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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

2017.04│ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

『瑠璃の鳥』中編  香月

ありしん出会い編中編です。

外野で騒ぐ野郎ども+α。
…どうでもいいが、仲いいな、お前ら。
エイロネイアに来るとレンが突っ込みにまわる件。シュアラだと確信犯ボケなのに。

ベルサウス老が多少、シュアラやイドラに縁のある人だったらしいので、カシスは割と詳しいという設定で。

=====================
 
 
「……それで、何故、私が呼ばれているのです?」
 水の色をした長い髪を払って、彼は開口一番、そう言った。慇懃な口調だが、言葉の端にはかすかな不満が含まれている。
 皇立研究所の医学研究室の一室。簡易ベッドに少女を横たわらせて、人払いを済ませ、レアシスが呼び寄せたのが彼だった。
 皇室側近であり、竜騎士団副団長アリッシュ=フィルグラッセは、眉を潜めて主君を見下ろした。サイドテーブルの上には行儀の悪い魔道技師が立膝を付き、壁際には護衛役の剣士が背を預けている。ベッド脇の椅子には、ドレスを纏った竜の仔が甲斐甲斐しく拾い子の額に冷たいタオルを当てていた。
 レアシスとサイドテーブルに腰掛けたカシスが、ちらりと視線を交わす。頷いたのは主君の方だった。
「……まだ精密検査はしていないんだけどね。脈拍や潜在魔力数値、……どうやら人間を逸脱してるらしい」
「……何を仰りたいのですか?」
「つまりだ。そこでぐーすか寝こけてる嬢ちゃんは、ヒト体型を取れる別種族、ってこった。人外には人外。単純明快な判断だろ?」
 歯に衣を着せなさ過ぎる魔道技師の台詞に、アリッシュがまともに表情を歪ませた。レアシスは多少の力を声に込め、
「言葉を選ぶということを覚えた方がいい、カシス。無用な争いを生むだけだ」
「へいへい。まあ、どう取り繕うかはさておき。……そういうことだ、悪魔族のおっさん」
「そう仰いますが、その娘。別段、悪魔族というわけでもないでしょう。何故、私に?」
「……連中の、昔のアジトに倒れていた」
 答えたレアシスに、アリッシュが軽く俯かせていた顔を上げる。
「……それは」
「何らかの関わりがあるにせよ、ないにせよ……。信頼できる人間、もう一つ、万が一の場合に備えられる人間に相談しようと思った。それだけでは理由は不足かい?」
「……いいえ。納得しました」
 アリッシュは首を振って厳しい表情をほんの少し和らがせた。呼応してレアシスも少しだけ肩から力を抜く。
「……話が纏まったのはいいが。結局、その娘は何者なんだ?」
「さあな。検出数値も心拍数も俺の範疇にねぇよ。ってことは、エイロネイアやルーアンシェイル外からの来客、って可能性が高い、ってこったな」
「……しかし、ホーエンハイム少佐のデータにもないとなると……」
「……ん」
 そのときだった。
 寝台の上の少女から、溜め息にも似たかすかな声が漏れる。はっとして振り返ると、微動だにしなかった少女がかすかに瞼を動かした。
「目が覚めたですか?」
「……」
 立ち上がって真上から少女を覗き込んだシャライヴが問う。彼女は薄っすらと目を開いて、ぼんやりとシャライヴのあどけない顔を見た。眠り涙を溜めた碧い瞳は、まだいまいち焦点が合っていない。
 重たそうに頭を動かして、かすかに首を振る。
「……気がついたみたいだね」
「ここ、は……」
「心配しなくていいのですよ。場所は言えないけど、悪いことをする場所ではないのです」
 蚊の鳴くような声で言う少女に、にぱ、と笑みを浮かべたシャライヴが答える。だが、少女はその笑顔にも反応薄く、かすかに唇を上下させるだけだった。
 テーブルに腰掛けたままのカシスが、くい、と形の良い顎で合図する。アリッシュは小さな乾いた溜め息を吐いて、寝台の脇へと進み出る。少女はわずかに首を動かして、ぼんやりと彼を見上げた。
「……貴女の名前は?」
「……」
「?」
 唇が動く。か細すぎて上手く聞き取れない。仕方なしに、今一度耳を欹てる。
「……しんしや」
「しんしや。辰砂[シンシヤ]かな?」
 いち早く耳に入れたレアシスが問いかける。少女は横になったまま、こくり、と頷いた。
「洋紅の鉱石か。良い名だね」
「あなたはどこのものですか?」
 畳み掛けたアリッシュの問いに、また唇を奮わせる。
「あ、か、い……赤石沢、か。シュアラの言葉に近いけど」
 ちらり、とレアシスが壁際に寄りかかったレンに視線を走らせる。“シュアラ”の文字が耳を掠めた瞬間に、わずかに眉を動かしたレンはゆっくりと首を振った。覚えがない、とでも言うように。
「国はどちらです?」
「……?」
「あなたの住んでいた場所は、他にどう呼ばれていましたか? もっとも大きな区域を答えてください」
「……水[hydra]」
「……イドラ、ですって?」
 ようやく少しだけしっかりしてきた少女の言葉に、アリッシュの眉間に皺が寄る。
「……イドラ。西の最果てか? あんなところに住む種族がいたのか」
「その考えは古いよ、レン。あそこには独特の種族から、僕らと同じ人間も暮らしている。生活レベルはけして低くない。研究院でもイドラからの留学生枠を設けている。かれこれ十数年前からね」
「……意外だな。エイロネイアは閉鎖空間だとばかり思っていたが」
 ぼそり、と漏らしたレンの疑問に、レアシスの目に含んだ笑みが漏れる。どこか自嘲的で、遠い目つき。レンはしまった、と口を噤んだ。
「……無理もない。表面上も、裏面も。いろいろと問題を抱えた国だから。諸国の評判がどんなものか、僕も理解しているつもりだ」
「……悪かった」
「構わないよ。さて、イドラか。……イドラ」
 レアシスはす、と目を細めて言葉を反芻する。口元に手を当てて、何かを逡巡した後、
「……まさかとは思いますが。あなたはミヅチやホタルの仲間ですか?」
 少女の表情が、初めて目に見えて変わった。碧い目を見開いて、ぱちくりと佇む黒衣を見上げる。
「ご存知なのですか、殿下」
「3ヶ月前、くらいかな。研究院にイドラから留学生が来ててね。少し縁があって……いろいろと聞かせてもらった」
「ホタルにミヅチ、ね。へえ」
「お前も知ってるのですか、若年寄」
 だんまりを決め込んでいた魔道技師が口を挟んだ。悪戯に細めた朱眼が、面白そうに少女を見る。
「竜神の一種だな。蛇の神だ。風水を奉るんだったか。
 大昔には紗羅あたりにもいたらしいがな。てっきり絶滅したとばかり思っていたが。へえ、生き残ってたのか」
「……」
 カシスの遠慮のない台詞に、少女が目を伏せる。
「500から1000の年月をかけてヒト型を取る。水を媒介に空間を移動したり、地脈水脈を操るって話だけどな」
「空間、か」
 何かを悟ったようにレアシスが繰り返した。
 地底湖の湧き水を思い出す。まさかとは思うが、西の果てからあんなところまで空間を飛んだというのか? 人間外では特別な能力でもない。高位の妖魔や魔物なら使う術ではあるが、無意識下でそんな力が働いたりするものなのか。
 ……いや、他の場所ならともかく、あの場所ならありえるのかもしれない。
 10年前、得体の知れない強化実験が行われていたあの“狐の巣”なら。
「主様、この子、なんだか弱ってるみたいなのです」
「……」
 虚ろに瞼を開いたり閉じたりを繰り返している少女に、シャライヴが顔をしかめる。見慣れない浅黒い肌で判然としないが、顔色は確かに悪い。
「お前、何か欲しいものはありますか?」
「……み、ず」
「水?」
 顔を上げたアリッシュが、問いかけるようにカシスを見た。彼は肩を竦めて、
「ま、字の如くというか。もともとが水神の幼虫みたいなもんだからな。清流が元来の棲家なんだろ。それをあんな生態系の崩れた、濁った地底湖に放り込まれたら、消耗もするわな」

