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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『織姫のお仕事4 (下)』    (ヴァル)

ええと、下の方が長い。
この後、おまけもつく予定ですのでお楽しみに。


 ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== 


「ミギワ様は本当は私の正式な義兄上じゃないんです」
 サクヤの話はそんな風に始まった。
「私の姉と恋人同士だったのに結婚を許されず、姉はミギワ様の父上に追放されたのです」
「それはまた……ずいぶんと理不尽な話ですね」
 私は眉をひそめた。
「追放というのは、不適切な表現だったかもしれません。姉は ”星読み”という予知能力を持つ司祭の後継者。ミギワ様は統治者の次男。言わば分離されるべき2つの権力系統の両端にいたんです。しかも私達の住んでいる星は、近い将来砕けることがわかっていました。それで2人は、姉は殖民船で、義兄は星に残って、何とかそれぞれに生き残るすべを見つけようと誓い合ったんです」
「姉上の消息は……」
 サクヤは首を左右に振った。
「それっきり2人は生き別れになったんです。ミギワ様は星に残った私をそれはかわいがって下さった。私はミギワ様とエクルーに守られてやさしい時間を過ごすことができました。でも……最後の時は近づいて……」
「星が砕ける時?」
「そうです」

”住んでいる星”という概念も、星を渡ったという話もまるで神話のようだ。でもサクヤの顔を見ていると、それはおとぎ話ではないと信じられた。
「ミギワ様は私に言ったんです。姉の望みは ”みんなが生き延びること”。だから私達もあきらめてはいけないって。
そうして……禁断の岩戸を開けたんです」
「岩戸? 禁断とは何です?」
「星と星の空間をつなぐ岩戸なんだそうです。私が子供達と行ったとき、”風読み” の長老たちが岩戸の周りに車座を組んで不思議な歌を歌っていました。笛も鈴もリュートも鳴っていました。でも聞いたことのない調べ。落ち着かない、耳の奥がしびれるようなハーモニーでした」
 私はイドリアンの楽師たちの様子を思い浮かべた。彼らの演奏も心地よいのに、時々ぞおっと総毛立つことがある。知らぬ間に底知れぬ深い崖に誘い込まれていたことに気付いたかのように。
「エクルーが笛を吹いていました。その頃の名前はオリィと言ったんですけど、銀の髪のやさしいお兄さんでした。私に鈴がたくさんついたきれいなリボンを渡してくれて、”笛のメロディに合わせて鳴らしてごらん”って。私はそれまでにも何度か祭りで鈴の役をやったことがあったので、簡単だと思いました。”これから鈴に合わせて一歩ずつ歩く。長い暗いトンネルを通る。どんなに疲れても、手が痛くなっても鈴を止めちゃダメだよ。みんなは笛と一緒に歌うんだ。どんなに疲れても立ち止まってはダメ。遅れてもダメだ”私は怖くなって ”なぜ”と聞きました。”これから渡るのはトンネルに見えるけれど本当は釣り橋だ。しかもみんなの歌でできている橋なんだ。誰かが一歩でも休んだり遅れたりしたら……橋は落ちる”」

 私はのどがカラカラに乾いているのに気付いて酒盃を口に運んだ。
「橋が落ちたら?」
「落ちたらみな死にます。星と星の間の空っぽの空間に落ちて」
 サクヤは静かに微笑んでいるようにさえ見えた。私は総毛だっているというのに。
「ミギワ様は子供たちと私とオリィを集めて言いました。”怖くないよ。我々もすぐ後ろにいるから。私のリュートと長老方の歌や調べが聞こえている間は、絶対に足を止めてはいけない。真っ暗で見えないかもしれないけれど、我々もすぐ後ろにいるからね” そう言って、ミギワ様はひざまづいて私の肩をぎゅっと抱きしめてくれました。”みんなを頼むよ”と小さな声で耳元につぶやいて」

