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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『拾い子』           (ヴァル)

るーれーネタの走り?
ちょっと……かなり、危ないよね?

るーちゃ、いったいいつからそういう趣味に…?


 @@@ @@@ @@@ @@@ @@@ @@@ @@@






  リィンはミラに話しかけながら、馬場を回っていた。ミラは人一倍臆病な馬で、これまで主人のエルザ以外背に乗せたことなかったのだが、リィンにはようやく心を開き始めていた。それでも、ミツバチの羽音ひとつでびくつく。
「そいつを馬場の外に出そうと思ったら、目隠しした方がいいぜ。遠乗りなんてとんでもないよ。姫様にケガさせるのがオチだ」
 馬丁のメルが柵に寄りかかって言う。昨夜の酔いが残ったようなだらしない話し方をする。その声にもミラはびくっと身体を震わせた。
「悪いことは言わない。アンタレスにしな。オリオン・ベルトも、こいつの言うことなら聞く」
「でも、ミラを外に出してやりたいって」
「姫様のおやさしい気持ちは尊重したいがねえ。ミラは普通の厩舎だったらとっくに食用処分にされてるよ」
「やめろっ」
 リィンが大きな声をだした。
「こいつは人間の言葉がわかるんだぞ。そんなことを横で四六時中言われて、臆病にならないヤツがいるか?馬だって同じだろう」
 メルはむすっとして、「さすがにケモノはケモノの気持ちがよくわかるこって。姫様も変なコレクションばかり増やしなさって……困ったもんだ」
とぶつぶつ言いながら、納屋に戻って行った。

 リィンはふうううううと深呼吸して、ミラの首筋をぽんぽん、と叩いた。
「心配するな。お前は悪くない」
 ミラがぶるるるるるるっと鼻を鳴らす。
「一緒に湖まで行こう。慌てるな。さあ、もう一周してみよう」 

 そこにしゅっと音を立てて、エクルーが現れた。毎度感心するのは、エクルーやアルが突然現れても、驚くのは人間だけで、動物はトンボが横切ったほどにも驚かないことだ。
「リィン、ここにいた! すぐ来てくれ。女の子が倒れたんだ。あの子、エルザ姫!」
 すうっと空気が冷たくなった気がした。たづなを持つ手が震える。
「しばらく呼吸が止まってたんだ。何とか息を吹き返したけど、意識が戻らない。おまえ、そういうの得意だろう?」
「どこ……?」
「今、アルとジンが見てくれてる。地下の書庫だ。すぐ行ってくれ」
「あ……馬……」
「俺が返しておくから」
 止める間もなく、エクルーがミラの手綱を取って、鼻面をなでた。ミラが甘えて顔をすり寄せている。相変わらず、女、子供と動物に受けのいいヤツだ。

(リィン、見つかったか)
 アルの声が降ってくる。
「ここだ、アル」
(じゃあ、こっちで釣るから、呼吸を合わせてくれ。3、2、1)
 リィンも慣れたもので、あっさり消えた。
「さ、帰ろう。おうち、どこだって?」
 ミラはまだ遊び足りないらしく、エクルーを運動場に誘う。
「ごめんな。また今度走ろう。今、お姫様が大変なんだよ。お前も好きだろ? お姫様」
 ミラが耳をおっ立てて、目を見開いたので、エクルーは慌てて言った。
「大丈夫。今、リィンが行ったから。あのお兄ちゃんは、ああ見えて優秀な泉守りなんだぞ?」
 なだめながらミラを厩舎に帰して、人目のつかないところから書庫に飛ぼうと、エクルーはいい匂いのするサワラの生垣の影に入った。
 
