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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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Justice to Believe外伝 『Front breaking』壱

外伝よりも本編を書けという突っ込みは受け付けません。

『だって浮かんだんだもん』

…それ以外に書く理由が必要ですか?(屁理屈を捏ねるな)

今から約7年(?)前。
カノンが初めて桜ちゃんに会ったときのお話です。
話が続きものになるのは、もはや私のデフォルトです。
面倒なのでこの際、漢字名をつけました。レンもそのうち考えよう。

=======================================
 
 ゆるぎのないその瞳 見据えている先で
 あきれるほどの憤り 渦巻いていても
 何度だって何度でも 人は立ち上がれる
 いき与えられた命 とことん使って

 てのひらで燃える熱い炎は 
 心の奥の奥で 誰もが持ってるちから

 遠い未来への迷いよりも いま目の前にある現実
 一つ一つ砕いたなら ただの砂に変わる
 なりふりかまっちゃいられない 正面突破で行こう
『Front breking』/林原めぐみ




『Front breaking』壱

「……巫女姫の特別護衛官?」
 対面に座った帝から漏れた言葉をそのままオウム返しする。カノンは眉を潜めながら、女官が運んできた楽焼の茶碗を傾ける帝を胡乱げに見つめた。
「そう。ぜひ、君にその任を任せたいと思ってね」
「……護衛、ねえ……」
「不服かい?」
「いや、まあ不服っていうか……」
 カノンは座椅子に掛けながら複雑な表情を向ける。
「その、巫女姫ってあんたの妹なわけでしょ? 確かあきらのところの弟が護衛につくんじゃなかったっけ?」
「ああ。君も知っての通り、専属の護衛には海神[わだつみ]の人間がつくよ。でも、彼は私の妹と同じく、まだ幼い」
「……で、あたしを蒼牙が一人前になるまでの護衛に、ってこと?」
「理解が早くて助かるよ」
「うーむ……」
 出された茶碗に手をつけないまま、カノンは腕を組む。晴れない表情の彼女に、雪路はさらに言葉を重ねた。
「嫌ならそう言ってくれていいよ。強制するつもりはないからね」
「いや、嫌っていうか何ていうかさ……。何でその役目をあたしにやらせようと思ったのかなー、って」
 カノンは首を傾げながら問う。その疑問ももっともだった。
 カノンはもともと戦陣の先頭を担う人間だ。先鋒を切って、敵陣の罠と先陣を真っ向から切り崩す。間違っても護衛に適した鍛え方をしているわけではない。
 そんな人間に、専属護衛。しかも皇族の。それに此度、巫女姫の任が与えられる雪路の妹とくれば、当然のように敵も少なくない。それにも関わらず、何歩譲っても適役と思われない人間を護衛につける?
「護衛をさせる、って目的なら、あたしなんかより適任者がいるでしょうが。それを差し置いて、何であたしなわけ?」
「確かに護衛をさせるという目的だけなら、君より適任者はいるだろう。でも、あえて私は君に任せたいんだよ。
 君自身にも、いい経験になると思うのだけどね。どんなときにも対応できる兵が増えるのは、私としても有難い」
「はあ……」
「すぐ答えを出せとは言わないよ。
 でもとりあえず、妹に会ってみてくれないか? 気に入らない人間を護衛するのも嫌だろうからね。君の性格上」
「まあ、それくらいなら……」
 ようやく茶碗に手をつけながら、カノンは上目遣いに渋々ながら頷いた。


「へえ。巫女姫の特別護衛官に、ねえ」
 シュアラでは珍しい、赤い装束をなびかせながら、のんびりと吐いた友人にカノンは溜息を吐く。
「あんた、そんな他人事みたいに……」
「他人事だもん。私にとっちゃ」
「……いや、まあそうだけど」
 何とはなしにムカつく。皇居の周りを大股で歩きながら、口の中で飴玉を転がすシュアラの魔女は、無責任に(いや、まあ事実、彼女に責任は一切ないのだが)ぽん、とカノンの肩を叩いた。
「まあ、頑張れ。それだけあの大魔王はあんたに期待してる、ってことでしょーよ」
「どうなんだか……。だっておかしいじゃない。軍先鋒のあたしに、いきなり護衛官をやれだなんて」
「そんなに嫌なわけ?」
「嫌ってわけじゃないけど、どうにも不可解っていうか、裏を感じるっていうか……雪路だし」
「まあ、確かに雪路だしね」


