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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『嘆キノ森-PSI-missing-』EPISODE6

PSI-missing、第6話まできました。…あと何話になるだろう…。
ルナちんがじわじわ元気なくなってきます。

=====================================
 
「随分いいインテリアじゃないの。あんたの趣味?」
 開口一番に吐いた言葉は立派な挑発だった。キジローは少し呆れて、軽く前に出た少女の肩に手を置く。
 相対する男は含み笑いを漏らすと、薄っすらと口元に笑みを浮かべて少女を見下ろし、いや、見下した。
「気に入りましたか?」
「生憎、あたしは昔から生物室ってヤツが苦手でね。ホルマリン漬けの蛇やら鼠やらは好かないのよ」
「それは残念。ですが、この子たちの中身を知れば、きっとお気に召しますよ」
「"蛍石"とやらを使った合成獣の実験、ってヤツ?」
「お嬢ちゃん!」
 至極、ストレートに言い放つルナにキジローはさすがに面食らった。男の眉がぴくり、と動く。だが、ルナは胸を張ったまま、水槽を見上げてさらに続けた。
「お子様に見えてもあたしも魔道師の端くれなんでね。ここの魔道施設が、合成獣を造るための実験場だってことくらいはわかるのよね。
 そんでもってこれは何? 妖狐と生命力の強いヒドラとでも融合してんのかしら。さしずめ、個体数の少ない妖狐の生命力を高めるための実験例ってところ?」
「……それだけわかっているなら話は早い。いいことでしょう? もともと合成獣技術とは、何らかの問題がある生物とそれを補う動物を融合し、種の保存を狙って生み出されたもの。非合法なことは何もありませんよ」
「ところがどっこい。あんたたちの子飼いの連中は、"蛍石"なんて危なっかしいもんを持ってた。結構、とんでもない代物だってねえ。
 あんたたちのもっと大きい親御さんは、それで人間を玩具にしてたそうじゃない」
「……」
 銀髪の男はあくまで余裕の笑みで答える。その笑みが、逆に肯定を表しているも同然だった。キジローはその嫌味な笑みに唇を噛み、込み上げる怒りを抑えていた。牽制するようにルナが一瞬だけこちらを向く。
 大丈夫だ。こんなところで、いきなり激昂したりはしない。掴める手がかりも掴めなくなるような真似はしたくない。
「でも、考えてみればナンセンスっちゃナンセンスなのよね。戦争の道具にしたいんでしょ。
 なら、人間なんて首根っこ捻っただけで死んじゃうような生き物なんかより、ずっと丈夫で精神力も高い、それもそれなりの知力を持った獣につけるのが効果的。人間と違って、いくら攫っても足が着き難い、コストもリスクもお得な上にあんまし腹も痛まない。
 随分、合理的なことを考えたじゃないの。違う?」
「ほう……」
 男が感嘆に近い息を吐いた。まじまじと、薄暗い闇の中に仁王立ちした少女を見つめる。キジローは思わず彼女を庇うようにして前に立った。
「その歳でそこまで見抜くとはな。感応の力は無いにせよ、惜しい人材だ。
 子供、いや、女。名は何と言う」
「聞かれて素直に答えると思う?」
「だろうな。まあいい。
 どうだ、我々の仲間にならんか?」
 キジローが眉を潜めてルナを見下ろした。だが、その杞憂を笑い飛ばすように、ルナはふん、と鼻を鳴らす。
「冗談。あたしには狐の瓶詰め作って喜ぶような趣味はないのよ」
「残念だ。なら、答えは一つしかないな」
 ゆっくりと掲げられた男の掌に、薄い光が灯る。キジローとルナは反射的にそれぞれ左右に跳んだ。

 どんっ!!