 果樹園を囲む竹林がサラサラ鳴った。”竹の秋”。色づいた黄色い細い竹の葉が、きりきりと長い時間舞って降ってくる。橘の花の香りがより一層強くなって、私は一瞬自分がどこにいるのかわからなくなった。
「それで?」
「それで、私達はトンネルをくぐりました。長い長いトンネルでした。真っ暗で何も見えなくて。せまいのか、天井が高いのかもちっともわからない真っ暗な闇。小さな子は大きな子が手を引いたり、抱っこしたりしてみんなで歩きました。一日中歩いた気がしました。ごはんもおやつも休憩もなしに。もしかしたら数日歩いたのかも。不思議と眠くなったりお腹がすいたりしませんでした。ただ真っ暗で上も下も、夜か昼かもわからなかった」

 サクヤは微笑んでいる。一陣の強い風が吹いて、竹が互いに身を打ち合わせた。

 カコン
 カン コン
 ざざざざざざざざざ

「それで?」
「それで私達はトンネルを抜けました。気付くと真っ暗だった空間に降るような星が見えていて、すぐ後ろに聞こえていたはずのミギワ様のリュートは聞こえなくなっていました。そうして、私達は子供だけでこの星に逃げて来たのです」
「ミギワ殿は」
 サクヤは微笑んだまま、首を左右に振った。
「それで私とオリィは子供たちを守って、ここで生き延びました。そしてそれからずっと長いこと私とエクルーはこの世界中に散った避難船の子供達を探し回りました。雪路さんはスオミをご存知でしょう」
「もちろん。優秀な女医だ。桜もずいぶんお世話になった」
 サクヤはにっこり笑った。
「スオミはオリィの叔母の血と記憶を継いでいるんです。彼女は私の姉について避難船に乗ってくれたんです。姉はミギワ様の子を宿していた。私はスオミと会って、初めてその子のことを聞きました。男の子で、ミギワ様譲りのまっすぐな黒髪をしていたそうです。だから結局、姉もミギワ様も私もオリィもみんな生き延びることができたわけです。この世界でいつまでも幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし」

 私はすぐには言葉が出てこなかった。想像を超えた途方もない話だ。
「君とオリィがこの星に来たのは今からどのくらい前になるんだい」
「だいたい3万年くらい前でしょうか」
 3万年。その頃、この世界に人はいただろうか。でも私にはもうひとつ聞きたいことがあった。
「君の名は?」
「え?」
「エクルーはオリィだった。君は? 君は何と呼ばれていたの?」
 サクヤはやさしく微笑んだ。
「サラ」
「サラ」
 私がそう繰り返した時、サクヤは一瞬泣き出しそうな瞳をした。私は声もミギワ殿に似ていたろうか? その表情に私は胸を衝かれて、それ以上何と言っていいかわからなくなった。

 そうして気付いたときには私はひとりだった。
 永遠のような橘の花の香りと、縦にきりきりと舞う竹の葉が降る空間の中で。

 
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*COMMENT-コメント-
▽君の名は
サクヤの呼称があなた→ 君 になっているのに、今、気付いたりして。
でもなんか感じいいからこのままにしておきます。うふふ♪ 甘えん坊サクヤ発動。
▽ゆきさくや
これからテストです…っ!
その前にこんな素敵小説を読めて、ラッキーデイすぎますっ。
ゆっきー…ゆっきーったらなんか本気で口説いてないか? いや、そんな気はもーとーないんだろうけれどもっ!笑
ヴァルさん私テストでオール満点とれる(ような)気がしますよ!!
がんばってきますねっvおまけも楽しみにしてますーv///

ゆっきーはサクヤが消えた後しばし呆然としていたに違いない。けけけ。
▽余韻……
サクヤったら思わせぶりな消え方しちゃってー。ゆっきー、ますます気になっちゃうじゃんねえ♪ でも、あくまでお兄さまなのです。気分的には桜ちゃんと同じ位置にいるサクヤ・ママであった。
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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