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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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【露癒の祀】捌  (香月)

まどやんとの密会はいりまーす(如何わしい言い方すんな)。
まだ謎のままにしたかったので、チャットすべては生かせてないですが、概ねあんなやり取りをしたんだと思ってください。すいません…;
もちろん、お姫さまだっこつきで!(強調)

===========================================
 

「お疲れさーん、はい差し入れ」
「……」
「お、姐さんお疲れ様ッス」
 首筋に当てられた冷やし飴を後ろ手に受け取って、蓮は背後に立ってしてやったりという笑顔を浮かべるあきらを見上げた。呆れた息を吐いて、冷やし飴の瓶を開ける。
「おお、あきらさん! 俺に会いに来てくれたん、あだっ!」
「学習しろよ、お前……」
 瓶の底で殴られたアルティオを眺めながら、セルリアが溜め息交じりに自分の冷やし飴の瓶を開ける。
 詰所の裏側にある井戸端は、日は陰るものの風の通りは悪い。そのせいで妙な熱が篭る。日が当たる場所よりはまだまし、という位か。
「あら、晶の君じゃあないの。下の詰所まで来るなんて珍しい」
「だって、あんたたちがこっちに溜まってる、っていうから。はい、冷やし飴」
「らっきー。もう糖分も水分もからっからよー、このまま即身仏になるかと思った」
「お前はどうせ、死んでも地獄の底で蟻の巣でも掘っているだろう」
「何だその勝手な言い草!? っていうか、意味わかんないし!」
「……相変わらずねえ、あんたら……」
 冷やし飴を入れてきた袋を放り投げ、あきらは苦笑して肩を竦めた。一同の中心に広げられた都の地図を見て、息を吐く。
「本当、仕事熱心ねぇ。こんな真っ昼間から井戸端会議?」
「まあ、主に熱心なのは旦那くらいのもんですけどね」
「ちょっとセル! 馬鹿にしないでもらえるかしら! 私だって熱心よ!」
「あんたは主にその熱心な蓮に、べたべたひっつくことに熱心なんでしょーが」
 瑠那が振った冷やし飴の瓶がかろかろと音を立てる。あきらが覗き込むと、都の地図には赤い墨で点々と何かの印がつけられていた。眉をひそめてそれを見る。
「被害者の発見された場所?」
「まあ、な。犯行が別なところで行われた形跡はない。行われた場所もばらばらだ。同じ場所で犯行を繰り返すのは、心理的にないが、裏をかかれないとも限らない。
 警護体制を考え直す必要がありそうでな」
「ふうん……」
「ねえ、晶の君? 昨日捕まえたおじ様方はどうしているのかしら?」
「ああ、そうそ。それを伝えに来たのよ」
 思い出したように詩亜が口にすると、あきらはぽん、と手を叩いた。こほん、と咳払いをして、声を潜めると、
「やっぱり、証言を覆す気は無さそうね。
 先祖帰り紛いの儀式をしようとしていたことは白状したけど、必要になる材料とか道具とかは、誰とも知らないところ……たぶん、どこかの闇商人か何かだと思うけど、そういう暗い経由で手に入れてた、ってさ。
 代わりに、都の警備体制とか上の方の情報とか、ちょっとは流出させてたみたいだけど、聞いてみたら大した量の情報じゃあないのよ」
「それが本当なら、どこかにまだでかいバックが潜んでるかも、ってことですか……」
「あるいは、そのでかいものそのものが黒幕、っていうこともありえるわね」
 瓶の口を咥えたまま、セルリアが難しい顔で愚痴のように言う。さらりと言ったあきらの言葉に、蓮の眉間の皺が一層深くなった。
「上から圧力がかかるのは、たぶん、時間の問題ッスね」
「馴れただろう。ぶつくさ言うな」
「まあ、早々真っ直ぐになれるような生き方してないッスけどね。けど、急がないと面倒臭いことになりますよ、旦那」
「わかっている」
 瓶の口を傾けてから、苦い顔で蓮はまた思案を繰り返す。次の言葉を待ちながら、他の面々はじっと、どこか重たい表情で広げた地図を見つめた。


