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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『GLORIA』 EPISODE5    香月

GLORIA、5章。
ようやくまともにヒーローの登場です。(前回はしゃべってないので数えない)
こんなにサボる主役は久々だ。

キャラが多く出没しすぎた。アヤメちゃんに通訳してもらってます(通訳言うな)。
こういうのはたぶん、彼女かな、って。

=========================
 
 カシス=ベルサウス=グリュンスタッドは気が滅入っていた。
 まったく何故、こんな目に逢わなくてはならない。
 まず初めにあの金髪の筋力女が怒鳴り込んできた。やっと帰っていったと思ったら、今度は思い切り眉を潜めたエイロネイアの新皇后が「どういうことなんですか?」と聞きにきた。背後にいた主君は、しっかりと楽しんでいるしたり顔だった。あの野郎。今度、処方に妙な薬を入れてやる。
 続くようにしてはるばる遠くの診療所から、生真面目な女医が「追わなくていいんですか?」ときたもんだ。妊婦のくせにわざわざルパで出向いてくるんじゃない。
 そしてようやく一段落ついたと思ったら、
「……なんで今度はお前らが来る」
「気になったからです」
「研究者として、少し興味が湧いたから、付き添いで。あと、先生の代理です」
 ああ、そうかい。素直で結構。
 わざわざ質問に女を連れてきた3つ子の次男を横目で見ながら、カシスは小さく舌打ちをする。さすがにこれは計算外だったな。
「別に俺たちは追っかけろ、なんて言ってませんよ?」
「てめぇらがどういうつもなのかなんざどうでもいい。俺にとっちゃあ、同じ説明を何度もさせられるのは面倒なんだよ。わかるか?」
「それだけ他の人に慕われてた女の子に逃げられたんだから、自業自得……」

 がしゃん!

 横合いからぼそりと口を挟んだアルの脳天に、百科事典の角がヒットした。凛と紫水は深々と溜め息を吐く。
「そもそもの原因は何なんですか?」
「さあな」
「さあな、って身に覚えがないわけがないでしょう?」
 欠伸を噛み殺しながら言った一言に、紫水が問い返す。涼しい顔でコーヒーを飲む本人より先に、周りから返答が返ってきた。
「けど別に喧嘩してたわけじゃないよねぇ? いや、喧嘩はいつもしてるけど」
「大体、カシス君はつい最近までエイロネイアにいただろう? 喧嘩をする暇もなかったはずじゃないか」
「放って置かれて寂しかった?」
「……考えられないけど。まあ、でもルナも女の子だもんね」
 研究所の主と従業員たちは勝手な憶測を上げ始める。凛は不思議に思った。この人たちはそういう予測を立てて置きながら、何故当人に何も言わないんだろう。どうなっているのか、この夫婦。
「マリッジ・ブルーというやつじゃないかしら?」
 鶴の一声をあげたのは、不在の彼女の代わりにお茶を運んできたアヤメだった。
「ちゃんと結婚してたわけじゃないんでしょう? アルテミスのために籍だけは入れてたみたいだけど……。
 いざ、式を挙げるとなって、何か思うところがあったんじゃないかしら?」
 全員の視線がカシスに集まった。当人は顔色一つ変えずに、ひょい、と肩を竦め、
「さあ?」
「……って、さっきからそればっかりじゃないですか!」
「言っただろうがよ。あーだこーだ、説明だの何だのは面倒くせぇって」
「自分の奥さんのことでしょう? 少々、無責任なのではなくて? あまりにもマダムが可哀相だわ」
「そうですよ。少佐、ルナさんはきっと追いかけてきて欲しいんだと思いますよ?」
 カシスは面倒そうな息を吐いて、ぼりぼりと後頭部を掻いた。
「さあ?」
「……少佐、会話くらいしようとする努力をしてください」
「ねえ、そもそもさ。カシスってどうしてルナに惚れたの? 凄いスピード婚だったよね」
 デスクの向こうからエクルーが身を乗り出した。カシスに突っ込めるのは研究所内でも怖いもの知らずのアルだけだったが、最近はエクルーも馴れてきたようだった。
 カシスはアヤメの運んできた新しいコーヒーに口をつけて、
「"さあ?"は禁止」
「さて」
「やまわろじゃないんだから。まったく。改めてカシスを側付きにしてたレアシスを尊敬するよ」
「けれど、よくマダムは教授のプロポーズを受ける気になったわね」
 紫水の言葉にその場が軽く硬直した。エクルーとアルが気まずそうに視線を交わす。平然としているのはカシスと、呑気なジンだけである。
「えーっと、それはトップシークレットというか何というか……」
「あいつの親友が難病で死にかけてたから、治してやる代金に配偶者に貰った」

