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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『織姫のお仕事・番外編: 星の約束』

考えたら、こんなにたくさんれーくんを書くのは初めて。
口調とかいろいろ間違っているかも。

サクヤさん、そんなとこにも出張してたのね?


 ***** ***** ***** ***** ***** ***** *****


 バラ色の光の中で目が覚めた。
 イドラに遊びに来ている時くらい、のんびり遅寝するように複数のおせっかいに言われるが、習慣だから仕方ない。いつもなら槍の鍛錬をする時間だ。だがそれもできない。レアシスはため息をついた。
 少し前にちょっとしたことがあって、腕を痛めてしまった。いい機会だからと片腕で槍を扱う稽古をしていたら、いささか負荷が大きすぎたらしい。もう一方の腕も痛むようになって、複数のおせっかいにしかられ、槍を取り上げられてしまった。
 自分は皇帝の位というものを誤解していたな、とレアシスはくすりと笑う。帝国の最高権力者だというのに、わずかな自由時間の使い方にもあれこれ指図される。ありがたい事だが。

「自分をいじめるのはやめて」
 朝の湖面のような銀色に輝く髪の少女が、もともと大きな碧玉の眼をいっぱいに見開いて訴えた。
「自分で自分を痛めつけるな。見ている方がつらい」
 そう言ったのは、今、隣ですうすう寝息を立てている友人だ。
「ちゃんと食べて寝ないと、人間ろくなことを考えられないぞ」
 そう言ったのは、この友人の兄。
「もっと自分を大事にすることを覚えなさい。でないと、自分を大切に思ってくれている人々を粗末にすることになるぞ」
 そう言ったのは少女の父親。 
「あんたはもっと、泣いて、笑って、いいと思うぞ。あんたにはその権利、いや、義務がある」
 そう言ったのは、友人の亡くなった義父だ。
 ……みんな、おせっかいな人達だ。また、くすりと笑う。

 この辺境の砂漠。不毛過ぎて、侵略の対象にさえならなかった忘れられた土地が、今ではかけがいのない場所になってしまった。イドラを統べるのは、皇帝でも王様でもなく、水神を敬い大地に感謝する遊牧民族だ。呼吸のように傷ついた者をかばい、何気ない言葉で癒すことのできる人々。長いしっぽと長い耳をゆらし、風の声を聴く人々。彼らは生命を信じている。そして、よそのもっと豊かなはずの土地から流れ着いた人間を、家族のように受け入れて面倒を見てくれる。

 この温室を中心に、そういうよそ者達のちょっと風変わりなコミュニティができていた。生態学者、物理学者、医師に薬師、楽師、魔道技師。それぞれの専門分野で、イドラの人々に貢献して恩返しをしている。銀の髪の少女も、友人もこのコミュニティの住民だ。僕は、今のところ新参者のゲスト。でもここにいれば、陰謀も策略も無縁だ。ここにくれば、胸いっぱいに息を吸うことができる。


 することがないので、レアシスは自分の隣で無防備に寝ている友人を観察することにした。
 また、背がのびたみたいだ。出会ったときには、もう年下の彼の方が背が高かったが、どんどん差が広がっている。それに少年っぽかった体型が、肩が広くなり、首が太くなり、すっかりがっしりした大人の男になってしまった。それが悔しくて、ちょっと寂しい。取り残されたような気分だ。あの忌々しい呪いに成長を妨げられなければ、僕もこんな風になれたはずなのに。
 うらやましい、と思うのは失礼なんだろうな。エクルーだってけっこう複雑な人生を歩んで来ているのだ。それでも彼は、心身共に健康で、自分や仲間を信じる気持ちがぶれない。イドラで育ったせいだろうか。考え込みがちな自分に比べて、彼はまっすぐでシンプルだ。それがうらやましくて、まぶしい。


 レアシスはため息をついてごろんと寝返ると、朝の澄んだ青い空を見上げた。温室の中は甘い香りで満たされていた。そういえば、ギンモクセイが咲いていると言ってたっけ。それに名残の白いノバラ。
 子供の頃、白い花が咲くのを心待ちにしていたっけ。梨、オレンジ、檸檬にクチナシ、ジャスミン、スイカズラ。雪柳にウツギ、アカシヤ、マグノリア。庭の花々を訪ねて歩いた。……に会うために。