「こんにちは……」
「お?」
 おそるおそる、開け放した木戸の影から声を発すると、木机に向かっていた蜜柑色の頭が振り返った。着慣れた感のする白衣に、からりと焼けた煉瓦の色と同じ瞳が、木戸の裏側に向けられる。
 長い金髪に目を留めて、青年の眉間に皺が寄った。
「華音?」
「う、ごめん。診療室、もう閉まってる、よね?」
 青年――円の顔色を窺いながら、華音は確かめるように言った。確認などしなくても、日が傾いた今の時間帯は知っているし、彼の診療室の外にはしっかりと『本日閉室』の札が下がっていた。
 それでも開いた木戸の隙間から、蜜柑色の頭が見え隠れしていたらから、思い切って声をかけたのだ。
 椅子から振り向いた円は、遠慮がちに俯く華音ににかり、と笑い、
「構わないよ? また怪我でもしたか?」
「今日はしてないっ」
「こらこら、怒るなよ。だってお前が自主的にここに来るときって、どこか怪我したときばっかりじゃないか」
「うぐ……」
 言い詰まって、唇を尖らせたまま無言になる。円はぶはっ、とやや大げさに噴き出してから、薬の匂いがする部屋の隅に置いてあった椅子を出してきてくれた。勧められるままに腰かけると、円は自分の椅子に逆に腰かけてこちらを向いた。
「で、どうしたんだ? 怪我もしてないのに、ここに来るなんて珍しいじゃないか」
「んー、えーと……。
 桜が、最近、円兄さんの顔見てないって言うから、何となく来てみようかなぁ、って」
「ふぅん? 華音?」
「ふえ? ……むぎゅ」
 唐突に、円が白衣の手を持ち上げて、華音の鼻を摘まんだ。
「肌荒れ、ひどいよ?」
「ふあ?」
「それに目の下にくま。きちんと夜眠ってるか?」
「むぐ……」
 言い澱むと円は大袈裟なほど大きく溜め息を吐いて、手を離した。ほんの少しだけひりひりする鼻面を抑えて、華音は唇を尖らせる。何も言えないのだが。
 円は両手を挙げて肩を竦めると、筆を走らせていたらしい書類を戸棚の中へと押しやった。一度立ち上がって、開け放していた木戸を閉め、椅子の位置を直して華音と向き合う。
「いたっ」
「あと、眉間の皺。女の子はクセになると一生、抜けないぞ? 相棒みたいな硬い顔になりたくないなら、気をつけな」
「……うん」
「……」
 些か勢いの欠ける返答をした華音に、円は小首を傾げた。椅子の上で腕を組んで、自分より頭二つ分低い彼女の顔を覗き込む。
「相棒とまた何かあったのか?」
「……そういうわけじゃあないんだけど……。って、またって何よ」
「華音がそういう顔して悩むのは、大抵蓮のことか、そのことで何か他人に遠慮してるときだろ?」
「……」
 そうなんだろうか。自分ではよくわからない。
「で、華音? 何があった」
「……」
 そんなに悲壮な顔をしていたのだろうか、有無も冗談も言わせない目で聞き返された。その目を見て、急に舌の上が乾いていくような錯覚に陥る。胃液が逆流して来るような気持ち悪さが、唐突に華音を襲った。
「お、おいおい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫……」
 胸に手を置いて、2,3度深呼吸する。誰かに何かを打ち明けるというのは、こんなにも難しいことだったっけ。遠い昔にあったきりだから、もう忘れてしまっていた。
 奮い立たせるように拳に爪を立てて、ようやく気分が落ち着いた。円が何も言わずにいてくれて良かった。
「落ち着いたか?」
「……落ち着いた」
「喧嘩でもしたのか?」
 首を振る。喧嘩じゃあない。喧嘩ではないのだが……。
「円兄さん……」
「何だ?」
「蓮が……知らない人前でお風呂に入ったり、泳いだりしないの、知ってる?」
 今度は円の眉間に皺が寄った。難しい顔で首を捻り、一瞬だけ視線を空に彷徨わせる。
「まあ……本人から聞いたわけじゃあないけど。何となくは解ってた、かな」
「理由、聞いた?」
 小声になる華音に、円は接し方を探っているらしい。答えが返ってくるまでに、相当の時間があった。
 円は南京錠のかかった引き出しを開けると、まだ比較的真新しい竹皮の紙束を取り出して、華音には見えないように一枚、一枚捲り始める。
「前にな。軍の健康診断、あるだろ? そこで聞いたよ」
「……」
「背中、酷い傷痕があった。右肩から脇腹にかけて、よく神経までいかれなかったな、って感心したさ。
 昔、木から落ちて枝で抉ったんだって?」
「……うん、そう。蓮はそう思ってる」
 ぱたん、と円が紙の束を閉じた。薄く積もった埃が、夕日の陽炎に少しだけ光る。行き詰るような空気の中、最初に言葉を吐き出したのも円だった。
「……俺さぁ、結構、ああいうのに似た傷、見て来てるんだよ。軍医、だからかな」
「……」
「大丈夫、心配しなくても上にはそう通して置いたさ。別に珍しいことじゃない」
 庇うように言った円の言葉に、華音は安堵の息を吐き出した。同時に昇ってきた申し訳なさに、小さく「ごめんなさい」と呟くと、がしがしと頭を撫でられた。
「円兄さん。円兄さんて、軍……ううん、皇族位の図書寮に入れるよね?」
「ああ、今まさに整理中だけど……」
「無茶を言うのはわかってる。けど、聞いてくれる?」
 乾いて張り付いた喉で言った。円はしばらくだけ、華音が時計の針の音を気にするくらいだけ、時間を使ってからやれやれと首を縦に振る。
 華音の硬い表情を和らげるように、円はもう一度、彼女の頭を撫でた。
「……仕方ないね。言ってみな?」