「……くしゅっ」
「あら。雪路、風邪?」
「大丈夫ですか、お兄さま?」
「いや、またくだらない噂でもされているんだろう。気にしないでいいよ」


「でも、いいじゃない。やってみれば。あたしだって雪路の妹の桜姫とは、そんなに何度も会ったことがあるわけじゃないけど、大人しいいい子よ」
「いや、別にどんな子かはいいのよ。でもなー」
 初春の灰色の寒空を見上げながら、『金色の戦姫』はもう一つ、浅い溜息を吐いた。珍しく、あどけなさの残る愛らしい顔の眉間に皺が寄っている。
「あんたが迷ってるだなんて、珍しいこともあるもんだ。今日はマジで吹雪かな?」
「日頃、人に悩みがないみたいに……。そんなこと言ったって迷うわよ。だって、よりによって護衛の任務よ?」
「それが?」
 溜息が軽くなっている。あっけらかんと訊く友人に、首を振りながら、
「……まあ、あんたみたいにふらふら年の半分も腰を落ち着けてない、無責任魔道士には解らないかもしんないけどね」
「オイこら」
「護衛ってのは、つまり……その、誰かの命に責任を持たないといけなくなるわけでしょ?」
「……」
 憤りかけたルナの言葉が止まる。複雑な表情のまま、天を仰ぐカノンはどこか遠い目をしながら、腰に手を当てて、少しだけ自嘲気味に、
「……そんな責任、あたしに本当に負えるのかしらね」
「……」
 ルナが歩きながらがりがりと後頭部を掻く。口の中でばり、とべっ甲の飴玉を砕きながら腕を組む。そしてぱっと顔を上げた。
「まあ、それはさ。
 とにかく会ってみろ、とは言われたんでしょ? だったら会うだけ会ってみたら? 決めるのは、それからでも遅くはないじゃない?」
「まあ……ね。そのつもりではいるんだけど」
 頬を掻きながら頷く。
「だったら、いつまでもぶつくさ言ってないで、さっさとお役目果たして来なさいな」
「きゃあっ!?」
 唐突にぱんっ、とルナはカノンの尻を叩く。短い悲鳴を上げたカノンは、少しだけ顔を赤らめながら、
「ちょっと、ルナ! いい加減、セクハラで訴えるわよっ!」
「訴えられるもんなら訴えてみなさいよ。あ、八つ時」
「げ」
 日の傾きを見て漏らしたルナに、カノンが顔を引きつらせる。約束の時間を過ぎかけていた。
「もー! 目玉食らったらあんたのせいだからねー!」
「ほれほれ、人のせいにすんなー。いってらー」
 ひらひらと薄布を棚引かせながら、先を駆けていく妹分の背中を見送って、ルナはふう、と息を吐く。薄っすらと雪の積もった皇居の敷石を手で払って、ひらりと腰掛けながら空を見た。
 公にはされていないが、数年前から後宮は荒れている。『魔女』と蔑称される自分が近づける場所ではないが、何度か潜り込んだことがあるおかげで、大体の状況は図れていた。
 かといって、異端の魔道士であるルナにはどうにもできなかった。
 舌打ちをして、歯噛みする。自由すぎる身というのも、また別の意味で面倒なものだ。
 ――賭けに出たわね、雪路……。
 カノンに目をつけた雪路の思惑が、何となくわかる。でもそれは半分、賭けに近い。チップが大きいな。だが、このシュアラを舞台にした駒回しは、元から分が悪いのだ。雪路の中では些細な賭けなのかもしれない。
「……さてはて、どうなることやら。
 あ、おっちゃーん、大福もち一つ」
「あいよー」
 呟いて、腰に据えたホルスターを片手でまさぐりながら。
 ルナは皇居周りで台車を引いていた饅頭売りに至極、のんびりと声をかけた。


