忍者ブログ

《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

2017.071 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31

【露癒の祀】拾弐  (香月)

ただのバカですが、きちんと詩亜やアルティオにも愛があります。

がーちゃかわいく書けたか不安!
でもがーちゃかわいいよ、がーちゃ!

12話をもって皇都編は終了です。次回から五つ瀬編に移ります。
かのちゃパーティの珍道中をお楽しみください。

==========================================
 

 『露癒の祀』(ろうゆのまつり)。
 その儀式は、古くはそう呼ばれていたらしい。
 たった一滴の癒しの雫を創り出す太古の儀式。その雫は、どんな病も、死に至る傷口も、たちどころに癒すことが出来たという。その昔、五つ瀬周辺を収めていた豪族の一族は、術師の才を駆使してその術を編み出したという。理由は単純。豪族の当主を、流行病で失わない為である。
 儀式自体は鬼門方向の祠で行われた。犠牲になる血と魂が多ければ多いほど、癒しの雫は強力な呪療の糧となった。 豪族たちは五つ瀬に住む奴隷階級、市民階級を、露癒の獣に食わせ、血魂を奪い取り、豪族の当主に分け与えていたという。
「時には千の人間、時には万の人間が、露癒の犠牲になったらしい。犠牲になる人間が多いほど、雫の治癒能力も増すからな。
 つまり――『露癒の祀』とは文字通り、血を血で贖う血の宴だったんだ」
 暗い行燈だけを灯した部屋で、古びたぼろぼろの蔵書を捲りながら、円が静かにそう吐き出した。あきらは静かに座しながら、華音はその対面で項垂れながら、唇を噛んでいた。頭に巻きつけた包帯と、頬を覆う治療の痕がひどく痛々しい。
「……700年前、その禁呪を封じたのが武鎧の血脈の祖となった術師だった。彼は己の血を持って、露癒の祀の核となる呪術の祖を封じたんだ」
「武鎧の家はそのときから、一切の術を行使するのをやめた」
「そう。そのときから、武鎧の家は武人として血を受け継がせてきた。
 血を持った封印は、血を持って解くことが出来る。一族の血を薄れさせて、封印を永劫とさせる為。また禁呪の解放を狙う人間たちから身を守る為だ」
「……でも、貴景はそのことを知っていた」
 華音の言葉に、円はぱたり、と蔵書を閉じた。何か憧憬を口にするように、暗い木目の天井を眺めながら、目を閉じる。
「貴景先生……いや、貴景は若い頃から医療の道に熱心な導師だった。若くして皇族府の人間の主治医の地位を頂戴していたこともあったらしい。……禁書架の書物も自由に読めたはずだ。
 ……想像したくはないけど、蓮の主治医を始めた頃から知っていたんだろうな」
「……」
「……天良舞は失踪以前、全帝から勅命で禁呪の始末の任を請け負っていたそうよ」
 黙ったままだったあきらが言葉を継ぐ。その名前に、華音の眉がひくりと上下した。
「浅葉藤一郎は――その任務の相棒だった」
「もっとも……天良舞が行方知れずになった25年前、彼女が姿を消してからすぐ、彼自身も行方を眩ましていた。公式的には、もう亡くなったことになっているわ」
「浅葉は、その任を全うする為に武鎧の家を……」
 華音の膝に置いた手が、ぎゅ、と白く握られる。噛み締めた唇を心配してか、円の手がとんとん、と彼女の肩を叩いた。
「――浅葉の目的は、蓮を殺すことだ」
「……」
 きり――っ
 華音が奥歯を噛み締める。円の言葉が、頭の中を反射してこびり付く。
「貴景は剣ヶ峰の祠に向かうだろう。……術師の血は、採取して新しいほど効力がある。血の解放には、必ず生血を使うはずだ」
「……蓮はすぐには殺されない、ってことね……」
「でも、浅葉は貴景の所業を阻止する為に動くわ。それはたぶん……」
 あきらがそう言いかけて、言葉を切った。華音は小さく声を震わせて、乾き切った唇を開いた。
「……帝は、何と……」
 食い縛った表情で、華音が面を上げる。握りしめた拳、硬く強張る喉。込み上げる熱いものを無理矢理に飲み下して、あきらの顔を見た。
「……帝は……華音。貴女の決断に、任せると」
「……」
 神妙な面持ちで吐き出したあきらの言葉に、華音は再び顔を俯かせた。心臓がぎりぎりと音を立てる。身体なんか痛くなかった。自分の腕を抱え込んで、脳裏にちらつく光景を振り払う。獣の頭。喉元に噛み付かれる蓮の姿。赤黒く染まった――鷹の羽の装束。
 貴景の策略はともかく、武鎧の血脈が禁呪を解放する危険を孕むのは事実だった。本当なら――浅葉が正しいとも言えるのだ。先帝が亡くなった今にしろ、浅葉が自ら行方を眩まし、今更事を起こした理由が何にしろ。
 解放の血が無ければ、禁呪が蘇ることもない。
 帝が華音に求めるのは、一体何の決断だというのか。
「……あたし、は……」
「……かのねーしゃ」
 ふと、閉じられていたはずの襖が開く気配がした。慌てて振り返ると、小さな腕が細く襖を開けて、行燈だけが照らす部屋の中を覗いていた。
「蒼牙! 寝てなさい、って言ったじゃないの!」
「……蒼牙?」
 あきらの焦りを含んだ叱責が飛んだ。だが、華音はどこか泣きそうな表情をしている蒼牙を見て、小さく首を傾げる。そろりと立ち上がると同時に、蒼牙が襖を重そうに開いてとぼとぼと入ってくる。
「……かのねーしゃ、ししょーは……?」
「え……?」
「明日、しゅうれんしてくれる、って言ってたけど……ねーしゃがだめになった、って……」
「……」
「おしごと、いそがしい? いつ、みんなで遊びにいける?」
「蒼牙……」
「……いつ、みんなでおきな、あそびにいける?」
 上目遣いで、寂しさの涙を堪えながら、蒼牙は華音を見上げた。じっ、と華音はしばらくの間だけ目を閉じる。そして、ゆっくりと目を開けた。
「……ごめんね。蓮、急にお仕事入って出かけなきゃいけなくなっちゃったの」
「おしごと……?」
「うん、あたしもちょっと出かけなきゃいけないんだ」
「……」
 蒼牙の顔がまた泣きそうに歪んだ。華音はゆっくりと小さな肩に両手を置いた。
「大丈夫、すぐに帰って来るから。そしたらみんなで沢まで遊びに行こう?」
「すぐ?」
「うん、すぐ。だから、あたしたちがいない間、桜をお願いね。蒼牙が守ってあげないといけないんだから、泣いちゃあ駄目よ?」
 そう言って微笑むと、蒼牙はぱっ、と顔を上げた。
「うん! おれ、なかない! ちゃんとまってる!」
 華音は蒼牙の小さな頭を静かに撫でた。わしゃわしゃと撫でてやる。
「じゃあ、きちんと寝てしっかりしないと。桜を守ってるとき、欠伸なんかしちゃあ駄目だからね」
「うん!」
 そう頷くと、蒼牙はぱたぱたと襖の向こうに戻っていった。華音はその小さな背中を見送ってから、刀の柄に手をかける。そして、そのまま静かに立ち上がった。
「華音……」
「……あきら、円兄さん。あたしがいない間、桜と皆を頼むね」
 振り返らないまま、ぽつりと、呟くように言う。円が頷いて、あきらの肩を叩く。溜め息を吐くと、彼は華音の前にのしに包まれた短刀を突き出した。
「……?」
「……武鎧の祖が、封印のときに唱えた祝詞を記しといた。時間がなくて簡易的に造ったから、これでものを封印出来るとは思わないけど……まあ、お守りにはなると思うよ」
「……」
 しばらくの沈黙の後。
 華音はぐっ、と円の手のひらの上の短刀を掴んで顔を上げる。その真っ直ぐ闇を見据える碧い瞳に、もう迷いは何もなかった。