「お疲れさんッス、旦那」
「……ああ、お疲れ。上がっていいぞ」
 蓮の一言に帯剣を正していたセルリアが肩を竦める。隊士服の襟を緩めながら、生真面目な肩をとん、と叩いて、
「旦那、今日くらいは帰ったらどうですか?」
「……」
 セルリアの言葉に、蓮は苦い顔をして彼を見た。その反応にセルリアは頭を掻きながら、棚の上の蓮の荷を下ろす。
「今日で3日目ッスよ、旦那。どうせ宿舎にいると仕事しかしねーでしょ? 
 一応、目処はついたわけだし、今日は家に帰ってゆっくりしといてくださいよ。あとは俺とアルティオで上手くするッスから」
「……だが」
「大丈夫ですって。下手しませんよ」
「いや、そういう問題じゃあなくてだな」
「旦那、あれ見ても同じこと言えます?」
「あれ……?」
 蓮が訝しげに眉をひそめてみせると、セルリアは気まずげな目で息を吐いた。ちょいちょい、と指で窓の外を指し示す方向に目をやって。
「……」
「いやー、愛されてますねぇ、旦那」
 どこか嫌な笑みさえ浮かべて言うセルリアを、とりあえず睨んでから脱力する。
 門柱の陰から、落ちかけた日の光にきらきらと流れる金髪が見え隠れしている。見覚えのある隊士服の裾がちらちらと踊る。
何か落ち着かない様子で寄りかかる金髪の少女は、門をくぐる人間一人一人に気さくに労いの言葉をかけていた。
「……あいつは」
「早く行った方がいいッスよ~。この時間に女の子に『お疲れ様ー』なんて言われたら、アルティオじゃなくても粉かけたくなるもんですからね。
それに旦那、出て行かなかったら暗くなるまで待ってるんじゃあないですか」
 くつくつと喉元で笑うセルリアをもう一度睨んでから、蓮は力の抜けかけた全身を奮い立たせた。下ろされた荷物の中へ適当に詰め込んで、胸甲冑も外さないまま背中へ担ぐ。
 あいつはこんなところで一体、何をしているのだか。人の言うことを聞かないにも程がある。
「……悪いが後を頼む。早朝には戻る」
「了解ッス。ごゆっくり」

 がつっ!

 ……とりあえず、やり場のない怒りはふざけた口調で激励したお喋りの頭へ、手近にあった小手の入った袋を叩きつけて置いた。


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*COMMENT-コメント-
▽待ってました、円兄さんっ!
冷やし飴を瓶に密封できるこの時代のテクノロジーに注目したりして。
19世紀末のヨーロッパぐらいの技術文明があるのかな?

もじもじカノンと気配りセル兄に萌え。
▽密封というか
個人的に素焼きか何かの瓶に入ってるイメージでした。ベタベタになるかしら?

お前らは中高生か、と思いながら書いたけどよく考えたら17と15だから思い切り中高生だったね!
▽円の人気に嫉妬www
円をこんなにかっこよくかいてくださってありがとうございます!
そして井戸端会議が高校生っぽくて微笑ましい!みんな若いね!
かのちゃんかわゆす。それにセルもいらっしゃる///によによ。
▽まどやん人気。
うなぎ登り。うなぎ。げふん。

まどやん書いてみると案外するりと台詞が出て来なくて…;
安心しました。良かった♪

何だかんだ言って出刃ってるなぁ、セル。便利アイテム。
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目次(香月)
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