 その公邸は後宮の奥まった場所にあった。
 傍目には質素。敷地はそれなりに広いが、以前に招待された皇族府の大公屋敷と比べると、飾り気のない屋敷だった。薄っすらと積もった雪に、敷居から見え隠れする梅の枝が凍えている。
「うーん……」
 カノンは門の前に立ちながら、叩くタイミングを推し量っていた。俗に入りあぐねているとも言う。
 しばらく眉間に皺を寄せてから、軽く深呼吸。きっ、と顔を上げて拳を上げて、
「……姫様に何か」
「だあああっ!」
 横合いからかけられた声に、出鼻を挫かれた。
 バランスを崩して戸口に寄りかかりながら振り返ると、しずしずと、これまた質素な雰囲気を醸し出す女性が立っている。視線はいまいち胡散臭げなものが混じっている。
 ――そりゃあ、いきなり戸口に立って百面相してれば怪しがられるわな。
 自問自答して気を取り直す。
「ええとー、あたし、天良華音[てんら・かのん]って言うんですけど。主上から言われて……」
「……ああ、聞き及んでおります。お待ちしていました。……随分と」
 ――ぎくっ。
「まあ、立ち話も難ですから……こちらにどうぞ」
「え、ええと、どうも。あの、貴方は?」
「姫様の乳母[めのと]……吉野と申します。さあ、こちらへ」
「は、はあ……」
 どこか疲れたような声音で淡々と対応する吉野に、中途半端な返事を返して門を潜る。妙な緊張感さえ感じられた。
 ――あんまし歓迎されてないな、こりゃ……。
 如実にそう感じながら、霜柱の立つ庭園を吉野について歩く。薄氷の張った小さな池、雪の積もった桜と梅の枝、白く染まった生垣はつつじ。
 ――……時間が止まってる。
 最初にカノンが抱いた感想は、その一言だった。申し訳程度に咲いた葉牡丹が、かろうじて淡い色彩を放つばかりで。白く凍った庭。同じ外であることは変わらないのに、庭に入り込んだ途端、周りの温度が下がったような気さえした。
「……」
 袖を押さえながら、カノンは険しく眉を上げる。
「……失礼ですが、天良様」
「あー……ええと、あたしのことは華音でいいわ。同姓のばっちゃまがいるから、紛らわしいのよね」
 吉野は一瞬、じろりとカノンを見た後、「……わかりました」と言い直した。
「失礼ですが、ご身分の方は?」
「へ?」
「軍の中では、かなり腕の立つ方とお聞きしましたが……皇族府付きになられたことはおありですか?」
「え、いや、あたしはどっちかっていうと、ほんとに先鋒を取ってくるみたいなタイプで……。ばっちゃまは何か有名みたいだけど、あたしは皇族府についたりだとかいうことは今までなくて……」
「……そうですか」
 吉野は軽く頷いて、元のようにすたすたと雪の上に草履を滑らせる。居心地の悪さを感じながら、カノンはその着物の裾を追った。
「ええと、皇族付きになってると何かまずいことでも……」
「いいえ、特に。お忘れください」
「……」
 危うく怒鳴り声を出すところだった。いかんいかん、気が短い。
 ひそかにふるふると首を振りながら、カノンは思考を巡らせる。何かを聞きだせないか、この屋敷に振りまかれているこのやたらと寂しげな雰囲気は何なのか。
 しかし、それを口に出すより先に、
「姫様!」
 吉野が焦った声を上げた。カノンは反射的に顔を上げる。
 雪の庭の奥まったほとり。凍った桜の枝がしな垂れる池の傍に、白い塊が蹲っていた。
 ――……女の子。
 えーと、7歳って聞いてたんだけど。
 カノンは目を瞬かせながら、池のほとりに腰掛けている少女を見る。
 腰まで伸びた黒い髪、白い単に薄絹の布を被った姿は、手足の細さも相まって見るだに寒さを感じた。7歳、と聞いていたが、細さと小ささでそれより幼く見える。透き通った肌と儚い琥珀の瞳のせいで、一瞬、幽霊かとも思った。
 声を飛ばして駆け寄った吉野を、少女はぼんやりとした目で、ゆっくりと、のらくらとした動作で見上げる。
 カノンは眉を潜めて、少女を見つめた。
「こんなところにいては、また熱が上がりますよ。どうか、邸の中にお戻りくださいませ」
「……ごめんなさい……」
 白い唇から漏れた声は、ひどく平坦な声だった。文才か詩才のある人間は、鈴の鳴るような、と例えるかもしれない。だが、カノンにとってはどちらかというと、蚊の鳴くような声に聞こえた。
 感情の灯らない、冷たくて、空虚な声。
「……」
 少女は吉野の後ろに控えていたカノンを見上げて、ことりと首を傾げた。カノンの眉間に皺が寄る。
 ――椿ね。
 直感的にそう感じた。
 首を傾げるその動作が、あれに見えたのだ。
 季節を過ぎて、色づいた花びらを保ったまま、ある日ことんと首ごと落ちてしまう寒椿の花に。
「姫様、こちらが華音さまです。姫様の新しい護衛に就かれる方ですよ」
「……そうですか」
 ――三点リーダがないと喋れんのかい。
 危うくいつものテンションで吐き出しそうになった。ぽりぽりと頬を掻きながら、こっそりと息を吐く。雪路め、本当に何のつもりなんだか。
 小さな少女は相変わらずの動作で、のろのろとカノンの前に出ようと歩く。だが、何となく歩き方がおかしい。カノンはさらに目を細めた。
 少しだけ寒風に黒髪が靡く。
 ――!
 一瞬だけ。本当に一瞬だけ見えた、その首筋に、不自然な赤い痕。間違っても色めいた痕などではない。見覚えがある。
 あれは、そう。鬼火相手に戦ったときに、足についた無数の痕と同じような――。

