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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『織り姫のお仕事 3』     (ヴァル)

キジローがルナちんに会う、ちょっと前のエピソード。
エイロネイアの安宿で潜伏中。

相変わらず、年甲斐もないノロケ全開だ……。




 (るなちんとキジゴローの出会うエピソードは →   こちら
 

 ===== ♪ ===== ♪ ===== ♪ ===== ♪ =====


 キジローは殺風景な安宿で、フラスクのバーボンを端の欠けたカップにそそいでいた。もう残り少ない。どっかで補給できるかな。
 荷物は解いていなかった。上着さえ脱いでいない。このところ、寝るときもブーツを履いたままだ。……いつでも動けるように。いつも探られている気配がする。怖気づいたせいの錯覚じゃないだろう。俺は勘はいいんだ。人気のないところで襲われそうになったこともある。ただのスリやかっぱらいじゃない。あれは俺の正体を探っているのだ。

 ねらわれるってことは、俺の探している方向が合っているってことだ。そろそろ核心に踏み込みたいもんだ。留学中のスオミにとばっちりが及ぶのを怖れて、ずっと会いにいっていない。かれこれ1年になるか。いつもサクヤが様子を知らせてくれるので、心配はしていないが。そろそろ卒業のはずだ。卒業したら、スオミはイドラで医者をやりたいと言っていた。身体を壊す前のサクヤのように、イドリアンを診察したい、と。俺はどうしよう。スオミももう19になる。いつまでも父親と2人暮らしというわけにいかないだろう。それでも、まだ親が不要な年じゃない。もっと気楽に会える環境を作ってやらないと。


 月が育ってきた……今夜は来るだろうか。
 考え事をしながら、バーボンを傾けながら、ぼんやり待つのが習慣になってしまった。いつも、ドアを開ける気配がない。何のあいさつもなく、いつの間にか目の前にいる。瞬きをして、目を上げると……ほら、こんな風に。

「こんな夜更けに出歩いて……危ないだろう」
 いつもの小言に、いつものようにふわっと笑う。
「大丈夫よ。あなたも知っているでしょう? 私は身が軽いのよ?」
「そうだな。柔術も俺より強いもんな」
「射撃もね」
 キジローは、ふうとため息をつく。サクヤにはいつも敵わない。
「スオミに会ってきたのか?」
「ええ。元気だったわ。もう論文も仕上がって卒業申請をするだけですって」
「大した娘だな」
「あなたの教育が良かったのよ」

 
 スオミは12でキジローの養女になった。
 教団の実験に使われそうになった彼女を逃がそうとして、父親を目の前で殺された。父親の血で真っ赤に濡れそぼった彼女を、ミヅチがイドラに運んだ。父親から詳しい話を聞こうとしたが、いくつか大きな動脈が切れていて手の施しようがなかった。次第に冷たくなっていく父親の手を、スオミはいつまでも離そうとしなかった。
 7人のミヅチとメドゥーラが世話をしても、スオミが普通に話せるようになるまでかなり長い時間がかかった。
 それでも、イドラの生活に慣れ、ミヅチになつき、メドゥーラになつき、サクヤやエクルーと出会った。そうして、同じように教団に娘を奪われたキジローと引き合わされたのだ。

「あれから……もうすぐ8年か」
「……もう、そんなになるのね」
  
 蛍石を子供に埋め込んで強化人間を作る企みを追って、4人で旅をした。首謀者を倒し、手術を受けた子供たちを救ったものの、銀髪のエクルーは死に、石の光を浴びて身体が言うことを利かなくなったキジローが残った。

 あれほどの犠牲を払ったのに、まだ教団の陰謀は続いている。
 サクヤも身体を壊して、シュアラ山中の医療院に入院して何年も床を離れられなかった。キジローはその医療院を見上げる里で、スオミを学校に行かせながら、教団の残党を探っていたのだ。

