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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『FRIENDS』・上

終わらせるぞー、ぜってぇ上下で終わらせるぞー、ぜはぜは。
というわけでお待たせしました、クリスマス小説るーちゃとれーくんのターンです。

私の頭の中のるーちゃ、問題発言はそろそろ控えよう。

========================================
 
「じゃあ、よろしく」
「はいはい」
 すっかりはしゃいで寝入ってしまったキリカを、赤いローブの手に渡す。エクルーより等身の低い、でもやたらと活力に満ちた一番新しい姉は、すうすうと眠るキリカを馴れた手つきであやし始めた。
 彼女の実の娘は少し離れたところに立っている彼女の旦那の肩にしがみついて、同じように寝息を立てていた。
「それと……ごめん。これ、頼めるかな?」
「……あんた、女の私に大荷物持たせる気?」
 1mくらいはありそうな大きな包みを差し出してくるエクルーを、ルナはじろりと睨み挙げた。大きなピンク色のリボン。触れると中の柔らかい感触が感じられる。ぬいぐるみか何かだろう。
 そりゃあ、今日はクリスマスだ。気持ちはわかるが、両手で赤ん坊を抱えた女性に当然のように渡すものか。
「いやあ、ルナなら大丈夫かな、って」
「どんな理屈だ、ド阿呆。アンバー」
 すっぱりきっぱり言い放って、使い魔の名を呼ぶ。ばさばさと下りてきた大きな鷲の足元に、エクルーは包みをくくりつけた。
「じゃーね。あんたらもいつまでもくっちゃべってないで、早めに寝なさいよ。あんただって明日、デートなんでしょ」
「あはは、むしろ今晩もデートかなー」
「本物の阿呆」
 きっぱり言われるとむしろ気持ちいい。
 エクルーはこの魔女の反応が、好きだった。何度打っても響いて来るのが心地良い。
 シュアラの魔女はふう、と仕方無さそうに笑って、友人――かつての相棒の幼い娘を抱き直した。
「じゃあ、おやすみ。エクルー」
「うん、おやすみー」


 湯気の立つレモネードを喉の奥に流し込みながら、レアシスはぼんやりと天井を眺めていた。温室の天井は、あってないようなものだ。
 あらかた片づけが終わって、後は明日にしようと切り上げて。
 エクルーは主催であるルナとカシスを見送りに行っている。いつものソファに背中を預けながら、ブランデーの芳香がするレモネードをすする。
「うわ、降ってきた」
 温室の外からエクルーが帰ってきた。頭と肩に白い粒が薄っすらと積もっている。
 レアシスはちょっとだけ驚いて、マグカップを置くと、年下なのに自分より長身な彼に近づくと、肩に積もった白い粒を指で払ってみる。
 きりっとした冷たさを指先に残して、きらきらと白く光る粒が水になった。
「……本当に溶けるんですね」
「は?」
 何となく場違いな言葉に、エクルーの頭に疑問符が浮かぶ。
「レアシス、もしかして……」
「?」
「雪、見たことないの?」
「はい」
 あっさりと肯定して、レアシスは天井を指す。透明な温室の天井にぽつん、ぽつん、と雪の花が咲き始めていた。これは積もるかな。
「天井では溶けないので、どんなものなんだろうと思って」
 こくん、と小首を傾げた彼に、エクルーは思わず噴き出した。
「?」
「いや、何でもないよ。どうせ、明日になれば積もってるだろうから。そうしたら綺麗な雪景色が見れる」
 エクルーは体についた雪を払うと、レアシスを温室の中へと押し込める。平気な顔を崩そうとしないが、彼が寒さに弱いことは重々承知で、こっそりジンが設置してくれた暖房装置の温度を1度だけ上げる。
 1度だけなら、周りの植物も許してくれるだろう。
 彼は元のように、そこが自分の定位置であるかのようにソファの一角に座って、またレモネードを飲んでいる。視線は天井に止めたまま。
 でも、今度はその目が笑っていなかった。何か、深く考え込んでいる。
 エイロネイアのことだろうか。それとも、先ほど明日の約束をしていた恋人のことだろうか。どちらにしても、表情は真剣そのものだった。
「キリは預かってもらったから、今夜は静かだよ。のんびりしてね、レアシス」
 ちょっとだけ自分勝手な感情を覚えて、声をかける。はっ、と我に返った彼は視線をエクルーに止めると、いつものように微笑んだ。
「はい。でも、少し寂しいですね」
「うん。キリもレアシスに会いたがっていたから、明日の朝、ちょっとサービスしてやって」
「くす、わかりました」
「お腹すいてる? 何か夜食食べる?」
「ええと……」
 少し言い澱む。彷徨わせた視線は、欲しいものを探している目じゃない。どうやって遠慮しようか考えている目だ。
 それが面白くなくて、エクルーはにや、と笑って言葉を重ねてみた。
「食べられちゃうからパーティーには出さなかったんだけど……ココナッツケーキ、作って置いたんだ。食べるだろ?」
 ひく、と解りやすい反応が返って来る。彼にとってはブッシュ・ド・ノエルなんかよりよっぽどご馳走だ。猫にまたたび、エイロネイア皇帝にはマンゴープリンとココナッツケーキ。
 しばらく逡巡してから、彼は結局、浅く頷いた。