『軍の中では、かなり腕の立つ方とお聞きしましたが……皇族府付きになられたことはおありですか?』

 ――……。
 今さっき、吉野に聞かれた問いが反芻する。
 ――そういう、ことか……。
 詳しく聞いたことはない。だが、薄っすらとは知っていた。
 雪路やその弟の雪矢と違い、その妹は前春宮の後妻の娘。その後妻は後宮の中ではなく、外から入宮した更衣の君だったらしい。
 当然、帝のご機嫌取りに熱心な皇族府はつまらないだろう。
 半分は高位、半分は更衣。そこに生まれる感情は、間違っても好意的なものじゃない。

『半端者』

 ぎりっ――。
 いつかどこかで聞いた言葉が、頭を掠めて通り過ぎる。カノンは奥歯を噛んで、軽く目を閉じた。そして顔を上げる。
「初めまして、桜姫。天良華音、っていいます。よろしく」
「……ご苦労さまです。主上から、お話は伺っています」
 カノンが出した手を、濁った目で見つめると、少女はそれには応えずにくらり、と頭を下げた。からくり仕掛けのお茶運び人形が、ことりと頭を傾げるように。
「あー、えっと……」
「……大変でしょう。私の護衛なんて勤めるのは」
「……」
 何を続けようか、迷ったカノンに先駆けて、少女がまたか細い声で言う。カノンはますます眉を潜める。
「……お嫌でしたら、どうぞ、遠慮なさらずに断ってくださいね……? 主上には、私の方からお話して置きますから……」
 ――……だから三点リーダを(以下略)。いやいや、そうじゃなくて。
 内心で首を振りながら、カノンは唸る。さて、どうしたものか。これは思っていたよりも強敵だ。
 ぼんやりと、薄絹を握りながら話す少女を盗み見て、カノンは顎に手を当てる。