 がさがさと、耳元で風と笹葉が唸る。
 駆け抜ける雑木林は、静謐にぼんやりとした月の夜を迎え入れていた。走り抜ける華音は、ただわずかな明かりだけを頼りにひたすら山を駆け下りる。湿った大気が、露に濡れた笹葉が、頬と体を薙いでは過ぎる。
 ――……。
 脇腹に、血を欠いた頭に、時折痛みが走る。だが、無視して駆け下りた。立ち止まってしまわないように。
 そのときだ。
「!?」
 唐突に、その華音の目の端に赤い残像が飛び込んで来た。
 赤い残像は、木上から飛び降りると彼女と並走をし始める。驚いて視線を走らせると、よく見覚えのある顔が眉間に皺を寄せながら、同じように足を進ませていた。思わず華音は足を止める。
「ち、ちょ、瑠那っ!?」
 彼女は華音より数歩進んだ獣道の途中で足を止めた。大仰な溜め息を吐き、腰に手を当てて振り返る。
「ろくに怪我も治さないまんま、一人でどこに行く気?」
「へ? い、いや、その……」
 目を吊り上げた瑠那に、華音は思わず言い澱む。眉間に皺をよせ、目を吊り上げて、かつてないほど不機嫌な顔をしながら、瑠那はつかつかと華音へ近づいた。手を持ち上げて、そして、
「ひ、ひは、ひはいっ、ひはいっれは……っ」
「いい加減にしなさい! この猪娘っ! 毎回、毎回、一人で無理しくさって!」
 ガーゼを当てたままの華音の頬を捻りあげて、左右へぐにぐにと弄ぶ。傷の痛みと頬を引っ張られた痛みとが混じって、涙が滲んでくる。
「な、何するのよ、瑠那!」
「何するのよ、じゃないわよ。ったく、何で私たちに声もかけないわけ」
「……たち?」
 瑠那の口にした単語に、華音は首を傾げた。同時に、笹の葉を揺らして2つの影が現れる。
「詩亜っ!? アルティオっ!?」
「ほほほほほっ! 華音、この私に隠れて蓮を助けに行こうだなんて、そんな打算的なことをしようとしたって無駄ですからねっ!」
「あ、あのね……」
「2人揃って水臭せぇんだよ、お前らは。
 まあ、俺としちゃあ、愛しの華音を放っとくわけにいかねーし。ムカつく奴だけど、あれでも弟弟子だし。そんなくだんねーこと言ってる場合じゃねーんだろ?」
「アルティオ……」
 相も変わらず、無駄に胸を逸らしながら言う詩亜と、ぼりぼりと頭を掻きながら溜め息を吐くアルティオ。瑠那の方を見ると、意味ありげにウィンクを返す。
「ちょ……あんたたち、隊士の職務は……っ」
「あんなもん、セルリアに任せときゃあ何とかなるって。警備サボったくらいで誰も死なねーし」
「そうよ。むしろ仕事を与えてあげたことに感謝して欲しいわね」
「でも……元々、命令じゃないんだから……後で処分されるかもしれないのよ?」
「あら、いらない心配なんてらしくないじゃない。大体、一番命令違反回数が多いのは貴女自身じゃあなくって、華音?」
「うっ……」
 いつにない詩亜の突っ込みに、華音の声が濁った。
「それにいーのよ。私は何もしなくたって、蓮のお嫁さんっていう輝かしい未来が保障されてるんだから。おーっほっほっほ、」
「まあ、戯言はさておいて。私は元々、あそこに帰依した記憶はないし。あ、お金は貰うけど。
 それにアルティオなんて元々、出世街道から外れてるし、いつでもクビ直前なんだからいいんじゃないの?」
「どーゆー意味だよ! 俺はいつかヤツより偉くなる!」
「無理無理。顔悪いもん」
「関係ねえし、絶望的なこと言うな!」
「……」
 いつもの軽口の叩き合いに、華音は呆然として3人を見た。不意に3人は開き放していた口を止めて、華音を見る。ちらり、と視線を交わし合うと、瑠那が華音の肩を叩く。
「今さら、お互いごたごたと理由が必要な仲じゃあないでしょ。それにそんなもん、あんたが一番嫌いなはずじゃあないの?」
「……」
 華音はしばらくだけ無言だった。やがて顔を上げた先で、瑠那たちは深く頷いて見せる。ようやく小さく、毒が抜けるように、吐息と一緒に笑みが漏れた。
「……後であきらに投げ飛ばされても知らないわよ?」
「無事に帰ったら、いくらでも怒られてあげるわよ」
「そうそう、貴女も含めてね」
 華音が無言で手を差し出す。3人は一瞬驚いて、しかし、その意味をすぐに汲み取った。それぞれ力強く叩きつけるように手を重ねた。
「……行こう。あの馬鹿、ぶん殴って必ず連れ戻すわよ!」
『応!』
 月明かりの竹の森に、声が響く。見上げた空の月は、霧が晴れたように、清々しく輝いていた。


