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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『too late? …』 side_A vision3  香月

『too late? …』side_Aの第3話。

アル、ごめん。兄弟揃ってこういう扱いですまん。
ルナちんのテンションがPSI-missing以来のテンションでした。

能力開花って、最初、弊害あると思うんだ。視たものを信じすぎちゃったり、逆もありそう。この場合はきっと仕方がないけれど。ちょっと心配だったのでついでに発破かけていただきました。

========================
 
 初春の青谷は若葉たちの合唱の場となる。久々に取れたパールの休みに、アルは春祭りの打ち合わせがてら、イドラに帰っていた。
 打ち合わせといっても大したことをやるわけではない。がやがやとした雰囲気と、イドリアンたちの盛況ぶりをパールに見学してもらうのが主な目的であり、実質はピクニックに近かった。
 祭りの祭壇を見学し終わって、パールが口にしたのは、サルナシの生えているところを見たい、という珍しいわがままだった。勿論、アルは大いに喜んでオパールを小さい方に預け、青谷に彼女を連れ出した。
「大丈夫かい、パール。木の根が張ってるときがあるから、足元気をつけて」
「え、ええ……」
 もう少し細かったら、獣道と言えそうな道を渡っていく。片方は高い崖になっていて、そこから吹く風がパールの恐怖心を煽っていた。繋いだ大きな手をぎゅ、と握りながら、おそるおそる崖の向こうに広がる丘の稜線を見る。
「……あら?」
「? どうしたんだい?」
 パールは思わず声を漏らす。少し遠い崖の、その遠くになだらかな丘の稜線が広がっている。丘の向こうにはまた緑の森が小さく見えている。
 その丘の稜線の真ん中に、ぽつりと何か見えた気がした。
 見間違い? いや、違う。動いてる。それもかなりの速度で。
「あれは……ひょっとしてアカネか?」
「アカネ?」
 ひらりと白いドレスが舞う。春祭りに詳しくないパールでも、それがイドラの祭りの花嫁衣裳であることは、検討がついた。
「ルパに乗ってるみたいだけど……ひょっとして」
 アルがぎゅ、と眉間に皺を寄せて目を凝らす。彼が何かを言いかけたときだった。

 ばきんっ!