 そこに、真っ黒な塊が蹲っていた。黒い大きなケモノのように見えて、一瞬ぎょっとした。だがよく見ると、黒いマントを着た黒髪の少年が倒れているのだとわかった。朝、聖堂にいた男だ。レアシスと言ったっけ?
 あわてて助け起こすと、呼吸が止まっている。
「またかよ。悪いが男を人工呼吸する趣味はないぞ」
 背中にひざを当てて、ぐきっと言うほど胸腔を開いてやると息が入った。
「よし。どうした。内科か外科か?」
 後頭部を支えながら、首の脈を取る。ざっと見た限り、出血しているような外傷はない。つまり新しいものは。少年の身体中が包帯に包まれていた。そして、そのすべての患部が膿んでいるかのように熱を持っている。これでは体力が持たない。頭だけでも冷やさなくちゃ。腰に巻いていたサッシュ・ベルトを泉水でぬらして、額と首の周りを冷やしてやる。
「う」
 長い睫がゆれて、濡れたような瞳に光が宿った。左目だけ、ひとつだけだが、何と印象的な大きな黒い瞳。身体つきから男なのはまちがいないが、女性に見紛うほどの優美で端正な顔だ。
「よかった。大丈夫か? あんた、このケガはどうした?」
「……」
 少年はぼんやりとエクルーを見つめ返している。
「あんた、ここに倒れていたんだ。覚えているか?」
 カルミノの言葉はわからないかも、と思って、今度はトラキア語で呼びかけてみる。
「……僕……は……」
「うん? どうした? どうしてこんなところに倒れていたんだ?」
 少年の意識を保っておこうと、必死で呼びかけた。
 すうっと目の焦点があったかと思うと、白い手をそっとエクルーのほおに当てた。
「僕には、そんなに心配していただく資格はありません」
 妙になめらかに言ったと思うと、ぐふっと咳き込んだ。口に血があふれたので、あわててエクルーは少年の身体をうつぶせにいて、血が息をつまらせないように支えてやる。かなりの量を吐血した。
「しっかりしろ。すぐ医者を呼ぶから」
 体温がどんどん下がっていく。ショック症状だ。一刻も早く手当てを……エクルーは少年を抱き上げようと腕を背中に回した。見かけよりずっと筋肉質で比重の大きな身体だ。
 その重さにとまどっていると、少年の腕がエクルーの肩を掴んだ。
「うっ」
 爪が食い込む。この細い腕のどこから、と思うほど強い力。腕が背中にのびて、エクルーにしがみついてくる。びくん、びくん、と身体が震えて、身悶えしている。エクルーも腕を回して、必死で抱きしめた。
 
 爪の痛さよりも、少年の腕から流れ込んできたイメージにショックを受けた。バラバラになってしまいそうだ。青黒く蠢く闇。暗い赤がしたたる。手足が、精神が、引き裂かれそうだ。あまりの苦痛に悲鳴も出ない。
 僕は一度死んだも同然だ……日々、屍に近づいていく……身体が腐っていく……レン、カシス、シャル、エノ……僕のことは忘れてくれ……僕にはそんな価値はない。

「バカ言うな!」
 エクルーが少年の左の頬をひっぱたいた。
「何様のつもりだ? 人の気持ちをどうこう言えるもんか。俺だって会ったばかりなのに、あんたのことが気になってるんだぞ? まして友人が見捨てられるもんか。あんたが……こんなに苦しんでいるのに!」
 少年の目が焦点を結んだ。かなり長い間きょとんとしていたが、ふうっと微笑んだ。けいれんが治まっている。
「ありがとうございます」
 そう言ってエクルーの左手を取ると、中指の付け根のくちびるをつけた。
 その優雅なしぐさに、くちびるの柔らかな感触に、エクルーは鳥肌が立ってしまった。

 少年は微笑みを浮かべたまま、ふわっとバランスを崩して、気を失ってしまった。
「おい! あんた! しっかりしろ! そのレンとかカシスとか言うのは、カルミノの一緒に来てるのか? おい!」

「ここに来ている」
 腹に響く低い声がして、エクルーははじかれたように振り向いた。
 全然気配に気が付かなかった。いくら少年に気を取られていたとはいえ、男が2人、すぐ後ろに立ったのに気付かなかったとは。
 オレンジ色の長髪をひとつに結わえたがっしりした男が、少年の傍にひざまづいた。白い髪、赤い瞳の男が何やらぶつぶつ、つぶやいている。さっき、サクラを吊っていた男だ。アルと知り合いらしいが……。

「あんた……あの時の……」
 エクルーが言いかけると、オレンジの髪の男が思い出したらしく、”ああ”という程度の淡白な反応をした。サクラ姫を救出した時、高窓にとまっていたカボチャ嫌いの男。

「主人が世話をかけた。礼を言う」
「じゃあ、あんたがレンか」
「ああ」
「で、カシスだな」
 白髪の男がぞんざいに答える。
「まあな」
「とにかく医者に……」
「オレが医者だ」
 白髪の男があごをしゃくると、オレンジの髪の男が黙って少年を肩にかつぎ上げた。そしてそのまま何のあいさつもなく、別館の方に戻り始めた。
「おい!」
 思わずエクルーが呼び止めると、2人は無言で振り返った。
 その圧力。これでは伝言を頼めそうにない。
「後で見舞いに行ってもいいか」
 白髪の男が、つり気味の細い目をさらに細めた。
「さてはホレたか?」
 エクルーはかーっと赤くなってしまった。
「こいつはな、こんなきれーな顔をしてても、一応、男だぜ?あ、それともお兄さん、そういう趣味の人?」
「カシス」
 オレンジの髪の男が嗜める。
 なかなか言葉が出てこなくて、エクルーがしどろもどろしていると、白髪の男が再び口を開いた。
「当面、面会謝絶。絶対安静だ。悪しからず」
 そう言い捨てて、2人の男は少年を連れて立ち去った。
 仕方ない。エクルーはため息をつくと、書庫に飛んだ。


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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
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『嘆キノ森』
 正面左右背後
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イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
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