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《賢者の石対策本部:みんなで幸せになろうよ》

谷地田ヴァルゥと、梧香月さん、日和小春さんの合作世界です。 原作で不遇なヤツ、不憫なヤツ、”双子の月が廻る世界”でみんな幸せになろう。

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『Trickstar』

クリスマス小説、カシルナ編。
パーティーの後。春祭りネタとリンク。

……まずい、すごい楽しかった……。

情けない男ばっかり書いてたので、書きたくなりました。
乗り越えちゃえば一番潔く、強くなれるのはこの男かもしれない。お母さん、初めてルナちんを嫁にやって良かったと思ったよ。

======================================
 
「はあああっ、疲れたあああ」
 寝室に入るなり、ルナは大の字になってベッドに寝転がった。パーティーの後始末を終えて、眠ってしまったアルテミスと、明日……いや、とっくに時計の針が日付を越えているので今日か、預かる予定でいたキリカをベッドに置いて来たのがついさっき。
 宴は終わってから寂しく感じるものだが、騒ぎすぎたのか疲労感の方が勝っている。
 うとうとと意識が落ち始めたが、がさりという音に阻まれる。一緒に入ってきたカシスが、何やらパーティーのときに御大様から手渡されていた紙袋を放り投げる音だった。
 白子の魔道技師は、だるそうな顔で椅子に倒れるように腰掛けた。大の字に横たわる彼女を一瞥して一言。
「子供体型に下が紫は似合わねぇな」
 即座に枕が飛んだ。
「下着どころかその下までしっかり見られてるくせに、何しやがる」
「そういう問題ぢゃない、ど阿呆」
「ガキ一人こさえて置いて、今さらそういう文句が出るか」
「いくつになっても女は女!」
 もう一つおまけに赤い物体が宙を舞った。枕は顔面で受け止めたが、今度は顔の寸前でぱしっ、と掴む。
 掴んでから、カシスは違和感に首を傾げた。ふと、投げられたものを見る。枕元にこんなものを置いた記憶はない。
 赤い包装紙に白いリボン。大きさは片手で持てるくらい。普段は見慣れないが、今日という日はパーティーの中で既に見慣れてしまった四角い物体。ただ、付き物である『Merry Christmas』のシールがどこにもないだけだ。
「開ければ? 一日過ぎたけど」
「何のつもりだ? もう済んだだろ」
 カシスは眉を潜める。パーティーが始まると同時に彼女はカシスの目の前に、お気に入りの銘柄のブランデー瓶をどん、と置いた。『Christmas』のカードが下がっているのがいつも飲んでいるものと唯一の違いか。
 遠慮をする理由もなし。長々しいパーティーの間で、既に3分の2は腹の中。残りはクーラーの中だ。
「だーかーらー。あんたの頭は本の知識しかないんか」
「ああ?」
「あれはクリスマスの分。こいつはあんたの誕生日の分」
「……は?」
「普通の人間はクリスマスの分と誕生日の分を別の日に、年に2回もらうのよ」
 ルナは気だるげにベッドの上に身を起こすと、薄い胸を張る。
「クリスマスプレゼントは皆、または恋人同士でわいわい騒いで思い出を残しましょうのプレゼント。
 誕生日はよく生まれてきてくれやがりましたね、のプレゼント。意味合いが全然違うのよ。
 一緒じゃかわいそーでしょうが。感謝なさい」
「知ってるか? クリスマスプレゼントってのは元々、血と同じ色の服着た、高所中毒のお迎え間近なロリコンかつショタコンのじじぃが不法侵入して落していく幻想だぞ?」
