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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『I'll be there』EPISODE1

……だからEPISODE1とか長くするのやめろって自分に言ってるのに。
えーと、あかねれークリスマス小説第一章です。
っていうか、デートすっぽかしから始まるクリスマス小説ってどうよ?(爆)

タイトルの『I'll be there』も曲。
『鐘を鳴らして』も好きだけど、こちらも乙。

『プログラムされた生き方に流されない君が好き
 どこまでも付いて行くよ この手ずっと、ずっと離さない~♪』
(歌詞)→

副題『漫画だったらサービスシーンになってます、陛下』(なんのこっちゃ)

===================================================
 
 天上でシロチドリの鳴き声がする。もうそんな鳥が渡ってくる季節か、とレアシスは溜め息を吐いた。
 気温が調節してある自分の庭だからいいが、これを外でやると息が白く映るんだろう。苦手な季節になったものだ。
 それでも、エイロネイアの冬は、他国に比べて比較的暖冬だ。中央では雪も降らない。傍らに隠した槍に手を添えると、氷のように冷たくて眉間に皺を寄せる。
 周りには主に悪意でもてはやされることが多いが、レアシスの弱点は意外と多い。その一つがこの寒さというものだった。
 首筋に巻きつけたケープを外し、開いていた本を閉じると、かしゃん、と槍を持ち上げる。
 プライベートルームだというのに、招かれざる客。こんな寒い日に、ついていない。
「……やれやれ、今日も約束は守れずじまい……か」
 最近、何度目だ。いい加減にしてくれとも言いたくなる。
 レアシスはテラスのテーブルに置いたペンを取ると、本のページを破いてさらさらと走り書いた。飛ばないようにペーパーウェイトを乗せると、短く呪を紡いで、一息で区切られた庭の屋根の上まで登る。
 一瞬だけ振り向いてから、彼はもう一度、力を込めてレンガ屋根を蹴った。


「あら……?」
 いつものように階段と長い廊下を抜けて来たアカネは首を傾げた。授業が長引いてしまったというのに、そこに期待した影はなくて、代わりにいつもかけているテラスの椅子に黒い布がわだかまっている。
 よくあることだった。だからアカネは、驚きはしなかった。テーブルに駆け寄ると、乱暴に本のページを破いたような羊皮紙に、走り書きで『ごめん』とあった。
 焦って書いたみたいだけど、大丈夫かしら?
 約束をすっぽかされた憤りがないわけではないけれど、それよりも彼自身の身が心配になった。怪我をしても痩せ我慢で誤魔化してしまうのは、彼の得意技というか、最早、癖みたいなものだから。困ったものだ。
「大丈夫かしら……?」
 首を捻って椅子の上に置き去りにされた黒のケープを拾い上げる。ポケットから封を破った封筒を取り出して、ぺたん、と椅子に腰掛けた。
 吹き抜けになっている天上から、冷たい風が入ってくる。少し身震いをしてから、ふと思いついて、残されていたケープを頭から被った。
 拍子に視界に入った手に持った羊皮紙の裏に、まだ何か書いてあることに気がついて、アカネは羊皮紙をひっくり返す。
「『サネカズラの裏』……?」
 アカネはケープを被ったまま、ラズベリーのような赤い実をつけるカズラの葉を撫でる。根元を覗き込むと、サネカズラの木の向こう、細く伸びた枯れ茎があった。
「あ」
 その枯れ茎の根元に、"霜柱"のような氷の結晶がくっついている。蚕の繭のような、カマキリの卵のような。でもそれよりずっと美しい氷の結晶が、僅かな冬の日光にきらきらと光っていた。
 思い出した。10月ごろ、白い花をずらっと咲かせていた植物。アカネが初めて見る花で、名前を聞くと「シモバシラだよ」という返答が返ってきた。何故、シモバシラという名前なのか問いかけると、「冬になればわかるよ」と返された。こういうことだったのね。
 もし、彼が今日いれば、どうしてこんな現象が起きるのか、それはそれは楽しそうな、子供のような表情で語ってくれただろうに。残念。
 アカネはしばらく、その大きな霜柱が溶けていく様を見守っていたが、ふと気がついて懐を弄った。
「どうするのか、相談しようと思ったんだけど……」
 星のシールで封をしてあるところ、芸が細かい。昨日、届いた冬の大イベントの招待状を手にして、短く溜め息を吐く。
「エイロネイアでも祭典があるはずよね……皇帝が抜けるわけにいかないだろうし……」
 どうするつもりなのかしら? と一人ごちる。
 イドラ自体にクリスマス、という習慣はないけれど、ジンやエクルーといった面々が毎年盛り上げるので、アカネにとってもクリスマスはただの宗教行事というわけではなかった。
 ツリーを飾って、ご馳走を用意して、プレゼントを渡して、皆でわいわいはしゃぐ楽しい祝日だ。
 サネカズラの根元に座り込んだまま、アカネは想像を巡らせる。アヤメやリィンにはエイロネイアで何かお土産を買って行こう。来春は結婚式だから、何かそれらしいものがいいわよね。父さんには、何がいいかしら?
 いろいろと考えて、結局、一番最初に浮かんだ人物に渡すものに一番悩んだ。置き去りのケープの主である。
 物欲のない人だし、仮にも……恋人であるわけだ。何を渡したものか、さっぱりわからない。
「くしゅん!」
 アカネは眉間に皺を寄せていると、一際寒い風がケープをはためかせて過ぎた。
「私でも少し寒いのに……。レアシスって寒がりじゃなかったかしら?」
 あまり厚手とは言えないケープをたくし上げながら呟く。その瞬間、はっ、としてアカネは顔を上げた。
 結局、霜柱が溶けきる時間になっても、彼が庭園に戻ることはなかった。