 少し濃い目に入れたキーマンの紅茶が香りを立てている。砂糖もミルクも手を付けずに、まずは純粋な香りだけを味わう。
「レアシスって一杯目はストレートだよね」
「ポリシーですから」
 拘りのないように見えて、実のところ、彼は結構頑固だ。黒い服も、戦いのスタンスも。
 その拘りを聞くたびに、エクルーは何とも微妙な気持ちになる。
 魔道を扱うのに、最期の止めは出来るだけ自らの槍で差したがるのだ、とレンが言っていた。槍で貫かなければ重みが分からない。自らが殺めた重い命の感触が、掌に残らないから、だそうだ。
 黒を纏うのも、その命に対して、自らが断ってしまったと思っている大切だった者たちへの、永遠の喪服なのだと、誰かが言っていた。
 紅茶の香りを楽しむ癖もそうだ。
 壊疽に肉体を苛まれて、とうとう味覚さえ奪われた時節。鈍った嗅覚だけが、彼の飲食を支えていた。まろやかなミルクの感覚も、レモンの酸味も感じられない彼は、紅茶の純粋な香りの違いを楽しむことで自らを慰めていた。
 彼の拘りには、いつも何かの影が付き纏う。
 この子はこうしてお茶を飲んでいるときも、一緒に弦楽器を合わせているときも、本当に楽しんでくれているのだろうか。
「エクルー?」
「ああ、ごめん。何でもないよ。美味い?」
「はい、とても」
 口の中に含んだケーキの欠片を飲み下してから、いつもより少しだけ伸びやかに微笑む。その伸びやかさに、少しだけ救われるような気分になる。
 エイロネイアに行って、湖のほとりで倒れているアカネを見たときは肝が冷えた。やまわろから、少しだけ、彼の記憶を見せてもらったらしい。それでもほんの、一端だけなのだ。
 カルミノで一番、最初、彼に触れてしまったときの、根底に張り付いていた声が頭から抜けない。アカネもあれを聞いてしまったんだろう。

『生まれてきてごめんなさい』

 思い出す度に居た堪れない気持ちになる。彼はまだ20を出たばかりだ。なのに、あの声はずっとずっと昔から、彼の中に響いている。今は、どうなっているんのだろう。
 ……分かっている。人は、なかなか変われるものじゃない。自分だって。
「エクルー、聞いて良いですか?」
「何?」
「これだけ料理に拘りがあるのに、何故、その道に行かなかったのですか?」
「……」
 エクルーは一瞬だけ答えに詰まった。
「そうだなあ、俺が料理を研究したのは、サクヤに食べさせるためだからねえ」
「……」
 ひたり、とレアシスのケーキを口に運ぶ手が止まる。
「まあ、いつの間にか、食べさせたい人が増えちゃったけどね」
 にこりと、いつもの笑みを浮かべてエクルーが続ける。
「……エクルー」
「?」
「エクルーは、料理も音楽も、本当に楽しんでやってますか?」
「うん? そうだと思うけど……?」
 エクルーは眉間に皺を寄せる。俺が? 君がじゃなくて?
「……」
「というか、料理とか音楽とかで人に喜んでもらえた時だけ、俺は存在する価値があったと思う。生きててよかったな、と思う」
 それきり言葉を口にしないレアシスに、居心地が悪くなってエクルーは補足するように言った。
「ずっとサクヤのためにだけ生きてきたから……。
 今はキリカを育てるのに手一杯だけど……キリカが一人前になっちゃったら……俺、どうしようかな」
「……エクルー」
 遮るように、レアシスがいきなり言葉を吐いた。エクルーの目の前に、空になったケーキ皿が突き出されて、その向こうににっこりといつもの笑みを浮かべた彼がいた。
「お代わり、お願いします♪」
「? いいよ?」
 急な切り返しに、エクルーは少しだけ戸惑ってからケーキ皿を受け取る。
 やっぱりどことなく似てるけど、サクヤにこの食欲はなかったよな。楽しそうに笑みを作りながら、エクルーはホールのケーキから新しいピースを切り取った。
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*COMMENT-コメント-
▽やっぱり、るーれー♪
このカップルが一番うれしいです。どんなにいちゃいちゃしてても痒くないし。
銀髪のエクルーが笑いながら死体も残さず、星になって消えたように、この子もあっさり風になってしまいそうな危うさがある。
れーくん、いっぱいわがまま言って、甘えて、引き止めてやってくださいね。
▽しまった…
カップルという言葉に何の違和感も覚えなかった自分がいるorz
最初はこくん、と小首傾げる場所と、ココナッツケーキに釣られてこくん、と頷く場所があったんですけど、めっさ怪しい雰囲気になったのでやめました(自重、もとい自嘲)。

次はれーくんターン。るーちゃの寝顔を見ながらぼんやり考えます。
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目次(ヴァル)
「姫おり」過去編
織姫のお仕事
     4.0
   4.1 4.2

カルミノ編 1日目 『桜降る夜の森に』 2日目  『雷鳴の封印』  『拾い子』  『森の中の星空』 3日目  『再生の呪文』  『春日なる』 4日目 祝宴 お茶会  『おすそわけ』  
イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
嘆キノ森シリーズ
『嘆キノ森』
 正面左右背後
 出口1
『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

カルミノ編 前夜祭 『Happily Ever After』01 1日目 『Happily Ever After』02 『Happily Ever After』03 『Happily Ever After』04 『Happily Ever After』05 2日目 『Happily Ever After』06 『Happily Ever After』07 3日目 4日目 祝宴 お茶会  『romanesque』
イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
ありしん 『瑠璃の鳥』    
シュアラ編 『Front breaking』 『Dell'oscurità per brillare』 『End symptom』 【露癒の祀】 拾壱>拾弐
エイロネイア編  『daily workⅠ』 『覚醒ヒロイズム』 EPISODE1 EPISODE2
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