『あたしだって雪路の妹の桜姫とは、そんなに何度も会ったことがあるわけじゃないけど、大人しいいい子よ』

 いや。いい子といいうよりは、何というか――。
 子供でも、いや、人間ですらないというか。言われたまま、誰かが望んだまま動く人形のような。
 カノンはがりがりと後頭部を掻く。その仕草に、少女は顔を上げてまた首を傾げた。こちらの気分を害したと思ったのだろうか、ゆるりと頭を下げて、
 そのときだ。
 とんとん、と拳が戸口に当てられる音がしたのは。
 少女がふるり、と肩を震わせて、吉野が唇を真一文字に引き締める。
「桜姫。霊雲[りょううん]家の遣いで御座います。お迎えに上がりました。霞さまがお待ちです」
 ――霊雲家?
 カノンの頭の片隅に、その名前が引っかかる。何だったか。そうそう、確か高位の巫女や退魔師を輩出する名家で有名だ。あきらの所属する海神や、ルナの生家である鐡登羅[てすら]の下くらいに。
 吉野がさくさくと霜柱を踏みながら、戸口を開けに行く。
 残された少女は薄絹を纏い直しながら、ふらふらとカノンに頭を下げた。
「……ごめんなさい。これから、霊雲家の霞さまのお茶会に呼ばれているのです」
「あ、あー……まあ、遅れたのはあたしの責任だし。うん。気にしないで」
「ありがとうございます」
 無機質にそう言って、少女は俯き気味にさくさくと雪の上を歩く。戸口から戻ってきた吉野が、厚手の袿を手にして少女を受け止める。
 少女は振り返って、もう一度頭を下げた。
「……姫様はこれからお勤めにございます。華音さま、今日のところは、お引取りくださいませ」
 吉野はそう言い、少女を促して屋敷へ上がらせる。カノンは肩を竦めて、戸口へ向かった。出迎えの下女が縁側から降りて来ようとするのを留めて、戸口に向かう。
 門の前に、金縁の牛車が止まっていた。佇んだ?司と思われる男が、カノンに道を譲る。
「これは、『黄金の戦姫』殿ではありませんか」
「……どうも」
 どうやや顔を知られていたらしい。唐突に恭しく頭を下げてくる男に、短く口にする。
「そうですか。此度、巫女姫の護衛官になるという方は、かの名高き『戦姫』殿でしたか」
「……」
 男の口からぽろぽろと賞賛が漏れる。どうにも気持ちが悪くて、カノンは警戒の目線を送った。
「……それはまた似合いですな。『半端な女侍』に『半端な姫』ですか。なるほど、主上も面白い趣向を考えなさる」
 ――!
 口先から言葉が飛び出そうになるのを、カノンはやっとのことで堪えた。口の中に気持ちの悪いものが広がる。ぎりっ、と重たい雪を踏みつけて、
「おや、どうかなさいました?」
「……あんた」
 涼しい顔でそう吐いた男は、瞬間に口を噤んだ。
 鳥を落とすような碧眼の双眸が、男の目を睨んでいた。射抜き、落とすような獅子の目。色は涼しげなのに、そこに灯っているのは際限のない敵意。いや、敵意ですらない。獅子は敵意を持って獲物を狩りはしない。あるのは純粋なる殺意だけ。
 風も吹いていないのに、鬣が逆立つように彼女の金色の髪が揺らめいて見える。
 男は短い悲鳴を呑んで、さらに数歩、後退った。
「わ、私に手を出すと……」
「……手なんか出す気ないわ。でも、二度とそんな口叩いてごらん。あんた、それ以上、歳取れなくなるわよ」
 男は門に張り付いて、ぱくぱくと空口を動かした。そんなことを言われるとは、予想もしていなかったのだろう。それだけ霊雲の名前が与える後光は輝かしいのか。くだらない。
 カノンは何もなかったかのように踵を返して、肩に積もった雪を払い落とす。そうして、金色の鬣をなびかせるとその場を後にした。



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*COMMENT-コメント-
▽カノンちゃん…
くっそう名前知らないけどお付の男むかつくぞーっ半端って何だ半端って―っ!!(じたばた)
雪路のくしゃみが笑えましたwww

桜の幼少期の描写は、私自身原作でも書いていないのですが、イメージしていたもの以上で、興奮しました///
そうっほんとうにまさに幽霊か人形。人間に見えない感じなのですーっ(>_<)
さすが香月さん……っ!PC越しですが、あがめさせてください…っ。
吉野もいい味出してますね。ああ、おのれ…霊雲家め…っ
それから和風描写が素敵ですっ見習いたいくらいっ!お屋敷のわびしい感じがひしひしと伝わってきたし、桜を椿にたとえるのもぐぐっときました…!

続きものは大好きですvだーってカノンちゃんがいっぱい見れるww
でもわたしも長くなりがちなのでお気持ちはわかります…っ!

あう。それでですね、ほんっとうに些細なことなんですが…
ゆっきーのお父さんは春宮(皇太子)のまま亡くなっています。なので、前帝はゆっきーのお祖父ちゃんですね。
春宮であるお父さんが急遽死亡。同時期に前帝のお祖父ちゃんも病に昏倒。
そのため雪路はせわしなく春宮を飛ばして帝位についたんです。
あう~なんだか複雑でごめんなさい;;ちょっとそこだけ直してもらえると嬉しいです(>_<)
▽ふむふむ
了解です♪
前帝でなく、前春宮ですね。失礼しました。直しておきます。

私自身、あんまり和物描写を書いたことがないので、シュアラの情景描写はおっかなびっくり書いております。
お気に召したようで良かった♪

実はカノンも2、3歳の頃はそんな感じだったんですよね。
異端児でいじめられてて。お母さんは立派だったのに、と言われ続けていました。
シュアラとクロキアの半端者、母のような女神になれない半端者。それを「お前はお前でいい」と諭してくれたのがレンでした。
それからひたすらに、自分らしく生きています。
ときに人を傷つけながら、ときに人を救いながら。選んだ道を信じ続けて。
▽な、何だか新シリーズだぞ?
お、何だかカノンが面白い。桜ちゃんも何だか、いつもと違うぞ? カノン、桜ちゃんの味方になってあげて!
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