 自室の窓を潜ったときには、もう外には酷薄な月が浮かんで、薄っすらと額に汗を掻いていた。
 エイロネイア城の自室の床に足をついて、数分、ノックが響く。相変わらず、反応が早い。
「どうぞ、アリッシュ」
「失礼します。・・・……陛下っ!?」
「心配しなくていい。ほとんど返り血だ。相手が召喚術士でね。ちょっと多勢だった」
 答えながら、赤くない体液で重くなったローブ調の上着を脱ぎ捨てる。
「お怪我は?」
「掠り傷だよ。もう治した」
「先に身をお流しください。汚れたお召し物はお預かりします」
「ありがとう」


「陛下」
 微弱な嚇光術で温められたお湯が降ってくる。シャワールームで聞く外側の声はひどく、くぐもって聞こえた。
 雨音のような湯の降る中で、僅かに目を開く。
「昨日ですが、イドラから便りが届いております」
「イドラ? カシス……なわけはないか。ルナ? それともクロイツ?」
「ディスナー嬢です。聖誕祭の、パーティーの招待状のようですが……」
「ああ……そういえばもうそんな時期だっけ」
 お湯の中で目を閉じながらぼんやり考える。エイロネイアでは至極、儀式的な祝い日だが、それでもプレゼントの風習はあるし、近頃はカルミノの文化も入ってきて恋人同士の祝日という認識も広まりつつあった。
 ……神様の誕生日が、どう転んで恋人同士の行事に行き着くのかよくわからないが、とりあえず皆が楽しければいいか、というのがレアシスの意見だ。
 そこまで考えて、ふと、昼間に会うはずだった研究院の恋人を思い出す。やれやれ、やっとそんな関係になって間もないというのに、もう数回、約束をすっぽかしてしまっている。十中八九でレアシスのせいではないのだが、そんなものがいい訳になり難いのが世の男女間というものだ。
 散々、邪魔をしてくれる連中に、いい加減、憤りの一つも覚えようというものである。
 ――イドラにもあるんだっけ……? そういう文化。
 イドラ自体にはないかもしれないが、エクルーや彼女の父親であるドクター・ムトーのことを考えると、彼女らの認識の中では、きっとただの宗教行事ではないだろう。
「当日は聖誕祭の式典がございますが」
「……」
 ああ、嫌なことを思い出した。
 短い呪[センテンス]を呟いてお湯を止めると、顔に張り付いた濡れ髪を払って溜め息を吐く。
「……相手の動きは?」
「ご期待に添えなくて申し訳ありません」
 何ともアリッシュらしい返答が返って来た。生まれて何度目か、王族として産まれた我が身を呪う。
 大事な親友と臣下の誕生日でもあるというのに。それもカシスにとっては文字通り、『カシス=ベルサウス=グリュンスタッド』として生まれ変わった初めての誕生日だ。本人は気にもかけないかもしれないが。
 シャワールームを出て、用意されていたバスタオルを被る。適当に身体の水滴を拭い、インナーとバスローブをひっかけて個室を出ると、小さな封筒を持って、直立不動でアリッシュが立っていた。
 星型のシールが添えられた、素朴な封筒を受け取って、暖炉の側に向かう。
「夜のようですから、式典が終わり次第向かって……、ぎりぎりでしょうね」
「だろうね」
「おそらく、アカネ様にも同じものが届いていると思いますが……」
「……」
 すう、とレアシスの目が細められる。
「あの娘のことですから、陛下をお誘いになるのでは?」
「そうかな? そう、かも、ね……」
 暖炉の明かりに封筒を透かしながら、考える。大分、伸びてきた朝の湖面のような青銀の柔らかな髪と、焦がれ続けた海と空を映したような大きな瞳が脳裏を過ぎる。
 つい、封筒を握る手に力を込めてしまった。ルナが見たら「人がせっかく書いたもんを!」くらい言うかもしれない。
「そのときは……何とか理由をつけるよ。彼女を式典に付き合わせるわけにいかない。……絶対に」
「承知しました。準備の方はお任せください」
「ああ、頼んだよ。……すまない」
 一礼して去ったアリッシュの背を見送って、レアシスは一杯だけ紅茶を淹れる。いつもは好まない、香りの薄い茶だったが、今はこれがちょうどいいと思った。
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*COMMENT-コメント-
▽サービス・シーン……
シモバシラ……私も見てみたい植物です。
近い仲間で、”ナギナタコウジュ”というのは見たことがあるんですけど……けっこう素朴な感じで恋愛が進行している感じですね。いい雰囲気。

アカネはすっぽかされたからって、ふくれて文句いう女の子じゃないからなあ。よけいに大変だったりする。ふふ。
▽シャワー中
基本スタンスは教師と生徒(逆の場合あり)の恋愛。
…いや、別に禁断とかそういう意味じゃなくてね?(笑)

むしろふくれて文句言うのは本人じゃなくて周囲。くく。(どS)
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