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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『Never more -undelete-』1 (香月)

ふう…時間かかった…
あかねれー過去編、第一話。チャット内容をゆるゆる文章化しよう計画。

とりあえず…

連れ込む言わんといてください。

まあ、確かに中年の禿げた教授とかがやったら、これだけで犯罪だよね。きっと。
美少年て得だなぁ…(しみじみ)

=====================================
 
「お休み……ですか?」
 唐突に知らされた一言に、アカネはきょとんと教授の顔を見返した。何となく、爬虫類に似た顔をした生態学の教授は小さく頷く。
「ああ、急にお偉いさんが視察に来ることになってね。すまないけど、今日は、研究は休止だ。私も案内があってね」
 朝からどうもいつもよりばたばたしているな、とは思っていたけれど。研究室に来るなり、『今日は休講だ』と言い渡されるとは思わなかった。
「えっと、じゃあ、何かお手伝いすることとかありますか?」
「いや、大丈夫だよ。度々あることだから、馴れているんだ。
 君も留学に来てから通い詰めだから、疲れてるんじゃないかね? いい機会だからゆっくり休むといい。
 そうだ。君、前から東棟の温室が見てみたいと言っていたな。ちょうど今日は開放されているから、見に行ってみたらどうかね?」


 東棟の中庭には、巨大な温室があった。アカネが普段、生態学を学んでいるのは南棟。本当は、温室の近くに研究室があれば便利だが、建物の構造上、ここが一番適した場所だったんだとか。
 教授や上級生たちはややぶつくさ言っていたが、アカネは植物たちが一番、居心地がいい場所にいるならそれが一番いいと思っていた。

 中庭に出るとさらりと柔らかい日差しがアカネの髪を照らした。小さな花壇がいくつか並び、その向こうに大きな温室が建てられていた。アカネはほう、と息を吐く。
 エクルーの家の温室ドームも大きなものだと思っていたが、これは輪をかけて広そうだ。新しく所長になった人物が、生態学や歴史学といった、それまでエイロネイアであまり重視されていなかった研究を取り上げ、王立研究所を盛り立てたのが5年ほど前。それに準じて温室も拡大されたと聞いていた。

 温室の扉は厳重で、見張りが立っていた。学生証を見せると、丁重に道を譲って中に入れてくれた。
「これ……全部ガラスなのね……」
 イドラの温室ドームはジンの作った特殊なプラスチックが使われている。でも、ここの温室は前面が薄いガラス張りだった。向こう側が少し揺らいで、透けて見える。
「すごい、こんな花、本でしか見たことないわ」
 手近な花壇に座り込んで、きょろきょろと見渡す。そこは珍しい花の標本だった。エイロネイアで知ったことだが、珍しい花はそれだけで一財産になるものもあるらしい。だからこそ、普段、温室の警備が厳重なのだろう。
「これ本当にバショウの仲間なの? こんな華やかな花をつけて……よかったね、おまえ、いい家ね」
 花を撫でるような仕草をしながら、アカネは微笑みながら話しかける。
 昔から、こうすると花が語りかけてくる気がするのだ。バショウの花がふるりと震えて、きゃらきゃらと笑った。
 休みになって良かった。アカネは立ち上がって天上から見える空を仰ぐ。
 文化も教育もまったく違う土地。でも空の色は似ていた。透き通る青い色。
「……ふう」
 溜め息が漏れてしまった。バショウの花が笑うのをやめた。
「あ、ごめんね。泣いてないよ、ただ懐かしかっただけ」
 再びしゃがみこんで、バショウの花を撫でる。肩先に当たった、つる草の葉を愛でた。狭い場所ではないから平気だけど、四角い研究室よりも、やっぱりこの方が落ち着く。

