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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『I'll be there』EPISODE5

ぜいぜい。
最初はここまで深い話にするつもりなんて皆無だったのに…

あかねれークリスマス第5弾。ようやく次回で終わりマス。

物凄い何も考えないで、ついノリで書いてしまったけど、何の格好させるつもりだ? るーちゃ。雪の精とか?(オイ)

=====================================
 
 どうもおかしい。
 下り坂になった山道を疾走しながら、レアシスは眉を潜める。背後から存在を誇張してくる人間の数、その数7人。
 裏にいた連中と、あとは山中で身を隠していた分と。なのだが、どうにも数が少ない。そもそも聖殿を張っていた人間より少ない、というのはどういうわけだ。それとも何かの策なのだろうが。
 ――っ!
 ひんやりとした怖気が背筋に走って、レアシスはその場から跳んだ。今しがたいた空間を、青い光が薙いで、葉を落とした枯れ木を倒壊させる。人間だったなら押して知るべし。
 既に馴れきっているレアシスは顔色一つ変えずに、倒壊した枯れ木を飛び越えた。
 その刹那、思ったよりも近く、背後に気配が生まれる。
「皇帝、覚悟っ!」
「……」
 抑揚のない瞳で背後に斬りかかってくる影を認めると、レアシスはわずかに軸足をずらして体を反転させた。下から突き上げるように槍を天上へ振るう。

 ぎどんっ!!

「っ!」
 鈍い音を立てて、黒服の男が振り上げていた長剣の刃が、長さ半ばのところで斬り落とされていた。切り離された剣の切っ先は、きん、と軽い音を立ててその下にあった岩を叩く。
 長さの足りない、折られた長剣は、極浅くレアシスの左腕を薙いだだけだった。
「な……っ!」
「遅い」
 瞬間、レアシスの槍の柄が男の腹を打ち付けて、その数瞬後には刃が足を薙いでいた。最後に腹を思い切り蹴飛ばされた男は、近くの幹に激突して呻き声を漏らすと沈黙した。
 レアシスはそれを一瞥すると、踵を返す。枯れ木を跨いで、藪に入ろうとして、はっと顔を上げた。
 生まれた気配に槍を持ち上げる。切っ先を構えて1秒もかからずに構えると、藪の中の気配を貫こうと刃を振るって――
「!」
「待て待て待て、俺だ、俺」
 ふと、覚えのある気配を感じて刃を止めた。その瞬間に、慌てたように藪を鳴らして出て来た人物は、槍の切っ先を向けられながらひらひらと手を振る。
 静謐に細められていたレアシスの目が、きょとん、と見開かれた。
「アルっ!?」
「えーととりあえず、これどけてくれないか?」
 言われてから慌ててレアシスは槍を引いた。それから眉を潜めて、イドラの物理学者を見上げる。
「アル、あなた何故ここに……っ!」
「いやあ、ちょっとさ。ケーキに乗せるアラザンが切れちゃってさ」
「……は?」
 よくわからない返答に、さらにレアシスの一つしかない目が点になる。無表情に族相手に槍を振り回していた彼と違って、数段、人間味が増した少年の表情だ。
 アルは苦笑しながらがしがしと彼の黒髪の頭を撫で回す。頭に疑問符を浮かべながら、掻き乱された髪を直していると、アルはぱちん、と指を鳴らした。
 少し遠くの方でかすかな悲鳴が聞こえた。斬るような殺気を放っていた気配が一つ、消える。
「森の中って危ないよな。枝が落ちてきたり、木の根に気躓いたりさ。
 レアシス、躓かなかったのはいいけど、しっちゃかに走って来ただろう? 木の枝で頬っぺた擦り剥いてるぞ」
「……こんなもの、掠り傷で」
 言ってぐい、と薄っすらと滲んだ血を拭う。今さらになって浅く薙がれた左腕からも、少量の血が出ているのを知って、裂かれた袖を結って止血した。
 アルは呆れたように溜め息を吐く。
「君にとっては慣れっこかもしれないけど。アカネが泣くぞ?」
「……」
「君が思っているほど世の中は薄情じゃない。君がどれだけ放って置いて欲しいと思っても、放って置いてくれないんだ、みんな」
 レアシスは頭の中で逡巡する。今日という日の、この祭りを知っていた人間は誰と誰と誰だっけ? でも全員に緘口令を敷いていたはず。
 そう少なくない容疑者リスト。命令に忠実でない、それも気づかれないように、命令に違反しないように手を回すなんて頭の回ることをやってくれる人間、2、3通りしか思いつかない。
 人をお節介と言いながら、本当のお節介はどっちなんだか。
「ふう、やっと追いついた」
 聞き馴れた声が頭の上から響いたと思ったら、風の音と共に見慣れた友人の姿が降って来る。人が降ってきたこと自体には驚かなかったけれど、彼がここにいることには驚いた。
「エクルー?」
「メリークリスマス。まだイヴだけど」
 にや、と笑ってエクルーはレアシスの隣に着地する。土と夜露で汚れた彼の黒服の背中をぱんぱんと払いながら、
「あーあ、早速汚れちゃってるじゃん。派手にやりすぎだよ。これからパーティーだってのに。
 向こう行ったら着替えさせるからね」
「着替えはもう向こうに送りました」
「駄目。罰として今日は黒い服禁止」
「あのですね、エクルー……」
「ははは、まあいいだろ。俺の格好に比べたら数段、マシだぞ、レアシス」
「マシ、って……」
 アルの両手がまたがしがしと、今度は二人の頭を楽しそうに撫でる。レアシスはほ、と優しげな溜め息を一つ、吐いた。
 ああ、そうか。道理で追っ手が少ないと思った。
「それで、アラザンは買えたんですか?」
「うん、ばっちり」
 エクルーは意味ありげに笑ってレアシスの服についていた最後の土を払った。それを待ってから、レアシスはかちゃり、ともう一度槍を持ち上げる。
「?」
「少々、お待ちください」
 一歩踏み出した彼の手に、手品のように数枚の符が浮かぶ。彼はそれを頭上へと払う。短く呪を唱えると、白い符は黒い光へと姿を変えて、様々な印を描く。光の残像は陣になり、その陣は力の具現になる。
 以前にもその様を見たことのあった2人は軽く目を見開いた。
 レアシスは一度閉じた目をゆっくり開くと、漆黒の槍でその陣を貫いた。
「……」
 以前、見たものより格段に威力は落ちているが、漆黒の槍が漆黒の雷を纏う。レアシスはその槍を振り上げながら、背後に広がっていた闇の森を睨む。
 そして、
「――グングニル」
 感情のない声で唱え、雷の閃光と化した槍を夜の森へと解き放つ。

