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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『too late? …』 side_A vision4  香月

『too late? …』side_Aラストです。
次で『too late? …』の全章の最後になります。

アカネちゃん、苦労をかけてごめんね。
そしてるーちゃ、ほんっとーに最後まで殴り倒しでごめん。
ルナちんが男前すぎた。反省していない。

===========================
 
 ルナがアカネの手を引いてやってきたのは、自宅の地下にあるラボだった。何本もある鍵の中から、一つの鍵を手にして頑丈なロックをかけた扉を開く。錆びてはいないが、重い扉は軋んだ耳障りな音を立てた。
「あ、あの、ルナ……」
 戸惑うばかりのアカネに、ルナは光苔で薄く輝く天上を仰いで、付属された灯りを点した。ぱんぱん、と埃を払ったクッションを椅子の上に置く。
「ちょっとここで待ってなさい。うろうろしたり、また走り出したりすんじゃないわよ」
 まったく、と呟きながらルナは奥の扉を開け放ち、がたがたと凄まじい音を立てて何かを準備し始める。ちらりと垣間見えた扉の向こうには、機械的な器具がいくつも並んでいた。ジンのラボで、機械器具は見慣れているはずのアカネさえ、使用方法がよくわからない。カシスのラボにあるものだ。魔道的な部分も相当、汲みされているのかもしれない。
 小柄な身体でルナが引きずり出したのは、コンテナのような箱の物体に、いくつかの管が繋がった器具だった。機械的ではあるが、表面にびっしりと何かの紋様と陣が描かれている。
 ルナは手近なコンソールにコンテナを繋ぐと、ラボの奥に設置された簡易ベッドを指差した。
「あそこに寝そべって。練習だったから、貴金属はつけてないわね?」
「え、ええ……」
 急かされて、アカネはおそるおそるベッドの上に登った。枕に頭をつけて、ぼんやりと光る天井を見上げる。
 ルナはコンソール上に何かを入力してから、コンテナから伸びる管を手に取った。管の先にはゴム製で何かの吸盤のようなものがついている。聴診器をそのまま大きくしたようだ。
「ちょっと腹、冷たいわよ」
「……あの、ルナ、これは一体……?」
「いーから」
 お腹のあたりにひんやりとした感触が、ひたり、と当てられる。アカネはぎゅ、と目をつぶった。
 しばらく機械音と、赫光術の光がこうこう、と鳴る音がする。きゅいん、というあまり心臓によくない音がして、ルナの溜め息が聞こえた。
「アカネ。目を開けなさい」
「……?」
 こわごわと目を開けた。
 光苔の天井に、今度は赤みがかった不思議な光が当たっている。首を傾げると、アカネはぱちくりと目を瞬かせた。
 コンソールのさらに上に、赤いヴィジョンが浮いている。その赤い光で描かれた、人の頭ほどのモニターヴィジョンは、小さくどくり、どくり、と胎動していた。
「これは……」
「あんたの腹の中よ。……本当の使い道は、医療用じゃないんだけど、まあ、少し設定をいじってね。
 あんまり見ないものだから、わからないかもしれないけど」
 アカネはきょとんとした。お腹の中? これが? いくつかの白い塊が、どくり、どくり、と唸っている。その少し下の方に、ぽっかりと白い脂肪に包まれた空間があって、そこで小さく何かの塊が動いている。あれは何? くるんと小さくて、膝小僧を抱えた人形みたい。
 ルナは椅子の上に立って、アカネが目を凝らしていた中心を指した。
「これが何だかわかる?」
「……いいえ。でも……あの、まさか」
「そのまさかよ」
 青か赤かわからない顔色で、アカネは目を剥いてルナを見た。
「ひよこ豆が食えない、って言ってたときから何かおかしいと思ってたのよ。医学は専門じゃないけど、これでも一児の母だからね」
「……」
 ルナは溜め息混じりにコンテナのスイッチを切った。ヴン、と音がして映像が切れる。
 アカネの腹から器具を取り外すと、アカネは未だに呆然としたままベッドにのろのろと起き上がる。そして自分の腹部を押さえて、言葉もなく首を振った。
「そんな……、私……」
 途方にくれた顔で、呆然と呟く。ルナは器具を机の上に置くと、アカネの肩を叩いた。
「……で、何が見えてたって?」
「……私……」
 ルナは彼女の正面に回り込んだ。もう一度、溜め息を吐く。
「感応能力なんて欠片もない私が言うのも、まあ……ヘンだけどさ。
 イリスだってサクヤだって、自分の言葉を信じてるわけじゃない。……別にあんたの能力を否定してるわけじゃないのよ。でも、あんたの能力が開花してきたのって、最近なわけでしょ。
 私は御大に惚れてるわけでもないし、それほど恩義があったりするわけでもない。だから、信じてやりなとか、そんなことを言うつもりはないわ。ましてや、『必ず帰ってくる』なんて無責任なことも言えない。最悪のケースを考えるな、とも言わない」
「……」
「けどね。
 あんた、春祭りまで待つ、って言ったんでしょ? まだ4日あるのよ?
 確かに、気持ちはわからないでもないし、結果的にどうなるかなんてわかんないけど……未熟な感応やら夢に支配されて、鵜呑みにして。
 ……今、犠牲にするべきものかどうか、あんたにだって、いや、あんたにだから、……わかるでしょ?」
「……」