 誰だろう。いつも、白い花の香る庭で会う人がいたっけ。誰だっけ。白い服を着た女の人だった。そうだ。どうしてずっと忘れていたんだろう。”ホワイト・メイデン(白い乙女)”……花の匂いに誘われて庭に出ると、白い花々の中で微笑んでいたっけ。僕は幽霊だと思っていたので、誰にも彼女のことを言わなかった。
「あなた、お化けなの?」と聞くと、また微笑んで
「星を渡って、あなたに会いに来たの」と教えてくれた。
 それで、僕は彼女を”ステラ(星)”と呼んだんだっけ。

「どうして僕に会いに来たの?」
「私は水神のお使いなの。あなたが哀しそうだから、水神は心配しているの」
「水神ってドラゴンみたいなもの?」
「ええ。身体が大きいから、彼はこのお城に入れないの。だから私が代わりに来たの」
 ほっそりした白い冷たい手で、そっと髪をすいてくれた。僕は不思議に怖いと思わなかった。
 ステラは、なぜ僕が悲しいのか聞かなかった。僕も話さなかった。話さなくても、何でもわかってくれているような気がしたからだ。母が死に、兄が死に、父を奪われ、僕がだんだん笑わなくなっていくのを、ステラは哀しそうにみつめていた。季節ごとの白い花の下で。白い服、長い黒髪で、いつも変わらない彼女。
 片目を失い、身体を蝕まれ、大事なものも、大事な人も、ひとつ、またひとつと僕の手から奪われていく。


 最後に会ったのは、あれは……僕が10歳頃のことだ。
 暗い森の中で、僕は人を待っていた。使いに出した鴉が彼を導いて来てくれるはずだ。森の中には甘い花の香りが満ちていた。
 くん、と鼻を動かして、香りを分析してみる。タイサンボク、トチノキ、ミヅキ、ノリウツギ、イワガラミ、ウワミズザクラ……。白い花ばかりだな。それで、ふいにステラのことを思い出した。そうしたら……暗い木の下に彼女が立っていた。

 レアシスはぎくりとした。今までステラを怖いと思ったことなかったが、いつも明るい昼間の庭で会っていたから、こんな夜の森は彼女に不似合いな気がした。ステラはぼんやりした白い光に包まれていて、表情がはっきり見えなかった。
「ステラ!」
 潜めた声でそっと呼んでみた。彼女はレアシスの方に振り向くと、いつものようにふわっと微笑んだ。
「よかった、今夜あなたに会えて。これからしばらく、会いに来られないの」
「どうして? どこかに行ってしまうの?」
 思いがけないほどの喪失感が胸を襲って、レアシスは自分でも戸惑った。季節ごとの約束のように、必ず会えるものと思っていたからだ。
「ごめんなさい。私は、星を渡って来たと行ったでしょう? 私、もう星を渡れなくなるの。そうね……これから10年くらい」
「10年? 10年経ったらまた会えるんですか?」
 ステラは微笑んで、冷たい手でレアシスの手をぎゅっと握った。
「ええ、きっと。約束する。だから……レアシスにも約束して欲しいの」
「約束? 何をですか?」
「決してあきらめないって」
 ステラは少し身をかがめて、自分の顔をレアシスに寄せた。
「これからまた、悲しいことやつらいこともあると思う。人生を投げてしまいたくなることもあるかもしれない。でも、あきらめないで欲しいの」

 レアシスはちょっと暗澹とした気持ちになった。何と不吉な予言だろう。今だって十分、行き詰っていて希望のない状況だ。これから、もっと酷くなるということか。
 ステラは少し首をかしげて、ちょっと寂しそうな顔で微笑んだ。
「星を渡るとね、遠い時間をみはるかすことができるの。遠い未来や遠い過去。だから信じて。私、あなたの未来を知っている。あなたはたくさんの友人や家族に囲まれて、緑と光の中で笑っていたわ。何もかもいっぺんに解決するわけじゃない。いろんな苦労もある。でも、あなたは仲間に恵まれて、自分自身の力で緑と光の中に帰って来ることができる」

 そんなあてのない予言、どう信じていいのかわからない。
「未来を語るのは、本当は禁忌なんだけど……水神が特別に許可してくれたの。あなたの未来を本当にするために」
「未来を……本当に……」
 ステラの黒い長い髪が、レアシスの顔を包んだ。白い温かい光に包まれた。