 ばりばりばりばり……っ!!

 人の身故の限界に、威力の落ちた雷は、しかし枯れ木の群れを薙ぐには十分だった。見た目が派手な黒の雷に、蠢いていた複数の気配がぴたりと動きを止めて、足を失い、いつ逃げ出そうかと様子を伺っていた幹に縋る男がぴくりと肩を震わせた。
 アルが軽い口笛を吹いて、エクルーが肩を竦める。レアシスは奮った槍を大地に突き刺して、夜闇の中で胸を張る。
 薙ぎ倒された木々に、いや、その狭間で蠢く者たちに静謐なアルトを響かせて宣言する。
「……帰って貴様らの主に伝えるがいい。
 我はロレンツィア=レヴィアス=グリュンスタッド=エイロネイア! エイロネイア皇帝にして正統なる者!
 我が名と、志半ばに消えた先代たちの御霊にかけて、この地をこれ以上、踏み荒らさせはしない! 貴様らの目論見、露と消えると知れ!」
 その声自体が雷であったかのように、びりびりと空気が震える。エクルーでさえ、震えかけた体に力を込めなくてはいけなかった。
 やがて闇が蠢いて、余韻も何も残さずに気配が消えた。
 いつのまにか、幹に叩きつけられていた男の姿もない。誰かが回収していったのだろうか。
 ほう、と息を吐いてレアシスは槍を引き抜く。その瞬間に槍は元の漆黒の護符の姿に戻る。
 しばらく顔を俯かせていたレアシスの肩が、ぽん、と叩かれた。
「……帰ろう、レアシス。せっかくご馳走作ったのに、みんな食べられちゃうよ」
「……はい」
 頷いた声は、先ほどの怒号が嘘のようにか細いものだった。ただ『帰ろう』という言葉に、ひくり、とわずかに反応する。
 何度か味わった浮遊感が体を包んだ。
「とりあえず、やまわろのとこまで飛ぶよ」
 レアシスは疲れたような目でぼんやりと、白くなっていく夜空を見上げる。先ほどと同じ、オリオン座の三ツ星とシリウスが見える。
 ……ここは、一体どこなのだろう。
 『帰ろう』。故郷が増えたのだと思った。けれど、ここは、この空が見えるこの場所は、今しがた『護る』と宣言したこの場所は、僕の故郷じゃなかったのだろうか。……疲れている。何だかわからなくなってきた。
 ここが、僕の故郷なら――
 昔と変わらない空を眺める胸が、何故、こんなに痛いんだろう――
 僕の、本当に、帰る場所は一体どこに忘れてきてしまったんだっけ――
 今さらのようにあの風景が、父が夢見た幸せな風景が、胸の中に去来する。その理由もわからないまま、夜の空は空間転移の白い壁に塗りつぶされてしまった。
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*COMMENT-コメント-
▽アル、カッコいいじゃん。
ずっこけ兄弟にカッコいい活躍の場をくれてありがとう。
イドラもエイロネイアも君の故郷だよ、れーくん。みんなで故郷を守ろう。
▽ずっこけ…(笑)
頼りにしてますよ、お2人ともw

次回でようやく終わり。エイロネイア編への布石です。
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