「明日はキリカを預かってるんだから、口が裂けてもそういうこと言うんじゃないわよ? いいじゃないの、どうせガキの頃まともなプレゼントなんて貰わなかったんでしょ?
 その分、このあたしが埋め合わせてやろうってんだから崇め奉りなさい」
「そんな高圧的なサンタクロースはいらん」
「何よ? いらないの?」
「一度、貰ったもんを返すなんて冗談じゃねぇな」
 一児の母のくせに子供っぽく唇を尖らせて手を伸ばしてくるルナからひょい、と包みを高く掲げて見せる。背のあまり高くない彼女には届かない。
 むすっとしたまま彼女が手を引くと、カシスは器用に片手でリボンを解いていく。
 1分もしないうちに中から出て来たのは、黒い万年筆だった。そういえば数日前にエイロネイアにいた頃から使っていたもののペン先が潰れて、ぶつぶつ言った記憶がある。
「……地獄耳」
「ほほう……それがベルサウス流の礼の仕方かい」
 額に血管を浮かべたルナが、ぱきぽきと指を鳴らしている。
 カシスは薄い唇を吊り上げて、プレゼントの箱をサイドテーブルに置くと身を乗り出して、「残念」と口走った。剣呑な眼差しを向けるルナの尖らせていた唇に、自分のものを押し当てて軽く音を立てる。
「……それが?」
「いんや、これは俺流だな」
「へえ。ルパのケープのお礼にメドゥーラにもしてくれば?」
「冗談言え、寒気がする」
 ひ孫まで持つ歳とはいえ、件のイドリアンの長老は未だ若さを保つ美人である。耳の毛が少しぽそぽそしているだけで。
 ルナは唇の端をぐい、と拭うと腕を組む。
「何となく思うけど男って無駄にロマンチストが多いわよね」
「?」
「早い話、歌でも花でも、キスでも夜景でもめくるめく一夜でもお腹は膨れないのよ」
 何とも逞しい言い草にカシスは思わずぷっ、と噴き出した。腹からくつくつと笑いが漏れてくる。これだからこの女は面白い。
 カシスは肩を震わせながら、先ほど壁に放り投げた紙袋を手に取った。そのまま今度は彼女の方へぽい、と投げて寄越す。
「……へ?」
「普通の人間は年に2回、プレゼントを貰うんだろ?」
 意味を図りかねたルナがぱちくりと目を瞬かせる。しばしの時間をかけて、ようやくその意味を噛み砕くと、ばっと青い顔で窓の外を見た。
「うっそ、明日大雪!? みぞれ!? 雹!? それとももう星が降ってくんの!? サクヤ、10年後って言ったじゃない!」
「おい」
 さすがのカシスも低い声を漏らす。何だかんだ言って、人間、日頃の行いが大事なのだ。
「いや、だってさ。本当、マジな話、どういう風の吹き回し?」
「そんなに取り上げて欲しいかよ」
「冗談、貰ったものは返さない」
 今しがた目の前の男が言ったものとまったく同じ台詞を返して、ルナはがさごそと紙袋を漁った。口ぶりはいつもと変わらないが、その横顔はどこか少女のようにはしゃいで見えた。
 白い大き目の箱が袋から取り出される。包装の無いその箱を開けて、ルナの目が点になった。
 沈黙が一瞬だけ流れて、そして耐え切れなくなって噴き出したカシスの笑いが部屋の中に響く。その声にはっとしたルナの顔に、一瞬のうちに血が上った。
「あ、あ、あんたらあああああっ! 御大とエクルーとっ、グルんなって図ったわねっ!!?」
「くっくっく……! そりゃあ外れだなあ、ちび妹もアルもイドリアンのくそばばぁ、あとシュアラの出刃がめ姫さんとてめーの可愛い妹、その他もろもろ、一枚噛んでる」
「あ、あんたたち……っ」
 ルナは脱力して箱の前にへたり込んだ。そのまま頭を抱える。