 ぱたり。

 アカネの頬に、新しい雫が、浮かんで落ちる。お腹を押さえて、でもその手は優しく丸みを帯びて。
「っ、……う、っ……」
「……もしものときの心配なんて、今はしなくていいから。あんたは、少なくても私よりは御大がどんな奴か知ってるでしょ。
 泣くのも、愚痴を言うのもいいけど、自分たちの身体だけは大事にしなさい。ね?」
「っ! ……ごめん、なさっ……、ごめんなさ、いっ……!」
 ぱたぱたと、また零れていく雫を抑えながら、アカネは肩を震わせる。お腹の上に手を置いたまま、背中を叩いてくれるルナの肩に額を乗せながら。

 取り返しのつかないことをするところだった。
 私はレアシスに家族を作ってあげたかったのに。その家族を殺してしまうところだった。
 ごめんね。駄目なお母さんで、ごめんね。

「誰もさ、もともと一般人のあんたに10も100も求めやしないわよ。あんたは、立派にならなきゃと思ってるかもしんないけど、御大も周りも馬鹿じゃない。
 あんたはまず、自分の身体考える1をやればいいの。1をやれない人間に、10やら100やらができるわけないでしょ。それこそ、あんた御大を叱る資格なくすわよ?」
「っ……うん、…うん……っ」
 泣きながらアカネは目の前の、自分より少し低い女性に寄りかかった。彼女はそれ以上、何も言わないで頭を撫でてくれる。身体はこんなに小さいのに、何でこんなに大きく見えるんだろう。アヤメも、この人も。
 私もなりたい。この子が大きくなって、外に出てくるときまで。一緒に大きく、成長したい。
 その横で……帰って来てくれるなら、微笑んでいて欲しい。


「……?」
 ふと、空が歪む感覚がして、アカネは涙に濡れた顔をあげた。一瞬、遅れてルナもその視線を追う。
「アカネ!」
「……エクルー?」
 ラボの片隅に、ぱっといつもの要領で現れたのは見慣れた幼馴染の黒髪の青年だった。いつも余裕を浮かべている表情と声はしかし、今は少しだけ詰まっていた。
 エクルーはベッドの上にアカネの姿を見て取ると、すぐに駆け寄って右手を出した。
「――え?」
 アカネは涙ぐんだ目を見開く。青と緑、不思議な翡翠色をした花の群れが、エクルーの手の上に乗っていた。忘れない。忘れられるはずがない。アカネにとっては一番の思い出の花だった。
 そして、その花を束ねているのは、
「あ……」
 赤い、牙のミサンガ。
「あ、ああ……」
「……アカネ。伝言」
 アカネの手の上に、その束を乗せながら、エクルーは微笑んだ。目が少しだけ潤んでいた。
「……『必ず帰る』、だって。信用してくれていいよ。この目で、この耳で、ちゃんと聞いてきた」
「――っ!」
 収まったはずの涙が、また零れてきた。もう声も掠れて出ない。
「……ぅ、う、うううっ……」
「うん、うん……よかった。ほんとによかった」
 ぽんぽん、とエクルーも宥めるように肩を叩いてくれた。背中と肩に置かれた彼女らの手が優しくて、また涙腺が緩む。止めようと、笑おうと思ったのに、それも出来ない。
 父親の言葉が頭を過ぎる。本当に、いい仲間を持って幸せだ、って。
「……ありがとう、ルナ……。エクルーも……ありが、とう。本当に、ありがとう……」
「うん、もう大丈夫だから。待ってよう、みんなで一緒に」
 声が出なくて、アカネは代わりに必死で頭を縦に振った。
「……で、それはいいとしてエクルー!」
「何……ってぇ!?」

 ごっ!

「っ!?」
 いつもの通りにエクルーの脳天をルナの銃のグリップが襲った。
「いたあああっ! 何するんだようっ!?」
「やかましいっ! 家に入るときは玄関から入れ、って何回言わせる!?」
「だって俺いつもこれだよー?」
「それは温室とラボに許される行為。ここじゃ私が法律なのよ、わかった!?」
「そんなあ」
「……」
 あまりにもいつも通りの光景に、アカネは思わず泣き笑いのまま小さく噴き出してしまった。
 手の中でヒスイカズラのブートニアが優しく指をくすぐる。アカネはようやく涙を拭って、天井を、いやそのずっと向こうの青い空を見た。
 よかった……本当によかった。早く逢いたい。逢わせてあげたい。この仲間の内に。
 ……それから新しい家族に。
 だから、

「……早く、帰って来てね。レアシス」


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*COMMENT-コメント-
▽いいんだ…何度殴られても
それでアカネが笑ってくれるなら……。
ほとんどギャグのためだけに殴られたるーちゃ。仕方ない。芸人は笑いを取るために身体を張るものだよ。
アカネ、よかったね。一緒に彼を待とう。
▽たぶん
ルナちんもほとんどギャグのために殴ったと思われる。アカネちゃんの元気のために。
すまん、るーちゃ。体を張った協力ありがとう。

あと一話。カムバック、ネット環境っ!
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目次(香月)
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