ!」
「は?」
 赤いベールを翻して、少女はキジローの腕を掴み、引き摺って逆方向に廊下を走る。ルナが構えた銃口が、風向きを変え、背後から穿たれた赤い閃光が逸れて廊下の壁に穴を開ける。
 ルナはその穴の中に飛び込んで、その先の廊下を走り出した。
「どういうつもりだ、お嬢ちゃん!」
「どういうつもりも、こういうつもりも。どうも、何となく偉そうなヤツだけど……。
 あいつ、問答無用とか言いつつ、穏便にどうこうとか言ってたでしょ。いきなり出てきて、こっちにわざわざ姿を見せて。って、ことは話をしたがってたってことよ」
「話?」
「そう、無駄な長話。私に子飼いの組織を潰された時点で、こっちにも何かの襲撃があるかもしれないことくらいは予想できたはず。
 いくら見られてまずいもんがあるって言ったって、常にあんなに番犬を用意できてるわけないでしょーが。
 連中のお喋りなんかに付き合うだけ無駄。その間に何かまずい仕掛けでも用意されたら、まずいことこの上ないし、連中がよっぽどのへたれだったら、その間に証拠隠滅、なんてことになりかねないわ。
 つまり! 話に付き合ってるだけ、連中に有利な方に動くだけよ。シロクロのはっきりしない潜入捜査ならともかく、喧嘩を売りに来て、相手に弁解のチャンスを与えるだけ無駄!
 ……ま、あんなところに出てくるってことは、あっちの方向にヤバイもんがあるってことなんだろうけどね!」
「じゃあ、どうするんだ!? 連中に付き合わなくても、目的のものを発見出来なきゃ意味はないだろう!?」
「決まってるじゃない! こーすんのよ!」
 ちゃきり、とルナの銃が鳴る。一瞬、足を止め、銃口をそのまま右側の壁に向ける。
「お嬢ちゃん!?」
 キジローが驚愕の声を上げるが早いか、銃口の先に魔方陣が浮かぶ。そして、

 どがあぁぁんっ!!

 石壁の一部が抉れて、煤けた瓦礫と化す。ぱらぱらと崩れた瓦礫の砂が、床に落ちて音を立てた。向こう側に別の廊下が見える。
 ルナはすぐさま、壁の真ん中に開いた大穴に身を滑り込ませた。キジローも背後をちらりと振り返り、視界の隅に合成獣の姿を止めると彼女の後を追う。
 来た方向とは逆の方向へ廊下を走り、ルナの小さな背に追いついた。
「無茶苦茶するな、お嬢ちゃん……」
「このまま何回か同じことをしてけば、いつかは辿り着くってもんよ。方向さえわかってればこっちのもんだわ!」
「やれやれ、ここは地下だぞ? 崩れないように頼むぜ」
「柱さえ倒さなきゃ大丈夫よ。魔道研究施設ってのは、ある程度丈夫じゃなきゃ意味ないからね!」
「随分、頼もしい味方を得たもんだ。じゃあ、ちょっと失礼するな!」
「へ? わきゃっ!」
 ルナの軽い身体がひらりと浮かぶ。小さな体を肩に担ぎ上げて、キジローは再び廊下を疾走し始めた。
「方向を指示してくれ。俺の方が体力はある。効率的だろ?」
「だね。よっしゃあ、行くよおっちゃん!」


 どがあああんっ!!

 ルナの構えた銃口が何度目かの火を吐く。轟音を立てて、同じように壁が粉と瓦礫に変わる。キジローは口元を多い、もう片方の手で粉塵からルナの顔を守ってやる。
 けほっ、と小さく咳をして、閉じていた目を開く。キジローは薄目を開けて、そして一気に目を見開いた。
「ここは……っ!」
「けほっ……ちょっとやりすぎ……た……ッ!?」
 少し遅れてルナもまた、手の指の間からその光景を見た。そして絶句する。
「これ……」
 ルナの小さな喉が固唾に上下する。キジローの掠れた呻き声が漏れた。
 照明の落とされた薄暗い大部屋。光苔が薄っすらと照らす中で、ぼんやりとその光景が浮き上がる。
 林の木のように何本も、透明な円柱形のガラスの水槽が生えていた。ルナの背を軽く越え、キジローの背丈も越えた柱は、2mはあるだろう。その中に度々ごぼり、と空気の珠が浮き沈みしていて、その珠の群れの中、
「こいつら……妖狐?」
「妖狐?」
 背中を丸め、水槽の、妙に青い水の中にたゆたう白い影。言われて見れば、狐の形に見えなくもない。だが、そう言われなければ分からないほど、それは見たこともないようなフォルムを描いていた。
 歪な爪、背中と思われる部分はやけに盛り上がり、頭には狐の可愛らしさなどなく、妙に小さい。ルナはそれに目を細めて、唇を噛んだ。
「地方によっては使い魔にされたり、神として崇められたりね。霊力の強い妖怪の一種よ。
 でも、何でこんなに……っ」
「……知りたいですか?」
 静かな声にはっ、と気がついて顔を上げる。薄闇の向こう、聳え立ったガラスケースの合間に、あの、銀髪の男が立っていた。
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*COMMENT-コメント-
▽いい組み合わせ
にわかコンビと思えない息の合い方が小気味いい。いいな、シリーズ化できそうだね。
キジさんがすっごく楽しそうです。
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目次(香月)
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『嘆キノ森』
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『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

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かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
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