PR
*COMMENT-コメント-
▽おお。何だかダルタニアンと三銃士のようだ
ひとりはみんなのために。みんなはひとりのために。
このメンツがそろって、こんなに安心するとは思わなかったよ、ゴメン。
問答無用。理屈の通じないメンツ。わあわあ騒がしいけど、頼もしいじゃないか。

カノン、ひとりで守ろうとしなくていいんだ。
だってみんな、レンのことが大事なんだもの。
▽確かにうるさいwww
仲良し5人組は書いてて楽しいです。こいつらは高校、大学くらいの部活面子みたいなノリですね。
いろいろとあって、いろいろと五月蝿いけれどいざというときは肝が据わったいいやつらなんです。
▽ししょー…ねーしゃ…
がーちゃかわゆーですっ///
こんなにかわゆく描いてくださって嬉しいっ
ねーしゃ、ししょー、早く帰ってきてあそんでね!がんばってお留守番してます!(笑)
そして円さんのイケメンぶりにふきました。よそ様の円はなぜにこんなイケメンなのでしょう…。あっきーもなんだか愛らしい~~///
うちではじゃじゃ馬ナンバーワンなくせして…←

かのちゃのパーティの珍道中たのしみです!
セルが出てこないのが残念ですが、おバカさん二人の活躍を期待してます!
*COMMENT FORM-コメント投稿-
  • この記事へのコメント投稿フォームです。
Name:
Title:
Mail:
Url:
Color:
Decoration: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Message:
Pass: ※編集時に必要です。
Secret:  ※チェックすると管理者へのみの表示となります。 
*TRACKBACK-トラックバック-
  • この記事のURLとトラックバックURLです。
  • 必要に応じてご使用くださいませ。
この記事のURL▼
この記事のトラックバックURL▼
目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
最新コメント
[09/12 梧香月]
[05/16 Backlinks]
[12/16 ヴァル]
[12/15 梧香月]
[11/25 ヴァル]
[11/21 小春]
[09/28 ヴァル]
カレンダー
06 2017/07 08
S M T W T F S
2 3 4 5 6 7 8
9 11 12 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
ギャラリー



漫画



季節のアルバム




漫画
カウンター