 彼女の前にはきちんと箱に納められた、サムシング・ブルーのパーティードレスがあった。糸は無論、イドラに着て触りなれた絹の感触で、首元の真珠は故郷のどこかの地域で見たことがある気がして、スカート部分には屑状のダイヤが散りばめられている。ああ、そういやエイロネイアの最大の交易品はダイヤモンドだっけか?
 胸元に編まれたコサージュは、どこかで見たことのある漢字名がついている白い花と、どこかで見たことのある『神の涙』の名がついた青い花と、どこかで見たことのある……というかこっちに来てから季節ごとに見ている赤い花が、これまたどこかで見たことのあるようなタッチでフラワー・アレンジメントされていて、中央にあるブルーレースアゲートが少し拙い装飾で金縁に飾られている。
 それから何といってもこのデザイン。清楚と少女趣味とメルヘンちっくと、ああとにかくそこら辺の言葉をすべて注ぎ込んだような。
 そういや、あの温室のガキはこういうのを考えるのが大得意だった、畜生め、やられた。
「で、感想はどうだ?」
「……最悪」
「貰ったものは?」
「……返さない」
 耳に入る笑い声がこれ以上なく嫌味ったらしい。くそう。
「そう腐れた顔してんじゃねーよ。俺はいいがな、他の連中が沈むぞ?」
「……あんた、どっからこんなお金」
「この間、でかい仕事があったからな」
「レジェンディア皇室から来てたあれ?」
「ああ、全部使った」
 あっけらかんと笑いを堪えながら煙草を加える。ルナはまたぱちくりと目を瞬かせた。
「全部、って……」
「そりゃそうだろ。イドラの連中は貨幣感覚じゃねぇから苦労したぜ。あのばばあ、足元見やがって薬草やら石やらの鑑定と風車やら何やらの修理まで押し付けてきやがって。
 まあ、下手に代金をまけられるのも後々嫌だけどな」
 ルナは大きく息を吐き出した。
 皇室からの御用達の仕事だった。何日も徹夜で、ルナにはわからない分野の仕事だからと一人で。
 どうせこの他人嫌いの馬鹿のことだから、身内だからと頼ることなど一切、しなかったに違いない。デザイン代も宝石もコサージュも織り代も染め代も。きっちり耳を揃えやがったのだ。ど畜生。
 普段、飄々としやがってるくせに、何でこういう嫌がらせにだけは情熱を傾けるのよ。
「って、いい加減、笑うのを止めろ!」
「くっくっく、春が楽しみだなぁ? どいつもこいつも楽しそうにしてやがったぜ?」
「うるさーーーーーいっ!!!」
 夜中だということも忘れて怒鳴りつけた。ぜいぜいと赤い顔で息を吐く彼女を、堪能するように眺めてから、カシスは気まぐれに手を伸ばして振り回されていた腕を掴んだ。
「ん……っ!」
 気がつくとルナの目の前に、鋭い朱い瞳があった。悔しげに眉間に皺を寄せて、けれど唇を覆ってくる感触には抗えなくて憤っていた腕から力を抜く。
 どれくらい時間が経ったのか、いい加減、感覚が麻痺してからようやく彼はルナを解放した。
 消耗したのかなおも肩で息を吐く彼女を、本当に楽しそうに見下ろす。畜生、いっぺん死に曝せ。
「くっくっく。まあ、そう感情的になるな。冷静に見れば、かなり気の利いたことをしたつもりだぜ?」
「……」
 確かに。
 少し前までのこいつなら、こんなことをしただろうか。代金をすべて用意したからといって、これを造るなら、ルナの知る要所要所に呼びかけるなり頭を下げるなりしなければいけない。
 ……少なくとも。
 1年前だったら、きっと出来なかった。
 ルナは大きく溜め息を吐いて髪を掻き揚げた。
 ――本当に、仕方のないヤツ。
 ちらりとまた箱の中身を見下ろして、ふと気づく。コサージュの中央のアゲートから、ほんの少し、馴れた魔力が流れている。『所有』と『護法』の印が、薄っすらと石の中に浮かんでいた。
 持ち主を保護する護符の造り方。