 ぴしっ。

 紫水のクールな表情がそのまま凍り、凛の笑顔が引きつった。アヤメが少しわざとらしく口元を手で覆う。
「カーシースっ! あのな、もうちょっと言い方が……。例えば親友の病気を治した縁で結ばれた、とかさ」
「まったく別物語になるよ、アル」
「じゃあ、治したお礼に身を差し出した?」
「全然、フォローじゃないよ、それ。意味変わってないし」
「……」
 紫水よりも凛の方が幾分、立ち直りが早かった。苦しい笑顔のままで、脇の紫水の腕を小さくつつく。はっとした彼女は眉間を抑え込む。
「……なるほど。マダムが逃げた理由がわかった気がするわ」
「でも、その後はいい夫婦だと思って見てたけどなあ……」
 コーヒーを飲みながら、のんびりと口にしたのはジンだった。
「言い方ややり口はどうあれ、カシス君だって彼女に惚れ込んでいたから、そういう手に打って出たんだろう?
 彼女が素直に『アイシテル』とか、『好きだ』とかいう言葉を並べて、結婚したとは思えないな。当時の彼女は何というか……そう、今より無理をして生きているような感じだった。一筋縄じゃあ、いかなかったと思うよ」
「それはまあ……」
「俺も最近、気づいたんだけど……あの子も笑ったり泣いたりしないんだ」
 ジンの口にした言葉に、アルとエクルー、アヤメが顔を見合わせた。
「よく怒ったりはするけど……確かにそんなところ、見たことないな」
「キジローもルナのことは大分、気にしてたな。そういえば……」
「うん、俺もようやく最近気がついたんだ。最近、元気がないな、って改めて見ていたらね。
 カシス君。本当は、君はとっくにそれに気がついていたんじゃないのかい?」
 また全員の視線がしれっとしていた魔道技師に集まった。彼は至極、疲れた表情で息を吐く。飲んでいた煙草を灰皿の上に打ち消して、
「まあ、軽い奴だとは思ったな」
「軽い? ノリが?」
「意味が違うとわかってて聞くボケはやめろ、小僧。
 お前じゃねぇけどな、ふらふらしてやがる奴だなとは思ったな。八方美人の自由人。恐ろしく身の軽い奴だった」
「俺みたい?」
「お前は女の間をふらふらしてるわけだけどな。何の生き甲斐も、何の目標もない。
 解りやすく言えば、いつ死んでもこの世に未練はない、ってところか?
 まあ、お前とは違うだろうが、どっか被るところがあるから、お前をわざわざガミガミ叱り飛ばすんだろ」
「……」
 紫水の眉がぴくり、と動いた。
「でも、確かにルナ先生は、実家とは仲が悪かったみたいだけど……あれだけご友人やご兄弟がいらっしゃるじゃないですか」
「シュアラにいる金髪の筋力女に聞いてみな。ご丁寧にあいつがどんな女か解説してくれるだろうよ。
 ま、要するに勝手に悲劇のヒロインになってるわけだ。いざってときは、何にも背負っていない自分が犠牲になればいい……。せいぜい、そんな感じじゃあないかねぇ」
「ルナ先生が? そんなことを?」
 凛が眉を潜めて問う。紫水は懐疑的な目で、じっと彼を観察するように見つめていた。
 顎に手を当てたアヤメが、小さく挙手をした。
「要は、あなたは彼女のその考えを変えてあげたかったのね?」
「姉ちゃん?」
「だってそうでしょう? 家族って重しになるもの。それも子供まで作ったでしょう?
 意地っ張りで悲劇のヒロインになっていた彼女を、強引な手を使って繋ぎ止めたということじゃない。『アイシテル』とか、『好きだ』って連発しても彼女は首を縦に振るタイプと思えないし……そうでしょう?」
「でも、じゃあマダムはどうして出て行ったの?」
 アヤメは肩を竦めてカシスを見る。彼は2本目の煙草に手を伸ばしながら、
「さっき言ったばかりだろ。マリッジ・ブルーじゃないかどうか、ってな。
 人間てヤツは、変化の境目を受け入れ難いもんだからな。ようやく土壇場で内面を抉ってやれたわけだ……くっくっく」
「……少佐、標準語で喋らないとまた誤解されるわ? つまり、ルナはようやく意地を張らずに、家族を持とうとしてるのね。それで一人で考える時間が必要だった。あなたはだからあえて放って置いたのね?」
 アヤメとカシスのやり取りに、周りはぱちくりと目を瞬かせるばかりだった。アヤメの的確さもそうだが、カシスが? この男が、そんなことを考えて動いていたなんて思いも寄らなかった。
