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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『daily work Ⅰ』 (香月)

過去なのかどうなのか;
原作ベースで書いた話ですが、内容的に原作も合作もまったく関係ないのでお蔵入りのギャグ話を載せてみる。
個人的に負けるな皇太子シリーズ。

=======================================
 
 かりかりかり……
「そういえば貴様、件の湿地遠征の方はどうしたんだ? そろそろ出る時期だろう?」
 かりかりかり……
「ああ? あんなもんに貴重な時間を割いてやれるか、っての。エリシアの奴が行ってんじゃねぇのか?」
 かりかりかり……
「あれは貴様の仕事だろうう。あれに押し付けるとは、命知らずだな」
「くっくっく、魔道銀[ミスリル]五束と封印石[アンチストーン]三つで手を打ちやがったぜ。足元見るから一つニセもんを混ぜてやったけどな」
 かりかりかり……
「げー、やめろよ。やだぜ、俺。あのヒステリックな叫び声聞くの」
「けっ、日頃『宝石のことなら任せて』なんて言って置いて見抜けねぇとは、ざまぁねぇぜ。あっちの責任だろ」
「屁理屈だとは思うが、何故か相手を思うと庇う気にはなれんな」
 かりかりかり……
「……ああ、待った。ロン、リーチ一発平和タンヤオドラ三で……飛んだな」
「なッ!? またかよ、てめぇッ!? イカサマじゃねぇだろうなッ!?」
「今のはお前が悪ぃんだろ、そんな見え見えの危険牌投げてんじゃねぇよ、馬鹿。しっかもオーラスで……」
「んだとぅッ!?」
 かりかりかりかりかりかりかり………………ぱきっ。
「……あのねぇ、君たち」
「あ?」
 小さく破砕音が響いて、ゆらり、と低い声がその場を止めた。素知らぬ顔で執務のデスクに向かっていた少年は、こめかみに薄く血管を浮かべて顔を上げる。
「いい加減にしてくれる?」
「何だ、皇太子もやるか? 西が空いてるぜ?」
「そういうことを言ってるんじゃない!!」
 だんっ、とデスクに拳を叩きつけたと同時に、その上のインクがかたかたと鳴った。
 少年――部屋の主たる南方エイロネイア帝国皇太子殿下であるレアシスは、半分だけ露出した顔を引き攣らせながら言う。
「あのね、ここは賭博場じゃないのは解ってるよね? 君たちに今現在、立て込んだ仕事は確かに回してないけど。だからって何でわざわざ人の部屋に雀卓なんて持ち込んでくるかなぁ?
 それとカシス? 勝手にソファを占拠するのはもう諦めてるからいいけど、土足はやめてくれる? っていうか、そのやたら優雅に寄りかかってるリアル系のホワイトタイガーのぬいぐるみどこから拾ってきた……って、ああそれはもういいや。君の一挙手一投足に突っ込むのはいい加減疲れてきた。
 それはともかく!」
 言いたい事は山ほどあるが、全部言っていたらきりがない。そう判断した少年は、びしっ、と彼らのいる散らかった部屋の一角を指差して、
「何で人が仕事してるのを邪魔するようにそこで集会的に遊んでるかなッ!?」
「いいじゃねぇか。何だ、お前まであの親ばかのおっさんみたいに頭固くなったか?」
「何で遊ぶか、じゃなくて、何でわざわざ人の部屋で遊ぶか、って聞いてるんだよッ!」
「皇太子にしちゃらしくない愚問だな」