 薄暗い大部屋に土煙と石の残骸が飛ぶ。空の水槽が倒れて、びしゃりと水を吐き出した。その影に、銃を握り締めたルナは身を潜ませる。
「知られたからには容赦なし、ってか。シンプルじゃないの!」
「くそっ!」
 反対側の水槽に身を隠したキジローが、腕を伸ばして発砲する。赤い光の筋が2本、男のいた空間を貫いた。だが、男はゆらりと揺らめいたかと思うと、平然とした顔でにやり、と笑う。
「な……っ!」
「っ! おっちゃん、銃を持ち替えて! あいつ、ただの人間じゃないっ」
 嫌な予感が胸を掠める。今の銃の性能をすべて知っているわけではない。だが、これまでの道合で合成獣たちを薙ぎ倒してきた立派なお守りだ。
 けれど、相手はあの蛍石を持って、あまつさえ人体に埋め込むだけではない、その応用じみた使い方を開発している連中。
 まさか、という予感が胸を掠める。
 キジローは言われた通りに、今までのリボルバーに銃を持ち変えた。
「どういうことだ?」
「精神攻撃に馴れてるだけかもしれないし、物理的な弾丸の方が効くかも。気休めだけど」
 あまり良くない顔色で、ルナも言う。キジローほどリアルではないだろうが、考えていることは一緒だろう。
 瞬時、キジローのいた水槽を白い光が貫いた。慌てて腰を屈めて手を付くが、がしゃり、と割れた水槽から漏れた水をまともに被る。頭を保護したおかげで、ガラスの破片に大事はなかった。
 だが、ぺしゃり、とキジローの目の前に何かが落ちる。歪に歪んだ白い体。もう息をしていない。
「……っ!」
「あんた……っ」
「……材料はいくらでもありますからね。1体や2体、どうと言うことはない」
「そうかい、ご立派な精神ね!
 道往くは銀の閃光、従え、シルフィードっ!!」
 ルナの銃口が2条の銀色の炎を吹く。男はふ、と笑って半歩横にずれて、1つめの筋条の炎を避け、もう2つめの炎を素手で叩き落した。
 笑みを浮かべたまま顔を上げ、そこに、
「!」
 炎を追って駆け出したキジローの銃のグリップが、男の薄い胸板に叩きこまれる。男がよろめいたと同時に、キジローの銃が火を吹いて肩口を抉った。
 キジローはそのまましゃがみ込んで、転がるように退避する。体勢を整えた男の目に映ったのは、目の前に突きつけられた黒い銃口だった。
「っ!」
「我滅す、叫ぶは精美なる亡びの咆哮、唸れブレイズシェルッ!」
 男が苦し紛れに少女へ手を伸ばす。一瞬だけ、手が彼女の首に触れるが、それが締められるより早く、

 どごおおぉおぉおぉぉんっ!!