「"ごふのいん"?」
「基礎の基礎だ。俺もこいつの印を一番、最初に教わった」
「ふぅん。だれから?」
「……馬鹿な、とんでもなく馬鹿なてめーのひい祖父さんからだ」

 少し前の、家の中で行われていたそんな会話が、頭に浮かぶ。ふー、と深呼吸。
 ……よし、少し落ち着いた。
「カシス」
「あん?」
 ベッドの淵に腰掛けていた彼の背中に抱きつくように寄り添って、角ばった頬骨の上に一瞬だけのキスを送る。
「Merry Christmas ………And,Happy Birthday!」

=======================================

解説:糸と織りはもちろんイドラ。ただし、エイロネイアの最新式織機を使用。真珠は『珠の海』産。ダイヤモンドはエイロネイア。織ったのはメドゥーラたちだけど、刺繍したのは桜ちゃんとカノン。
デザインとコサージュはエクルー。白い花はシュアラ産、青い花はエイロネイア産、赤い花はイドラ産。摘んできたのはちびちゃんたち。ブルーレースアゲートの細工物はロードくん。花に促進妨害(つまり枯れない)の細工と印を刻んだのがカシス。

仕事と善意はどうでもいいが、嫌がらせには金と情熱を傾ける男。それがカシス=ベルサウス=グリュンスタッド。


『Trickstar』/水樹奈々
歌詞→
youtube→
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*COMMENT-コメント-
▽カシス……やっぱりいい男や。
この企画に、カシスが噛んでくれると思わなかったよ。ルナ……よかったねえ。愛されてるねえ。
イドラは基本、物々交換ですが、留学費用のために現金を貯めているので、お金も受け取りますようv。エクルーのコサージュも近頃、商売になりそうな域に達しているなあ。ブランドでも立ち上げるか。
▽絞り取ってやってください
高給取りの財産持ちなので遠慮なく絞り取ってやってください♪
お金には不自由していない。
お母さん初めてあんたを見直したよ。

ところで今、お昼ご飯にインド料理屋さんに来ています。ナンでカリーを食べてマンゴーラッシー飲んで、マンゴーデザートを食べてます。
…どこぞの皇帝陛下を連れてきてあげたいとかふと思う私は末期症状。
▽ほへえ///
カシス…まだデバガメ姫と呼んでおるのか。今度九重のとび蹴りが炸裂するぞ(笑)
桜は刺繍vだいすきなおねえちゃんがしあわせになるよう祈りをこめて★
▽ほら…
子供って第一印象で決めたものとか、気に入ったものとかずるずる引き摺るもの……げふんげふん。

お願いします。カノンちんも見た目と豪腕に反して女の子なので、お料理とお裁縫が得意。「何であたしがあの男なんぞに手を貸してやんないといけないのよ…言っとくけどルナのためだからね」とぶいぶい言いながらやります(笑)。
ついでに言うと『珠の海』に真珠を取りに行ったのは師弟兄弟。
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織姫のお仕事
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イドラ編 あかねるーver.  『茜さす』  『玉章の』  『ぬばたまの』  『真菰刈る』  『吾ぎ妹子の』  『シュアラの休日』  『天雲の』
いずみるーver. 『夢一夜』   『はじめの一歩』 外々? 『グレイの冬空』 『リィンの探検記』 『舞初め』 『忍ぶれど』 『色出でにけり』 『未遂』 『Fly me to the twine moon(その1)』 『ラプソディー(その1)』
すおみろい  『Baby Morning, Baby Night』  『Be Ambitious, Boys!』  『標野行き』 『Calling』   (上) (下) (おまけ) 『玉響詞(タマユラノウタ)』   『Honey suger hummingbird』 『すみれ色の指輪』 ぱーるる 『しろたえの』 『Agnus Dei』 『Sanctus』 『Kyrie eleison』 『夜の瞳』 『狼の宅急便』
3つ子&小町ズ&あるびー 『山笑う』 『魂100まで』  『明日に架ける橋』 『疳の虫 虫の知らせ』 『鈴猫』 『鬼灯(カガチ)』
あかねれー 『リカバリー70%』 ありしん
シュアラ編
エイロネイア編 らーじー 『風を悼み』 『禊の苑で』 『重なる月に寄せて(その1)』
目次(香月)
「姫おり」過去編
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『嘆キノ森』
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『嘆キノ森-PSI-missing-』
     

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イドラ編 あかねるーver.  『flying』  『アイルキスユー』  『輪舞-revolution-』

かしるな 『奈落の花』  EPISODE1  EPISODE2  EPISODE3  EPISODE FIN 『Trikstar』 『モノクロのキス』 Side:L 『GLORIA』    EPISODE Final 『TRANSMIGRATION』
あかねれー 『Never more』  Ⅰ.undelete 『I'll be there』   final 『FRIENDS』     『mezzo forte』     『赤い涙』     『too late? …』  Side:R   Side:A  Final!
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