 ぽい、と"東"の牌を卓上に投げ捨てて(掌にあったってことはイカサマする気満々だったか、そうですか)、カシスは悠々とまるで当然のように、
「俺の部屋は魔道実験室だ。そこのガキにあれこれ散らかされたらたまったもんじゃない。
 そっちの無愛想の部屋は来たばっかりで整ってなくて殺風景。
 ガキの部屋なんざ汚くて入れたもんじゃねぇ。落ち着かねぇしな。
 まあ、つまり、お前の部屋が一番環境も整ってて広いんだよ」
「そういう理由かッ!」
「それ以外に何があるんだ?」
 がんがんと頭が痛くなる。ああ、これは身体を苛む壊疽のせいなんかじゃない。絶対に。頭痛薬はどこだっけ? 後でアリッシュに頼んで置こう。
 頭の片隅でぶつぶつと呟きながら、少年は言葉を選ぶ。
 落ち着け、僕は紳士、誇り高いエイロネイアの最後の皇太子、大人大人と。
「そういう理由なら別にエリシアやアリッシュの部屋でもいいじゃないか……彼らの部屋は完備してあるんだし、エリシアの部屋なんか今は空室だろう?」
「あの部屋はダメだ。化粧臭くてしょうがねぇ。おっさんの部屋は俺が出入り禁喰らってんだよ」
「出入り禁?」
「ああ、数日前にちょいと実験を失敗して部屋一つ駄目にしただろ?」
「ああ……あの一部屋が丸ごと焦げ付いて使い物にならなくなったヤツ……」
 何をどうやったのか知らないが、業者ですら部屋の復元が不可能だった。というより、部屋で作業していたうちの半分の人間が、その最中に吐き気を訴えて病院に運ばれた。未だに厳重に鍵をかけて封印中である。
 軍部統率ばかりでなく、国と城の全資金を管理しているレアシスの目に恨みがましい色が灯るが、当然、それにひるむようなカシスではない。
「それをいつまでもぐだぐだ言うもんで何様だと思ったんでな。
 奴の部屋にあった推理小説の中身全部、犯人の名前の脇に赤線入れて来た」
「うっわ地味。でも嫌!」
「貴様はどこの小学生だ」
「……」
 さらりと報復を口にする白子の魔道師に、レアシスは本気で頭を抱える。ああそうか、少し前、やたらとアリッシュが沈み込んでいて使い物にならなくて、ただでさえ多忙な仕事が倍に増えていたことがあったけど、こいつのせいだったか、ど畜生。
 いや、そんな小学生並の悪戯で沈み込むアリッシュもアリッシュだけれど。
 レン、そしてエノまでもが呆れた視線を向けるが、魔道師の顔には悪気の一欠けらも浮かばない。
 今さら馴れてしまっている我が身が、心底悔しいというか情けないというか。
「ああもう! とにかく! ここでやるのも禁止。一応、こっちは仕事が溜まってるんだから邪魔しないでくれると助かるんだけど?」
「溜まってるって、そりゃお前が大陸遠征してたツケじゃねぇか」
「君、あの遠征の理由を理解してる? 三分の一くらいは君のためだったんだけど?」
「まあ、待て皇太子。人に言うこと聞かせるならな、セオリーってもんがあるじゃねぇか」
「セオリー?」
 ふ、と不敵に笑ってカシスは病弱に白い手で、卓の空いている席を指し、こちらを指差した。最後に卓上に転がる牌を差して、再度、にやりと笑う。
 そうか、そういうことか。言うことを聞かせたかったら、勝負で負かせて見せろと。そういうことか。この一応、城内では二番目に高い地位を持つ、実質的にはすべてを掌握している『漆黒の悪魔』と名高いエイロネイアの皇太子に向かって。
 何ともいい度胸じゃないか。