「あなたが信じられるように、予言のおまけをするわ」
 ステラは少しいたずらっぽく笑った。
「あなたはこれから……森の出口で、男の人に会う。その人は私の大切な人……私の家族なの」
「あなたの家族!?」
 レアシスは驚いて、ちょっと素っ頓狂な声を出してしまった。幽霊にも家族なんているんだろうか。生前の家族という意味だろうか。
「あなたは彼を助けるけれど、あなたもいつか、彼に助けられることになる」
 レアシスはますます狐につままれたような気持ちになった。
「彼はおせっかいで、あなたにお説教をするかも」
 ステラはくすくす笑っている。
「彼に出会ったら、私の予言も信じてくれる?」
「あなたの……予言……」
「未来を信じて、自分を信じて。私に……会いに来て? 未来で待っているから」


 気がつくと、樹の下でひとりだった。白い光も消えていた。
 重い足音が近づいてくる。彼がそうなのだろうか? または別の男か?
 
 ……そうして、僕はキジローに出会い、エクルーに出会い、イドラに関わるようになった。
 もう約束の10年が過ぎているけど、未来は本当になったんだろうか?


「うきゅきゅっ」
 赤ん坊の笑い声が聞こえてぎくっとした。慌てて振り返ると、ベビーベッドが空っぽだ。いつの間に? まだ危なっかしいつかまり立ちで、庭で転んでケガでもしたら……レアシスは声がした方に走った。

 赤ん坊は、朝日の中で草の上に座りこんで笑っていた。空に向かって手を伸ばしている。
「うきゅっ、かかしゃー、見て。あんよしますよー」
 そう言ってよたよた立ち上がると、1歩、2歩、歩いてまたしりもちをついた。
「見た? 見た? えやい?」
 自分でぱちぱち拍手をしている
「かかしゃ、見たー?」
 赤ん坊が手を伸ばした先に、白い光が見えた。ギンモクセイの香りに包まれて、白い人影が立っていた。
「ステラ……」
 彼女は赤ん坊から顔を上げて、レアシスを見た。
「お帰りなさい」
 微笑んでそう言うと、ステラは消えた。

「またねー。ばいばいようー」
 キリカは光に手を振っている。レアシスも手を振りかけて、その手をすっと額の横につけると敬礼した。
「ありがとう。こんなところから、僕に会いに来てくれてたんですね?」
 レアシスはキリカを抱き上げた。
「さあ、寝坊介のお兄ちゃんを起こして、朝ごはんにしましょうか?」
「はいっ。おかゆにしましょうー」
 上機嫌の赤ん坊を抱いてエクルーのところに戻りながら、レアシスはふと気づいてくすりと笑った。
 ステラの大切な人って、キジローだろうか、エクルーだろうか。それとも両方? 確かに2人とも、おせっかいで僕にお説教してくれた。確かに、助けられたこともあったかも……。

 ただいま、ステラ。何とか帰って来ました。緑と光の中へ。






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*COMMENT-コメント-
▽サクヤさんありがとう
悪魔は他人の休憩所。悪魔は傷付いた人を休ませるのが役目だった。
でも、それは悪魔が永劫に休めないことを意味してました。原作では。

彼を休ませてあげるのはね、部下では駄目なんです。彼にとって部下は守らなくちゃいけないものだから。
だから部下でも親族でもない、対等な友人が必要だったのに、原作ではいなかった。
サクヤさん、イドラの皆さん、本当にありがとう。
れーくん、君の好きな青と緑と光の中へ帰ろうね。
▽『未来で待ってる』
時かけと、ハウルでの決めゼリフ、使ってみたくって……。
サクヤとレアシスって、実は会話したことないのよね、これまで。キャラが被るせい?

ところで、”ステラ”ってアメリカで蓮っ葉女の名前というイメージらしいです。飲み屋の女…みたいな。日本でいうと”朱美”?
▽タイム・パラドックス
何で、10年間合えなかったかというと、その10年はれーくんがエクルーやキジローと交流があって、2次的にサクヤと出会う可能性があるからなのです。
まあ、時空を越えてくるので細かくやりくりすれば会えるのだろうけど……なかなか会えない、という感じでしょうか。

ふらふら漂えるのは、身体の方が透けている時。
だから、エクルーを生んでから7年と、実体が死んじゃってからは、距離、時間に関係なくいろんな場所に出没して、いろんな”通り名”をもらっているようです。
ちなみに、キジローの先妻、百合絵さんには”白いモナリザ”と呼ばれていたらしい。それってちょっと……貞子?
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