 あれから……何も進んでいない。
 しっぽを掴んで踏み込むともぬけの殻だったり、下っ端を捕まえて吐かせようとすると自害されたり。サクヤの容態も良くなったり悪くなったりした。でも、こうして会いにくるところを見ると、かなり良くなっているのだろう。こうして俺が愚図愚図している間に、スオミも大きくなって、もう大学を卒業か……。俺も覚悟を決めて、そろそろ一歩進むべきかもしれない。あいつとの約束を果たさなくては。

 教団を追いながら、キジローとエクルーは互いに約束していた。何かあったら、残った方が家族の面倒を見る、と。考えてみれば、その時キジローには行方不明の娘以外、家族などなかった。つまり、あいつは最初からそういうつもりだったのだ。
 要塞のような固い守りの教団本部に踏み込む直前、エクルーはいつもの緊張感のない顔でにっと笑って耳打ちした。
「キジロー、約束、忘れるなよ?」



 忘れてなどいない。あれから、できる限りサクヤもスオミもケアして来た。スオミのことは、本当の娘のように誇らしく思っている。でも、もうそれだけでは満足できない。

 サクヤの顔が白くまぶしく見える。会った時からそうだ。いつも白い光に包まれて見える。それにこの……花の香り。この光と香りは主観的な現象なんだろうか? 何度も目をこすったり、頭を振ったりした。でも、いつまでも夢から醒めない……。

「どうかして?」
「いや……」

 俺は幻惑されて、いつまでもサクヤとの距離を詰めることができない。もう7年経った。あいつを忘れろなんて言わない。でも、もう一度、俺と……

「キジロー?」
 サクヤは微笑んで、ちょっと首をかしげている。それからちょっと窓の方を振り向いて、耳をすますような表情をしていた。
「どうかしたか?」
「ううん。でも、もう帰るわね。キジロー……ええと……国境で気をつけてね。でも大丈夫。赤頭巾ちゃんに会えるから」
「赤頭巾?」
「ええ、それに私もまた来るわ。今度はスオミも一緒に」
「だが……」
「大丈夫。もう卒業確定になってから来るわ」

 サクヤはすうっと手を伸ばして、キジローの上腕にそっと置いた。
「くれぐれもムリしないでね?」
「サクヤ……」
 喉がカラカラになった。よし、言おう。今、言おう。サクヤ、俺と……。


 こぶしを握り締めてぐっと顔を上げると……もう、サクヤはいなかった。
 ドアを開けた気配も、窓を開ける音も聞こえなかった。でも、いつものことだ。キジローは驚かなかった。出会った時から、ずっと……奇跡のようだ。サクヤと会えるのは……次にお天等さまかお月さまの機嫌がいい時だろう。

 今度会えたら、今度こそ……。いいよな? エクルー、お前なら応援してくれるだろう? それとも、俺の都合のいい思い込みかな? サクヤを幸せにする、なんておこがましいことは言わない。でも、一緒に……生きて行きたいんだ。お前ごと。お前と一緒に……幸せになりたいんだ。いいだろう?

















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*COMMENT-コメント-
▽キジローさんのろけ…
キジローさんがんばれー!
るーちゃは切ないけどがんばれー!

ええと、狼を食い殺しそうな赤頭巾ちゃんですけどよいのかな(笑)
▽ああ、とうとう・・・
htmlいじって、前後の話に飛べるようにしてしまいました。
止まらないじゃん、こんなことしてたら…

とりあえず、『織り姫のお仕事』のみ。
▽わーお…
やめられないとまらない~♪ か~っ○えびせん♪
何が言いたい、このコメント…
▽悩みどころ
このページから”次へ”と飛ばすのは、『織姫のお仕事4』か『嘆キノ森-PSI-missing- EPISODE 3』なのか? …両方、つないじゃう?
▽うーん
そうですね…順番的には、

『織姫のお仕事1』→『嘆キノ森(出口除く)』→『織姫のお仕事2』→『織姫のお仕事3』→『PSI-missing』→『織姫のお仕事4』…

みたいな順番?
▽ふむふむ
とりあえず、るなきじにはつないじゃいました。
せっかく小技を覚えたので、どんどんリンクしちゃえ!
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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