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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『GLORIA』 EPISODE6    香月

そろそろどこが今日の始まりだかわからないですね。ごめん;;
でも一気にあげちゃいます。

相変わらず通訳がないと通じない言動。
直訳すると「40年先まで一緒にいろ」ということですな。

=======================
 
 久しぶりの家の中は気味が悪いほど静かだった。いつもはルナの怒鳴り声や、アルテミスの声でうるさいリビングがしん、と静まり返っている。
 彼の対応は驚くほどいつも通りだった。椅子の上にコートを放り投げると、どさりとソファに寝そべった。
「話す気になったら起こせ」
 そのまま本当に静かに寝息を立て始めてしまう。緊張感がないというか、相変わらず何を考えているのか解らない。まあいい。せっかくの時間だ。久々にシャワーを浴びて、着替えを済ませて、すっきりしよう。
「あおん」
 ふと顔を上げると、テラス続きの大窓の向こうで、ジェイドががりがりと窓を引っかいていた。頭にアンバーがとまっている。ルナはくすり、と微笑んで、窓の外の2匹の頭を撫でる。
 ――そっか、あの子たちも心配しててくれたのか。
「大丈夫。あとでご飯あげるから、ちょっと静かにしてなさい。ね?」
「あおん……」
 ジェイドが何となく寂しそうな声をあげる。彼女はもう一度、ふさふさの頭を撫でてから風呂場へと向かった。