「きゃ!?」
 崖の後ろに広がっていた林の下生えを踏みつけて、パールより2回りは大きな影が飛び出した。びくりっ、と身を竦ませたパールの身体を、アルが支えてくれる。
 飛び出した影は2人の前で旋回して止まる。パールはぱちくりと目を見開いた。
 大きな犬のような獣。毛並みは綺麗な翡翠色で、ふさふさとした尻尾と大人の手のひらより大きな耳が揺れている。目はどこか頼りなさげな金色で、くぅん、と小さな可愛らしい声を出した。
 昔、……2年ほど前に客用の馬舎で見たことがある。でも、乗っている人物はあのときとは違った。
「ルナ? どうしたんだ?」
 アルが吃驚して、ジェイドの背中から身を乗り出した赤装束の少女に問いかける。彼女は眉を吊り上げた、切羽詰った表情で怒鳴るように言った。
「デート中に悪いけど、一刻も争うから聞く! アカネを見なかった!?」
「アカネ、って……あそこに見えるけど。ひょっとしてまたぼ……」
「っ!」
 ルナはひらりとジェイドの背から飛び降りると、崖の縁に駆け寄った。稜線の上をスピードを上げて失踪するルパと花嫁を見て、まともに表情をひきつらせる。
「また暴走したのか、あの子?」
「暴走?」
 アルの口にした耳慣れない言葉に、パールが首を傾げる。
「あの子、ちょっと困ったクセがあって。よくああやって暴走するんだ。哀しいこととか、嫌なことがあったときに。
 溜め込んじゃうタイプなんだろうねぇ、ドクターも結構困ってたみたいで……」
「……って、悠長に語ってるんじゃないっ!!」
「あだっ!?」
「きゃ……っ!?」
 冷静に語るアルの脳天に、後ろからルナの銃のグリップが直撃する。あまりの痛みに昏倒しかけたアルがたたらを踏んだ。
「だ、大丈夫、アル?」
「……あ、あー、うん。割と馴れてるから大丈夫」
「ったく、あの馬鹿娘……! 自分がどんな身になってると思って……っ!」
「ルナ、大丈夫だって。あの子のあれは昔からのことだし、馴れてるはずだよ。ドクターだってそのためにGPSを……」
「そーゆう問題じゃないっ!」
「?」
 怒鳴りつけてから、ルナは丘の稜線に視線を戻す。その顔色が変わった。
 稜線の向こう。ルパが向かう進路の先の稜線に、苔むした石がぽつんと立っている。岩、というほどではないが、無視できないほどの大きさだ。アカネはそれでも進路を変えようとしない。そしてもうそれほどルパと石は離れているわけでもない。
 そのまま衝突するか、チドリが気づいて足を止めたら……どうなるか。考えるまでもない。そしてルパには安全クッションはないのである。
「うだあああああっ! ったく、あの馬鹿娘えええええっ!」
「あ、あの、ルナさん?」
 がしがしとルナは頭を掻き毟る。その肩に、
「きぃっ!」
「……アンバー?」
 大きなグリフォンの合成獣が舞い降りた。彼はもう一度きいっ、と鳴いてくいっ、と嘴を傾ける。ルナはその嘴の先を確認して、
「……」
「ん?」
 多少、引きつった表情のアルと目が合った。
「……そうか、その手があった」
「え?」
 にたり、とルナの唇の端が釣りあがる。背の低い彼女の細い腕が、アルの襟首を掴みあげる。
「ねえ、アル。世代の大人の役割ってさ、次の世代に確かな命と恩恵を与えることよね」
「……は?」
「そのためにはどんな命も無駄にしちゃいけない、そう思わない?」
「えっとー、うん、そうだな。生き延びることは……大事だよ」
「よし、よく言った」
 ぐっ、と襟首を掴むルナの手がきつくなる。アルの背筋に悪い予感が走った。悲しいかな、彼女と知り合って2年。その無茶っぷりは、実は旦那とためを張るということを知っていた。
 アンバーがきいっ、と声をあげて上空にかけていく。
「あの、ルナさん? 一体、何を……」
「……アル、あんたの尊い犠牲は忘れないわ」
「はい?」
 彼女の瞳がきらり、と光る。その瞬間、
「そぉれ、ポチィっ! 死んでこぉぉぉぉぉぉいっ!!」
「のわあああああああっ!?」
「きゃあああああああっ!?」
 こうっ、と輝いたルナの右手に、アルの長身が投げ飛ばされた。そこに、
「きいっ!」
「おおおおおおっ!?」

 ごうっ!!

 アンバーの瞬いた強風が、その身体に吹き付けて、稜線に向けて加速する。流れていく景色の目の前で、チドリが石に反応して立ち止まった。
 ばさりっ、と白い衣装が宙に舞う。
「……ああ、もう仕方ないな!」
 減速した風の中で意識を操る。ふわり、と浮き上がったアルの身体は、そのままアカネと稜線の大地の間に滑り込んだ。瞬時、

 どむっ!!