 ごっ!

「何しやがる!?」
「それを早く言いなさい。まったく役に立ちませんね」
「てめえ……っ」
「漫才は大概にしてくれ、2人とも。ともかく、清流があればいいんだね?」
 鉄肘を喰らった後頭部をさすりながら、吊り上げた目でカシスは顔を上げて、肯定の息を吐いた。
「……城の庭園は、まずいな。どんな目があるかわからない。
 仕方ない、ウルズの泉まで運ぶしかないか……。アリッシュ、竜舎を」
「かしこ……」
 敬礼をしかけたアリッシュが言葉を止める。あげかけた腕が、くん、と何かに引っ張られていることに気がついて。
「……」
「……何か」
 細い手でアリッシュのローブの袖を掴んでいたのは、件の寝台の上の少女だった。感情のない目で見下ろすアリッシュに、彼女はやはりか細く、だがどこか安堵したような声で、
「……そなたは、水の……なつかしい、においが、する……」
「……」
「……なにか、あんしん、する……」
 そう言ってから、すう、と頬を長いローブの裾にすりつけて気を失った。
「……こほんっ」
 アリッシュが低く咳払いをする。笑いを噛み殺していたレアシスとカシス、シャルが肩を震わせるのをやめて、レンは軽く溜め息を吐いた。
 咳払いで残っていた笑いを誤魔化してから、レアシスは気難しい表情の従者を見上げた。
「……竜舎には僕が行って来る。こっちの用意は頼んだよ。シャルもアリッシュを手伝ってあげて。女の子だからね」
「了解なのですよー」
 やたらと上機嫌に、いや、悪戯っ子のようにシャルが挙手をする。レアシスが黒衣を翻すと、応えるようにレンが壁から背を離し、カシスがテーブルから降りた。
 付き従って研究室から出ると、黒衣を纏った皇太子と白法衣を纏った魔道技師は、互いに人の悪い笑みで視線を交わす。
「……どう思う?」
「さぁて? くっくっく、何にせよ面白いことになりそうじゃねぇか。あの鉄面皮がどうなるか楽しみだ」
「だねぇ。くすくす」
「……訂正しよう」
 小声で漏らす2人に、唐突にレンが声を上げる。
「忠誠心や礼節はともかく。同類だな、お前たち」
『心外な』
 心底嫌そうに言い放った彼らの声はしかし、しっかりとはもって聞こえた。



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*COMMENT-コメント-
▽白黒コンビ
息ぴったりだよ。
でも、ごめん、アリッシュ。私も見たいよ、君が動揺する顔。
▽何ででしょうね(笑)
何故か無駄に仲の良い白黒(笑)。
でも気持ちはわかる。
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目次(香月)
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