 たんっ。
「……リーチ一発ツモ。倍満、ドラ五」
「一発ツモッ!? って、裏ドラッ!? 馬鹿じゃねぇのッ!?」
 がしゃん、と音を立てて立ち上がったエノが大声を上げる。その対面でレンは眉間に皺を寄せながらも、ふむ、と頷き、ソファに背を預けたままのカシスは小さく舌を打つ。
 少年は、その面々の目の前にある点棒を一気に攫うと、なけなしの笑顔を向けた。
「さて、全員飛んだよね? 約束通り、ご退場願えるかな?」
 半分、怒りで壊れた笑顔を浮かべながら、しかし体裁だけは整えつつ、少年は押し殺した声で言う。大丈夫、これで馬鹿げた劇に付き合わなくて済む。これで快適な仕事場が――
「……皇太子」
「何?」
 まじまじと翻った少年の前の牌を眺めながら、ぽつりと、白子の魔道師が呟く。
「お前、こういうところで運を使い果たすから、日頃不運になるんだぞ」
「……」
 ぷちっ。

「いいから全員出てけぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 滅多に出ない腹からの怒号が、その日、部屋全体を揺るがした。


「……どうかなさいましたか?」
 ノックで「失礼します」を声をかけ、一礼をして、丁寧な所作で顔を上げ、アリッシュは思わず眉を潜めた。いつもは几帳面に整えられている主の部屋が、妙に散らかっている。
 積みあがった書類の上から何枚かが宙に舞い、その中で珍しくぜーぜーと肩を上下させているのは、紛れもなくアリッシュの主であり、またこの部屋の主である少年である。
「失礼します、殿下。三時のお茶をお持ちしましたが――それと、指示されていましたノルゼン地方の干害のデータを」
「ああ、アリッシュ。すまないね」
「何かあったのですか?」
「いや、ただちょっと大掃除を。今、一番大きなゴミを出したところだから部屋が散らかってるだけだ。気にしないでくれ」
「……」
 生まれたときからの付き合いである彼は、部屋の惨状と、いつもは見られない主の粗暴な椅子への腰掛け方に、何があったのがおおよその検討がついた。
 軽い溜め息を吐いて、手にしていた銀製のトレイをデスクに運ぶ。
「質のいいオレンジペコのアッサムが手に入りましたので、ミルクティーにしてみました。ミルクは気分を落ち着かせます。リラックス出来ますよ」
「……ありがとう」
 湯気の立つカップに口をつけて、ようやく気分が収まって来たらしい。少年は天井を仰ぎながら深呼吸をする。
「……またですか」
「ああ。まったく、困ったものだよ……」
 端的なアリッシュの言葉に、レアシスは同じく一言で答えた。「まったく」と繰り返す主の顔を見て、ふ、とアリッシュは微笑んだ。
「お言葉ですが……私はそれほど悪くは思っていないのです」
「?」
「気は紛れるでしょう? 傲慢な貴族たちへの対抗策や、地方の災害や役人の不法行為への対処に悩んでいるよりはずっと良いのではないですか?
 癖は強いですが、この騒ぎが少しでも殿下のお心を軽くする材料となれば良いと思っています」
「……そう、だね……」
 逡巡するように目を閉じて、少年は素直に頷いた。トレイと一緒に差し出された分厚い、軽い辞書程度の厚みがある紙束に、びっしりと並んだ文字を横目で追う。
「わかっているよ、アリッシュ。彼らは色々な意味で貴重なブレーンだ。でもね、これだけは言っとく」
 文字を追う少年の目が止まる。明後日の方向を、遠い目で眺めながら、
「……あの子たちが楽しんでるのは、絶対、素だから」
 卵の殻のように薄い磁気のティーカップが、ぴしり、と小さな音を立てた。
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*COMMENT-コメント-
▽辰砂(シンシヤ)さんが何か申し上げたいそうです。
さすが殿下……麻雀もお強いのですね?
アリッシュ殿があれほど心酔するのもうなずけます……感服いたしました。
それにしても……殿下のおやさしいのをいいことに、やりたい放題。許せませんね。
▽アリッシュさんからのご返答です
まったく。人が少し、甘く見ていればすぐにこうなのですから仕方の無い者たちです。
まあ、それでも彼らを迎えてから殿下のお顔の色が幾分、良くなったのも確か。しかし、これ以上、仕事の邪魔になるようならば何らかの処置が必要でしょうね。
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目次(ヴァル)
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織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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