 始まりが歪な夫婦だった。それでも上手くいっていたのは、最初から計算されたものだったからなのか。
「……けれど、もしもマダムが帰って来なかったらどうするおつもりなの?」
 紫水が代表して、もっとも気にかかる質問をした。全員の視線が集まる中で、カシスはにやり、と唇の端を吊り上げて、
「悪いな、お嬢ちゃん。生憎俺は、ルーレットはゼロにしか賭けない質なんだよ。ポーカーなら常にファイブカードだ。どんなテを使ってもな」
「……?」
 言葉の意味がわからずに、紫水が眉を潜めた、そのときだった。
 研究所のドアが、ばん、と大きく開いた。エクルーの顔がぱっと輝く。
「イズミ? ひょっとして俺を迎えに……」
「ベルサウス少佐!」
 少し息を切らせたイズミが飛び込んできて、するりとエクルーの腕を交わす。
「……小僧、そんなにお約束が好きか?」
「エクルー、かわいそうに……。代わりにお兄ちゃんが温めてやるからな~っ」
「……やめてください、お兄さん」
「もう! そんなことどうでもいいの! それより少佐、あの、ルナが……」
 全員が顔を上げた。イズミがドアの外に向かって促すと、恐る恐る、ドアの影に赤い装束が覗く。
「ルナ先生っ」
「ルナ! 帰ってきたのか、今までどこにいたんだよ!?」
「……ごめん。ただいま」
 彼女は硬い表情のまま、苦笑いで答えた。覇気がない。あえてカシスから目を逸らしている。
 アヤメとジンが顔を見合わせた。ジンがこっくりと頷く。
「カシス君、今日はもういいよ。日頃、常人の3倍くらい働いてもらってるからね。明日まで休暇をあげるから」
「アルテミスは父さんが預かってくれるって。娘が2人出て行った後だから、寂しいでしょう? 父さん」
「俺はイリスがいればちっとも寂しくないぞ?
 ……そういうわけだ。ルナも疲れてるだろう? ゆっくり休んだ方がいい」
「……ありがと」
 笑顔で言ったジンに、少しだけ表情を和らげてルナが答える。けれど、カシスが椅子の背もたれにかけていたコートをばさりっ、と肩にかける音を聞くと、また顔を強張らせてしまった。
「……おめでとう、教授。ぜひ、その後のお話も聞きたいわ」
「残念だがここからはプライベートだ。聞きたきゃあ、脇の男に一度抱いてもらって、耐性をつけてから来るんだな」
「な――っ!」
 紫水の顔が一転して真っ赤に染まった。慌てて隣の凛からずざざっ、と距離を取る。
「あなた……そんな邪なこと、考えてないでしょうね!?」
「俺が言ったわけじゃないよ! ちょっと、少佐!?」
「女の手綱くらいきちんと掴んどけ。以上。まあ、せいぜい頑張るこった」
 ひらひらと騒がしい背後に手を振りながら、カシスはドアに向かう。イズミは道を譲る寸前で、ぽん、と自分より低いところにあるルナの肩を叩いた。
「……あんまり自分の奥さん、いじめるなよ」
「てめぇに言われたくねぇな。いつまで無様にひっくり返ってんだ」
「うぐあ!? ちょっと、今踏む気まんまん!?」
 かろうじてカシスの踵を避けたエクルーが、ごろごろと転がった。ルナはその光景に、深い溜め息を吐く。でも彼が目の前に立ってからは、呼吸と共にきっと鋭い目を見返した。
「……ここじゃあ、公開処刑同然だぜ? せっかくの休暇だ。ゆっくりやらねぇか?」
「……そうね」
 薄笑いのまま言った彼の台詞に、ルナは唇を引き締めたまま、硬い声で頷いた。



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*COMMENT-コメント-
▽ギャグ要員……
るーちゃ、身体を張ってるねえ。
しかし、毎度よくこれだけの人数を動かせるねえ。チャットで思いつきで投げたセリフがこんなに生き生きとした会話劇に……感動。
カシス……いい男じゃねえか。
アヤメ……ますます無敵じゃないか。
▽つまり…
いつも思いつきで書いてるから思いつきの反映は大得意と(笑)。
るーちゃ、チャットの印象が強すぎる私を許せ…そろそろ格好よく書くから。

イリスさんはわかっててもこういうことは言わなそうだし、ドクターは肝心なところちょこっと鈍いイメージなので、アヤメちゃんに手伝ってもらいました。
無敵…
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