 新しいローブに着替えて、ルナはちょこんとソファの前に座った。広い胸板が上下するたびに、色のな前髪がはらりと額を滑る。背はルナよりも頭2つ分は高くて、顔つきも鋭いのに、寝顔だけはどこかあどけない子供のように見える。
 ――変なヤツ。
 嫌になるくらい我侭な子供の癖に、ときどき驚くほど大人だったりする。どちらも極端すぎるんだ、この男は。ソファの上に顎を乗せると、ほのかに焦げ臭い煙草の匂いが漂ってくる。2年前は煙草なんて大嫌いだったのに。この匂いだけは平気になっていた。他の銘柄は未だに駄目だけど。
 口を開くのを躊躇って、そのまましばらく眺めていると、
 薄っすらと、緋色の瞳がゆっくりと開く。どこかぼんやりとした視線がルナを見た。
「……怒らないの?」
「何が」
「……」
 何でもないように返した彼に、ルナは気まずそうに口を閉じる。カシスはふん、と小さく鼻を鳴らし、
「俺は半生を寄越せとは言ったが、毎日家にいろなんぞと時代錯誤なこたぁ、言ってねぇぜ。『出て行く以外は好きにしろ』たぁ、言ったけどな」
「だからその……」
「何のつもりだったか知らねぇが、結局、ここに帰ってきたんだろーが? 自分[てめぇ]の言ったことに、あーだこーだ文句をつけるほどケツの穴の小さい人間じゃねぇよ」
「……けど、春祭りに抜けて行っちゃったし……」
「お前、俺が式なんぞに拘るような人間に見えるか? イドリアンには結婚の機会なんだろうが、生憎エイロネイアでは結婚式なんぞ一年中やってるもんでな。大体にして元々興味はねぇよ。
 俺は単に珍しいもんを着せられて、あたふたしてるお前を面白がりたかっただけだ。それ以上でも以下でもないね」
「悪趣味」
 謙虚にしていようと思ったのに、つい口に出た。ぽすん、とクッションの上に頭を置く。
「……何も聞かないのね」
「聞いて何か俺に得があるのか? ねぇだろう? 何だ、聞いて欲しいのか?」
「……そういうわけじゃ……ないけど」
 少しまつげを伏せて、彼女は迷いながらぽつりと言う。ふん、とカシスは唇の端をあげて、小さく笑った。
「気にしないは気にしないで不満か」
「……まあ、少し」
 軽くカシスの右の眉が上がった。
「素直だな」
「……カシス」
 ぽつりと吐いた名前に、カシスは眉間に皺を寄せる。彼女は滅多にカシスを名前で呼ばない。この2年間で、片手で足りる程度ではないだろうか。
 無意識のうちに、呼ぶのを避けていたのかもしれない。
「……ひとつだけ聞かせて」
「何だ?」
「……何で、私だったの?」
 ルナは目を合わせようとしない。カシスは眉を潜めて短く息を吐き出した。
「何だ、随分くだらねぇことを聞くな」
「……くだらない、って。気になるじゃない」
「お前も女だな」
「あんた、男と結婚したつもりだったの?」
 いつもの憎まれ口だった。けれど、彼女にはまだ覇気がないままだ。
 さらり、とカシスの長い指がクッションの上に広がった栗色の髪を弄ぶ。彼は気まぐれに、薄い唇へ一房の髪を押し当てながら、
「まあ、確かに特別美人なわけでも、性格がいいわけでも、天才秀才なわけでもねぇからな」
「……あんた、喧嘩売ってる?」
「何だ、美人だったからとでも言って欲しかったのか?」
「……それはそれで何か嫌ね」
 複雑そうに眉を潜めながら、ルナは試すように彼の赤い瞳を覗く。
「で、何で?」
「お前を側に置いとけば退屈しないで済みそうだったからな」
「……は?」
「人間の平均寿命は大体、80。俺は双子だからせいぜい、60ってところか。あと40年生きるなんざ、案外退屈だぜ?
 お前ならそこまで俺を楽しませてくれるだろう?」
「私は永久稼動の玩具か」
「言い方はてめぇで考えな」
「……あんたらしいわね」
 ルナはわずかに微笑んだ。けれどその瞬間に、彼女は眉間に皺を寄せてばふりとクッションへ顔を埋めた。
「……あんた、標準語で喋りなさいよね」
「きっちり通じる言葉で喋ってるだろーが」
「通じない人には通じないのよ」
 言い放って、けれどクッションから顔を離そうとしない。カシスはすう、とますます目を細めてから気だるげにソファの上に起き上がる。
 ルナはまだ顔をあげない。カシスは無造作にクッションを掴んで引き抜いた。ぼふり、と彼女の顔が伏せられる。ちらりと視線を走らせると、クッションの中心は熱く濡れていた。
 ふ、と唇を吊り上げると、カシスは猫でも持ち上げるかのように彼女の身体を持ち上げて、自分の膝の間に置いた。ぽすり、と2回りは大きな身体に収まったルナはけして顔を上げない。クッションの代わりに彼女は膝をついてカシスの襟元に噛り付いた。
「……ふ、ぅ、ううっ、うううう……っ!」
「へいへい。ったく、泣くな、泣くな。面倒くせぇ」
「っ、……っ、ぅ、ごめ、んなさい……っ! ごめん、なさ……っ、ごめん、なさい、ごめんなさい……っ!」
 白いシャツの胸元を濡らしながら、ルナは彼に縋りついた。華奢で小柄な、小さい肩がかたかたと震える。唇に笑みを浮かべたまま、カシスはやや乱暴にがしがしと髪を撫で回した。
 乱雑な手が、シャツにこびり付いたアイゼンの煙草の匂いが、押し当てた胸から聞こえる心臓の鼓動が。全部が胸を締め付けた。
 止まらない。ティオと薬草谷に行ったときは、飲み干せたのに。溢れた熱が、きりがないくらい零れてくる。こんなもの、今までどこに溜まっていたんだろう。すべて吐き出すまで、どれくらい時間がかかっていたのか、覚えていない。1分だけだったのか、5分だったのか、それとももっとかかっていたのか。
「……疲れた」
「そいつは大損だな」
「……まったくよ」
 コイツにこんなところを見られて、尚且つこんなに体力を消耗するなんて。好きじゃないな。
 ローブの胸板に、こめかみを委ねながら深呼吸をする。指が何度も髪と首筋とを往復した。気持ちいい。心の底から、この場所が欲しかった。
「……カシス」
 家猫が主に擦り寄るように、頬を胸に擦りつけて、上目遣いで彼を見上げる。まだ幼さの残るあどけない顔を、一瞬切なげに歪めて、またシャツの胸板に顔を埋める。
「……て」
「あん?」
 かすかに動かした、消え入りそうな唇の言葉。カシスはぐい、と小柄な身体を抱き上げて、耳を近づけた。
 誰もが口にするような、素直な言葉なんてまだ言えそうにない。自分が本当に何がしたいのかもまだわからない。けれど、彼が欲しかった。誰にも執着しなかった、誰を欲しいと思ったことなんてなかったのに。どうしても、堪えられなかった。だから。
「……私を、抱いて」


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*COMMENT-コメント-
▽おおおおおお
いちゃらぶ突入ー!
よかったね、ルナちん。
カシスを素直な男だと思う私はビョーキ? かわいいとか思っちゃったんですけど。
▽何というか
性格がひねくれているというより、思考回路がちょっと普通じゃないんですよ。
カシスは基本的に思ったことを口にしているだけです。ただ考え方が損得に特化してるというか、アレなもので誤解を受けるんですね。
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エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
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