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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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ピエタ(その1)


 まったく。どいつもこいつも。
「父上。落ち着いて」
「そうよ。キジさん、そんな運転じゃ、幼稚園児とかお爺ちゃんとかシカとかツキノワグマを轢いちゃうわよ」
「シカとかクマだとこのミニバン潰れちゃうね」
「そうね。園児とか老人ならただ轢き殺すだけで済むけど」
 8歳の幼女コンビの妙に冷静な会話のおかげで少しクールダウンできた。とりあえず車の速度を落とす。確かに山道を70キロでは咄嗟に飛び出して来たカモシカと正面衝突を免れない。
「で? リューカに後で拾うって言ったか?」
 後部座席で連絡係りをやっている幼女コンビの片割れ、魅月に聞く。
「そのことだけど、鏡ちゃんが先に合流してから都ちゃんのとこに行こうって」
 魅月はとても中年には太刀打ちできないスピードで、こちらの会話をライブでライン配信している。リューカと鏡祖母さまは、ここから40キロほど南西の林道を移動中だ。
「それじゃ、あの跳ねっ返りがバカやらかす前に捕まえられないだろう」
「今すぐ駆けつけたってどうせ間に合わないわよ」
「都ちゃん、その気になったらさっさと谷瀬の吊り橋からだってバンジー・ジャンプしちゃうに決まってるじゃん」
 魅月が高さ54メートルの吊り橋の名前を上げるので、俺はクラクラして来た。

「咲(えみ)さんが、メイさんに事情を話せって」
 桐花は俺のお袋、つまり自分の父方の祖母のことをファースト・ネームで呼ぶ。住吉の女性陣は基本ファースト・ネームで呼ぶのがルールなのだ。とにかく女ばかりで血縁がややこしいので、”お母さん”や”叔母さん”が乱立しているからだ。
「メイさんに? なぜ?」
「都ちゃん、多分、あっち側に下りてっちゃってるから、ザイルが必要なんだって」
「ザイル?」
 俺には、住吉の巫女たちの会話はちんぷんかんぷんだ。去年の秋の大地震以来、桐花の直感力が急に強くなってしまった。お袋はもともとぶっ飛んでいたし、鏡祖母さまもぶっ飛んでいるが、どうも桐花もぶっ飛んでしまったらしい。
 忌々しい。まったく。どいつもこいつも。

「あっち側ってどういうことだ」
「竜宮城ってことみたい。父上、都ちゃんの弓のお道具、積んで来てたよね?」
「あ? ああ」
 会話の飛び方についていけない。
「今、この車に積んでる?」
「ああ」

 後部座席の2人は、お袋やリューカとグループチャットで打ち合わせを進めているらしい。
「不動滝のオッチャン、繋がった!」
「父上、トンちゃんが落ち着けって言ってるよ」
「五月蝿いって返しとけ」
「わあ。小学校教諭がそんな言葉遣いでよろしいのかしら」
 もう、かなり薄暗い。こんな時間に、こんな山道で、俺たちは都を捕まえられるのか? 何かと茶々を入れて気を紛らわしてくれる幼女コンビが一緒で良かった。俺ひとりだったら頭に血が上って、それこそ峠道を転げ落ちていたかもしれない。
「リューカ達、県道まで出て来たって。今、路線バスのバス停だって」
「三本杉、三本杉……あった! 父上、ここからもう15キロぐらい」
 カーナビにバス停の名前を見つけた。すぐだ。
「桐、お前、大丈夫なのか?」
「何が?」
「何がって、今日は目眩したり耳鳴りしたりしないのか?」
「平気。鏡ちゃんももう大丈夫なはずだよ。都ちゃんがつないでくれたから」
「鏡祖母さまも? 都が?」
 何のことやらさっぱりわからない。だが、はた、と思い当たった。
「都がもうあっちに降りてるから。だから、ということなのか?」
「そういうこと。だからもう、今更多少慌てても同じことよ、父上」

 リューカ達が見えた。手を振っている。
「鏡ちゃん!」
「桐花!」
 鏡祖母さまは、すっかり暮れ落ちた山里の道端で、文字通り輝いていた。金色の髪が普段より伸びてオレンジ色に揺らめいている。
「みっちゃん、リューカ、父上をお願いね」
「オーライ」
「ええよー。お気張りやす」
「父上、じゃ、行って来ます」
 桐花が鏡祖母さまに飛びついたと思うと、見る見る祖母さまの姿が変わった。いや、祖母さまの身体から、馬のような、シカのような、四足の獣の形をした焔が吹き出した。翼のように金色がかったオレンジの光をまとって夕闇を照らしている。桐花はその背中に座って、獣の首に抱きついた。そしてその獣の横に立つ、きさ祖母さま。
「リュウ坊、みっちゃん、頼んだよ。キジ坊を暴れさせないように」
「ラジャー」
「承りまして候」
「じゃ、行って来るよ」
「桐、気をつけて。鏡ちゃん、桐を頼みます。行ってらっしゃい」
 きさ祖母さまは、自分の中に入っていた妖魔に手を振った。

 俺の娘と俺の祖母の中味は、8歳の小学生女児と年齢不詳性別不明の美人とやっぱり年齢不詳な俺の祖母に俺の子守を任せて、夏の大三角形が輝く夜空にさっさと飛び去ってしまった。
 まったく。俺を何だと思ってるんだ。どいつもこいつも。

「祖母さま、大丈夫か。鏡と別れるの、久しぶりだろ」
「祖母さまって呼ぶんじゃないよ」
 どう見ても18、9の小娘、しかも今時のヤンキーだってそうそうやらないような完全な金髪にミリタリー・ジャケットを羽織ったギャルが俺をぎろっと睨み返す。
「いや。冗談じゃなく。ホントに平気か?」
「大丈夫。都があっちで繋いでくれてるからね」
 桐花と同じことを言う。でも俺にはやっぱり、ちんぷんかんぷんだ。とりあえず、竜宮は巫女たちのエネルギー源でもあり、泣き所でもあるらしい。

 都からの通話が途切れたGPS座標まで、車を飛ばした。リューカは地形図を見ながらナビをしていたが、急に大きな声を出した。
「キジさん、車、車停めてください」
「おお?」
 急ブレーキを踏んで速度が落ち切らないうちに、リューカは車から飛び降りて夜道を走り出した。女性に見まごう柳腰の優男だとばかり思っていたので、その身のこなしと走る速度にびっくりしてしまった。
「魅月、お前、車から降りるなよッ」
「ラジャー」
「祖母さまッ。魅月と待っててください」
「はいはい」

 慌ててリューカの走って行った方を追いかける。リューカが26,7のひょろひょろした男を捕まえて何か話していると思ったら、ちょうど俺が追いついた瞬間、リューカはその男に一発入れてノックアウトさせた。

「リューカッ。お前ッ」
 リューカはえへへえっと照れた顔で笑って、オガタマを通した紐を上げて見せた。
「とりあえず、ドンちゃんさん、取り返しました」
「え」
「先にこうしとかんと、キジさんが一般市民殴ったらいろいろとあかんのでしょ」
「え」
「キジさん、ショウガッコーのせんせえやし、有段者やし」
「え」
「代理で一発かましといたさかい、これで堪忍してな」

 桐花と鏡祖母さまが頼んでたのは、このことか。まったく。どいつもこいつも。


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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

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イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
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