 アカネはのんびりと息を吐く。そのときだ。
「……そこは通気口の側ですよ。離れた方がいい」
「!」
 びくり、とアカネは肩を震わせた。耳に入った静かな声に反射的に振り返る。
 いつのまにか背後に青年が立っていた。振り返った瞬間に、アカネは息を飲む。肩まで伸びた黒髪と、全身に纏った黒い衣装が、ガラスと緑の世界に異様なコントラストを生んでいる。
 でもそれよりもアカネが息を飲んだのは、一番最初に見えた顔の大部分が分厚い包帯で隠されていることだった。顔の右半分は完全に包帯で覆われて、わずかに露になっているのは、左半分の黒耀の目と血色の悪い頬と口元だけだった。よく見ると、ローブ調の袖から見える手にも厚く包帯が巻かれている。
 アカネは思わず込み上げた、気に触るかもしれない言葉を飲み込んだ。
 青年はすっと右手を上げると、アカネの頭上を差した。
「やや花粉に毒気のある植物も植えていましてね。そこから処理させているんです。吸い込んで死ぬほどではないが、あまり長居はしない方がいい」
「あ……ありがとうございます。でも、私、何だかそういうものに強い体質みたいなんです」
「ほう?」
 青年は僅かに首を傾げる。
「見ない学生さんですが、留学生の方ですか?」
「あ、はい」
「お国は?」
「イドラです」
 アカネが答えると青年は少しだけ驚いた。人形のような顔に、急に人間味が増したようで少し、おかしい。
「それはまた遠方ですね……。何故、こんな遠国まで?」
「ええと、研究生なんです。イドラに生態学の高等教育を受けられるところがなくて……」
「なるほど。……他国の方から見てここの研究所はいかがです?」
 アカネはぱっと表情を輝かせた。
「素晴らしいところですっ! イドラは自然豊かなところで、ずっと現場のフィールドは見てきたんですけど……。
 ここで体系的な研究に触れて、今までの知識が、すうっと頭の中で整理された気がします。ああ、こういうことだったんだーって。一つ、次元を上れたような」
「……」
 くす、と青年から笑いが漏れた。片方しか見えない目が柔らかく細められる。
「ここに研究生として来られて、素晴らしいチャンスだったと思います。本当はここで学位を取れるといいのに」
「研究生のコースは3ヶ月でしたね」
「はい……そうなんです」
「随分と遠い国からお越しですが、国元が恋しくはなりませんか?」
「そう……ですね」
 アカネはわずかに目を伏せる。それから少しだけ寂しく笑った。
「今までは、この研究所に来れた興奮で、思い出す暇もなかったんです」
「……」
「でも、今日急にお休みになって時間が空いて、ここできれいな植物を見ていて……少し、思い出してしまいました」
 取り繕うように、肩を竦めて、アカネは笑って見せる。青年はふと、天井に透けた空を仰いで、首を傾げた。
「ここは、イドラと似ていますか?」
「いえ、気候も文化も全然違うんですけど、うちの近所に大きな温室があって、そこでよく幼馴染と遊んでいたんです。
 それで、ちょっとここにいると懐かしくて」
「近所に温室、ですか……?」
「はい。あ、こんなガラス張りじゃないんですけど……。
 友人のお母さんが、イドラの緑化を研究している生態学者で、私は子供の頃からそこで手伝いながら、いろいろ学んでいたんです」
 簡単に説明を終えて、またアカネは少しだけ俯きがちになりそうになった。こっそり、ふるふると首を振って面を上げると、青年は思案顔で何かを思い出すような素振りを見せていた。

 そのままアカネが言葉を待っていると、彼は、やがて手近な花壇の端に腰掛けた。ふと、土を覗き込んで、数秒だけ瞑目する。
「イドラでは、砂漠化が進んでいる……と聞きましたが、ひょっとしてそれに関連して緑化の研究を?」
「そうなんです。地下水脈の流れが変わったり、いろいろ説明できる変化もあるんですが……」
 アカネは腕を組む。イドラでサクヤに聞いた話を頭の隅から引っ張り出してくる。
「イドラはずっと水神に守られた土地なんですけど、最近、戦争や大掛かりなエネルギーの変化があったから……原住民の長老は、大地のバランスが崩れているんだ、って言うんです」
「大地のバランス、ですか」
 青年はまたしばらく、考え込む素振りを見せた。アカネは首を傾げる。立ち上がって、居住まいを正して、青年が顔を上げるのを待った。
 この人は何者なんだろう? 研究所の学者? それにしても、あの包帯は……エイロネイアには小戦が多いと聞いたけど、そのせいでこんな大怪我をしているのかしら? ということは軍か何かの関係者?
 いくらでも憶測が湧いてくる。アカネが内心でうんうんと頭を悩ませているうちに、ゆっくりと、黒い目がまた開いた。
「一つ、面白いものをお見せしましょうか」
「?」
 アカネが首を傾げる。青年はまた目を閉じて、花壇の乾いた地面に片手を翳した。アカネはじっと包帯の指先を見つめる。
「……四方を統べよ、私と約せよ、私は汝に与える――」
「……?」
「即ち――水結晶[アクア・クリエイト]」