「っ!」
「~~~~っ!」
 凄まじい衝撃と擦り切れた痛みがアルの身体を襲った。
「あ、アルっ!!?」
「うっしゃあ、ナイスクッション!」
「ナイス、じゃありません!」
 遠くの方で声がする。ははは、生きててよかった。痛いけど。
「……あ、アル……?」
「……いたた……大丈夫か、アカネ?」
「あ……私……」
「アルーっ!」
 呆然としたアカネが顔を上げると同時に、割合近くでパールの声がした。ばさばさ、という翼の音と共に、パールを抱きかかえてアンバーの足に捕まったルナが崖の上から降りてくる。
 とすん、と緑の稜線に着地すると同時に、パールはアルへ駆け寄った。アカネは慌てて、だがいまいち緩慢な動作でアルの上からどく。
「アルっ! アル、大丈夫っ?」
「大丈夫だよ。ルナのこういう行動にはもう馴れたから」
「馴れてるって……」
 絶句するパールの横を、不機嫌な顔をしたルナがずかずかとすり抜けた。呆然としたアカネの前に立つと、溜め息を吐いて彼女を見下ろす。口を半開きにしながら、彼女の頬は熱い雫で濡れていた。
「アカネ?」
「……」
 彼女の顔を見て、驚いたパールが声をかける。けれど彼女は何も答えないまま、濡れた顔を拭うこともせずに、顔をくしゃりとしかめていた。
「ルナ……」
「……あんたねぇ」
 もう一度、深く深く溜め息を吐く。それからきっ、と眉を吊り上げた。
「何考えてんの!? そんな格好でっ、下手したら大怪我じゃあすまなかったわよ!?」
「…………だってっ」
 ほんのしばらくの後に、アカネが吐き出した声は擦り切れていた。アルとパールが顔を見合わせる。
 アカネの青く、大きな瞳から、ぽろりとまた雫が零れ落ちた。
「……だって、だってもう帰って来ないって……っ! もう二度と、もう帰って来ない、って……っ!」
「……」
「約束したのに……っ! 春祭りまでに、絶対に帰って来るって、ちゃんと迎えに、来て、くれる、って……っ!」
「……」
 最後の方はもう声になっていなかった。ルナの表情が厳しく歪む。泣き崩れるアカネに、アルもパールも、何か声をかけようとして、何も出来なかった。
 俯いたアカネの顔から、ぽろぽろと透明な雫が落ちていく。白い花嫁衣裳が、ぽたぽたと透明な斑紋に濡れた。
「……私、見たの。クーデターが終わる日に……真っ赤な炎があがって、あの人が迎え撃ちに言って、それで……それで、何も聞こえなくなった。灰だけしかないの。いないの……」
「……アカネ、それは」
 何かを言いかけたパールを、ルナの腕が無言で制した。パールは彼女の険しい表情を見て、眉を寄せる。アルがぽん、とパールの肩を叩いた。
 ルナに任せよう。そう言っていた。
「何も聞こえない……。ずっと聞こえてたのに、あの人の音。ちゃんと聞こえてたのに……っ。
 あの日から、ずっと見えない。聞こえないの。『すまない』って、それっきり何も聞こえないの……っ!」
「……」
 絞り出すような声でアカネは言った。ぎゅ、と心臓が握られたような気がして、パールはもらい泣きしそうになった。
 ルナはじっと目を閉じて彼女の言葉を聞いている。
「どうして……クーデターはもう終わったんでしょうっ? なのに、どうして戻って来ないの? 何で、帰って来てくれないの? もうあんなもの見たくない……っ! ふ、ぅ、うううぅぅぅっ……!」
「アカネ……」
「……」
 ゆっくりとルナが緑青色の目を開く。すう、と息を吸い込んで、

 ぱんっ!

「……っ!」
「ルナっ!?」
 乾いた音が響いた。つかつかとアカネに近寄ったルナの手のひらが、アカネの頬を打った音だった。
 アカネは勿論、パールもアルも呆然として彼女を見る。彼女はがしっ、とアカネの両肩を掴むと、肩を怒らせた。
「あんた、馬鹿な冗談も休み休み言いなさいよ? 視た? 聞いた? いつどこで何をどんな風にっ!?
 あたしはね、予知も遠見も占いも夢も信じてるわよ。ないようで全部、根拠があるんだからね。
 けど、あんたはいつ、そんなに偉くなったの? いつ、自分の視たもの聞いたもの全部、鵜呑みにできるような稀少な女になったのよ!?」
「……」
「そりゃあね、形として見えるもの聞こえるものがすべてじゃあないわよ。でも逆に、いくら感応能力だから、星の夢だからって、あんたらが感じるもの、視えるものがすべてだと思うんじゃないわっ!」
「……でもっ」
 少し赤くなった頬を抑えながら、目に涙を溜めながら、アカネは震える声で言う。ルナは眉を吊り上げたまま、ぐい、と彼女の手を引いた。
「来なさい!」
「え……」
「あんたがどんだけ何にも見えていないか、あんたの目に直接見せてやるわ!」


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*COMMENT-コメント-
▽アル、お役立ち
ルナ、かっこええー。しかしよくアルを放り投げるなあ。アンバーの風があったとはいえ。
感応能力者は敏感過ぎて、自分の見たものに支配されちゃうことがある。だから信じすぎちゃダメだよ、アカネ。
サクヤも自分の見たものより、エクルーの言葉を信じるようにしていた。歩き続けるために。未来はひとつじゃないから。
▽(笑)
投げる寸前に右手が光っていたのは増強呪文を唱えていたと思われます。負荷があるので、たぶん明日筋肉痛。

ルナちんはるーちゃやアカネちゃんのそういうのを心配しているみたいです。世の中、目に見えるものがすべてじゃないけれど、見るもの、言うことはちゃんとしなくちゃね。
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