 薄暗い地下室に、最大音量の轟音が轟いた。


 男の軽そうな体はまともに吹き飛んで、向こうの壁を破壊して止まった。瓦礫の中に男の白いローブの切れ端が見える。
 キジローは懸念してルナを見た。正眼に構えていた銃を下ろした少女は、汗を拭いながら、
「……何だか知らないけど、あんなタフなヤツ。死んでないよ。たぶん」
 汗は暑さのせいではないようだった。
 キジローは情報を聞き逃すことのなかった安堵と、漠然とした不安を抱えて眉間に皺を寄せた。身を起こして、とりあえず男を引きずり出そうと部屋の奥へと進み、
「待った」
 そのキジローをルナの声が止める。キジローは首を傾げながら立ち止まり、少女の方を振り向いて、少しだけ怪訝そうに眉を潜めた。
「どうしたんだ?」
「……」
 ルナは下ろしかけた銃を再び構えていた。
 大部屋を見回して、照準を合わせる。……数多の水槽の中で眠る、何匹もの狐たちに。
「おい、お嬢ちゃん!? 何する気だ!?」
「……何する気だ、って」
 ルナは少しだけ真剣な目に戻って、大きな目でぐるりと部屋の中を見渡した。
「こんな危険なもん、放って置けるわけないじゃない」
「まさか……ッ!」
「そのまさかよ」
 ルナの唇が低い声で呪を唱え始める。ないはずの風が、少女のローブと髪を靡かせて、白い光が幾何学の紋を刻んでいく。
 キジローはわずかに呻いて、彼女の駆け寄った。
「やめるんだ、お嬢ちゃん!」
「っ!」
 銃身を掴み上げると、ルナは息を漏らして詠唱を止めた。光も、風も止まる。ルナは顔を歪めてキジローを睨みあげた。
「お嬢ちゃん! ここにいる奴ら、全員殺す気かっ!? ここにいる狐は、ただ利用されてるだけなんだろうっ!?」
「……」
「だったら、何も殺す必要はないはずじゃないかっ!」
「……あのねえ、おっちゃん」
 ルナは大仰に溜め息を吐く。銃口を下ろさないまま、彼女は緑青色の瞳を吊り上げて、口を開く。
「確かにここの妖狐、大半が幼生だし。望んでこんなところにいるんじゃないんでしょうよ。そういう意味では被害者だし、おっちゃんの言う"石の子供"と一緒と言っちゃ一緒なんだろうね。
 おっちゃん、その辺、こいつらとその子たち、重ねてるんでしょ」
「……」
「でもね、おっちゃん」
 沈黙したキジローに、さらに彼女は息を吐く。
「前例のない、得体の知れない研究途中で。こいつらが何かの弾みで、勝手に動き出したらどうなる?
 被害を見た事はないけど、かなりやばい代物なんでしょ。その"蛍石"、ってのは。
 下手したら、この町だけの被害に収まらないかもしれないよ。悪いけど、あたしはそれを放って置くわけにいかない。
 ……あいつと、同じことをするとしてもね」
「だが……っ」
「おっちゃん、この国の状況知ってる? お隣と延々にらみ合い。政党にはやや過激派が集まって来てる。元々、血の気の多い軍事国家だからね。
 国のトップがどんなヤツかは知らないけど、もし野心のあるヤツがお偉いさんにいたとしたら――軍事国家にとってこの空間、宝の山だってこと、わかる?」
『大陸が、火の海になります。みんなみんな、焼けてしまいます。戦争になって、大勢の人が死んでしまいます』
 数日前に、少女とそう変わらない歳の少年から聞いた言葉が蘇る。
 年端もいかない少女から吐き出された言葉と声の語尾は強く、そのままキジローを打ち据えた。眉を吊り上げて、自分の意志と言葉を吐き出すこの娘に比べたら、自分は今、きっと情けない表情をしているのだろう。
 『どんな地獄を見て来たんだ?』
 違う。
 今、見ているのかもしれない。この娘は。地獄を。
「お嬢ちゃん、一つ聞いていいか?」
「?」
「ここにいるのが……もし、狐じゃなくて、人間だったら、どうするんだ?」
 返答に詰まる……と思えば、少女はまったく変わらない表情で、再び口を開く。
「……同じことだよ」
「……」
「狐にしろ、人間にしろ。生きる権利は持ってる。あたしは自分の身の安全と、比較的平和なご近所さんのために、身勝手にその権利を奪う。
 人間て生き物はさ、そうして生き延びてきたもんなんじゃないの? 悪知恵を働かせて、罪を犯しながらね。
 じゃなけりゃあ、繁殖力も耐久力も寿命も中途半端なこんな種族が、ここまで繁栄するわけないじゃない」
「……」
「誰かがやらなきゃ、やれる誰かがいなけりゃいけない。あたしはここを戦場の火種にするのも、あたし自身が死ぬのも嫌。……それだけよ」
 キジローはぎゅ、と目を閉じた。この娘は、幾つだったっけ? 11、と言っていた気がする。
『子供ってもんは、もっと笑ったり、泣いたり、わがままを言うもんだ』
 自分が言った言葉を思い出す。
 この娘はキジローに対して笑っていた。泣いていた。わがままも言った。
 でも、それらは、本当にこの娘が笑いたくて笑って、泣きたくて泣いて、心の底から言いたかったわがままなんだろうか。
「お嬢ちゃんの言いたいことはわかった。正論だよ。
 でも俺はな、こいつらをどうにか出来るかもしれない方法を知ってる」
「……どんな?」
 銃口を構えたままの彼女は、キジローを警戒するような目で見る。刺激をしないように、その銃口を抑えながら、
「昨日、話しただろ。ミヅチに運んでもらって、泉に沈める。"石の子供"と同じだ。
 ミヅチならここから一瞬でイドラまでこいつらを運べる。この町にも、お嬢ちゃんのご近所にも迷惑はかからない」
「……」
「ミヅチは俺が説得する。だから、ここは俺に任せてくれないか?」
 ルナはしばらくキジローの目を睨んでいた。逸らせば、信頼も信用もしてもらえなくなる。直感的にそう感じたキジローは、そのまま口を真一文字に結んで、彼女の鋭い視線を見返した。
 しばらく経って、小さな口から、大きな溜め息が漏れた。
 無言で銃口が下ろされる。
「……ありがとう」
「……言ったことは、守ってよね」
「ああ、勿論だ」
 ミヅチは力を貸してくれるだろうか。大丈夫なはずだ。キジローは深く頷いて見せた。
「あのな、お嬢ちゃん」
「?」
「あんたの言うことは怖いくらい正論だよ。でもな、その悪知恵を働かせるのも、罪を犯すのも、何も10歳の子供でなくていいんだ。
 子供はただ食べて寝て遊ぶ。それだけでいいんだよ」
「……11よ」
「そんな変わらんだろう」
 キジローはわしわしと、彼女の頭をローブの上から撫でた。銃をホルスターに収めて、彼女は深く俯いた。
 狐の水槽を見回してから、キジローはまた崩れた壁に爪先を向けて――
 ぽつり、と聞こえた気がした声に振り向いた。
「……って」
「お嬢ちゃん?」
「……だって、仕方ないじゃない」
「?」
「……だって……今まで……。だって、あたしは―― っ!」

 ぴしっ!!

 ひび割れた音が響いた。
 ルナもキジローもはっとして顔を上げる。音の発信源は、崩れた瓦礫の方だった。
 2人が構えを取る。同時に、

 どんっ!!!

 崩れた瓦礫の向こうから、凄まじい金色の光が2人の目を焼いた。
「っ!」
「お嬢ちゃん!」
 目を焼かれながら、キジローは彼女がいた方角に手を伸ばす。その瞬間、衝撃と共に、体が宙を舞った。
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*COMMENT-コメント-
▽きじごろー、いいっ!
いいこと言うじゃないか、きじごろー!
自分とこのキャラなのに、惚れ直しました。
ルナちん、負けるな!
君はみんなに愛されているよ!
▽惚れ直してください(笑)
キジローさんやアカネちゃんは私が言ってあげたい言葉をすらすらっと言ってくれるので大好きです。
良い魔女になってイドラに行きます。今より明日、もっと強くなる。
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あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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