 ひゅうっ…

 肺から息が漏れるような、小さな音がして刹那、青年の包帯に包まれた指先に青い光が集まった。アカネが目を見張っていると、瞬時にその光は弾け飛び、水の雫となって乾いた地面を潤した。
 花壇に植えられていたバショウの花が歓喜の声を上げるのを聞きながら、アカネはぽかんとしてそれを見つめていた。
「くす、見るのは初めてですか?」
 そう話しかけられるまで、アカネは呆然としたままだった。
「これは……魔法なんですか?」
「六体系、と呼ばれる魔道術です。この術は小規模で水を出現させる簡単な術。旅人が飲み水を確保するために使ったりするんです。
 原理的には簡単です。大気の温度を下げて、大気中の水分をを結晶化させればいい。大きな呪文には大きな魔力が必要となりますが、少しの言霊と空気があれば、この程度なら誰にでも唱えられます。
 実際、エイロネイアではこの術を利用した緑化運動が進んでいますよ」
「誰にでも……」
 アカネは感慨深げに呟いた。ぐ、と握っていた拳に力が入る。
「あ、あの、魔道というのは同じように火も扱えるのでしょうか?」
 おそるおそる問うてみる。アカネにしてみれば、駄目元の問いだった。
「あの、今のイドラの荒廃はむしろ、水の過剰じゃないか、と長老が心配しているんです。つまり……深い池の水が淀んで腐るように。
 ええと、その……」
「……大地に必要なのは、一つの要素でなく、火や水、木のバランス、ということですね」
「は、はい。そうです」
 上手く説明できるかどうか、アカネが言い澱むと、青年はいとも容易くさらりと言葉に乗せた。アカネは驚きながら頷く。「確かに。魔道術、とりわけエレメントの属性を持つ術には、火の属性を操る術も勿論、存在します」
「!」
 アカネはばっと顔を上げた。それからまっすぐ青年を見て、深く頭を下げる。
「あの、会っていきなり不躾とは存じています! でも、どうか私にそれを教えていただけないでしょうか?」
 青年は思案顔でちらり、と視線を外した。アカネが頭を下げている間に、温室の中を確認する。
「……一応、僕も魔道をかじっている身ですから、貴女に教えることも出来るし、イドラの土地にエイロネイアの知識が合うかはわかりませんが、おそらく、試す価値はあるでしょうね」
「じゃあ……!」
「ですが」
 期待に満ちたアカネの言葉を、青年は遮るように言って立ち上がる。
「火は水に比べて属性的に少々苛烈。基礎から学ぶ必要がありますが、普通の人間はこれに1年を費やします」
「大丈夫です! 私、頑張りますから!」
 声を張り上げると、青年は少し困った顔で笑った。
「それからエイロネイアでは許可のない魔道術講義は些か問題視される」
「……」
 アカネの肩が落ちる。確かに、水の術も火の術も、悪用するならどんなことにも使えそうだ。例えば放火なんか、今のような魔法を使えば、マッチの擦りカスやライターの指紋なんていう証拠は残らない。
 アカネ自身はそんなこと馬鹿なことはしない。誓ってもいい。でも、規則と言われてしまっては……
「ですが、生憎、僕は学問の自由を妨げる規則は、あまり好きではありません」
「!」
「貴方が3ヶ月で習得する熱意があるというなら、ご教授致しましょう。ただし、このことはご内密に」
「は、はい!」
 また大声を上げてしまいそうになって、アカネは慌てて口を抑えた。そのアカネに、青年はおかしそうに微笑んで、踵を返すと温室の奥に向かう。
 アカネは首を傾げてその後について行った。

 やがて、温室の扉から見えない位置まで来ると、青年は側に生えていたランの花を撫で、少し脇に避けると、研究員の建物と隣接したその向こうの白い壁をとんっ、と軽く叩いた。
「!」
 きんっ、と軽い金属音がして、一瞬、壁の一部に奇妙な紋様が浮かび上がる。その光が消えたときには、白い壁の一部がぱっくりと口を開けて、下へ向かう階段が見えた。
「人目につく場所で出来る講義でもありませんから。少々、自分用に自室を持っております。どうぞ」
 アカネはぱちくりと目を瞬かせて、自分と幾つも変わらないだろう青年を見上げる。
「ここに自室を、ということは……この研究室の教授でいらっしゃるんですか?」
 問われた青年は、アカネと同じような表情で驚いた。だが、その一瞬後に微笑んで、口元に1本、指を立てると悪戯を思いついた子供のような目で言った。
「さあ、どうでしょう? 秘密にして置きます。今はね」
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*COMMENT-コメント-
▽やっぱり怪しいよ、れーくん
下心があるとは言わない。アカネから頼んだことでもある。でも……飛んで火に入るスポ根少女。故郷を救いたいあまり、虎穴に入る。

『私、たとえ食べられてもいいんですっ。教官にならっ』
『やめなさい。僕達は……』
むりやり禁断ムードにしてみる(笑)
▽ぶっ、くくくっ
無理矢理な禁断ムード(笑)。
まあ、人生に光が見えなくて半分ヤケになっていたらしい。紳士的行動に機微が欠けているよ、殿下。

アカネちゃん、アカネちゃん、問題発言(笑)。
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織姫のお仕事
     4.0
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イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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